内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

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学園二年生編

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暗い、暗い、何もない空間。
目を開いているのか閉じているのかも、暖かいのか寒いのかも、何も分からなかった。

死んだ時って、こんな感じだったっけ………?
私はぼんやりとしながら、そんな事を考える。

死んだ………のかな?
あの時オルティアを庇って、頭部にカトリーナが投げた大きな花瓶が直撃して、私の記憶はそこで途切れたのだから、意識を失ったか、死んだかどっちかなのは確かだけれど………。
どっちの経験もあるけど、これはどちらとも違っていた。


「オルティア………怒ったかな………」

ぽつりと呟いた言葉が、思いのほか大きく、そして遠くまで響き渡り、私はびくりと震えた。
それが、あまりにこの場所が静かすぎるせいだと気が付くまで暫く時間がかかった。

どこまでもどこまでも、果てしなく続く闇は深くて、本当に何も見えなかった。
普通、暫くすると暗さに目が慣れてきて、何かしら見えるようになる筈だけれど、そうはならなかった。

「アルフレッド様も、悲しむよね」

何もしないでじっとしていると、この闇に溶けて、私が私じゃなくなるような気がして、今度はわざと大きな声を出す。

「悲しむと分かっているのに、どうしてあんな真似をしたのかしら?」
「ひゃあっ!!」

突然どこからともなく声が響いて、私は飛び上がった。

「あら、ちゃんと大きな声も出せるではないの。いつも小さな声で、自信なさげな様子でおどおどしていることしか出来ないのだと思っていたわ」

どこかで聞いたことのある、けれども全然覚えのない声に、私は戸惑いながら辺りをきょろきょろと見回すけれど私の他に誰かがいるような気配はなかった。

「だ………、誰………です………か?」

私は震えそうになるのを必死に堪えながら、声の主に問いかけた。

「それを知ったからと言って、どうするのかしら?」

まるで私を見下すような、冷たい声。

「……………」

私は何て答えていいのかわからず、押し黙る。
すると声の主はせせら笑った。

「私の質問に、何一つ答えられないのに、よくもまあ人生をやり直したいだなんて願ったものね。オルティアがアドバイスをくれたのに、結局何も変わっていないのではないの?」

唐突にオルティアの名が出てきて、私は驚いた。しかも、私のこの性格について、オルティアがアドバイスをくれたことを知っているなんて…………。
私はの正体が、何となく分かってきた気がした。
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