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24.白狐怪奇譚③【短編】
第1話 汐音
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3月3週目日曜日
秦迦音が叔父の総司の家に来てから約1ヵ月が過ぎようとしていた。
迦音は呪力を無くし実家から離れて初めて人間らしい生活が出来ている、そんな事を実感していた。
叔父の総司は大学の准教授として日々忙しく勤めに出て、週末になれば神奈川にある実家の白菱稲荷へと宮司の仕事へと赴く。
それに比べ迦音は特に仕事をするでもなく今は日々家事に勤しみ、昼間の時間は趣味の人形作りへ黙々と時間をつぎ込んでいた。
そんな生活をしていると自ずと全く呪力が高まらず気持ちも日々穏やかになり、1ヵ月前まで何であんなにも自分の腹のうちにドス黒い感情が溜まりに溜まっていたのか本当に不思議でならなかったのだ。
「・・・よし」
迦音は30㎝くらいのまるでビスクドールのような美しい布製の人形を作り上げるとにっこりと笑い、早速自身のSNSにアップする為に光の加減などを調整しながら写真を撮り、多少の加工などの微調整をするとそれを送信した。
そして一息ついてから辺りを見回し
「流石に少し外に出ないとかしら・・」
そう思い立ち、食材の買い物も兼ねて支度をすると久しぶりに外に出た。
今日は天気も良く暖かな春の陽気で、川沿いの桜の樹に花が一輪咲いているのを見つけると、迦音はその美しさと穏やかさに思わず笑みがこぼれた。
すると背後から
「随分と雰囲気が変わったね、姉さん?」
という声がして迦音はハッと後ろを振り返った。
そこには弟の汐音が相変わらずな雰囲気で迦音を見つめていた。
「・・・・汐音。あんた何しにここにやって来たの・・」
迦音は少しだけ目を細め汐音を見つめ返す。
「あ~あ・・。そんなんじゃつまらないじゃないか・・。全く喋り方まで穏やかになってしまって・・。情けない」
「情けない?・・・あんたは本当に何もわかってないのね」
「わかってないだってぇ??」
汐音は迦音の発言に反射的にキレて狂気に満ちた目つきで睨み返す。
「わかってないのはそっちだろう?・・・・・史も姉さんも叔父様もみんな秦家から逃げ出して全部俺に押し付けて!!・・・・あんた達に俺の何が分かるって言うんだ」
汐音は絶望した目で訴えるようにして迦音を見つめた。
迦音はその汐音に何も言い返す事が出来なかった。
本当にそうなのだ。
自分は弟の汐音に全部秦家の責務を押し付けて今の生活をしている。
性別も変え、本来ならば自分が担うべき跡継ぎの職務を放棄しそれを全て汐音が負う事になってしまっているのだ。
でも迦音はもう二度と秦の家には戻りたくなかった。そしてその気持ちを偽る事なんてもはや出来ない。
「・・・・・あんたも・・・逃げなさいよ。いいじゃないもうあんな家どうでも」
迦音のその一言に汐音の怒りが爆発した。
「ふざけるなよ!!」
そう叫ぶと汐音の瞳がすぅっと金色に輝くと、辺り一面に淀んだ邪気が制御不能になった縄の様に踊り狂い飛び散った。
その汐音に邪気に触れた川沿いの草木が一気に萎れ枯れそして朽ち落ちる。
先ほど見た桜の花も急速に萎れその場に花びらが舞い落ちた。
「!!」
迦音がその邪気に触れないよう身を構えたが、それでも飛んできた一部が腕に当たりまるで殴られたようにうっ血をした。
「今はもう呪力がないんだったけなぁ・・姉さん?・・母さんからは姉さんを説得するように言われてきたけれど・・・。でも今ならあんたにも勝てそうじゃないか??」
汐音はその呪力の縄を両手でバシっと引き延ばすして迦音を挑発する。
しかしその狂った瞳の汐音を迦音はまるで1ヵ月前の自分に戻ったのではないかと思う程の鋭い目で見下し、口が裂けるくらい大きくニヤッと笑う。
「・・・ひひ・・・。あまり舐めた事をしない方が身のためよ汐音。呪力が無くても私がどれだけ武術であんたより上回っているのか忘れたのかしら?」
身長192㎝の迦音は上から汐音を見下ろすようにしてジリジリと近づいた。
「・・・・・」
汐音はその迦音の表情に本能的に体をビクっとさせた。
そして少しだけ正気に戻ると少しずつ金色の瞳の色が茶色い瞳へと戻り。
「まあいいさ・・・。どうせ僕は母さんからもお祖母様からも逃げる事はできない。だから僕は僕なりに史から姉さんからも呪力を奪い取ってお前らを永遠に恨み続けてやる・・・」
そう言うと汐音は踵を返し、駅の方へと歩いて行ってしまった。
午後2時
青山、表参道。
その日寿々と史は先週末に寿々が史に入学式のスーツを買ってあげる、という約束通りに二人して一式を揃えに買い物へ出ていた。
「それにしてもお客様お顔立ちが美しいですし、スタイルも物凄く良いので本当何を着てもお似合いですね!」
20代後半くらいの女性店員が意気揚々とまるで史を着せ替え人形か何かかと思うほどに次から次へと色々なスーツを着せては長さを見て動きやすさはどうだ、この布地は何処の国で作られたやらをとにかく喋り倒すものだから、入店からたったの20分くらいで史は既に疲れた顔をしてぐったりとしている。
寿々はそれをフィッティングの外に置かれたソファに掛けながら仕方ないなぁと言った表情でただ眺め。
『それにしてもびっくりするぐらいどれも似合うのは本当に羨ましい限りだな・・・。俺も顔は直せなくてもせめて身長があと5,6センチ高ければスーツ姿もマシに見えるだろうに・・』
とやや落ちこみながらも史を見直し
午前中に髪の毛もカットさせたおかげで前髪が大分短くなり、イケメンと言うよりもはや美形と言った方が正しいその美しい顔立ちのおかげでより一層スーツ姿の見栄えが良くなっているように思えた。
『・・・・・恋人・・ではまだないが・・。俺の好きな奴はなんて格好いいんだろうか・・』
とその姿に少しだけニヤつきそうになり、寿々は精一杯口元が緩むのを堪えた。
その後40分くらいなんだかんだと時間がかかり、スーツとシャツとネクタイを揃えたところで既に3時半を超え史はすっかりくたくたになり
「時間があればオーダーメイドで作ってもらった方が良かったけれど、まぁ時間がないからしかたないよな?またそんな機会があったらちゃんとしたスーツ買ってやるよ」
と店を出ながら寿々は嬉しそうにそう答えた。
「いや・・もう本当にいい加減にしてください。俺そんなに高い物買ってもらわなくて大丈夫ですから・・・」
史は購入した大きな紙袋を肩にかけながら本当に心臓に悪いといった感じで寿々に答える。
会計で15万と言われた時には真面目にどうしたらいいのかと動揺しすぎたくらいだ。
しかし寿々は涼しそうな顔をして何の躊躇もなくニコニコと会計を済まし今に至る。
「じゃあ少し休んだら、次は表参道ヒルズにでも行って靴と鞄と時計と・・・」
などと言いだすものだから史は慌てて寿々を止め
「もういいですから!真面目に・・。ていうか本当にいくら俺に使うつもりなんですか?」
とめちゃくちゃ焦りながら聞くと
「えー・・・30くらいは普通かと。最高50くらいまではいいと思っている」
と言われ流石に頭がクラクラしてきた。
『この人、金銭感覚大丈夫なんだろうか・・?もしかして普段あまりに使わないせいでだいぶバグってるんじゃ・・・』
寿々は本当に朝からずっと楽しそうにニコニコとしていたが、史の本心はまだ複雑な心境を拭えてはいなかった。
先日の火曜日、その前の週に一緒に岐阜に取材に行ったライターの知念が突然亡くなった。
しかもその亡くなる直前まで知念と一緒に行動していたのが寿々なのだ。
知念の死因は地下鉄への飛び込みで、ちょうどその時寿々はそれよりもっと奥深くにある都心の地下道内に最上と史と一緒にいた。
だから寿々が知念に何かをしたわけではない、それは間違いないと史も確信を持ってはいたが・・・。
それでもそれまで一緒に行動をしていた知念の記憶だけがその日を境に寿々の中からすっぽりと抜け落ちてしまっているのはやはり単純に無関係とは言えず・・・。
一昨日の校了後、最上から知念の葬式は父方の実家沖縄で行われるとの事で参列するは難しいから編集部から供花と電報、香典を送るだけとなり史としても正直これで本当に良かったのか・・。とその葛藤からは暫く逃れられそうになかった。
「ああ、そう言えば!昨日篠田さんからメッセージ届いてさ」
寿々はスマホを弄りながらチェーン店のコーヒーショップの店先でアイスカフェラテを飲みながら話しだす。
「篠田さん?」
史もアイスコーヒーを飲みながら何の事かと寿々に聞き返した。
「ほら・・・」
そう言って篠田からのメッセージを見せる。
するとそこには篠田と25,6歳くらいのギャル風の女の子が仲良さそうに写真に寄り添って写っていた。
「え?篠田さん彼女出来たんですか?」
「らしいよ。ほらこの前の火曜に俺の代理で同期の鳥羽の合コン行ってもらったじゃん?それですぐに意気投合して一昨日から付き合うことになったんだってさ」
「え、はや」
「なー!俺もそう思ったんだけど。篠田さん絶対にモテるだろうなって思ってたら速攻で彼女出来ててちょっと笑っちゃったよ」
と寿々は嬉しそうに話す。
「何か、二人共ラーメン屋回るのが趣味らしくって。しかも女の子の方が篠田さんのSNSのフォロワーだったらしくすぐに意気投合したとかなんとかで。すごいよな、そんな事もあるんだな」
寿々のそんな何気ない会話も本来ならばもっと楽しいはずなのに、史はだんだん気持ちが沈んできてもうすでに一刻も早く家に帰り気持ちでいっぱいだった。
「史?」
寿々にそう呼ばれて史はハッとする。
「え、ああすみません。ぼうっとしてました。何か言いましたか?」
「いや、かなり疲れているみたいだからやっぱり今日はもう帰ろうか、って・・」
「・・・そうですね。靴も鞄も無くはないですし。もし買うにしてもまだ来週末もあるので今日はとりあえず家でゆっくりしたいですね」
「わかった。じゃあそうしよう」
と寿々はその意見にも嫌な顔一つする事なくにっこりと笑って返した。
午後5時半
その後二人は最寄りの駅まで戻ると、史が途中で食材も買いたいと言うので二人はそのままスーパーである程度の買い物を済ませ家路についた。
「何か思った以上に買い過ぎた感あるな・・」
二人して両手に買い物袋をひっさげスーパーから自宅までの道を歩く。
すると史は両手と肩にも荷物を持っているにも関わらず
「持ちますよ」
と寿々に手を差し出した。
しかし流石に
「いやいや、俺袋一つだけってバランスおかしいだろう・・。いいってもうすぐ家着くし」
と疲れた顔をしながら言うものだから史は仕方ないな、といった顔をしてそのまま寿々の手に持った重い方のレジ袋を黙って持ち上げた。
「だからいいって!」
「確かに俺も疲れてはいますが体力だけは馬鹿みたいにあるので。それにこういうのが公平って言うんですよ」
と涼しい顔して言われ流石に寿々も恥ずかしそうにそのまま袋を史を渡さざるを得なかった。
そしてあと数百メートルでマンションに着こうかと言うところで、通り過ぎようとした公園内から急に呼び止められた。
「おーーーい!史!!」
二人はその声に誰だ?と言った顔で目を向ける。
そこにいたのは
「・・・・・・汐音」
史はその声の主を見て小さくそう呟いた。
その名前を聞いて寿々も
「え?・・・汐音って・・・迦音さんの弟の!?」
とまさかこんなタイミングでいよいよ厄介な人物が家の近くで待ち受けているだなんて想像もしていなかったのだ。
史はあからさまに嫌そうな顔をして小さく舌打ちをした
「チッ・・・・・・」
普段そんな態度を取る事がないから寿々も思わず驚きもしたが、自分も汐音に会ったら絶対に物申してやろうと思っていたので咄嗟に険しい顔をして身構えた。
しかし史はすぐに寿々にスーツの紙袋を渡すと
「寿々さんは先に帰っていてください」
と汐音から目を逸らす事なくそう伝える。
「何言ってるんだよ!お前一人じゃまた暴走しかねないだろう?」
「大丈夫です。俺今もう呪力がないのでこの前みたいな事にはなりません」
そう言うと史は公園の入口脇に買い物袋を置き汐音に向かって歩き出す。
『だからってこのまま帰れるわけないだろう・・・』
今まさに寿々の目の前で史と従兄弟の汐音が一触即発なタイマン勝負をしようと睨み合っていた。
「汐音。お前なんで俺の住所知ってるんだよ」
史は汐音を睨むと言うよりかは軽蔑するような目で質問をする。
「はぁ?そんなの誰が漏らしたかなんてすぐにわかるだろう?」
にやりと笑いながらそう言われて史はすぐに
『・・・やっぱり迦音か。まだこいつか、それとも伯母とどこかで繋がっているというわけか』
史はそう思うと仕方ないとばかりに溜息をついた。
「それで?俺に何の用」
史はとにかく呪力を貯め込まずかつ貯めさせないようとにかく冷静に汐音に話しかける。
「何の用?あははは。お前相変わらず馬鹿なのか?俺がお前に用があるとすればお前を虐めて力を高める以外用事があるわけないだろう?」
史は汐音のその相も変わらず幼稚な発言にほとほと呆れていた。
「まぁ・・もう何しても無駄だと思うけど。お前が何かしたいならやれよほら」
そう言って史は汐音に向けて両手を広げる。
すると汐音は史をキッと睨むとその瞳を金色に光らせ、右手を払うようにするとバシンっ!!という音と共にその払った流れの先に見えない鞭のような呪力の塊が公園の土を抉り土埃を立てた。
「・・・・・」
汐音は史に向かって数歩走り出すと上空に飛び、細くしなやかな体全体を回転させるように勢いをつけ右手の呪力の鞭を史に向かって振り下ろす!
しかし史はその振り下ろす直前に両手をパシンと合わせた後に手を90度ずらし音を切るとその手の内から発せられた銀色の円盤状の祓の波動を汐音のその鞭に向けて勢い良く飛ばした。
「なに!?」
史から飛ばされたメタルソーのような波動はそのまま汐音の鞭のような呪力を一刀両断にした。
汐音の手から外れた呪力の物理攻撃はそのままのたうち回る蛇のように地面の上を暴れ再び公園の土を大きく抉った。
『何なんだアレ・・ただの鞭のような軽い力なのかと思ったらまるで太い金属で編まれた縄のように凶悪な抉り方するじゃないか・・・』
寿々は離れたところで汐音と史の戦いを見守っていたが、果たして自分がこんなところで呆然と立っていて大丈夫なのか?と不安しかなかった。
とにかく自分も怪我をしたりしないようにだけ気をつけて見守るしかない・・そう寿々は思いながらも一分でも早くこの無意味な争いが終わる事を祈った。
「何だか知らねぇけれど、変な力使うようになったなぁ史ぉ!!」
汐音は叫びながら再び呪力の縄、今度は先ほどの鞭状のより重そうなエネルギーの束を遠心力を使って振り回し史に向けて当てる為にスイングする。
「なに!」
史は先ほどと同じ様に手を打つが汐音が振り回してきた束が予想以上に太くて、その太さを断ち切れる大きさの波動を作るのに少しタイミングが遅れた。
両手で直接エネルギーの束を切り裂くように波動をぶつけたが
キリキリキリギリリ!!!といった高音がしたかと思うとその直後エネルギーの負荷を全て断ち切れなかった史はそのまま残りの束が右脇腹に直撃した。
「!!」
その勢いでバランスを崩し左によろめくも、何とか体勢を保つ。
「・・・・ぐ・・」
史は当たった脇腹を負傷したようで苦い顔をして手でを抑えた。
「史!!」
寿々が近づこうとしたが
「寿々さん絶対にこっちに来ないでください!」
と寿々の動きをその場で制止させた。
「はははは。なるほど!史!あいつがそんなに大事なのか??」
史はその言葉にしまったと思った。
そして寿々の元へ一気に走り出すが、それよりも早く
「じゃあ最初からアイツ狙えば良かったなぁ!!」
とターゲットを寿々に切り替え、汐音はしなやかに腕を振りかぶるとそのまま寿々めがけて再び呪力で編んだ鞭を飛ばし寿々の体に巻き付かせた。
「な!!」
寿々はその場に荷物を落とし、その鞭で締め上げられると汐音はまるで捉えた獲物を手繰り寄せるようなしぐさをする。途端に寿々は引き寄せられるように一瞬ふわっと浮き上がった後に地面に叩き落され、ズルズルズルと汐音に向かって地面を引きずられた。
「うぅあ!!」
「寿々さん!!!」
寿々はあっという間に汐音の足元に拘束され、そして汐音はその倒れ込んだ寿々の上に足を乗せると
「・・・・さあどうするよ史?」
と完全に史を煽るように睨み付けた。
秦迦音が叔父の総司の家に来てから約1ヵ月が過ぎようとしていた。
迦音は呪力を無くし実家から離れて初めて人間らしい生活が出来ている、そんな事を実感していた。
叔父の総司は大学の准教授として日々忙しく勤めに出て、週末になれば神奈川にある実家の白菱稲荷へと宮司の仕事へと赴く。
それに比べ迦音は特に仕事をするでもなく今は日々家事に勤しみ、昼間の時間は趣味の人形作りへ黙々と時間をつぎ込んでいた。
そんな生活をしていると自ずと全く呪力が高まらず気持ちも日々穏やかになり、1ヵ月前まで何であんなにも自分の腹のうちにドス黒い感情が溜まりに溜まっていたのか本当に不思議でならなかったのだ。
「・・・よし」
迦音は30㎝くらいのまるでビスクドールのような美しい布製の人形を作り上げるとにっこりと笑い、早速自身のSNSにアップする為に光の加減などを調整しながら写真を撮り、多少の加工などの微調整をするとそれを送信した。
そして一息ついてから辺りを見回し
「流石に少し外に出ないとかしら・・」
そう思い立ち、食材の買い物も兼ねて支度をすると久しぶりに外に出た。
今日は天気も良く暖かな春の陽気で、川沿いの桜の樹に花が一輪咲いているのを見つけると、迦音はその美しさと穏やかさに思わず笑みがこぼれた。
すると背後から
「随分と雰囲気が変わったね、姉さん?」
という声がして迦音はハッと後ろを振り返った。
そこには弟の汐音が相変わらずな雰囲気で迦音を見つめていた。
「・・・・汐音。あんた何しにここにやって来たの・・」
迦音は少しだけ目を細め汐音を見つめ返す。
「あ~あ・・。そんなんじゃつまらないじゃないか・・。全く喋り方まで穏やかになってしまって・・。情けない」
「情けない?・・・あんたは本当に何もわかってないのね」
「わかってないだってぇ??」
汐音は迦音の発言に反射的にキレて狂気に満ちた目つきで睨み返す。
「わかってないのはそっちだろう?・・・・・史も姉さんも叔父様もみんな秦家から逃げ出して全部俺に押し付けて!!・・・・あんた達に俺の何が分かるって言うんだ」
汐音は絶望した目で訴えるようにして迦音を見つめた。
迦音はその汐音に何も言い返す事が出来なかった。
本当にそうなのだ。
自分は弟の汐音に全部秦家の責務を押し付けて今の生活をしている。
性別も変え、本来ならば自分が担うべき跡継ぎの職務を放棄しそれを全て汐音が負う事になってしまっているのだ。
でも迦音はもう二度と秦の家には戻りたくなかった。そしてその気持ちを偽る事なんてもはや出来ない。
「・・・・・あんたも・・・逃げなさいよ。いいじゃないもうあんな家どうでも」
迦音のその一言に汐音の怒りが爆発した。
「ふざけるなよ!!」
そう叫ぶと汐音の瞳がすぅっと金色に輝くと、辺り一面に淀んだ邪気が制御不能になった縄の様に踊り狂い飛び散った。
その汐音に邪気に触れた川沿いの草木が一気に萎れ枯れそして朽ち落ちる。
先ほど見た桜の花も急速に萎れその場に花びらが舞い落ちた。
「!!」
迦音がその邪気に触れないよう身を構えたが、それでも飛んできた一部が腕に当たりまるで殴られたようにうっ血をした。
「今はもう呪力がないんだったけなぁ・・姉さん?・・母さんからは姉さんを説得するように言われてきたけれど・・・。でも今ならあんたにも勝てそうじゃないか??」
汐音はその呪力の縄を両手でバシっと引き延ばすして迦音を挑発する。
しかしその狂った瞳の汐音を迦音はまるで1ヵ月前の自分に戻ったのではないかと思う程の鋭い目で見下し、口が裂けるくらい大きくニヤッと笑う。
「・・・ひひ・・・。あまり舐めた事をしない方が身のためよ汐音。呪力が無くても私がどれだけ武術であんたより上回っているのか忘れたのかしら?」
身長192㎝の迦音は上から汐音を見下ろすようにしてジリジリと近づいた。
「・・・・・」
汐音はその迦音の表情に本能的に体をビクっとさせた。
そして少しだけ正気に戻ると少しずつ金色の瞳の色が茶色い瞳へと戻り。
「まあいいさ・・・。どうせ僕は母さんからもお祖母様からも逃げる事はできない。だから僕は僕なりに史から姉さんからも呪力を奪い取ってお前らを永遠に恨み続けてやる・・・」
そう言うと汐音は踵を返し、駅の方へと歩いて行ってしまった。
午後2時
青山、表参道。
その日寿々と史は先週末に寿々が史に入学式のスーツを買ってあげる、という約束通りに二人して一式を揃えに買い物へ出ていた。
「それにしてもお客様お顔立ちが美しいですし、スタイルも物凄く良いので本当何を着てもお似合いですね!」
20代後半くらいの女性店員が意気揚々とまるで史を着せ替え人形か何かかと思うほどに次から次へと色々なスーツを着せては長さを見て動きやすさはどうだ、この布地は何処の国で作られたやらをとにかく喋り倒すものだから、入店からたったの20分くらいで史は既に疲れた顔をしてぐったりとしている。
寿々はそれをフィッティングの外に置かれたソファに掛けながら仕方ないなぁと言った表情でただ眺め。
『それにしてもびっくりするぐらいどれも似合うのは本当に羨ましい限りだな・・・。俺も顔は直せなくてもせめて身長があと5,6センチ高ければスーツ姿もマシに見えるだろうに・・』
とやや落ちこみながらも史を見直し
午前中に髪の毛もカットさせたおかげで前髪が大分短くなり、イケメンと言うよりもはや美形と言った方が正しいその美しい顔立ちのおかげでより一層スーツ姿の見栄えが良くなっているように思えた。
『・・・・・恋人・・ではまだないが・・。俺の好きな奴はなんて格好いいんだろうか・・』
とその姿に少しだけニヤつきそうになり、寿々は精一杯口元が緩むのを堪えた。
その後40分くらいなんだかんだと時間がかかり、スーツとシャツとネクタイを揃えたところで既に3時半を超え史はすっかりくたくたになり
「時間があればオーダーメイドで作ってもらった方が良かったけれど、まぁ時間がないからしかたないよな?またそんな機会があったらちゃんとしたスーツ買ってやるよ」
と店を出ながら寿々は嬉しそうにそう答えた。
「いや・・もう本当にいい加減にしてください。俺そんなに高い物買ってもらわなくて大丈夫ですから・・・」
史は購入した大きな紙袋を肩にかけながら本当に心臓に悪いといった感じで寿々に答える。
会計で15万と言われた時には真面目にどうしたらいいのかと動揺しすぎたくらいだ。
しかし寿々は涼しそうな顔をして何の躊躇もなくニコニコと会計を済まし今に至る。
「じゃあ少し休んだら、次は表参道ヒルズにでも行って靴と鞄と時計と・・・」
などと言いだすものだから史は慌てて寿々を止め
「もういいですから!真面目に・・。ていうか本当にいくら俺に使うつもりなんですか?」
とめちゃくちゃ焦りながら聞くと
「えー・・・30くらいは普通かと。最高50くらいまではいいと思っている」
と言われ流石に頭がクラクラしてきた。
『この人、金銭感覚大丈夫なんだろうか・・?もしかして普段あまりに使わないせいでだいぶバグってるんじゃ・・・』
寿々は本当に朝からずっと楽しそうにニコニコとしていたが、史の本心はまだ複雑な心境を拭えてはいなかった。
先日の火曜日、その前の週に一緒に岐阜に取材に行ったライターの知念が突然亡くなった。
しかもその亡くなる直前まで知念と一緒に行動していたのが寿々なのだ。
知念の死因は地下鉄への飛び込みで、ちょうどその時寿々はそれよりもっと奥深くにある都心の地下道内に最上と史と一緒にいた。
だから寿々が知念に何かをしたわけではない、それは間違いないと史も確信を持ってはいたが・・・。
それでもそれまで一緒に行動をしていた知念の記憶だけがその日を境に寿々の中からすっぽりと抜け落ちてしまっているのはやはり単純に無関係とは言えず・・・。
一昨日の校了後、最上から知念の葬式は父方の実家沖縄で行われるとの事で参列するは難しいから編集部から供花と電報、香典を送るだけとなり史としても正直これで本当に良かったのか・・。とその葛藤からは暫く逃れられそうになかった。
「ああ、そう言えば!昨日篠田さんからメッセージ届いてさ」
寿々はスマホを弄りながらチェーン店のコーヒーショップの店先でアイスカフェラテを飲みながら話しだす。
「篠田さん?」
史もアイスコーヒーを飲みながら何の事かと寿々に聞き返した。
「ほら・・・」
そう言って篠田からのメッセージを見せる。
するとそこには篠田と25,6歳くらいのギャル風の女の子が仲良さそうに写真に寄り添って写っていた。
「え?篠田さん彼女出来たんですか?」
「らしいよ。ほらこの前の火曜に俺の代理で同期の鳥羽の合コン行ってもらったじゃん?それですぐに意気投合して一昨日から付き合うことになったんだってさ」
「え、はや」
「なー!俺もそう思ったんだけど。篠田さん絶対にモテるだろうなって思ってたら速攻で彼女出来ててちょっと笑っちゃったよ」
と寿々は嬉しそうに話す。
「何か、二人共ラーメン屋回るのが趣味らしくって。しかも女の子の方が篠田さんのSNSのフォロワーだったらしくすぐに意気投合したとかなんとかで。すごいよな、そんな事もあるんだな」
寿々のそんな何気ない会話も本来ならばもっと楽しいはずなのに、史はだんだん気持ちが沈んできてもうすでに一刻も早く家に帰り気持ちでいっぱいだった。
「史?」
寿々にそう呼ばれて史はハッとする。
「え、ああすみません。ぼうっとしてました。何か言いましたか?」
「いや、かなり疲れているみたいだからやっぱり今日はもう帰ろうか、って・・」
「・・・そうですね。靴も鞄も無くはないですし。もし買うにしてもまだ来週末もあるので今日はとりあえず家でゆっくりしたいですね」
「わかった。じゃあそうしよう」
と寿々はその意見にも嫌な顔一つする事なくにっこりと笑って返した。
午後5時半
その後二人は最寄りの駅まで戻ると、史が途中で食材も買いたいと言うので二人はそのままスーパーである程度の買い物を済ませ家路についた。
「何か思った以上に買い過ぎた感あるな・・」
二人して両手に買い物袋をひっさげスーパーから自宅までの道を歩く。
すると史は両手と肩にも荷物を持っているにも関わらず
「持ちますよ」
と寿々に手を差し出した。
しかし流石に
「いやいや、俺袋一つだけってバランスおかしいだろう・・。いいってもうすぐ家着くし」
と疲れた顔をしながら言うものだから史は仕方ないな、といった顔をしてそのまま寿々の手に持った重い方のレジ袋を黙って持ち上げた。
「だからいいって!」
「確かに俺も疲れてはいますが体力だけは馬鹿みたいにあるので。それにこういうのが公平って言うんですよ」
と涼しい顔して言われ流石に寿々も恥ずかしそうにそのまま袋を史を渡さざるを得なかった。
そしてあと数百メートルでマンションに着こうかと言うところで、通り過ぎようとした公園内から急に呼び止められた。
「おーーーい!史!!」
二人はその声に誰だ?と言った顔で目を向ける。
そこにいたのは
「・・・・・・汐音」
史はその声の主を見て小さくそう呟いた。
その名前を聞いて寿々も
「え?・・・汐音って・・・迦音さんの弟の!?」
とまさかこんなタイミングでいよいよ厄介な人物が家の近くで待ち受けているだなんて想像もしていなかったのだ。
史はあからさまに嫌そうな顔をして小さく舌打ちをした
「チッ・・・・・・」
普段そんな態度を取る事がないから寿々も思わず驚きもしたが、自分も汐音に会ったら絶対に物申してやろうと思っていたので咄嗟に険しい顔をして身構えた。
しかし史はすぐに寿々にスーツの紙袋を渡すと
「寿々さんは先に帰っていてください」
と汐音から目を逸らす事なくそう伝える。
「何言ってるんだよ!お前一人じゃまた暴走しかねないだろう?」
「大丈夫です。俺今もう呪力がないのでこの前みたいな事にはなりません」
そう言うと史は公園の入口脇に買い物袋を置き汐音に向かって歩き出す。
『だからってこのまま帰れるわけないだろう・・・』
今まさに寿々の目の前で史と従兄弟の汐音が一触即発なタイマン勝負をしようと睨み合っていた。
「汐音。お前なんで俺の住所知ってるんだよ」
史は汐音を睨むと言うよりかは軽蔑するような目で質問をする。
「はぁ?そんなの誰が漏らしたかなんてすぐにわかるだろう?」
にやりと笑いながらそう言われて史はすぐに
『・・・やっぱり迦音か。まだこいつか、それとも伯母とどこかで繋がっているというわけか』
史はそう思うと仕方ないとばかりに溜息をついた。
「それで?俺に何の用」
史はとにかく呪力を貯め込まずかつ貯めさせないようとにかく冷静に汐音に話しかける。
「何の用?あははは。お前相変わらず馬鹿なのか?俺がお前に用があるとすればお前を虐めて力を高める以外用事があるわけないだろう?」
史は汐音のその相も変わらず幼稚な発言にほとほと呆れていた。
「まぁ・・もう何しても無駄だと思うけど。お前が何かしたいならやれよほら」
そう言って史は汐音に向けて両手を広げる。
すると汐音は史をキッと睨むとその瞳を金色に光らせ、右手を払うようにするとバシンっ!!という音と共にその払った流れの先に見えない鞭のような呪力の塊が公園の土を抉り土埃を立てた。
「・・・・・」
汐音は史に向かって数歩走り出すと上空に飛び、細くしなやかな体全体を回転させるように勢いをつけ右手の呪力の鞭を史に向かって振り下ろす!
しかし史はその振り下ろす直前に両手をパシンと合わせた後に手を90度ずらし音を切るとその手の内から発せられた銀色の円盤状の祓の波動を汐音のその鞭に向けて勢い良く飛ばした。
「なに!?」
史から飛ばされたメタルソーのような波動はそのまま汐音の鞭のような呪力を一刀両断にした。
汐音の手から外れた呪力の物理攻撃はそのままのたうち回る蛇のように地面の上を暴れ再び公園の土を大きく抉った。
『何なんだアレ・・ただの鞭のような軽い力なのかと思ったらまるで太い金属で編まれた縄のように凶悪な抉り方するじゃないか・・・』
寿々は離れたところで汐音と史の戦いを見守っていたが、果たして自分がこんなところで呆然と立っていて大丈夫なのか?と不安しかなかった。
とにかく自分も怪我をしたりしないようにだけ気をつけて見守るしかない・・そう寿々は思いながらも一分でも早くこの無意味な争いが終わる事を祈った。
「何だか知らねぇけれど、変な力使うようになったなぁ史ぉ!!」
汐音は叫びながら再び呪力の縄、今度は先ほどの鞭状のより重そうなエネルギーの束を遠心力を使って振り回し史に向けて当てる為にスイングする。
「なに!」
史は先ほどと同じ様に手を打つが汐音が振り回してきた束が予想以上に太くて、その太さを断ち切れる大きさの波動を作るのに少しタイミングが遅れた。
両手で直接エネルギーの束を切り裂くように波動をぶつけたが
キリキリキリギリリ!!!といった高音がしたかと思うとその直後エネルギーの負荷を全て断ち切れなかった史はそのまま残りの束が右脇腹に直撃した。
「!!」
その勢いでバランスを崩し左によろめくも、何とか体勢を保つ。
「・・・・ぐ・・」
史は当たった脇腹を負傷したようで苦い顔をして手でを抑えた。
「史!!」
寿々が近づこうとしたが
「寿々さん絶対にこっちに来ないでください!」
と寿々の動きをその場で制止させた。
「はははは。なるほど!史!あいつがそんなに大事なのか??」
史はその言葉にしまったと思った。
そして寿々の元へ一気に走り出すが、それよりも早く
「じゃあ最初からアイツ狙えば良かったなぁ!!」
とターゲットを寿々に切り替え、汐音はしなやかに腕を振りかぶるとそのまま寿々めがけて再び呪力で編んだ鞭を飛ばし寿々の体に巻き付かせた。
「な!!」
寿々はその場に荷物を落とし、その鞭で締め上げられると汐音はまるで捉えた獲物を手繰り寄せるようなしぐさをする。途端に寿々は引き寄せられるように一瞬ふわっと浮き上がった後に地面に叩き落され、ズルズルズルと汐音に向かって地面を引きずられた。
「うぅあ!!」
「寿々さん!!!」
寿々はあっという間に汐音の足元に拘束され、そして汐音はその倒れ込んだ寿々の上に足を乗せると
「・・・・さあどうするよ史?」
と完全に史を煽るように睨み付けた。
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