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エリック様は以前にも増して頻繁に私の下へとやって来てくれていた。
そして会う度に彼の魅力が増していく。
私の心の中の想いと比例するかのように……
「エリーゼ。この花を君に」
「ありがとうございます……」
綺麗なバラの花束を用意してくれていたエリック様。
エリック様は私に花束を渡し、穏やかな笑みをこぼす。
「笑う顔も、ずいぶん柔らかくなりましたね」
「そうかな……なら、それは全部君のおかげだよ」
「私の?」
「うん。君がいたから今の僕はいる。こんな僕を見捨てることなく拾い上げてくれた……カリーナに捨てられた時、僕は君に救われたんだよ。あの日あの時、エリーゼがいなかったら、僕はあの頃のままだった。いや、あの頃より酷くなっていたかもしれない」
「そんな……」
エリック様は私の手を取り、そして跪く。
「大袈裟じゃない。僕は君の優しさで殻を破ることができた。今はこの火傷の跡が愛おしくもある。そう考えるようになれたのは、全部君のおかげだ」
「…………」
「だから……これからも僕と一緒にいてほしい。もう君がいない人生など考えられない。それぐらい僕は君にまいってしまっているんだ」
「エリック様……」
波のように喜びが胸に押し寄せ、目頭が熱くなる。
彼の熱い瞳、温かい手、情熱的な感情。
まるで夢のようだ……まさか、エリック様にこんな風に思ってもらっていただなんて。
「僕と、一緒になってくれないか?」
「はい。喜んで」
もちろん、返事に迷いなどなかった。
即答でそう答えると、エリック様はホッとため息をつき、とても愛らしい笑顔を見せる。
「良かった……断られたらどうしようかと思ったよ」
私と繋ぐ彼の手は、じわっと汗をかいており、相当緊張していたのがよく分かる。
素敵でありながら可愛らしい部分もあり、本当に彼の全てが愛おしい。
最近はとても男らしい顔つきをするようになり、私を見つめるその表情にときめきを禁じえない。
「エリーゼ! 来たわよ」
「……は?」
幸福の絶頂とも言えるその瞬間に、突然不幸の元が現れる。
なんとカリーナが腹立たしいほどの笑顔を振りまき、我が家へとやって来たのだ。
「ねえちょっと聞いてよ……って、その美形は誰!?」
縁を切ったはずなのに、そんなことを忘れたような顔のカリーナ。
そんな彼女は変身したエリック様を見て、嬉しげな声を上げる。
「…………」
「そんなに見つめられて……私とどこかでお会いしたことあるのですか?」
エリック様はカリーナに冷たい視線を送っていたのだが……カリーナはそれを熱線だと捉えたようだ。
私は彼女の登場にいまだ唖然とするばかり。
本当にこの子は自分勝手極まりない。
そして会う度に彼の魅力が増していく。
私の心の中の想いと比例するかのように……
「エリーゼ。この花を君に」
「ありがとうございます……」
綺麗なバラの花束を用意してくれていたエリック様。
エリック様は私に花束を渡し、穏やかな笑みをこぼす。
「笑う顔も、ずいぶん柔らかくなりましたね」
「そうかな……なら、それは全部君のおかげだよ」
「私の?」
「うん。君がいたから今の僕はいる。こんな僕を見捨てることなく拾い上げてくれた……カリーナに捨てられた時、僕は君に救われたんだよ。あの日あの時、エリーゼがいなかったら、僕はあの頃のままだった。いや、あの頃より酷くなっていたかもしれない」
「そんな……」
エリック様は私の手を取り、そして跪く。
「大袈裟じゃない。僕は君の優しさで殻を破ることができた。今はこの火傷の跡が愛おしくもある。そう考えるようになれたのは、全部君のおかげだ」
「…………」
「だから……これからも僕と一緒にいてほしい。もう君がいない人生など考えられない。それぐらい僕は君にまいってしまっているんだ」
「エリック様……」
波のように喜びが胸に押し寄せ、目頭が熱くなる。
彼の熱い瞳、温かい手、情熱的な感情。
まるで夢のようだ……まさか、エリック様にこんな風に思ってもらっていただなんて。
「僕と、一緒になってくれないか?」
「はい。喜んで」
もちろん、返事に迷いなどなかった。
即答でそう答えると、エリック様はホッとため息をつき、とても愛らしい笑顔を見せる。
「良かった……断られたらどうしようかと思ったよ」
私と繋ぐ彼の手は、じわっと汗をかいており、相当緊張していたのがよく分かる。
素敵でありながら可愛らしい部分もあり、本当に彼の全てが愛おしい。
最近はとても男らしい顔つきをするようになり、私を見つめるその表情にときめきを禁じえない。
「エリーゼ! 来たわよ」
「……は?」
幸福の絶頂とも言えるその瞬間に、突然不幸の元が現れる。
なんとカリーナが腹立たしいほどの笑顔を振りまき、我が家へとやって来たのだ。
「ねえちょっと聞いてよ……って、その美形は誰!?」
縁を切ったはずなのに、そんなことを忘れたような顔のカリーナ。
そんな彼女は変身したエリック様を見て、嬉しげな声を上げる。
「…………」
「そんなに見つめられて……私とどこかでお会いしたことあるのですか?」
エリック様はカリーナに冷たい視線を送っていたのだが……カリーナはそれを熱線だと捉えたようだ。
私は彼女の登場にいまだ唖然とするばかり。
本当にこの子は自分勝手極まりない。
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