人魚の歌

忍野木しか

文字の大きさ
1 / 1

人魚の歌

しおりを挟む

 雲の向こうの天の神。空に轟く雷の怒り。
 黒い嵐の迫る海辺の人魚の歌に眠る世界。
 重なる雲に走る声。水の空に響く歌。
 見下ろす世界の静かな声に天の神は涙を落とす。
 嵐の去った海辺の岩の終わらぬ人魚の歌い声。
 
 大地の底の星の神。陸に渦巻く炎の嘆き。
 赤いマグマの迫る海辺の人魚の歌に眠る世界。
 震える大地に走る声。火の星に響く歌。
 見上げる世界の静かな声に星の神は涙を啜る。
 炎の消えた海辺の岩の終わらぬ人魚の歌い声。
 
 夜の果ての光の神。海にさざめく氷の笑い。
 白い雪の迫る海辺の人魚の歌に眠る世界。
 広がる夜に走る声。氷の海に響く歌。
 見えない世界の静かな声に光の神は涙を拭う。
 氷の溶けた海辺の岩の終わらぬ人魚の歌い声。

 地球に住まう人の神。世に彷徨く人の声。
 無限の色の迫る海辺の最後の歌に眠る人魚。
 無数の音に止まる声。人の海に消えた歌。
 世界の隅の人魚の歌に首を傾げる人の神。
 人の賑わう海辺の岩で終わった人魚の歌い声。
 
 
 
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

乙女ゲームはエンディングを迎えました。

章槻雅希
ファンタジー
卒業パーティでのジョフロワ王子の婚約破棄宣言を以って、乙女ゲームはエンディングを迎えた。 これからは王子の妻となって幸せに贅沢をして暮らすだけだと笑ったゲームヒロインのエヴリーヌ。 だが、宣言後、ゲームが終了するとなにやら可笑しい。エヴリーヌの予想とは違う展開が起こっている。 一体何がどうなっているのか、呆然とするエヴリーヌにジョフロワから衝撃的な言葉が告げられる。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様・自サイトに重複投稿。

処理中です...