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しおりを挟むぴろーんと指に蛇を挟んだまま移動する俺。
ぷらぷら揺れるのでセドリックの目線がそこにくぎ付けになっているが、蛇ごと移動できるみたいなので気にしないことにする。
ってか俺が持ってればなんでも見えるのかなセドリック。
お父さまにまだ小さいのがいる、とつぶやいているがお父さまは首傾げてるしな。
「それで、だが……」
「はい」
「やはり呪詛であったのか?」
『やはり?』
寝室の隣はプライベートルームなのか、さほど広くない応接室といった感じの間取りだった。
メイドが紅茶を持ってくるのに合わせ、くつろぐセド家族とお祖父さま。
俺?
ぷらーんとさせたままとりあえず空中に座っています。
紅茶俺も飲みたいなぁ。
「恐らくは。なんど浄化をかけても効かなかったので違うのかとあきらめていたのですが……。どうやら義母上に直接ではなく間接的にかけていた故に、浄化の範囲が間違っていて浄化が効かない状態であっただけのようです」
「ふむ……しかし何故、突然浄化の範囲がわかったのだ?」
「それはセドリックのおかげというほかありませんね」
「セドリックの?」
紅茶をふうふうしながら飲んでいたセドは、大人二人の視線を受けてきょとんとした。
「僕じゃないです。守護者様です」
「守護者様?」
お祖父さまが首を傾げる。
まあ、なんか守護者っぽい背後霊いるよーとはさすがに伝えてないか。
「不思議なことですが、セドリックには何かの加護があるようなのです」
「何か?」
「ええ。精霊とも違いそうですが確実にセドリックを守っている何か、です。我々は守護者と呼んでいますが、確かに意思がありセドリックを守っているのは間違いないと考えています」
「ふむ……?」
「ここからは推測ですが、呪詛はおそらく弱い者……もしくは特定の属性を持つ者を対象にしていたのではないでしょうか。私やグレイスが見舞いに来たときは反応していなかったが、セドリックには反応した。故に、守護者様がセドリックを守るために動き、守護者様の動きによりセドリックには呪詛が見えたのだと思います」
「そうか。そしてセドリックには光の適性があったから……」
「そうです。弱い力であっても浄化の力が少しでも当たれば私にも見える。故に私が浄化することが出来ました」
ん?
でも浄化しきれてないよねこれ。
「まって、お父さま」
「どうしたセドリック」
「まだ浄化? しきれてないです。守護者様がずっと小さい黒いの持ってます」
抵抗はないけどね。
なんかぷらーんってしてる。
だが、セドリックの言葉を聞いて大人二人は顔色を変えた。
「小さいものが残っている……となると、何か核があるのか?」
「呪具による呪いということか?」
「ええ。それであれば何度浄化をかけても義母上が体調を崩したことに説明がつきます。元々お身体が強くないところに、継続的に呪詛を受けていたとしたら……」
「しかし、王都にいた頃から妻は体調を崩していた。魔力暴走の気があるといわれ、魔力欠乏症を患っているセドリックに影響が出てはまずいと思い領都へ引っ越したのだ……一体何に呪詛がついているというのか……」
んー。
この蛇何か探してはいるみたいだけど、ぷらんぷらんしているだけなんだよなぁ。
とりあえずこの部屋にはなくて、多分寝室にある何かだと思うな俺。
あの蛇が呪詛の具現化したもの、っていうならたぶんあの部屋に餌があると思うんだよね。いや、この場合餌はお祖母さまの魔力が餌で、餌を用意させる何かがあるってことなんかな??
どうやったら伝わるかなこれ。
蛇をぷらんぷらんさせたまま寝室の方へ移動してみると、セドリックがまた首を傾げた。
「守護者さまが黒いのを持ったまま寝室を指してるみたいです」
「なんと」
「恐らく呪詛の様子からこの部屋にはないと判断されたようですね……義母上には申し訳ないですが、セドと私でそっと様子を見てきましょう。セド、静かに移動できるね?」
「はい、お父さま」
「グレイスは義父上とここにいてくれ。あまり大人数で動いては、義母上が起きてしまうかもしれないしね」
「わかったわ」
そっと足音を消す魔法をかけ、お父さまがセドの手を取る。
扉を開けたままいざ、寝室再探検である。
☆
メイドが静かに茶器を片付ける音と、すやすやと眠るお祖母さまの様子は先ほどと特に変わりはなかった。
自由に動いてよいみたいなので扉の前にセドとお父さまを残し、こそこそっと俺は室内を探索する。
まぁ、どたどた動いたところで感じないとは思うが気分である。
『ん~、ちょっと蛇元気になったな』
サイズは変わらないがちょっとジタバタしているので、やはりこの寝室にはなにかあるようだ。
寝室らしくベッド以外のものはありきたりなものしかない。
窓にかかるカーテン、お茶を飲むようらしきサイドテーブル、二人掛けのソファに小ぶりのテーブルは眠る前にお茶する用かなにかかな。
先ほどの部屋よりベッド以外はモノが小さく、メイドさんが動けるスペースが広くとられていて完全プライベートルームって感じだ。
軽く衣装を着替えれるようにもなっているのか棚や衣装箪笥も存在はしているものの、特に変わったものはない。
とりあえず一つずつ近づいていき、蛇を近づけてみる。
窓――反応なし。むしろ光が嫌いなのかジタバタ嫌がられた。
衣装箪笥――反応なし。箪笥の中に仕込まれているとかは特にない模様。
棚――は、おっと? ちょっと目をそらしたぞこの蛇。
蛇をパタパタふって棚に近づけると、セドリックがすぐ気づいて近づいてきてくれた。
棚はベッドの反対側に配置されているので、お祖母さまに影響も特になさそうだ。
「お父さま、この棚のどこかっぽいです」
「棚……これは昔からグレイスの家で使われていたものだな……。中にある茶器は確かに名器も多く貴重なものもいくつかあるが……開けてみよう」
ずらりと並んだ茶器は壮観で、美しい柄がいくつも目に入る。
どれもこれもお高そうだけど、特に茶器がどうって感じはしないんだよなぁ。
いったい何が原因なんだろうか??
一つ一つ目を凝らして見つめていくが、特に引っかかるものはない。
蛇をじーっと見つめてみるが、こいつやっぱり目をそらしやがる……なんかちょっとかわいく思えてきた方がやばい。
早くこれどうにかせんと。
『あ、そうか。目をそらすってことは……』
茶器は目くらまし。
ここであってるけど微妙に違う位置なんじゃないか?
ということで棚をすり抜けつつ見つめてみる。
む。
なんか空間があるぞこの棚。
茶器が置いている壁の裏、なんか妙な空間がある。
「あれ……?」
「どうした? セドリック」
「黒いのが、棚と壁の間を行き来しているんです。どういう意味なんだろう……」
「棚と壁の間を……?」
お父さまが近くにいたメイドを呼び、茶器を一時的に室外へ運び出すように指示する。
その間にお父さまは一度お祖父様を呼びに行った。
「義父上、この棚に隠し戸などはないでしょうか?」
「隠し戸……? この棚はそうだな、10年ほど前に王都で買い求めたものであったように思うが……そのような仕掛けは聞いた覚えがないな……」
「ですがこの棚が原因だと守護者は判断したようです。ここから動かないんだな? セドリック」
「はい。何か探しているように棚を往復しているみたいです。あと、壁の間に入る瞬間に黒いのがはっきり見えるようになります」
「そうか……よし。この棚ごと庭へ出そう」
『!?』
「義父上、最悪この棚は壊しても問題ないものですよね?」
「あ、あぁ……妻は気に入っていたが、茶器そのものではないから問題はないぞ」
『問題ないの!?』
まさかの物理で解決!?
見つからないなら棚ごと移動しようという発想はさすがになかったぞ俺!?
ポカーンとする俺を尻目に、音が出ては申し訳ないからと風魔法で棚ごとコーティングしてお父さまは運び始めるのであった……。
ええ……。
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