地味だからいらないと婚約者を捨てた友人。だけど私と付き合いだしてから素敵な男性になると今更返せと言ってきました。ええ、返すつもりはありません

亜綺羅もも

文字の大きさ
10 / 14

10

しおりを挟む
 エリック様は以前にも増して頻繁に私の下へとやって来てくれていた。
 そして会う度に彼の魅力が増していく。
 私の心の中の想いと比例するかのように……

「エリーゼ。この花を君に」
「ありがとうございます……」

 綺麗なバラの花束を用意してくれていたエリック様。
 エリック様は私に花束を渡し、穏やかな笑みをこぼす。

「笑う顔も、ずいぶん柔らかくなりましたね」
「そうかな……なら、それは全部君のおかげだよ」
「私の?」
「うん。君がいたから今の僕はいる。こんな僕を見捨てることなく拾い上げてくれた……カリーナに捨てられた時、僕は君に救われたんだよ。あの日あの時、エリーゼがいなかったら、僕はあの頃のままだった。いや、あの頃より酷くなっていたかもしれない」
「そんな……」

 エリック様は私の手を取り、そして跪く。

「大袈裟じゃない。僕は君の優しさで殻を破ることができた。今はこの火傷の跡が愛おしくもある。そう考えるようになれたのは、全部君のおかげだ」
「…………」
「だから……これからも僕と一緒にいてほしい。もう君がいない人生など考えられない。それぐらい僕は君にまいってしまっているんだ」
「エリック様……」

 波のように喜びが胸に押し寄せ、目頭が熱くなる。
 彼の熱い瞳、温かい手、情熱的な感情。
 まるで夢のようだ……まさか、エリック様にこんな風に思ってもらっていただなんて。

「僕と、一緒になってくれないか?」
「はい。喜んで」

 もちろん、返事に迷いなどなかった。
 即答でそう答えると、エリック様はホッとため息をつき、とても愛らしい笑顔を見せる。

「良かった……断られたらどうしようかと思ったよ」

 私と繋ぐ彼の手は、じわっと汗をかいており、相当緊張していたのがよく分かる。
 素敵でありながら可愛らしい部分もあり、本当に彼の全てが愛おしい。
 最近はとても男らしい顔つきをするようになり、私を見つめるその表情にときめきを禁じえない。

「エリーゼ! 来たわよ」
「……は?」

 幸福の絶頂とも言えるその瞬間に、突然不幸の元が現れる。
 なんとカリーナが腹立たしいほどの笑顔を振りまき、我が家へとやって来たのだ。

「ねえちょっと聞いてよ……って、その美形は誰!?」

 縁を切ったはずなのに、そんなことを忘れたような顔のカリーナ。
 そんな彼女は変身したエリック様を見て、嬉しげな声を上げる。

「…………」
「そんなに見つめられて……私とどこかでお会いしたことあるのですか?」

 エリック様はカリーナに冷たい視線を送っていたのだが……カリーナはそれを熱線だと捉えたようだ。
 私は彼女の登場にいまだ唖然とするばかり。
 本当にこの子は自分勝手極まりない。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【完結】なんで、あなたが王様になろうとしているのです?そんな方とはこっちから婚約破棄です。

西東友一
恋愛
現国王である私のお父様が病に伏せられました。 「はっはっはっ。いよいよ俺の出番だな。みなさま、心配なさるなっ!! ヴィクトリアと婚約関係にある、俺に任せろっ!!」  わたくしと婚約関係にあった貴族のネロ。 「婚約破棄ですわ」 「なっ!?」 「はぁ・・・っ」  わたくしの言いたいことが全くわからないようですね。  では、順を追ってご説明致しましょうか。 ★★★ 1万字をわずかに切るぐらいの量です。 R3.10.9に完結予定です。 ヴィクトリア女王やエリザベス女王とか好きです。 そして、主夫が大好きです!! 婚約破棄ざまぁの発展系かもしれませんし、後退系かもしれません。 婚約破棄の王道が好きな方は「箸休め」にお読みください。

【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています

春野オカリナ
恋愛
 エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。  社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。

絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした

松ノ木るな
恋愛
 アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。  もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。

【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます

ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」 「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」  シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。 全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。  しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。  アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――

【完結】出来の悪い王太子殿下の婚約者ですって? 私達は承諾しておりません!

綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
真実の愛は策略で生まれる ~王太子殿下の婚約者なんて絶対に嫌ですわ~  勉強は出来ず、実技も酷い。顔だけしか取り柄のない一番最初に生まれた王子というだけで、王太子の地位に就いた方。王国を支える3つの公爵家の令嬢達は、他国にも名の知れた淑女であり、王太子レオポルドの婚約者候補に名を連ねた。 「絶対にお断りだわ」 「全員一緒に断りましょうよ」  ちょうど流行している物語の主人公のように演出し、道化を演じて退場していただきましょう。王家も貴族のひとつ、慣習や礼儀作法は守っていただかないと困ります。公爵令嬢3人の策略が花開く!   ハッピーエンド確定、6話完結 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、ノベルアップ+ ※2022/05/25、小説家になろう 恋愛日間20位 ※2022/05/25、カクヨム 恋愛週間27位 ※2022/05/24、小説家になろう 恋愛日間19位 ※2022/05/24、カクヨム 恋愛週間29位 ※2022/05/23、小説家になろう 恋愛日間27位  ※2022/05/21、完結(全6話) ※2022/05/21、カクヨム 恋愛週間41位 ※2022/05/20、アルファポリス HOT21位 ※2022/05/19、エブリスタ 恋愛トレンド28位

【完結】義家族に婚約者も、家も奪われたけれど幸せになります〜義妹達は華麗に笑う

鏑木 うりこ
恋愛
お姉様、お姉様の婚約者、私にくださらない?地味なお姉様より私の方がお似合いですもの! お姉様、お姉様のお家。私にくださらない?お姉様に伯爵家の当主なんて務まらないわ  お母様が亡くなって喪も明けないうちにやってきた新しいお義母様には私より一つしか違わない双子の姉妹を連れて来られました。  とても美しい姉妹ですが、私はお義母様と義妹達に辛く当たられてしまうのです。  この話は特殊な形で進んで行きます。表(ベアトリス視点が多い)と裏(義母・義妹視点が多い)が入り乱れますので、混乱したら申し訳ないですが、書いていてとても楽しかったです。

格上の言うことには、従わなければならないのですか? でしたら、わたしの言うことに従っていただきましょう

柚木ゆず
恋愛
「アルマ・レンザ―、光栄に思え。次期侯爵様は、お前をいたく気に入っているんだ。大人しく僕のものになれ。いいな?」  最初は柔らかな物腰で交際を提案されていた、リエズン侯爵家の嫡男・バチスタ様。ですがご自身の思い通りにならないと分かるや、その態度は一変しました。  ……そうなのですね。格下は格上の命令に従わないといけない、そんなルールがあると仰るのですね。  分かりました。  ではそのルールに則り、わたしの命令に従っていただきましょう。

(完結)お姉様の恋人をとってもいいでしょう?(全6話)

青空一夏
恋愛
私と姉はオマール男爵家の長女と次女で、姉は屋敷から出て、仕事をして暮していた。姉は昔から頭が良くて、お金を稼ぐことが上手い。今は会社を経営していて、羽振りが良かった。 オマール家で、お兄様が結婚して家督を継ぐと、私は実家に居づらくなった。だから、私は姉の家に転がりこんだのよ。 私は姉が羨ましかった。美人で仕事ができてお金が稼げる・・・姉の恋人を奪えば・・・ コメディタッチの、オチがあるお話です。※現代日本によく似た部分のある西洋風の爵位がある不思議異世界もの。現代機器あり。

処理中です...