77 / 114
22.皮裂村怪奇譚【長編】 ※ R15
第10話 祭祀場
しおりを挟む
空が白み始めてから20分くらいが経っただろうか。
寿々と史は辺りの様子を注意深く伺いながら牢屋の詰所の扉を開け静かに外に出た。
結局寿々は知念に借りていたジャケットを史に渡し、寿々は詰所で借りた毛布をそのまま羽織ったまま外に出る。
史はいつの間にか背丈が大きくなっていたようで、175㎝の知念が着て余裕のあったジャケットが史にとってはかなり窮屈そうだ。
そして二人共に靴を履いていない状態だ。
足元の冷えた土が二人の体温をぐんぐんと奪っていく。
何にせよ一刻も早く自分達の荷物を回収したいところであった。
セラの話だと宿舎と施設を繋ぐ廊下の間に志保が常駐する医務室と並びに備品庫があるらしく。おそらく荷物は備品庫にしまわれているとの事だった。
セラは備品庫には鍵が掛かっているが、志保が管理しているので志保に言えば貸してくれるだろうと話ていたのだが・・・。
正直言うと寿々はまだ志保の事を完全に信用しきれていないのが本音だ。
セラを外に連れ出して欲しいという願いは分かる。
多分その意思には偽りがないだろう。
ただ志保自身の立場もある。
だからもし少しでも自分にとって不利な状況が発生すればいつでも寿々達を教団に売り渡すなんてことは簡単にしそうなのも否めなかった。
二人はまだ暗い林の中を警戒しながら宿舎の方へと近づいた。
茂みの中から宿舎の出入り口付近を入念に観察してみたが、流石に明け方で人の往来は一切無さそうだ。
史は小さい声で
「・・・裏手に回ってみます」
と向かって宿舎右側を指しそちらからぐるっと回って備品庫と医務室を確認してみようと寿々に提案した。
寿々は勿論それに従い小さく頷いた。
宿舎の壁際に腰を低くしたまま素早く二人は裏の茂みへと移動し、その茂みから備品庫と医務室を確認するとゆっくりと進む。
史は誰にも気づかれないように医務室を覗き込む。
窓はレースカーテン一枚のみでよく目を凝らせば何となく中の様子を伺う事は出来たが、それでも奥は暗くて誰かいるのかいないのかはよくわからなかった。
史は寿々を物陰に隠れるように指示し、自分は医務室の窓下に屈み意を決して窓を二回叩いてみた。
コツコツ・・・
そしてそのまま寿々の方へと向かい様子を伺う。
暫くするとレースカーテンが開き窓が開く音がした。
寿々がそれを確認するとそれは間違いなく志保だった。
寿々は物陰からゆっくりと志保の前に無言で歩み出た。
「!!」
志保はその姿に驚いた様子で慌てて周りを見渡す。そして合図だけして寿々へ中へ入るよう促した。
寿々はそれを確認すると志保に近づき
「すみません志保さん。俺達の荷物を返してもらいに来ました」
と小声で話す。
「黙って!いいから入りなさい」
そう言う志保に
「捕まっていた仲間も一緒です」
と続ける。そして史はに合図をすると、史も物陰から出てきた。
「・・・・いいから」
志保はそう言うと寿々と史を窓から中へ入れると急いで窓とカーテンを閉めた。
「・・・はぁ。全くこんなところを誰かに見つかったら私本当に殺されるわ・・」
と志保は寿々を睨む。
「すみません本当に」
寿々は素直に志保に謝罪した。
「・・・で。荷物ね。今隣の備品室から持ってくるからそこで待ってなさい。もし誰かきたらベッドの下にでも隠れて」
そう言うと志保は急いで戸棚から鍵を取り出し、静かに廊下へと出て行った。
「・・・寿々さん。あの人はどれくらい信用できるんですか?」
「わからない。でもとりあえずセラを外に連れ出して欲しいという願いだけは本当だと思う。だから何事もなければ味方でいてはくれると思う」
そう言って小声で話していると再び医務室の扉が開き二人が警戒する中志保が備品庫から戻ってきた。
「これと・・これで間違いないわね」
そう言ってビニール袋に入れられた二人の荷物をそのまま渡した。
「ありがとうございます」
寿々はようやく服を着れると思うと思わず安心してしまった。
二人は医務室のベッドのカーテンを引き支度を開始する。
寿々に至っては丸半日ぶりの下着を着けられそれだけで何となく人としての尊厳を取り戻したような気がしていた。
史はジャケットに突っ込んでおいた自分の荷物一式をベッドの上に広げ何か欠けてないかを念入りにチェックをする。
GPSもこのあと必要になるかもしれないので処分されることなくあったのは幸いと言える。
そして昨日光の寝屋へ入る前回収されたブーツもちゃんと一緒になっていた事も運が良かった。
支度を終えると寿々は志保に
「ありがとうございました。このあと俺達は何とかセラを連れて外に出ようと思います。
色々あってちょっと小屋の方で話し聞く事が出来なくなりましたが。何か他に聞いておく事はありますか?」
と聞くと
「ええ、分かってるわ。御前様が相当怒って血眼になって貴方達を探している事くらいね。でも、私はとにかくセラを助けてくれさえすればそれで充分よ。セラには岐阜市に出たら元々私がいたNPOを訪ねるよう言ってある。10年近く経っているけれど団体がまだ活動をしているのはよく知っているから」
「・・・・あの。志保さんはどうしてここに居続けるんですか?セラじゃないけれど機会があればここから出て元の場所に戻りたいと思わないんですか?」
寿々は志保が嫌がりそうだと思いながらも聞かずにはいられなかった。
「・・・・もう遅いわよ。私も共犯だもの。ここから出れば私はただの犯罪者。皆そう、誰もがここから出て行くのが怖いの。でもセラは違う。まだ贄の儀に参加したことは一度もない。だから私にとってもあの子は希望なの・・・・」
「・・・・・・・・・」
寿々は返す言葉もなくただ苦い顔をして黙り込んだ。
志保は少しだけ小さな溜息をつくとカーテンを開き外を確認し静かに窓を開け
「・・・行って」
とだけ答えた。
二人はそのまま窓から静かに外に出ると警戒をしながら急いで奥にある茂みへと駆けだした。
知念は昨晩寿々とセラが出て行った後に小屋を出て、廃村入口まで通じるサンカの道を通って廃村へと戻って来ていた。
来るときはセラが誘導してくれていたからあまり気にならなかったが、実際一人で通る崖際のサンカの小道は想像以上に足元が悪く距離としては2キロないのだが慎重に歩いて1時間以上かかってしまった。
廃村に戻って来てからまず最初にやらなければいけない事があった。
それは暗いうちに廃村内に仕掛けられた2台の監視カメラを破壊することだ。
一つは廃村入口。そしてもう一つは廃村の全体を見渡せるように付けられた一番奥だ。
セラの話しだとこのカメラで施設内の人間が確認をする事によって獲物。つまり贄となる男を選別しているらしい。
知念はセラに教えられた通りの死角になる場所から監視カメラに向けて石を投げ2台とも破壊した。実際こんな事教団にバレればすぐにでも不利になるような事でもあるが、セラが言うには村側の監視カメラは録画はされているが基本夜の間は監視役の人間が確認しないので問題ないとのことだ。
そしてその後セラによって奪われたガソリンを回収するために村の入り口近くの半壊した民家の裏に行くと、そこに携行缶が置かれてあったので知念はそれを持って急いで給油しエンジンをかけた。
ブォオオオオンン!!
エンジン音が鳴り響き木々に泊まっていた鳥たちが一斉に空へと散ってゆく。
知念は時間を確認した。
午前5時
空はまだ暗かったが薄っすらと東の空が白んできているようだ。山間にあるこの場所に日が差し込むのはもう少し後になる。
「・・・・あと1時間半はあるか」
そう思いとりあえず一旦教団施設へと続くあのトンネルの入口まで気をつけてバイクを進めた。
途中畑を通らなければならないので慎重に進む。
入口前まで来て何となく嫌な予感がしていた。
「・・・・・・」
知念は一応確認の為にトンネルを進む。
中の距離はだいたい300メートルあるかないかくらいだ。
しかし・・・・
「・・・やっぱり」
知念はLEDライトで照らしながら教団施設に出る側の出口がいまだに閉じられている事を確認するとそう呟いた。
実は知念はどことなくセラの事を疑っていた。
それは最初、志保と接するセラを見た時からそんな気がしていた。
知念にはセラが志保の事をある意味利用していているように見えたからだ。
志保はセラを本当の子供だと思って育てていたから、それをいいことに志保を上手い具合に操作している節が見えたのだ。
そしてセラが本当に守りたいのが御前様と呼ばれる教団のトップである事もそうだ。
セラは逃げないといけないと分かりながらも御前様に上手い事言いくるめられればそれに従ってしまうかもしれないと知念はずっとそう思ってもいたのだ。
「・・・やはり言い方が悪かったか・・。最初からトップの女がセラの説得を聞くはずがないから諦めろって言えば・・・・。いや、そうだとしても結果は変わらなかったかもしれない。セラはどうも意思が強すぎる。俺がどうこう言ったとしても絶対に光って女を説得しに行っただろう。もう会えないかもしれないとなればなおの事・・・・・」
そう思いながら知念は閉じられた出口を無理矢理押し開けようと力一杯何度も押し込んだ。
「ぐぐぐううう!!!!」
それにしてもこの裏に何があってこの扉がビクともしないって言うのだろうか。
「くそぉ・・・」
そう悔しそうに言いながら知念は無駄だとわかっててもその扉を押し続けた。
日の出まであと1時間程度だ。
知念がバイクで施設内を暴れないと寿々と史が外に出て来れない。
いや、もしかしたらもう既に犠牲になっているのかもしれない・・・。
そうだとしてもこの扉を開けない事には自分だってここから帰る事もできないのだ。
例え最悪な状況だとしても自分が生きている以上諦めるわけにはいかなかった。
「はぁ・・はぁ・・」
知念はもう一度冷静になってこの閉じられている部分が何で出来てどんな形で閉じられているのを探る為にLEDライトをあててみる。
軽く叩いたり触ったりして確認してみたところ
「素材は・・・石かと思ったが良く見るとモルタルのブロックみたいだな・・」
ブロックは途中切れ目が2か所ある。
知念はそのブロックの切れ目にマルチツールのナイフを差し込んでみた。
すると少しだけブロックが上の方向に浮いたのだ。
「・・つまり・・」
そしても一度ナイフを戻すと今度は手で一番上のブロックを左右にも力いっぱいずらしてみる。
しかしこちらはどうにもうんともすんとも言わない。
「なるほど・・・このブロック重さは分からないけれど、なにか溝のような部分に上からブロック板を3枚差し込んでいるのか・・。じゃあ何とかしてこの一番上の部分を外せば向こう側に出られるはず」
知念は急いでバイクまで戻った。
そしてバイクを出口付近まで慎重に運び、口にライトを咥えながら真っ暗なトンネルの中でキャンプ用のペグとペグハンマ―を取り出すとペグ抜きの部分をブロックの溝に差し込みテコを使ってブロックを浮かせた。
更にその浮かせた部分にそっと音をたてないよう静かにペグを挟み込んで浮かせてゆく。
するとブロックが1㎝程度だけ浮き上がり向こうの風景がようやく見えてきた。
向こうには昨日来た時に見た年配の男看守が数人見えた。
昨日同様こちら側に気づいてはいないが、恐らく大きな音を立てれば一斉に襲われ囚われる事だろう。
実際一番上のブロックを浮かせてみて思ったのはブロック板の厚さは5~7センチくらい。思った以上に持ち上げれなくは無さそうだ。とは言えそれなりの重さなので下に落ちた時に音がでてしまうという事だけが懸念された。
『どうしようか・・・40㎝くらい浮かせられれば何とか向こう側に出られるだろうか?』
知念は更に積んでいた荷物から折り畳みの椅子を2つ取り出した。
これはとてもコンパクトに持ち運べるものだが、知念は椅子としては勿論オットマンにしたり時には板材を拾ってきてテーブルの支え替わりにして使っているものだ。
耐荷重は大丈夫そうだが、問題は高さがさほどないことだ。
とにかく知念は顔を真っ赤にさせブロックを持ち上げるとその両端ににこの折り畳みチェアを慎重に差し込んだ。
「はぁ・・・・・」
とりあえず今の所は隙間は出来た。
知念は挟んであったペグを片付けると慎重にその隙間に頭を潜らせる。
問題はここからだ。両脇に椅子がある。これに触れないように高さ1メール20センチくらいの場所を通り抜けなくてはならない。
足元にもう一つ台になりそうなものが必要だ。
『村に戻ればビールケースがあったけど、戻るのが得策か・・・』
知念は仕方がないとばかりにバイクを壁際ギリギリまで寄せその上に足をかけてここを抜ける事にした。
当然バランスを崩せば一溜りもない。
より一層慎重にいかねばならなかった。
そしてゆっくりと倒れないようにシートに足を掛け、その高さからこじ開けた隙間にもう一度頭をねじ込んだ。
「・・・・ふぅ・・・」
そしてそこから体を一切無駄に動かしたりしないよう慎重に少しづつ向こう側へと腕の力だけで押しやる。
何とか上半身は外に出たが、最後に足も一切どこにも掠らないようにそのまま地面に手が着くまで全身に意識を集中させた。
「・・・・・・・・はぁ・・何とか抜けられた」
知念はようやく壁を抜け、そして息つく間も無く差し込まれたブロックを持ち上げ溝から外しようやく文字通り活路を開く事に成功したのだった。
そして時間を確認する。
しかしその時間を見て知念は顔が青ざめた。
なぜならば日はとっくに上り時刻は既に朝の7時15分を越えていたからだ。
遡る事1時間半前
寿々と史は志保のいる医務室から外に出ると誰もいない事を確認しそのまま奥の茂みへと駆けだした。
そしてそのまま中央にある教会の裏手へ回りそこから更に昨日史が焦って飛び込みテーザー銃を撃たれたあの小屋の手前まで来ると二人はそこで立ち止まった。
「寿々さん、ここからだったら知念さんが来ればこの教会の横を一気に駆け抜けて最短で出口まで走り抜けられるかと思います」
「わかったじゃあここで待機しよう・・・今時間が6時少し前だからあと30分くらいで日が昇るはず・・・」
「わかりました・・俺もう少し奥に行って直接出口付近の様子を見て来ます」
そう言って史は少しだけ進もうかと思ったその時
「・・・・・・セラ・・・何で・・」
すぐ後ろで寿々の声がしてすぐに振り返った。
そこで見たのは
身長160㎝もない少女の様な格好をした少年が寿々に向けて鎌を突きつけている光景だった。
「寿々さん!!!!」
史は寿々を助けようと近づく。
しかしセラはそれより早く寿々の左手を後ろに捻り身動きが出来なくさせると同時にその喉元に鎌の刃を当てた。
「・・お前・・・なんで・・・」
史はその光景に激怒し全身の毛が逆立つ程の怒りを露わにした。
しかしセラはその史の視線にも威嚇にもひとつも動じる事はない。
ただ淡々と寿々の喉に鎌の刃を押し当てる。
『・・・そんな。説得に失敗しただけでなく寝返ったって言うのか?』
あの時は史の事で頭が一杯だったのもあるが、寿々は夜に知念とセラ話していた事をようやく思い出した。
そして何の躊躇もなく微動だにしない構えで喉に充てられた鎌の刃を見て確信した。
セラは寝返るとかでもなく、もともと志保や教団の事すらどうでもよく。御前様、つまり光の事しか考えていないのだと。
「良くやったわね、セラ・・・・・」
そう言って礼拝堂の裏口付近から光と信者がわらわらと出てきた。
「・・・・・やっぱりあなたは頼りになる妹ね」
セラは妹と言われた瞬間少しだけ動揺したように見えた。
寿々は包帯の上から刃先を押し当てられているが、セラが動揺した時に少しだけ手元が動きそのまま首に皮を少しだけ切り、撒かれた包帯にジワリと血が滲んだ。
「そこの下劣な男ども・・・。これからお前達に贄の儀を執り行う。せいぜい無様に泣き喚き我々に命乞いでもしていろ・・・」
そういうと光は信者に寿々と史を捉えるよう合図をする。
と同時に二人に信者がわらわらと近づき3人で寿々を、史は体が大きいからか5人がかりで後ろ手に縛りあげるとそのままがっしりと抑えられ光の後を付いて行けとばかりにぐいぐいと押された。
寿々と史はもはや完全に万事休すの状態であった。
ここから本当に逃げ出す事なんてできるのだろうか・・・・。
寿々はとにかく考えられるだけあらゆる方法を考えようと必死で頭を使った。
その間にも先頭を歩く光は裏口から建物の中に入り、礼拝堂の奥にある大母像の裏から長い階段を下り続けた。しばらく白い壁の階段が続いたかと思うとその先に急に岩肌が剥きだしになったまるで洞窟のような場所が広がった。
寿々と史はその光景をただ唖然と見つめていた。
そこはまさしく神の祭壇と言うのに相応しい光景だった。
洞窟の先には大きな穴が開き、そこからはちょうど登って来た美しい朝日が差し込んでいる。
ところどころくり抜かれた岩肌からも森のいい香りと爽やかな風が流れ込んでいた。
しかし・・・・光が昇った祭壇の上に置かれた石の台はその爽やかな雰囲気とは到底似つかわしくなく、数々の年代の血で何度も染められて真っ赤になったまさに処刑台がそこにはあった。
『・・もしかしなくてもあそこで殺され皮を剥がれ、あの後ろで燃やされた後に穴から捨てられるのだろうか・・・』
昨日見た皮だけの幽霊の謎もこれで解けた。寿々はちょうどこの穴の下辺りでそれを視たからだ。
寿々は今まさにその予想の通りの状況が目前に迫り震えが止まらなかった。
気付けば信者達がこの洞窟に一斉に集まってきていた。
寿々と史は祭壇下に跪かされ、周りには30名以上の女性信者が今か今かとその儀式が始まるのを滾らせながら待ちわびている。
「卑しき男にに制裁を!!弱き男に死を!!」
ここの女達は全員が狂っている。
それはこの御光の母という新興宗教がそうやって洗脳をさせてきたからだ。
夫から暴力を受け、子供を奪われた悲しみ。
父親の借金の形に身売りをさせられた悔しさ。
母親の連れの男に暴力を受け犯された理不尽さ。
子供を見知らぬ男に殺された復讐心。
ここに辿り着く女は皆男から男の社会から見下され卑下され自尊心をなくし、怯え精神を病んでいる。
彼女たちが生き続けるには例え代役の死だったとしてもこうやって男より女の方が上であると実感させられる瞬間がないといけないのだ。
そしてそれがあるから今日もまた生きていける。
光は寿々と史を祭壇上から見下した。
「さぁ。どちらが先に死ぬか・・選べ」
寿々と史は辺りの様子を注意深く伺いながら牢屋の詰所の扉を開け静かに外に出た。
結局寿々は知念に借りていたジャケットを史に渡し、寿々は詰所で借りた毛布をそのまま羽織ったまま外に出る。
史はいつの間にか背丈が大きくなっていたようで、175㎝の知念が着て余裕のあったジャケットが史にとってはかなり窮屈そうだ。
そして二人共に靴を履いていない状態だ。
足元の冷えた土が二人の体温をぐんぐんと奪っていく。
何にせよ一刻も早く自分達の荷物を回収したいところであった。
セラの話だと宿舎と施設を繋ぐ廊下の間に志保が常駐する医務室と並びに備品庫があるらしく。おそらく荷物は備品庫にしまわれているとの事だった。
セラは備品庫には鍵が掛かっているが、志保が管理しているので志保に言えば貸してくれるだろうと話ていたのだが・・・。
正直言うと寿々はまだ志保の事を完全に信用しきれていないのが本音だ。
セラを外に連れ出して欲しいという願いは分かる。
多分その意思には偽りがないだろう。
ただ志保自身の立場もある。
だからもし少しでも自分にとって不利な状況が発生すればいつでも寿々達を教団に売り渡すなんてことは簡単にしそうなのも否めなかった。
二人はまだ暗い林の中を警戒しながら宿舎の方へと近づいた。
茂みの中から宿舎の出入り口付近を入念に観察してみたが、流石に明け方で人の往来は一切無さそうだ。
史は小さい声で
「・・・裏手に回ってみます」
と向かって宿舎右側を指しそちらからぐるっと回って備品庫と医務室を確認してみようと寿々に提案した。
寿々は勿論それに従い小さく頷いた。
宿舎の壁際に腰を低くしたまま素早く二人は裏の茂みへと移動し、その茂みから備品庫と医務室を確認するとゆっくりと進む。
史は誰にも気づかれないように医務室を覗き込む。
窓はレースカーテン一枚のみでよく目を凝らせば何となく中の様子を伺う事は出来たが、それでも奥は暗くて誰かいるのかいないのかはよくわからなかった。
史は寿々を物陰に隠れるように指示し、自分は医務室の窓下に屈み意を決して窓を二回叩いてみた。
コツコツ・・・
そしてそのまま寿々の方へと向かい様子を伺う。
暫くするとレースカーテンが開き窓が開く音がした。
寿々がそれを確認するとそれは間違いなく志保だった。
寿々は物陰からゆっくりと志保の前に無言で歩み出た。
「!!」
志保はその姿に驚いた様子で慌てて周りを見渡す。そして合図だけして寿々へ中へ入るよう促した。
寿々はそれを確認すると志保に近づき
「すみません志保さん。俺達の荷物を返してもらいに来ました」
と小声で話す。
「黙って!いいから入りなさい」
そう言う志保に
「捕まっていた仲間も一緒です」
と続ける。そして史はに合図をすると、史も物陰から出てきた。
「・・・・いいから」
志保はそう言うと寿々と史を窓から中へ入れると急いで窓とカーテンを閉めた。
「・・・はぁ。全くこんなところを誰かに見つかったら私本当に殺されるわ・・」
と志保は寿々を睨む。
「すみません本当に」
寿々は素直に志保に謝罪した。
「・・・で。荷物ね。今隣の備品室から持ってくるからそこで待ってなさい。もし誰かきたらベッドの下にでも隠れて」
そう言うと志保は急いで戸棚から鍵を取り出し、静かに廊下へと出て行った。
「・・・寿々さん。あの人はどれくらい信用できるんですか?」
「わからない。でもとりあえずセラを外に連れ出して欲しいという願いだけは本当だと思う。だから何事もなければ味方でいてはくれると思う」
そう言って小声で話していると再び医務室の扉が開き二人が警戒する中志保が備品庫から戻ってきた。
「これと・・これで間違いないわね」
そう言ってビニール袋に入れられた二人の荷物をそのまま渡した。
「ありがとうございます」
寿々はようやく服を着れると思うと思わず安心してしまった。
二人は医務室のベッドのカーテンを引き支度を開始する。
寿々に至っては丸半日ぶりの下着を着けられそれだけで何となく人としての尊厳を取り戻したような気がしていた。
史はジャケットに突っ込んでおいた自分の荷物一式をベッドの上に広げ何か欠けてないかを念入りにチェックをする。
GPSもこのあと必要になるかもしれないので処分されることなくあったのは幸いと言える。
そして昨日光の寝屋へ入る前回収されたブーツもちゃんと一緒になっていた事も運が良かった。
支度を終えると寿々は志保に
「ありがとうございました。このあと俺達は何とかセラを連れて外に出ようと思います。
色々あってちょっと小屋の方で話し聞く事が出来なくなりましたが。何か他に聞いておく事はありますか?」
と聞くと
「ええ、分かってるわ。御前様が相当怒って血眼になって貴方達を探している事くらいね。でも、私はとにかくセラを助けてくれさえすればそれで充分よ。セラには岐阜市に出たら元々私がいたNPOを訪ねるよう言ってある。10年近く経っているけれど団体がまだ活動をしているのはよく知っているから」
「・・・・あの。志保さんはどうしてここに居続けるんですか?セラじゃないけれど機会があればここから出て元の場所に戻りたいと思わないんですか?」
寿々は志保が嫌がりそうだと思いながらも聞かずにはいられなかった。
「・・・・もう遅いわよ。私も共犯だもの。ここから出れば私はただの犯罪者。皆そう、誰もがここから出て行くのが怖いの。でもセラは違う。まだ贄の儀に参加したことは一度もない。だから私にとってもあの子は希望なの・・・・」
「・・・・・・・・・」
寿々は返す言葉もなくただ苦い顔をして黙り込んだ。
志保は少しだけ小さな溜息をつくとカーテンを開き外を確認し静かに窓を開け
「・・・行って」
とだけ答えた。
二人はそのまま窓から静かに外に出ると警戒をしながら急いで奥にある茂みへと駆けだした。
知念は昨晩寿々とセラが出て行った後に小屋を出て、廃村入口まで通じるサンカの道を通って廃村へと戻って来ていた。
来るときはセラが誘導してくれていたからあまり気にならなかったが、実際一人で通る崖際のサンカの小道は想像以上に足元が悪く距離としては2キロないのだが慎重に歩いて1時間以上かかってしまった。
廃村に戻って来てからまず最初にやらなければいけない事があった。
それは暗いうちに廃村内に仕掛けられた2台の監視カメラを破壊することだ。
一つは廃村入口。そしてもう一つは廃村の全体を見渡せるように付けられた一番奥だ。
セラの話しだとこのカメラで施設内の人間が確認をする事によって獲物。つまり贄となる男を選別しているらしい。
知念はセラに教えられた通りの死角になる場所から監視カメラに向けて石を投げ2台とも破壊した。実際こんな事教団にバレればすぐにでも不利になるような事でもあるが、セラが言うには村側の監視カメラは録画はされているが基本夜の間は監視役の人間が確認しないので問題ないとのことだ。
そしてその後セラによって奪われたガソリンを回収するために村の入り口近くの半壊した民家の裏に行くと、そこに携行缶が置かれてあったので知念はそれを持って急いで給油しエンジンをかけた。
ブォオオオオンン!!
エンジン音が鳴り響き木々に泊まっていた鳥たちが一斉に空へと散ってゆく。
知念は時間を確認した。
午前5時
空はまだ暗かったが薄っすらと東の空が白んできているようだ。山間にあるこの場所に日が差し込むのはもう少し後になる。
「・・・・あと1時間半はあるか」
そう思いとりあえず一旦教団施設へと続くあのトンネルの入口まで気をつけてバイクを進めた。
途中畑を通らなければならないので慎重に進む。
入口前まで来て何となく嫌な予感がしていた。
「・・・・・・」
知念は一応確認の為にトンネルを進む。
中の距離はだいたい300メートルあるかないかくらいだ。
しかし・・・・
「・・・やっぱり」
知念はLEDライトで照らしながら教団施設に出る側の出口がいまだに閉じられている事を確認するとそう呟いた。
実は知念はどことなくセラの事を疑っていた。
それは最初、志保と接するセラを見た時からそんな気がしていた。
知念にはセラが志保の事をある意味利用していているように見えたからだ。
志保はセラを本当の子供だと思って育てていたから、それをいいことに志保を上手い具合に操作している節が見えたのだ。
そしてセラが本当に守りたいのが御前様と呼ばれる教団のトップである事もそうだ。
セラは逃げないといけないと分かりながらも御前様に上手い事言いくるめられればそれに従ってしまうかもしれないと知念はずっとそう思ってもいたのだ。
「・・・やはり言い方が悪かったか・・。最初からトップの女がセラの説得を聞くはずがないから諦めろって言えば・・・・。いや、そうだとしても結果は変わらなかったかもしれない。セラはどうも意思が強すぎる。俺がどうこう言ったとしても絶対に光って女を説得しに行っただろう。もう会えないかもしれないとなればなおの事・・・・・」
そう思いながら知念は閉じられた出口を無理矢理押し開けようと力一杯何度も押し込んだ。
「ぐぐぐううう!!!!」
それにしてもこの裏に何があってこの扉がビクともしないって言うのだろうか。
「くそぉ・・・」
そう悔しそうに言いながら知念は無駄だとわかっててもその扉を押し続けた。
日の出まであと1時間程度だ。
知念がバイクで施設内を暴れないと寿々と史が外に出て来れない。
いや、もしかしたらもう既に犠牲になっているのかもしれない・・・。
そうだとしてもこの扉を開けない事には自分だってここから帰る事もできないのだ。
例え最悪な状況だとしても自分が生きている以上諦めるわけにはいかなかった。
「はぁ・・はぁ・・」
知念はもう一度冷静になってこの閉じられている部分が何で出来てどんな形で閉じられているのを探る為にLEDライトをあててみる。
軽く叩いたり触ったりして確認してみたところ
「素材は・・・石かと思ったが良く見るとモルタルのブロックみたいだな・・」
ブロックは途中切れ目が2か所ある。
知念はそのブロックの切れ目にマルチツールのナイフを差し込んでみた。
すると少しだけブロックが上の方向に浮いたのだ。
「・・つまり・・」
そしても一度ナイフを戻すと今度は手で一番上のブロックを左右にも力いっぱいずらしてみる。
しかしこちらはどうにもうんともすんとも言わない。
「なるほど・・・このブロック重さは分からないけれど、なにか溝のような部分に上からブロック板を3枚差し込んでいるのか・・。じゃあ何とかしてこの一番上の部分を外せば向こう側に出られるはず」
知念は急いでバイクまで戻った。
そしてバイクを出口付近まで慎重に運び、口にライトを咥えながら真っ暗なトンネルの中でキャンプ用のペグとペグハンマ―を取り出すとペグ抜きの部分をブロックの溝に差し込みテコを使ってブロックを浮かせた。
更にその浮かせた部分にそっと音をたてないよう静かにペグを挟み込んで浮かせてゆく。
するとブロックが1㎝程度だけ浮き上がり向こうの風景がようやく見えてきた。
向こうには昨日来た時に見た年配の男看守が数人見えた。
昨日同様こちら側に気づいてはいないが、恐らく大きな音を立てれば一斉に襲われ囚われる事だろう。
実際一番上のブロックを浮かせてみて思ったのはブロック板の厚さは5~7センチくらい。思った以上に持ち上げれなくは無さそうだ。とは言えそれなりの重さなので下に落ちた時に音がでてしまうという事だけが懸念された。
『どうしようか・・・40㎝くらい浮かせられれば何とか向こう側に出られるだろうか?』
知念は更に積んでいた荷物から折り畳みの椅子を2つ取り出した。
これはとてもコンパクトに持ち運べるものだが、知念は椅子としては勿論オットマンにしたり時には板材を拾ってきてテーブルの支え替わりにして使っているものだ。
耐荷重は大丈夫そうだが、問題は高さがさほどないことだ。
とにかく知念は顔を真っ赤にさせブロックを持ち上げるとその両端ににこの折り畳みチェアを慎重に差し込んだ。
「はぁ・・・・・」
とりあえず今の所は隙間は出来た。
知念は挟んであったペグを片付けると慎重にその隙間に頭を潜らせる。
問題はここからだ。両脇に椅子がある。これに触れないように高さ1メール20センチくらいの場所を通り抜けなくてはならない。
足元にもう一つ台になりそうなものが必要だ。
『村に戻ればビールケースがあったけど、戻るのが得策か・・・』
知念は仕方がないとばかりにバイクを壁際ギリギリまで寄せその上に足をかけてここを抜ける事にした。
当然バランスを崩せば一溜りもない。
より一層慎重にいかねばならなかった。
そしてゆっくりと倒れないようにシートに足を掛け、その高さからこじ開けた隙間にもう一度頭をねじ込んだ。
「・・・・ふぅ・・・」
そしてそこから体を一切無駄に動かしたりしないよう慎重に少しづつ向こう側へと腕の力だけで押しやる。
何とか上半身は外に出たが、最後に足も一切どこにも掠らないようにそのまま地面に手が着くまで全身に意識を集中させた。
「・・・・・・・・はぁ・・何とか抜けられた」
知念はようやく壁を抜け、そして息つく間も無く差し込まれたブロックを持ち上げ溝から外しようやく文字通り活路を開く事に成功したのだった。
そして時間を確認する。
しかしその時間を見て知念は顔が青ざめた。
なぜならば日はとっくに上り時刻は既に朝の7時15分を越えていたからだ。
遡る事1時間半前
寿々と史は志保のいる医務室から外に出ると誰もいない事を確認しそのまま奥の茂みへと駆けだした。
そしてそのまま中央にある教会の裏手へ回りそこから更に昨日史が焦って飛び込みテーザー銃を撃たれたあの小屋の手前まで来ると二人はそこで立ち止まった。
「寿々さん、ここからだったら知念さんが来ればこの教会の横を一気に駆け抜けて最短で出口まで走り抜けられるかと思います」
「わかったじゃあここで待機しよう・・・今時間が6時少し前だからあと30分くらいで日が昇るはず・・・」
「わかりました・・俺もう少し奥に行って直接出口付近の様子を見て来ます」
そう言って史は少しだけ進もうかと思ったその時
「・・・・・・セラ・・・何で・・」
すぐ後ろで寿々の声がしてすぐに振り返った。
そこで見たのは
身長160㎝もない少女の様な格好をした少年が寿々に向けて鎌を突きつけている光景だった。
「寿々さん!!!!」
史は寿々を助けようと近づく。
しかしセラはそれより早く寿々の左手を後ろに捻り身動きが出来なくさせると同時にその喉元に鎌の刃を当てた。
「・・お前・・・なんで・・・」
史はその光景に激怒し全身の毛が逆立つ程の怒りを露わにした。
しかしセラはその史の視線にも威嚇にもひとつも動じる事はない。
ただ淡々と寿々の喉に鎌の刃を押し当てる。
『・・・そんな。説得に失敗しただけでなく寝返ったって言うのか?』
あの時は史の事で頭が一杯だったのもあるが、寿々は夜に知念とセラ話していた事をようやく思い出した。
そして何の躊躇もなく微動だにしない構えで喉に充てられた鎌の刃を見て確信した。
セラは寝返るとかでもなく、もともと志保や教団の事すらどうでもよく。御前様、つまり光の事しか考えていないのだと。
「良くやったわね、セラ・・・・・」
そう言って礼拝堂の裏口付近から光と信者がわらわらと出てきた。
「・・・・・やっぱりあなたは頼りになる妹ね」
セラは妹と言われた瞬間少しだけ動揺したように見えた。
寿々は包帯の上から刃先を押し当てられているが、セラが動揺した時に少しだけ手元が動きそのまま首に皮を少しだけ切り、撒かれた包帯にジワリと血が滲んだ。
「そこの下劣な男ども・・・。これからお前達に贄の儀を執り行う。せいぜい無様に泣き喚き我々に命乞いでもしていろ・・・」
そういうと光は信者に寿々と史を捉えるよう合図をする。
と同時に二人に信者がわらわらと近づき3人で寿々を、史は体が大きいからか5人がかりで後ろ手に縛りあげるとそのままがっしりと抑えられ光の後を付いて行けとばかりにぐいぐいと押された。
寿々と史はもはや完全に万事休すの状態であった。
ここから本当に逃げ出す事なんてできるのだろうか・・・・。
寿々はとにかく考えられるだけあらゆる方法を考えようと必死で頭を使った。
その間にも先頭を歩く光は裏口から建物の中に入り、礼拝堂の奥にある大母像の裏から長い階段を下り続けた。しばらく白い壁の階段が続いたかと思うとその先に急に岩肌が剥きだしになったまるで洞窟のような場所が広がった。
寿々と史はその光景をただ唖然と見つめていた。
そこはまさしく神の祭壇と言うのに相応しい光景だった。
洞窟の先には大きな穴が開き、そこからはちょうど登って来た美しい朝日が差し込んでいる。
ところどころくり抜かれた岩肌からも森のいい香りと爽やかな風が流れ込んでいた。
しかし・・・・光が昇った祭壇の上に置かれた石の台はその爽やかな雰囲気とは到底似つかわしくなく、数々の年代の血で何度も染められて真っ赤になったまさに処刑台がそこにはあった。
『・・もしかしなくてもあそこで殺され皮を剥がれ、あの後ろで燃やされた後に穴から捨てられるのだろうか・・・』
昨日見た皮だけの幽霊の謎もこれで解けた。寿々はちょうどこの穴の下辺りでそれを視たからだ。
寿々は今まさにその予想の通りの状況が目前に迫り震えが止まらなかった。
気付けば信者達がこの洞窟に一斉に集まってきていた。
寿々と史は祭壇下に跪かされ、周りには30名以上の女性信者が今か今かとその儀式が始まるのを滾らせながら待ちわびている。
「卑しき男にに制裁を!!弱き男に死を!!」
ここの女達は全員が狂っている。
それはこの御光の母という新興宗教がそうやって洗脳をさせてきたからだ。
夫から暴力を受け、子供を奪われた悲しみ。
父親の借金の形に身売りをさせられた悔しさ。
母親の連れの男に暴力を受け犯された理不尽さ。
子供を見知らぬ男に殺された復讐心。
ここに辿り着く女は皆男から男の社会から見下され卑下され自尊心をなくし、怯え精神を病んでいる。
彼女たちが生き続けるには例え代役の死だったとしてもこうやって男より女の方が上であると実感させられる瞬間がないといけないのだ。
そしてそれがあるから今日もまた生きていける。
光は寿々と史を祭壇上から見下した。
「さぁ。どちらが先に死ぬか・・選べ」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる