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夏祭り(R15
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今日は秋尋様と、夏祭り! 薄い夕暮れ時に心が弾む。
近衛家に引き取られる前は、この時間に追い出されるとしんどくて、そういい思い出もなかった。だからこんなにワクワクした気持ちでいられるのが不思議だ。秋尋様の存在は、俺の全てを塗り替えていく。
屋敷の前でしゃがみながら、茜色に染まりゆく空を眺める。綺麗だなと思えるし、秋尋様にもそう感じてほしいと思った。
後ろでキイと大きな扉が軋む音がして、俺は急いで立ち上がる。
「秋尋様! 見てください! 綺麗な夕陽……」
赤に照らされる、浴衣姿の秋尋様……。紺色の布はお肌の白さを際立たせ、色づいた唇はいつも以上に艷やかに見える。
少し長めの黒髪を片側だけ耳にかけながら、秋尋様が恥ずかしそうに俯いた。
「な、なんだ……。見すぎだぞ」
「いえ。夕陽などより、秋尋様のほうが……遥かにお美しくて……」
それはもう、夕陽など遥か霞む。むしろ引き立て役でしかない。
「馬鹿、な、何を言ってる。やっぱり着替えてくる!」
「どうしてですか! とってもよくお似合いです!」
ずっと見ていたい。ああ、でも他の人に見られるのも嫌だ。
さりとてこのお姿の秋尋様と、夏祭りを楽しみたい気持ちがある。
どちらかといえば生意気というか、少しクールな印象のある秋尋様は見た目だけなら隙がなく見える。いつもピシリとシャツを着込んでいるし、伸びた背筋も綺麗だ。それが浴衣を着ることで、隙が産まれて見える。ホント好きです。隙だけに。
少年と青年中間特有の危うげな色香は、きっと男女問わず余計な虫を引きつけるに違いない。
そこはまあ、俺が……護るとして……。
「朝香は何故、浴衣を着ていないんだ。そもそもお前が、夏祭りといえば浴衣ですよとしつこく言うから着てきたというのに」
「ありがとうございます……」
「答えになってないし、拝むな」
だってもう俺のために着てくれたようなものでしょう、ソレ。そんなの拝みもする。
「はぁ……。お前と話してると行く前から気力が尽きそうだ」
カラン、と下駄の音。きちんと履物まで変えてきている。
ひとり先に行こうとする秋尋様を、慌てて追いかけた。
「ま、待ってください」
「……シャツに、短パン。お前は普通の格好で、僕ひとりだけ馬鹿みたいじゃないか」
「ですが秋尋様をお護りするためには、このほうが都合がよく……」
「遊びに行くんだぞ。今日くらいそういうことは忘れろ」
「それに俺、持ってないんですよ。浴衣」
ピタリ、と秋尋様の歩みが止まったので、走っていって隣に並ぶ。
「そうか」
「はい」
「それならしかたないな……」
今度は隣り合って、ゆっくりと歩き出す。
夏祭りに花火。隣には浴衣の秋尋様。幸せな滑り出しなのに、このまま機嫌が悪かったらどうしようかとヒヤヒヤしたけど、大丈夫そうかな。良かった。
「確かに夕陽が綺麗だな」
「秋尋様と一緒に見ることができて嬉しいです! あ、秋尋様のほうが綺麗ですけど……」
「それはもういい」
どこまで俺の言葉を信じてくれているのか、秋尋様はツンッと顔を逸らした。
でもその横顔が、夕陽のせいだけではなく茜色に染まっている気がして、俺の頬もほんのりと熱くなっていくのだった。
夏祭りが行われている会場の近くまで小松さんに送ってもらい、そこからは徒歩。
金井くんの話によると有名人が呼ばれてライブをするステージがあったり、盆踊りも行われるなど、それなりに大規模なお祭りらしい。
俺たちとは逆にお祭りの帰りなのか、光る腕輪をつけた子どもとか、触覚が生えているようなヘアバンドをしてる人とかもいる。食べるものを手に持ったり、または食べながら歩いていたりもして、色気より食い気な俺としてはそちらのほうが気になる。
もっとも一番気になるのは、秋尋様のことだけど。秋尋様は俺にとって色気でもあり、食い気でもあるから。食べちゃいたいくらい好き、みたいな。
「あっ! 朝香、犬だ。犬がいる。可愛いな」
「ホントですね」
飼い主さんも近くにいて、一人と一匹で誰かを待っているようだった。
犬の可愛さに、立ち代わり人が声をかけたりしてる。
茶色の柴犬はまだ子どもにも見えたけど、おとなしく、でも嬉しそうにちょこんと座ってる。
秋尋様と一緒にいる時の俺が、まさしくあんな感じかもしれない。
「でも俺のほうが可愛いです」
「お前、何を犬に張り合ってるんだ」
秋尋様は呆れたように呟きながら俺を犬のように撫でてくれたので、ワンと小さく鳴いた。
でも秋尋様は本物の犬が気になるようで、タタタッと駆け寄っていってしまった。負けた。俺、よく柴犬っぽいって言われるんだけど、やっぱり人じゃダメか。悔しい……。
俺もジワジワと後ろから近づく。近づいた途端、火がついたように吠えられて、飼い主からスイマセンスイマセンと謝られた。
俺のほうも謝って、そそくさと通りすぎる。秋尋様はワンコに後ろ髪を引かれながも、すぐに追いかけてきてくれた。嬉しい。
「いきなり吠えられて驚いたな。お前、何かしたのか?」
「違います。俺、昔から動物には嫌われるんですよ……」
小さい頃はいつも飢えていて道端の草やそのあたりの動物も食べそうな勢いだったから、本能的な危険を感じて吠えたのかもしれない。実際、雑草なんかは食べてお腹を壊したこともある。
今はすっかり満たされてるはずなんだけどなあ……。もしかして俺が忘れてるだけで、空腹に我を忘れて一度くらいは犬猫を食べたりしたんだろうか……。
「秋尋様が犬を飼っていたら、毎日のように俺と喧嘩してたかもしれませんね」
「確かに相性は悪そうだ。まあ、うちは母親が喘息持ちだから飼えないし……。犬ならお前で充分だしな」
「えっ? えへへ。照れますね」
「褒めてないぞ」
秋尋様に構ってもらえたり、命令してもらえるなら、いつだって貴方の犬になりますけどね、俺。
「あっ。あそこが入口みたいですよ」
「結構賑わってるな」
客層は家族連れ、友達同士、カップル、様々だ。浴衣で来ている人もちらほら見る。
でも、秋尋様が一番綺麗。惚れた欲目もあるとは思うけど、目を引くあでやかさ。何よりこう、滲み出る高貴さがある。一人だけオーラが違う。
「秋尋様! 不埒な輩がいるといけません! 手を繋い……」
伸ばしかけた俺の手は後ろから人に押され、見事に秋尋様の尻を鷲掴んでいた。
薄い布から伝わる、生々しい感触。あき、秋尋様……のっ……ノーパ……。
「馬鹿、何をする! お前が一番不埒だ!」
「も、申し訳ありません! 俺はそのっ、手を繋ごうと思っただけで……!」
というかなんで穿いてないんだ。秋尋様がノーパンとか危険すぎない? こんなの、目が離せない……。いや、スケベ心からではなく! ……スケベ心も多分にあるけど。
あたふたしているうち、人波にもまれて秋尋様が先のほうへ行ってしまった。
マズイ。あんなえっちな……いや、美しい秋尋様をひとりにしたら、絶対にナンパされるに決まってる!
「ねえ、君どこから来たの? 一人?」
そう。こんなふうに……。って、俺のほうか!
「馬鹿、お前ロリコンかよ。この子、小学生じゃね?」
「えー、だって滅多に見ない美少女じゃん」
しかもまんまと小学生女子に間違えられている。
高校生くらいのチャラい男二人組。こんな奴ら相手にしていたら秋尋様を見失う。無視だ無視。
「シカトすることないだろー」
「急いでるんで。だいたい俺、男ですから!」
さすがに男だと言えば諦めてくれるだろうと思ったのに、また腕を掴まれた。
「うちの朝香が何か?」
凛とした、間違えようのない声。……俺の腕を掴んだのは男たちではなく秋尋様だった。
そういえば前、宝来先輩に初めて声をかけられた時もこんなふうに言ってくれたっけ。
はあ……。俺の秋尋様が素敵すぎる。学内とは違って少し声が震えてるけど、そんなところも愛おしい。
「なんだ。兄貴と一緒かよ」
「でもお兄ちゃんのほうも美人じゃね? オレこれなら男でもイケるかも」
「お前、人をロリコン呼ばわりしておいて、自分はホモか」
2人の下卑た会話に、秋尋様は不思議そうに首を捻った。
「朝香から喧嘩を売ったわけではなかったのか?」
な。なんですと。まさか俺を護ろうとしたわけではなく、詫びようと思ってたってこと? 地味にへこむんですけど。
「ナンパされただけです」
「えっ。お前たち、コイツはこう見えても男だぞ?」
どこか少しテンポのズレた発言に、男たちはやや鼻白んだ。
秋尋様の耳は下品な単語は素通りするようにできてるんだろうか……。
今まさに、そのお美しい浴衣姿を値踏みされていたというのに。
そして俺のほうは喧嘩を売り出す5秒前だ。
とはいえ、こんな人混みで大立ち回りを演じるわけにもいかない。ここは人混みであることを利用するのが一番だろう。
俺は男共の足を順に思い切り踏みつけ、その痛みに顔をしかめている隙をついてズボンを足首まで下ろして叫んだ。
「この人たち痴漢です!」
そして秋尋様の手を引いて走り出す。
そのまま追いかけてこようとすればすっ転ぶし、ズボンを上げている間に人混みに紛れてしまえば見つけることは難しい。
……まあ、それに今日のボディーガードは春日さんだから、始末をつけてくれるかもしれない。あの人、俺に甘いから。
「大丈夫ですか?」
秋尋様は下駄だし、あまり走らせてはいけない。少しだけ距離をあけてあとはスピードを落とす。
「あ、ああ。驚いた。お前、思った以上に手際がいいな。あと、やることがえげつない……」
下着まで下ろさなかっただけ、優しいと思ってます。
「秋尋様に無礼を働いたのですから、あれくらい当然です。それより、俺が見境なく喧嘩を売ると思われていたのがショックなんですけど」
「売ったじゃないか」
「うっ……。そ、それは結果論でしょう……」
「朝香は少し、使用人として頑張りすぎる節があるからな。僕が肩に強くあたられたくらいで、殴りかかりにいきそうだ」
「……そんなこと、ないです」
使用人としてじゃないんですよ、秋尋様。貴方が好きだからです。
だから殴りかかりたくもなるし、迷惑かけないようそれを我慢したりもするんです。まあ、心の中では呪いますけど。
「それにお前のほうが、僕に無礼なことをしたしな」
秋尋様はそう言って、繋いだままだった俺の手をギュッと強く握りしめた。
「ほら。これではぐれないし、不埒な手も使えないだろう」
「は、はい……」
「せっかくの夏祭りだ。存分に楽しもう」
その手の温もりを感じながら、俺は鷲掴んでしまった尻の感触を思い出していた。
秋尋様の尻が一番不埒だ……。
金魚すくい、射的、ヨーヨーすくい……。くらいかな、俺が知ってるのは。でも実際にやったことはなくて、見るものすべてが珍しい。
それは秋尋様も同じこと。ぽかんと口を開けながら、遊びに興じる子どもたちを見ている。
「俺たちも何か、やりにいきますか? それとも先に何かお腹に入れましょうか」
「いや……。少し、入っていきづらいな、あの中には」
「秋尋様くらいの歳の方も、たまにいらっしゃいますよ」
寂しそうな表情をしてらしたので、きっとやりたいに違いないと押してみたけれど、秋尋様は首を横に振った。
「でも、小さい時のほうが、楽しめるだろう?」
「そんなことはないと思いますが……」
「僕がもっと早く素直になれていたら、子どもの頃にお前とああやってワイワイしていたのかなと思ったら……少し、寂しくなったんだ」
「秋尋様……」
確かにそうかもしれない。秋尋様が信じてくれていなかっただけで、俺はもうそれはずっと、一途にこの人のことが好きなのだ。
「しかしながら、まず夏祭りに来ようという発想がなかった気もします。実際、俺も友人のアドバイスがなければ思いつきませんでしたし」
「……言われてみれば、確かにそうだな」
子どものうちからイチャイチャしていたかったーという想いはもちろんある。それはそれで幸せだったろうけど、ツンが酷かった時の秋尋様。徐々にデレてくれる秋尋様。この移り変わりが見られたことも、俺にとってはまた幸せであるわけで。
「昔のことを考えるより、今を楽しむべきかと存じます」
「まだ何もしていないのに、お前はやたら楽しそうだな」
「もちろん! 秋尋様と夏祭りに来られたというだけで最高の気分です!」
しかも浴衣で。そして不可抗力とはいえ、ノーパンのお尻までタッチしてしまった。
「なら金魚すくいを……」
「水に濡れたら大変です」
「射的……」
「流れ弾に当たったら秋尋様の柔肌が」
「あのスーパーボールと書いてあるやつは……」
「飲み込んだら」
「誰が飲み込むか! お前のいうことを聞いていたら何もできないぞ」
過保護すぎるとつい先日怒られたばかりなのに、また俺は。
秋尋様の言うことももっともだし、ここは汚れなどを気にせず楽しむのが吉か。
自分で楽しむべきですよとか言っておいてコレとか、秋尋様も呆れただろうな……。
とりあえず射的からやりにいって、秋尋様の銃を構える姿の美しさに感動したり、ヨーヨーをすくう真剣な横顔を楽しんだり、輪なげを投げるの時の浴衣の裾が大変えっちな感じで夢中になった。
「僕にやらせてばかりで、お前は何もやらないのか? 射的など2人分を頼んだのに、結局僕が2回やったし……」
「見ているほうが楽しすぎまして」
「相変わらず、変なやつだな」
俺がもう少し幼ければ、純粋に楽しめたのかな。
不純ではあるけど、これはこれで最高すぎる楽しみ方だとは思うけど、秋尋様は納得いってない様子。
「まあ……。お前は色気より食い気だろうしな。どうせ、食べ物が気になってソワソワしていたんだろう」
幸いいい方向に解釈してくれたので、それに乗っかってごまかしておいた。
「じゃがバター」
「野ざらしで売っているものなど不衛生ですよね」
「チョコバナナ」
「どれほどああやって飾ってあるのか」
「たこ焼き」
「半生でお腹を壊すかも」
「……このやり取り飽きないか?」
「……申し訳ありません」
祭りの日くらい気にするなと叱られ、不安になりながらも頷いた。
秋尋様のお腹は繊細だから、耐えられない気もするんだけど、死ぬわけでもないだろうし。
「ですが、毒味はさせてください。絶対にです」
「誰が毒を盛るんだ、誰が……」
自分でも何を言ってるかわからなくなってきた。
秋尋様は呆れながらも、どこか楽しそうにも見える。
「何しろ祭りは初めてなんだ。そういうことは気にせず楽しく食べよう、朝香」
「はい……」
とは言ったものの、結局秋尋様の口には合わなかったようで、買った屋台飯の大半は俺のお腹に収まることになったのだった。
フランクフルトを頬張る様も眼福だったし、思わぬ間接キスにお腹も心もいっぱいです。
「かき氷があんなにジョリジョリしているとはな」
「あれが普通だと思いますけど」
「シロップしか乗っていない上に薬品のような味がする」
「そんなものだと思いますけど」
終始こんな感じで文句だらけなんだけど、秋尋様はやっぱり楽しそうだ。
「あっ……」
ドン、という大きな音が聴こえて、反射的に顔を上げる。
いつの間にか暗くなった空に大輪の花が咲いていた。
「花火始まっちゃいましたね。ここからでも見えますが、せっかくですので高台のほうへ行きましょう」
「そうだな」
花火は無料で楽しめるものだから、何も見るのはこれが初めてというわけじゃない。でも隣に好きな人がいるというシチュエーションは初めてだ。きっと忘れられない思い出になる。
高台へ向かおうと階段を登ろうとしたところで、秋尋様の歩みが唐突に鈍った。
「秋尋様?」
「朝香……」
潤んだ瞳は、まるで俺を誘っているように見えた。
みんなが花火に気を取られている今なら、木の陰にでも隠れてイチャつけるぞ、と。
「足が痛い」
まあ、妄想でしかなかったけど。
それに秋尋様の足の痛みに気づいてあげられなかったなんて、使用人失格だ。いくらテンションが上がりすぎていたとはいえ……。
「大丈夫ですか? 階段の隅に座ってください」
タオルを敷いて、その上に座ってもらう。俺も傍にしゃがみこんで、秋尋様の足を確かめる。
あ……。これ、浴衣の中が見えそ……いや、いやいや。そんな場合では! しっかりしろ、朝香。下心は封印だ!
「慣れない下駄で、指の皮が剥けちゃってます。凄い痛そうですけど、よく今まで平気でしたね」
足の状態は思ったよりも酷くて、痛々しくて、俺のほうが泣きそうだ。
「夏祭りが楽しくて、感覚が麻痺していたんだろうな。階段を登るのがキツそうだ……と考えたら急にきた」
「なるほど……」
傷口についた泥を落とそうと唇を近づけたら、思いきり顔を押し退けられた。
「ば、馬鹿! さすがに汚い。それに……そ、そんなに足を持ち上げられたら……」
足を揃えて浴衣をギューッと膝のところで押さえているのが可愛らしすぎて、無理矢理にでも舐めたくなる。
「そういえばウエットティッシュ持ってました」
「初めからそれを使え」
俺はウェットティッシュで傷口を拭って、バンドエイドを貼った。痛みをこらえて甘い呻きを漏らす秋尋様がいやらしすぎる。
「きちんと消毒をしたいので、帰りましょうか」
「だが……。花火が」
「秋尋様がどうしても見たければ、背負って階段を上がりますけど」
「いや。それはいい。ただ、お前も……楽しみにしていたのに」
「お祭りは充分楽しめましたし、また来年……。俺と、花火を見てくれますか?」
ドキドキしながら言った台詞。秋尋様が頷くのを見て、天にでも上るような気持ちになる。
来年の約束、してもらえた。また秋尋様とこうして、お祭りに来ることができるんだ。
「小松さんに連絡を入れますね。車までは俺が背負っていきます」
「結局背負われるのか。僕より背の低いお前に」
「それで歩くのは相当キツイと思いますし、俺の力なら問題ないことは秋尋様も知っているでしょう」
「わかった。頼む……」
「はい!」
薄い布一枚越しに尻を触り続けられるとか……天国かな。
幸せな気持ちと足にできたマメが可哀相な気持ちがせめぎあって素直に喜べないけど、欲望は告げている。この機会に堪能しておけと。
秋尋様の前で腰を落とす。少し躊躇いがちに、手のひらが肩に触れた。
ふにっとした肌の感触と、柔らかな重み。しがみつく秋尋様の腕。
……これは。正直、たまらない。俺、勃っちゃわないかな。車まではなんとか堪えないと。まあ元から前屈みになってるから、勃っても見えないかも。そんなに大きくもないし……。
「重くないか?」
「むしろ秋尋様は、身長に対して軽すぎます」
下駄を脱がせて、秋尋様に持ってもらう。そのままゆっくりと歩みを進めた。
帰り道でやっぱりチラチラ見られて、秋尋様はひたすら恥ずかしそうにしてた。
「んッ……。はあ……。朝香……。ゆ、指が尻に食い込んでる……」
「申し訳ありません。この支え方が一番安定するので、堪えてください」
やらしい秋尋様の喘ぎ声をBGMに、空を見上げるとひときわ大きな花火が目の端に映った。
「高く上がったものなら、ここからでもしっかり見えるな」
「そうですね」
でも、あまり……。顔は、上げられない。
「朝香、前に傾いているが、やっぱり重いのでは……」
「大丈夫! 大丈夫です。本当に!」
密着する体温、汗の匂い。手のひらに感じる、確かな弾力。
勃起……。しないわけが、ないよね。
まさに天国と地獄。
けれど俺は、断固として秋尋様の尻から手を離さなかった。
足が痛いだけなので、秋尋様は車の中ではやたらと元気だった。小松さんに、お祭りの何が楽しかったと興奮したように話している。対して俺は相変わらず前に屈んだまま、ぐったりとしていた。幸せは噛み締めているけど。
「朝香、僕をずっと背負ってたから、さすがに疲れたか?」
「いえ。そんなたいした距離でもありませんでしたし」
「なら何故そんな体勢でいる。酔うぞ。背もたれを倒して横になったほうが良くないか」
いやそれはまだちょっと、主張しすぎてしまうので……変態みたいなことに。でも秋尋様が俺のこと、心配してくれてるの嬉しいです。
「朝香さんも疲れてそうですし、お屋敷についたら私が坊っちゃんを運びましょうか?」
「大丈夫です。それは秋尋様の使用人である私の役目ですから!」
「おい、意地を張るな、朝香」
「わ、私が運びたいのです……!」
「ふふふ。老いぼれの出番はなさそうですねえ。それでは朝香さんに任せるとしましょう」
小松さんは意外とアッサリと俺の気持ちを汲んでくれた。秋尋様はどこか不満気な顔をしている。自分より小さな身体に背負われるのは、やっぱり思うところがあるのかもしれない。
屋敷について運ぶ時も『相変わらずだな』とか『使用人であることに拘りすぎる』とか文句を言われた。背負われている身でありながら、よくぞこれだけツレない台詞が口から出てくるもんだと思うくらい。まあ、小松さんの申し出を断って運ばせていただいてるのは俺なんだけどさ。
それに……。使用人としてではなく、単に秋尋様を誰にも触らせたくないだけだし……。
「つきましたよ」
「ん。ご苦労」
扉を開けて中に入り、秋尋様をゆっくりとベッドの上に下ろす。
ああー……。浴衣姿の秋尋様がベッドにコロンしている。なんて素晴らしい光景だろうか。
俺はソワソワしながら濡れたタオルと傷パッドを取って戻った。
「マメが潰れて泥も入ってしまってるので、消毒もしますね」
「い、痛いか……?」
「すでに痛いでしょう、これ。軟膏を塗るだけだから大丈夫ですよ」
できることなら俺が代わってあげたい。でも、なんというか……。痛みに怯える表情、すっごくえっちだな……。
下駄の鼻緒が擦れていた部分に軟膏を塗り込むと、ンッというこらえるような声が上がってまた興奮した。
浴衣姿で色っぽい秋尋様に触りたい。足の指だけではなく、もっと奥まで。
秋尋様は僕がしたい時を察しろなんて言ってたけど、俺のほうがしたすぎてよくわかんなくなってくる。
そもそも、したいですか? なんて訊いたところで、この人が早々素直に答えてくれるわけもないのだ。
今、きっと秋尋様はしたいと思いましたー! とか言って、強引にことを進めてしまおうか。
……どう考えても、足が痛いこの時に、無茶があるよな。不出来な使用人だと思われてしまう。
秋尋様がイタイイタイな時に、こんなことを考えていること自体がもうダメだ。でも浴衣が……。えっちすぎてたまんないんだよ……。
いや……。ここは、我慢だ、我慢!!
「秋尋様、服を着替えましょうか。祭りへ行った浴衣のままで寝かせてしまったので、シーツも替えないといけませんね」
パッドを貼って立ち上がると、秋尋様が俺を追うようにベッドから降りた。
「もう痛くないぞ。なのに、すぐ着替えなきゃならないのか? シーツを替えるのも別にあとでもいいだろう」
「では、しばらく浴衣でいるのですか?」
俺はもう少し秋尋様と一緒にいたいけど、浴衣姿だとムラムラしてしまうので、正直着替えてほしかった。
とても、とても、眼福ではあるのだけど。あるほどツライというか。
「……まあ、割と、悪くはないし……。お前も褒めてくれたし、我ながら結構似合ってると……思ってはいる」
歯切れ悪く可愛らしいことを言うものだから、我慢の限界を軽く越えそうになった。
「ええ。本当に……よくお似合いです」
もし秋尋様と恋人同士であれば、浴衣姿が可愛すぎるのでえっちことがしたいですって正直に言うことができるのに。
「そうか」
「はい」
「……」
「…………」
はっ。もしかしてこれは。さ……誘われてるんじゃないか?
だってさっきから、会話に妙な間が発生することもあるし、不可抗力とはいえ下心込みで尻を触り続けたし、秋尋様がその気になっていてもおかしくはない! という俺の希望的観測。
だってさあ、浴衣の秋尋様と、どうしてもえっちなことがしたいもん。思考がどうしたってそっちのほうへいってしまう。
「秋尋様、えっ……」
いや待て何を言うつもりだ。興奮が勝ちすぎた。何を口走るかわからないというのは怖いな。
「ん? なんだ?」
「……な、夏祭り、楽しかったですね!」
「そうだな」
「その。おんぶするために、俺がお尻を……触っていたでしょう。指も食い込ませてしまいましたし」
「あ、ああ……」
「もし。俺のせいで、そういう……。気分になっていたら、責任を取らせて、もらえないかなって。あー……俺、上手く察せてますか?」
「……最後の台詞はよけいだ」
あ……。あってた。否定の言葉はないから、そういうことでいいんだよな。
逃げ道のように尋ねてしまったけど、それがいけなかったのか秋尋様は少し拗ねたような顔をしている。でも可愛いくて最高です。
俺、秋尋様の拗ねた顔、最高だなって最近よく思うんだ……。もちろんすべてが大好きだけど。
「それに、そもそも……。お前の視線がやらしすぎる」
「えっ!? ウソ! そんな顔してますか、俺!?」
「いつも僕にばかり、たまってるんじゃないですかとか言うが、お前もそういう気分になることがあるということだろう?」
「それはもう、毎日のように……」
「ま、毎日か。大変だな」
俺がそんな気分になるのは、秋尋様のせいなんですけどね。
……だから、幸せでもありますが。
「じゃあ、触れ、朝香」
「はい」
あと未だにきちんと命令してくださるところとか、本当に好き。大好き。
「あと。僕に触るばかりではなく、お前のもなんとかしろ」
「えっ。ですが、俺は別に……」
浴衣の秋尋様にあれやこれやできるだけで僥倖というか、それだけでイケるというか。
「鈍いな。この前のを、今日もしろと言ってるんだ。あれ……気持ち、良かったから」
花火はあまり見られなかったけど、今特大のものが俺の心の中で打ち上がりました、秋尋様。
きらきら、きらきら、光って見える。貴方はどんな大輪の花より美しい。そして、可愛い。
あまりに眩くて、俺は目を細めながらそっと秋尋様に手を伸ばした。
秋尋様に触れる時は何度目であっても緊張するし、至上の喜びを感じる。これから先もその度に、そうなるんだろうなと思う。いつまでこうして触らせてくれるかはわからないけど。秋尋様にとって、これはただの処理にすぎないのだから。
「あ……浴衣の下、肌着はつけていらっしゃったんですね」
「当たり前だ。透けたら困るだろう」
下着のラインが出ないよう、長めの薄いスパッツみたいなものを穿いていた。ノーパンを妄想してハラハラしたり、興奮したりして馬鹿みたいだ。
けど、穿いているとわかっても、浴衣を少しずつ乱していくだけで興奮する。
「肌着だけ、脱がせますね」
「ああ……」
それにこれで、見事に穿いてない秋尋様の完成だ。
指先を浴衣の中にすべらせて、柔らかい肌を堪能する。この前は感じてくれたのに、今日はくすぐったそうにしてる。
何が違うのかな。もっと気持ちよくさせたいんだけど……。
「お前はいつも、身体にも触ろうとするな」
「お嫌でしたか?」
「嫌ではないが、くすぐったい」
たまに身をすくめたり、ふふっと笑う。いつまでも触ってたい。だって出したら終わりだもの。秋尋様的には、さっさと終わりたいと思っているかもしれないけれど。
でもあまりに核心に触れないのも申し訳なくて、指先を下のほうへとしのばせた。
「ん……」
そこは待ちわびるように緩やかに角度を持っていて、じんわりと胸が温かくなる。きちんと、俺の指に反応してくれてるんだ。
手で抜くだけならこれでいいけど、この前のをするなら脱がせないといけないし、脱がないといけない。つまり。この、浴衣を開いて……。開くと、前側だけ全部丸見えになる。肩と腕にだけ薄布がかかってるような状態。
「あ、あまり……。まじまじと見るな。恥ずかしい」
その光景があまりにいやらしすぎるのと感動とで、脱ぐ前に射精してしまった。別に秋尋様の裸を見るのが初めてというわけでもないのに。浴衣効果凄い。いや、秋尋様の裸体は何度見ても慣れることはないし、感動が薄れることもないけれど。
そ、それにこの前はスパッツ越しだったけど、今日は直接……秋尋様に俺の、ちんちんを……。はあ。ダメだ。また出ちゃいそう。出したばかりなのに、すっかり硬くなってるし。
「秋尋様……」
カラカラに乾いた喉を潤すように唾を飲み込んで、秋尋様の握りしめられた手に、そっと手を重ねた。
それから甘えるように顔を胸にすり寄せながら、短パンと下着をまとめて脱ぎ、ベッドの下へ落とす。ねっとりしてたし、糸を引いてただろうから秋尋様から見えないのがありがたい。
「あの。それじゃ、します」
ちゅっと押しあてて、腰を動かす。固定されてないから滑ってぬるんってなった。
「な、なんかヌルヌルしてないか?」
「この前、凄く気持ちよかったので、思い出したら、その……」
「そうか。朝香は感じやすいんだな」
なんだこれ、無茶苦茶恥ずかしい。絶対に俺より秋尋様のが敏感だと思うのにッ!
「気持ちよかったのが僕だけじゃなくて、安心した」
秋尋様はそう言って、ふんわりと笑った。
胸の奥がキュッとなる。秋尋様、俺のことが好きになってるんじゃないかな。そう、錯覚しそうになる。男は対象外だとわかってるけど、でも……。ここまでさせてくれるのだし。
「滑ってしまうので、今日は……手で包みますね」
秋尋様の手を離し、代わりにお互いのを合わせて握りこんでからゆっくりと身体を上下させてみた。
「んんッ……。うわ、なんだ……。これ」
「凄い、気持ちいです、秋尋様」
凄い、こんな……。秋尋様に、挿れてるみたいな感じ。こんなのもうセックスだと思うけど、本当に続けちゃって大丈夫なのかな。
「あ……。朝香、早く、動いて」
躊躇いは即座に消し飛んだ。瞳を潤ませ、肌を上気させた浴衣の秋尋様にねだられて、我慢なんてできるはずない。
「秋尋様……ッ」
ねっとりとした水音が部屋に響く。触れている手のひらが熱い。ぬめりに刺激されて、手まで気持ちがいい。全身が秋尋様にくっついてる。
自慰は数え切れないほどしているから、慣れた感覚のはずなのに、秋尋様のを一緒に握っていると思うと、たまらなかった。
気持ちよくて、よすぎて、幸せで、好きですって告げそうになる。
「はあ、あっ、あっ……。気持ちい、朝香ぁ……」
啜り泣くような喘ぎに、腰が重くなる。
可愛い。本当。俺のものにしたい。傍にいられるだけでいいと思っていたのに、どんどん欲が増していく。
こんなことまで俺に赦してしまって、いいのですか、秋尋様。
俺の手で乱れて、気持ちよくなって、俺の名前を呼んで。
……ああ。なんだか泣いてしまいそうだ。
「朝香……」
秋尋様が肩で息をしながら、重ねあった性器の先端に、手のひらで触れた。
「あ、秋尋様ッ……!」
「ん……ッ!」
ただでさえ限界近かった俺のそれはアッサリ熱を吐き出して、それにつられるような形で秋尋様も射精した。
俺の手も、秋尋様の手とお腹も、ドロドロだ。でも幸い浴衣にはかかってなさそう。
びっくりした。一緒に握ろうと思ったのかな。それとも、出そうになって押さえたのかな。どっちにしても、俺のに触ろうとしてくれたことが嬉しい。
「お手を汚してしまい、申し訳ありません」
さっき足を拭いたタオルの内側を使って、手とお腹を拭いていく。
指の股を丁寧に拭うと、秋尋様が熱っぽい溜息を漏らした。
「お前は察するのが下手だな……」
「え。今、誘っ……」
「誘ってない」
違った。また間違えた。でもしかたないんですけど。俺、秋尋様が溜息ついただけで誘われてしまうんですけど。こんなの呆れられて当然だ。正直、自分はもっと上手くやれると思ってた。
「ただ、その、僕も。誘い方が下手だったんだろうとは思う」
「いえ! そんなことはありません! 俺が……秋尋様に、奉仕したいが故に都合よく考えてはいないかと、グルグルしてしまって……」
「お前のそれは、もう病気レベルだな」
否定はできない。好きだからだとしても、自分の想いがかなりいきすぎている自覚はある。
「だから……。お前が使用人として奉仕したがるのなら、僕も主人として受けとめようかと思う」
「……それって。俺が奉仕したいと思ったら、俺の意思で貴方に触れてもいいということですか?」
秋尋様は頬を染めながらコクンと頷いた。
馬鹿な。こんな幸せがあってもいいのか。この前、しばらく触れるなと言われたばかりだというのに。
朝勃ちの処理したり、お疲れ様でしたって夜にヨシヨシしたり……? 全部俺の好きにしていいと?
その理由が『俺が上手く察することができないから』だというのが、申し訳なさの極みではあるんだけど。
でもそれ以上に嬉しさが勝る。だってこんなの、まるで恋人同士、みたいで。
「ありがとうございます! 幸せです、俺!」
秋尋様が笑いながら俺の頭を撫でた。
「ふふ。お前、本当に犬みたいだな。はは……あはは。くくっ。お、お前が今日、物凄く吠えられていたのを思い出してしまった」
「そ、そんなに笑わないでください。俺だってビックリしたんですから、あれ」
いい雰囲気は吹っ飛んだけど、笑う秋尋様は可愛いし、俺を撫でる手は優しいしで、ないはずの尻尾を振りたくなる。
来年もこうして夏祭りに行けたらいいな。そして、その時は犬に吠えられないといいな。
……また、浴衣の秋尋様とえっちなことができますように。
「そうだ。来年、お前の背が伸びていたら、この浴衣をやろう。今度はお前も浴衣を着て、僕と祭りへ行くんだ。どうだ?」
「が、頑張って大きくなります、俺!」
秋尋様。来年も、俺と行ってくれるんだ。嬉しい。
俺の願いは、浴衣同士でえっちなこと、に更新された。
これはもう頑張って背を伸ばすしかない。
それに秋尋様が今こうして身を包んでいる浴衣に俺が包まることができるという、そんなの俺が秋尋様の中にいるようなものでもう実質セックスでは。
「安心しろ。伸びなくても小学生用の浴衣を買ってやる」
そんなからかいの言葉すら愛おしい。
……でも、絶対に大きくなりますから。
思いがけずできた幸せな来年の約束に、俺の頬はしばらく緩みっぱなしになっていた。
近衛家に引き取られる前は、この時間に追い出されるとしんどくて、そういい思い出もなかった。だからこんなにワクワクした気持ちでいられるのが不思議だ。秋尋様の存在は、俺の全てを塗り替えていく。
屋敷の前でしゃがみながら、茜色に染まりゆく空を眺める。綺麗だなと思えるし、秋尋様にもそう感じてほしいと思った。
後ろでキイと大きな扉が軋む音がして、俺は急いで立ち上がる。
「秋尋様! 見てください! 綺麗な夕陽……」
赤に照らされる、浴衣姿の秋尋様……。紺色の布はお肌の白さを際立たせ、色づいた唇はいつも以上に艷やかに見える。
少し長めの黒髪を片側だけ耳にかけながら、秋尋様が恥ずかしそうに俯いた。
「な、なんだ……。見すぎだぞ」
「いえ。夕陽などより、秋尋様のほうが……遥かにお美しくて……」
それはもう、夕陽など遥か霞む。むしろ引き立て役でしかない。
「馬鹿、な、何を言ってる。やっぱり着替えてくる!」
「どうしてですか! とってもよくお似合いです!」
ずっと見ていたい。ああ、でも他の人に見られるのも嫌だ。
さりとてこのお姿の秋尋様と、夏祭りを楽しみたい気持ちがある。
どちらかといえば生意気というか、少しクールな印象のある秋尋様は見た目だけなら隙がなく見える。いつもピシリとシャツを着込んでいるし、伸びた背筋も綺麗だ。それが浴衣を着ることで、隙が産まれて見える。ホント好きです。隙だけに。
少年と青年中間特有の危うげな色香は、きっと男女問わず余計な虫を引きつけるに違いない。
そこはまあ、俺が……護るとして……。
「朝香は何故、浴衣を着ていないんだ。そもそもお前が、夏祭りといえば浴衣ですよとしつこく言うから着てきたというのに」
「ありがとうございます……」
「答えになってないし、拝むな」
だってもう俺のために着てくれたようなものでしょう、ソレ。そんなの拝みもする。
「はぁ……。お前と話してると行く前から気力が尽きそうだ」
カラン、と下駄の音。きちんと履物まで変えてきている。
ひとり先に行こうとする秋尋様を、慌てて追いかけた。
「ま、待ってください」
「……シャツに、短パン。お前は普通の格好で、僕ひとりだけ馬鹿みたいじゃないか」
「ですが秋尋様をお護りするためには、このほうが都合がよく……」
「遊びに行くんだぞ。今日くらいそういうことは忘れろ」
「それに俺、持ってないんですよ。浴衣」
ピタリ、と秋尋様の歩みが止まったので、走っていって隣に並ぶ。
「そうか」
「はい」
「それならしかたないな……」
今度は隣り合って、ゆっくりと歩き出す。
夏祭りに花火。隣には浴衣の秋尋様。幸せな滑り出しなのに、このまま機嫌が悪かったらどうしようかとヒヤヒヤしたけど、大丈夫そうかな。良かった。
「確かに夕陽が綺麗だな」
「秋尋様と一緒に見ることができて嬉しいです! あ、秋尋様のほうが綺麗ですけど……」
「それはもういい」
どこまで俺の言葉を信じてくれているのか、秋尋様はツンッと顔を逸らした。
でもその横顔が、夕陽のせいだけではなく茜色に染まっている気がして、俺の頬もほんのりと熱くなっていくのだった。
夏祭りが行われている会場の近くまで小松さんに送ってもらい、そこからは徒歩。
金井くんの話によると有名人が呼ばれてライブをするステージがあったり、盆踊りも行われるなど、それなりに大規模なお祭りらしい。
俺たちとは逆にお祭りの帰りなのか、光る腕輪をつけた子どもとか、触覚が生えているようなヘアバンドをしてる人とかもいる。食べるものを手に持ったり、または食べながら歩いていたりもして、色気より食い気な俺としてはそちらのほうが気になる。
もっとも一番気になるのは、秋尋様のことだけど。秋尋様は俺にとって色気でもあり、食い気でもあるから。食べちゃいたいくらい好き、みたいな。
「あっ! 朝香、犬だ。犬がいる。可愛いな」
「ホントですね」
飼い主さんも近くにいて、一人と一匹で誰かを待っているようだった。
犬の可愛さに、立ち代わり人が声をかけたりしてる。
茶色の柴犬はまだ子どもにも見えたけど、おとなしく、でも嬉しそうにちょこんと座ってる。
秋尋様と一緒にいる時の俺が、まさしくあんな感じかもしれない。
「でも俺のほうが可愛いです」
「お前、何を犬に張り合ってるんだ」
秋尋様は呆れたように呟きながら俺を犬のように撫でてくれたので、ワンと小さく鳴いた。
でも秋尋様は本物の犬が気になるようで、タタタッと駆け寄っていってしまった。負けた。俺、よく柴犬っぽいって言われるんだけど、やっぱり人じゃダメか。悔しい……。
俺もジワジワと後ろから近づく。近づいた途端、火がついたように吠えられて、飼い主からスイマセンスイマセンと謝られた。
俺のほうも謝って、そそくさと通りすぎる。秋尋様はワンコに後ろ髪を引かれながも、すぐに追いかけてきてくれた。嬉しい。
「いきなり吠えられて驚いたな。お前、何かしたのか?」
「違います。俺、昔から動物には嫌われるんですよ……」
小さい頃はいつも飢えていて道端の草やそのあたりの動物も食べそうな勢いだったから、本能的な危険を感じて吠えたのかもしれない。実際、雑草なんかは食べてお腹を壊したこともある。
今はすっかり満たされてるはずなんだけどなあ……。もしかして俺が忘れてるだけで、空腹に我を忘れて一度くらいは犬猫を食べたりしたんだろうか……。
「秋尋様が犬を飼っていたら、毎日のように俺と喧嘩してたかもしれませんね」
「確かに相性は悪そうだ。まあ、うちは母親が喘息持ちだから飼えないし……。犬ならお前で充分だしな」
「えっ? えへへ。照れますね」
「褒めてないぞ」
秋尋様に構ってもらえたり、命令してもらえるなら、いつだって貴方の犬になりますけどね、俺。
「あっ。あそこが入口みたいですよ」
「結構賑わってるな」
客層は家族連れ、友達同士、カップル、様々だ。浴衣で来ている人もちらほら見る。
でも、秋尋様が一番綺麗。惚れた欲目もあるとは思うけど、目を引くあでやかさ。何よりこう、滲み出る高貴さがある。一人だけオーラが違う。
「秋尋様! 不埒な輩がいるといけません! 手を繋い……」
伸ばしかけた俺の手は後ろから人に押され、見事に秋尋様の尻を鷲掴んでいた。
薄い布から伝わる、生々しい感触。あき、秋尋様……のっ……ノーパ……。
「馬鹿、何をする! お前が一番不埒だ!」
「も、申し訳ありません! 俺はそのっ、手を繋ごうと思っただけで……!」
というかなんで穿いてないんだ。秋尋様がノーパンとか危険すぎない? こんなの、目が離せない……。いや、スケベ心からではなく! ……スケベ心も多分にあるけど。
あたふたしているうち、人波にもまれて秋尋様が先のほうへ行ってしまった。
マズイ。あんなえっちな……いや、美しい秋尋様をひとりにしたら、絶対にナンパされるに決まってる!
「ねえ、君どこから来たの? 一人?」
そう。こんなふうに……。って、俺のほうか!
「馬鹿、お前ロリコンかよ。この子、小学生じゃね?」
「えー、だって滅多に見ない美少女じゃん」
しかもまんまと小学生女子に間違えられている。
高校生くらいのチャラい男二人組。こんな奴ら相手にしていたら秋尋様を見失う。無視だ無視。
「シカトすることないだろー」
「急いでるんで。だいたい俺、男ですから!」
さすがに男だと言えば諦めてくれるだろうと思ったのに、また腕を掴まれた。
「うちの朝香が何か?」
凛とした、間違えようのない声。……俺の腕を掴んだのは男たちではなく秋尋様だった。
そういえば前、宝来先輩に初めて声をかけられた時もこんなふうに言ってくれたっけ。
はあ……。俺の秋尋様が素敵すぎる。学内とは違って少し声が震えてるけど、そんなところも愛おしい。
「なんだ。兄貴と一緒かよ」
「でもお兄ちゃんのほうも美人じゃね? オレこれなら男でもイケるかも」
「お前、人をロリコン呼ばわりしておいて、自分はホモか」
2人の下卑た会話に、秋尋様は不思議そうに首を捻った。
「朝香から喧嘩を売ったわけではなかったのか?」
な。なんですと。まさか俺を護ろうとしたわけではなく、詫びようと思ってたってこと? 地味にへこむんですけど。
「ナンパされただけです」
「えっ。お前たち、コイツはこう見えても男だぞ?」
どこか少しテンポのズレた発言に、男たちはやや鼻白んだ。
秋尋様の耳は下品な単語は素通りするようにできてるんだろうか……。
今まさに、そのお美しい浴衣姿を値踏みされていたというのに。
そして俺のほうは喧嘩を売り出す5秒前だ。
とはいえ、こんな人混みで大立ち回りを演じるわけにもいかない。ここは人混みであることを利用するのが一番だろう。
俺は男共の足を順に思い切り踏みつけ、その痛みに顔をしかめている隙をついてズボンを足首まで下ろして叫んだ。
「この人たち痴漢です!」
そして秋尋様の手を引いて走り出す。
そのまま追いかけてこようとすればすっ転ぶし、ズボンを上げている間に人混みに紛れてしまえば見つけることは難しい。
……まあ、それに今日のボディーガードは春日さんだから、始末をつけてくれるかもしれない。あの人、俺に甘いから。
「大丈夫ですか?」
秋尋様は下駄だし、あまり走らせてはいけない。少しだけ距離をあけてあとはスピードを落とす。
「あ、ああ。驚いた。お前、思った以上に手際がいいな。あと、やることがえげつない……」
下着まで下ろさなかっただけ、優しいと思ってます。
「秋尋様に無礼を働いたのですから、あれくらい当然です。それより、俺が見境なく喧嘩を売ると思われていたのがショックなんですけど」
「売ったじゃないか」
「うっ……。そ、それは結果論でしょう……」
「朝香は少し、使用人として頑張りすぎる節があるからな。僕が肩に強くあたられたくらいで、殴りかかりにいきそうだ」
「……そんなこと、ないです」
使用人としてじゃないんですよ、秋尋様。貴方が好きだからです。
だから殴りかかりたくもなるし、迷惑かけないようそれを我慢したりもするんです。まあ、心の中では呪いますけど。
「それにお前のほうが、僕に無礼なことをしたしな」
秋尋様はそう言って、繋いだままだった俺の手をギュッと強く握りしめた。
「ほら。これではぐれないし、不埒な手も使えないだろう」
「は、はい……」
「せっかくの夏祭りだ。存分に楽しもう」
その手の温もりを感じながら、俺は鷲掴んでしまった尻の感触を思い出していた。
秋尋様の尻が一番不埒だ……。
金魚すくい、射的、ヨーヨーすくい……。くらいかな、俺が知ってるのは。でも実際にやったことはなくて、見るものすべてが珍しい。
それは秋尋様も同じこと。ぽかんと口を開けながら、遊びに興じる子どもたちを見ている。
「俺たちも何か、やりにいきますか? それとも先に何かお腹に入れましょうか」
「いや……。少し、入っていきづらいな、あの中には」
「秋尋様くらいの歳の方も、たまにいらっしゃいますよ」
寂しそうな表情をしてらしたので、きっとやりたいに違いないと押してみたけれど、秋尋様は首を横に振った。
「でも、小さい時のほうが、楽しめるだろう?」
「そんなことはないと思いますが……」
「僕がもっと早く素直になれていたら、子どもの頃にお前とああやってワイワイしていたのかなと思ったら……少し、寂しくなったんだ」
「秋尋様……」
確かにそうかもしれない。秋尋様が信じてくれていなかっただけで、俺はもうそれはずっと、一途にこの人のことが好きなのだ。
「しかしながら、まず夏祭りに来ようという発想がなかった気もします。実際、俺も友人のアドバイスがなければ思いつきませんでしたし」
「……言われてみれば、確かにそうだな」
子どものうちからイチャイチャしていたかったーという想いはもちろんある。それはそれで幸せだったろうけど、ツンが酷かった時の秋尋様。徐々にデレてくれる秋尋様。この移り変わりが見られたことも、俺にとってはまた幸せであるわけで。
「昔のことを考えるより、今を楽しむべきかと存じます」
「まだ何もしていないのに、お前はやたら楽しそうだな」
「もちろん! 秋尋様と夏祭りに来られたというだけで最高の気分です!」
しかも浴衣で。そして不可抗力とはいえ、ノーパンのお尻までタッチしてしまった。
「なら金魚すくいを……」
「水に濡れたら大変です」
「射的……」
「流れ弾に当たったら秋尋様の柔肌が」
「あのスーパーボールと書いてあるやつは……」
「飲み込んだら」
「誰が飲み込むか! お前のいうことを聞いていたら何もできないぞ」
過保護すぎるとつい先日怒られたばかりなのに、また俺は。
秋尋様の言うことももっともだし、ここは汚れなどを気にせず楽しむのが吉か。
自分で楽しむべきですよとか言っておいてコレとか、秋尋様も呆れただろうな……。
とりあえず射的からやりにいって、秋尋様の銃を構える姿の美しさに感動したり、ヨーヨーをすくう真剣な横顔を楽しんだり、輪なげを投げるの時の浴衣の裾が大変えっちな感じで夢中になった。
「僕にやらせてばかりで、お前は何もやらないのか? 射的など2人分を頼んだのに、結局僕が2回やったし……」
「見ているほうが楽しすぎまして」
「相変わらず、変なやつだな」
俺がもう少し幼ければ、純粋に楽しめたのかな。
不純ではあるけど、これはこれで最高すぎる楽しみ方だとは思うけど、秋尋様は納得いってない様子。
「まあ……。お前は色気より食い気だろうしな。どうせ、食べ物が気になってソワソワしていたんだろう」
幸いいい方向に解釈してくれたので、それに乗っかってごまかしておいた。
「じゃがバター」
「野ざらしで売っているものなど不衛生ですよね」
「チョコバナナ」
「どれほどああやって飾ってあるのか」
「たこ焼き」
「半生でお腹を壊すかも」
「……このやり取り飽きないか?」
「……申し訳ありません」
祭りの日くらい気にするなと叱られ、不安になりながらも頷いた。
秋尋様のお腹は繊細だから、耐えられない気もするんだけど、死ぬわけでもないだろうし。
「ですが、毒味はさせてください。絶対にです」
「誰が毒を盛るんだ、誰が……」
自分でも何を言ってるかわからなくなってきた。
秋尋様は呆れながらも、どこか楽しそうにも見える。
「何しろ祭りは初めてなんだ。そういうことは気にせず楽しく食べよう、朝香」
「はい……」
とは言ったものの、結局秋尋様の口には合わなかったようで、買った屋台飯の大半は俺のお腹に収まることになったのだった。
フランクフルトを頬張る様も眼福だったし、思わぬ間接キスにお腹も心もいっぱいです。
「かき氷があんなにジョリジョリしているとはな」
「あれが普通だと思いますけど」
「シロップしか乗っていない上に薬品のような味がする」
「そんなものだと思いますけど」
終始こんな感じで文句だらけなんだけど、秋尋様はやっぱり楽しそうだ。
「あっ……」
ドン、という大きな音が聴こえて、反射的に顔を上げる。
いつの間にか暗くなった空に大輪の花が咲いていた。
「花火始まっちゃいましたね。ここからでも見えますが、せっかくですので高台のほうへ行きましょう」
「そうだな」
花火は無料で楽しめるものだから、何も見るのはこれが初めてというわけじゃない。でも隣に好きな人がいるというシチュエーションは初めてだ。きっと忘れられない思い出になる。
高台へ向かおうと階段を登ろうとしたところで、秋尋様の歩みが唐突に鈍った。
「秋尋様?」
「朝香……」
潤んだ瞳は、まるで俺を誘っているように見えた。
みんなが花火に気を取られている今なら、木の陰にでも隠れてイチャつけるぞ、と。
「足が痛い」
まあ、妄想でしかなかったけど。
それに秋尋様の足の痛みに気づいてあげられなかったなんて、使用人失格だ。いくらテンションが上がりすぎていたとはいえ……。
「大丈夫ですか? 階段の隅に座ってください」
タオルを敷いて、その上に座ってもらう。俺も傍にしゃがみこんで、秋尋様の足を確かめる。
あ……。これ、浴衣の中が見えそ……いや、いやいや。そんな場合では! しっかりしろ、朝香。下心は封印だ!
「慣れない下駄で、指の皮が剥けちゃってます。凄い痛そうですけど、よく今まで平気でしたね」
足の状態は思ったよりも酷くて、痛々しくて、俺のほうが泣きそうだ。
「夏祭りが楽しくて、感覚が麻痺していたんだろうな。階段を登るのがキツそうだ……と考えたら急にきた」
「なるほど……」
傷口についた泥を落とそうと唇を近づけたら、思いきり顔を押し退けられた。
「ば、馬鹿! さすがに汚い。それに……そ、そんなに足を持ち上げられたら……」
足を揃えて浴衣をギューッと膝のところで押さえているのが可愛らしすぎて、無理矢理にでも舐めたくなる。
「そういえばウエットティッシュ持ってました」
「初めからそれを使え」
俺はウェットティッシュで傷口を拭って、バンドエイドを貼った。痛みをこらえて甘い呻きを漏らす秋尋様がいやらしすぎる。
「きちんと消毒をしたいので、帰りましょうか」
「だが……。花火が」
「秋尋様がどうしても見たければ、背負って階段を上がりますけど」
「いや。それはいい。ただ、お前も……楽しみにしていたのに」
「お祭りは充分楽しめましたし、また来年……。俺と、花火を見てくれますか?」
ドキドキしながら言った台詞。秋尋様が頷くのを見て、天にでも上るような気持ちになる。
来年の約束、してもらえた。また秋尋様とこうして、お祭りに来ることができるんだ。
「小松さんに連絡を入れますね。車までは俺が背負っていきます」
「結局背負われるのか。僕より背の低いお前に」
「それで歩くのは相当キツイと思いますし、俺の力なら問題ないことは秋尋様も知っているでしょう」
「わかった。頼む……」
「はい!」
薄い布一枚越しに尻を触り続けられるとか……天国かな。
幸せな気持ちと足にできたマメが可哀相な気持ちがせめぎあって素直に喜べないけど、欲望は告げている。この機会に堪能しておけと。
秋尋様の前で腰を落とす。少し躊躇いがちに、手のひらが肩に触れた。
ふにっとした肌の感触と、柔らかな重み。しがみつく秋尋様の腕。
……これは。正直、たまらない。俺、勃っちゃわないかな。車まではなんとか堪えないと。まあ元から前屈みになってるから、勃っても見えないかも。そんなに大きくもないし……。
「重くないか?」
「むしろ秋尋様は、身長に対して軽すぎます」
下駄を脱がせて、秋尋様に持ってもらう。そのままゆっくりと歩みを進めた。
帰り道でやっぱりチラチラ見られて、秋尋様はひたすら恥ずかしそうにしてた。
「んッ……。はあ……。朝香……。ゆ、指が尻に食い込んでる……」
「申し訳ありません。この支え方が一番安定するので、堪えてください」
やらしい秋尋様の喘ぎ声をBGMに、空を見上げるとひときわ大きな花火が目の端に映った。
「高く上がったものなら、ここからでもしっかり見えるな」
「そうですね」
でも、あまり……。顔は、上げられない。
「朝香、前に傾いているが、やっぱり重いのでは……」
「大丈夫! 大丈夫です。本当に!」
密着する体温、汗の匂い。手のひらに感じる、確かな弾力。
勃起……。しないわけが、ないよね。
まさに天国と地獄。
けれど俺は、断固として秋尋様の尻から手を離さなかった。
足が痛いだけなので、秋尋様は車の中ではやたらと元気だった。小松さんに、お祭りの何が楽しかったと興奮したように話している。対して俺は相変わらず前に屈んだまま、ぐったりとしていた。幸せは噛み締めているけど。
「朝香、僕をずっと背負ってたから、さすがに疲れたか?」
「いえ。そんなたいした距離でもありませんでしたし」
「なら何故そんな体勢でいる。酔うぞ。背もたれを倒して横になったほうが良くないか」
いやそれはまだちょっと、主張しすぎてしまうので……変態みたいなことに。でも秋尋様が俺のこと、心配してくれてるの嬉しいです。
「朝香さんも疲れてそうですし、お屋敷についたら私が坊っちゃんを運びましょうか?」
「大丈夫です。それは秋尋様の使用人である私の役目ですから!」
「おい、意地を張るな、朝香」
「わ、私が運びたいのです……!」
「ふふふ。老いぼれの出番はなさそうですねえ。それでは朝香さんに任せるとしましょう」
小松さんは意外とアッサリと俺の気持ちを汲んでくれた。秋尋様はどこか不満気な顔をしている。自分より小さな身体に背負われるのは、やっぱり思うところがあるのかもしれない。
屋敷について運ぶ時も『相変わらずだな』とか『使用人であることに拘りすぎる』とか文句を言われた。背負われている身でありながら、よくぞこれだけツレない台詞が口から出てくるもんだと思うくらい。まあ、小松さんの申し出を断って運ばせていただいてるのは俺なんだけどさ。
それに……。使用人としてではなく、単に秋尋様を誰にも触らせたくないだけだし……。
「つきましたよ」
「ん。ご苦労」
扉を開けて中に入り、秋尋様をゆっくりとベッドの上に下ろす。
ああー……。浴衣姿の秋尋様がベッドにコロンしている。なんて素晴らしい光景だろうか。
俺はソワソワしながら濡れたタオルと傷パッドを取って戻った。
「マメが潰れて泥も入ってしまってるので、消毒もしますね」
「い、痛いか……?」
「すでに痛いでしょう、これ。軟膏を塗るだけだから大丈夫ですよ」
できることなら俺が代わってあげたい。でも、なんというか……。痛みに怯える表情、すっごくえっちだな……。
下駄の鼻緒が擦れていた部分に軟膏を塗り込むと、ンッというこらえるような声が上がってまた興奮した。
浴衣姿で色っぽい秋尋様に触りたい。足の指だけではなく、もっと奥まで。
秋尋様は僕がしたい時を察しろなんて言ってたけど、俺のほうがしたすぎてよくわかんなくなってくる。
そもそも、したいですか? なんて訊いたところで、この人が早々素直に答えてくれるわけもないのだ。
今、きっと秋尋様はしたいと思いましたー! とか言って、強引にことを進めてしまおうか。
……どう考えても、足が痛いこの時に、無茶があるよな。不出来な使用人だと思われてしまう。
秋尋様がイタイイタイな時に、こんなことを考えていること自体がもうダメだ。でも浴衣が……。えっちすぎてたまんないんだよ……。
いや……。ここは、我慢だ、我慢!!
「秋尋様、服を着替えましょうか。祭りへ行った浴衣のままで寝かせてしまったので、シーツも替えないといけませんね」
パッドを貼って立ち上がると、秋尋様が俺を追うようにベッドから降りた。
「もう痛くないぞ。なのに、すぐ着替えなきゃならないのか? シーツを替えるのも別にあとでもいいだろう」
「では、しばらく浴衣でいるのですか?」
俺はもう少し秋尋様と一緒にいたいけど、浴衣姿だとムラムラしてしまうので、正直着替えてほしかった。
とても、とても、眼福ではあるのだけど。あるほどツライというか。
「……まあ、割と、悪くはないし……。お前も褒めてくれたし、我ながら結構似合ってると……思ってはいる」
歯切れ悪く可愛らしいことを言うものだから、我慢の限界を軽く越えそうになった。
「ええ。本当に……よくお似合いです」
もし秋尋様と恋人同士であれば、浴衣姿が可愛すぎるのでえっちことがしたいですって正直に言うことができるのに。
「そうか」
「はい」
「……」
「…………」
はっ。もしかしてこれは。さ……誘われてるんじゃないか?
だってさっきから、会話に妙な間が発生することもあるし、不可抗力とはいえ下心込みで尻を触り続けたし、秋尋様がその気になっていてもおかしくはない! という俺の希望的観測。
だってさあ、浴衣の秋尋様と、どうしてもえっちなことがしたいもん。思考がどうしたってそっちのほうへいってしまう。
「秋尋様、えっ……」
いや待て何を言うつもりだ。興奮が勝ちすぎた。何を口走るかわからないというのは怖いな。
「ん? なんだ?」
「……な、夏祭り、楽しかったですね!」
「そうだな」
「その。おんぶするために、俺がお尻を……触っていたでしょう。指も食い込ませてしまいましたし」
「あ、ああ……」
「もし。俺のせいで、そういう……。気分になっていたら、責任を取らせて、もらえないかなって。あー……俺、上手く察せてますか?」
「……最後の台詞はよけいだ」
あ……。あってた。否定の言葉はないから、そういうことでいいんだよな。
逃げ道のように尋ねてしまったけど、それがいけなかったのか秋尋様は少し拗ねたような顔をしている。でも可愛いくて最高です。
俺、秋尋様の拗ねた顔、最高だなって最近よく思うんだ……。もちろんすべてが大好きだけど。
「それに、そもそも……。お前の視線がやらしすぎる」
「えっ!? ウソ! そんな顔してますか、俺!?」
「いつも僕にばかり、たまってるんじゃないですかとか言うが、お前もそういう気分になることがあるということだろう?」
「それはもう、毎日のように……」
「ま、毎日か。大変だな」
俺がそんな気分になるのは、秋尋様のせいなんですけどね。
……だから、幸せでもありますが。
「じゃあ、触れ、朝香」
「はい」
あと未だにきちんと命令してくださるところとか、本当に好き。大好き。
「あと。僕に触るばかりではなく、お前のもなんとかしろ」
「えっ。ですが、俺は別に……」
浴衣の秋尋様にあれやこれやできるだけで僥倖というか、それだけでイケるというか。
「鈍いな。この前のを、今日もしろと言ってるんだ。あれ……気持ち、良かったから」
花火はあまり見られなかったけど、今特大のものが俺の心の中で打ち上がりました、秋尋様。
きらきら、きらきら、光って見える。貴方はどんな大輪の花より美しい。そして、可愛い。
あまりに眩くて、俺は目を細めながらそっと秋尋様に手を伸ばした。
秋尋様に触れる時は何度目であっても緊張するし、至上の喜びを感じる。これから先もその度に、そうなるんだろうなと思う。いつまでこうして触らせてくれるかはわからないけど。秋尋様にとって、これはただの処理にすぎないのだから。
「あ……浴衣の下、肌着はつけていらっしゃったんですね」
「当たり前だ。透けたら困るだろう」
下着のラインが出ないよう、長めの薄いスパッツみたいなものを穿いていた。ノーパンを妄想してハラハラしたり、興奮したりして馬鹿みたいだ。
けど、穿いているとわかっても、浴衣を少しずつ乱していくだけで興奮する。
「肌着だけ、脱がせますね」
「ああ……」
それにこれで、見事に穿いてない秋尋様の完成だ。
指先を浴衣の中にすべらせて、柔らかい肌を堪能する。この前は感じてくれたのに、今日はくすぐったそうにしてる。
何が違うのかな。もっと気持ちよくさせたいんだけど……。
「お前はいつも、身体にも触ろうとするな」
「お嫌でしたか?」
「嫌ではないが、くすぐったい」
たまに身をすくめたり、ふふっと笑う。いつまでも触ってたい。だって出したら終わりだもの。秋尋様的には、さっさと終わりたいと思っているかもしれないけれど。
でもあまりに核心に触れないのも申し訳なくて、指先を下のほうへとしのばせた。
「ん……」
そこは待ちわびるように緩やかに角度を持っていて、じんわりと胸が温かくなる。きちんと、俺の指に反応してくれてるんだ。
手で抜くだけならこれでいいけど、この前のをするなら脱がせないといけないし、脱がないといけない。つまり。この、浴衣を開いて……。開くと、前側だけ全部丸見えになる。肩と腕にだけ薄布がかかってるような状態。
「あ、あまり……。まじまじと見るな。恥ずかしい」
その光景があまりにいやらしすぎるのと感動とで、脱ぐ前に射精してしまった。別に秋尋様の裸を見るのが初めてというわけでもないのに。浴衣効果凄い。いや、秋尋様の裸体は何度見ても慣れることはないし、感動が薄れることもないけれど。
そ、それにこの前はスパッツ越しだったけど、今日は直接……秋尋様に俺の、ちんちんを……。はあ。ダメだ。また出ちゃいそう。出したばかりなのに、すっかり硬くなってるし。
「秋尋様……」
カラカラに乾いた喉を潤すように唾を飲み込んで、秋尋様の握りしめられた手に、そっと手を重ねた。
それから甘えるように顔を胸にすり寄せながら、短パンと下着をまとめて脱ぎ、ベッドの下へ落とす。ねっとりしてたし、糸を引いてただろうから秋尋様から見えないのがありがたい。
「あの。それじゃ、します」
ちゅっと押しあてて、腰を動かす。固定されてないから滑ってぬるんってなった。
「な、なんかヌルヌルしてないか?」
「この前、凄く気持ちよかったので、思い出したら、その……」
「そうか。朝香は感じやすいんだな」
なんだこれ、無茶苦茶恥ずかしい。絶対に俺より秋尋様のが敏感だと思うのにッ!
「気持ちよかったのが僕だけじゃなくて、安心した」
秋尋様はそう言って、ふんわりと笑った。
胸の奥がキュッとなる。秋尋様、俺のことが好きになってるんじゃないかな。そう、錯覚しそうになる。男は対象外だとわかってるけど、でも……。ここまでさせてくれるのだし。
「滑ってしまうので、今日は……手で包みますね」
秋尋様の手を離し、代わりにお互いのを合わせて握りこんでからゆっくりと身体を上下させてみた。
「んんッ……。うわ、なんだ……。これ」
「凄い、気持ちいです、秋尋様」
凄い、こんな……。秋尋様に、挿れてるみたいな感じ。こんなのもうセックスだと思うけど、本当に続けちゃって大丈夫なのかな。
「あ……。朝香、早く、動いて」
躊躇いは即座に消し飛んだ。瞳を潤ませ、肌を上気させた浴衣の秋尋様にねだられて、我慢なんてできるはずない。
「秋尋様……ッ」
ねっとりとした水音が部屋に響く。触れている手のひらが熱い。ぬめりに刺激されて、手まで気持ちがいい。全身が秋尋様にくっついてる。
自慰は数え切れないほどしているから、慣れた感覚のはずなのに、秋尋様のを一緒に握っていると思うと、たまらなかった。
気持ちよくて、よすぎて、幸せで、好きですって告げそうになる。
「はあ、あっ、あっ……。気持ちい、朝香ぁ……」
啜り泣くような喘ぎに、腰が重くなる。
可愛い。本当。俺のものにしたい。傍にいられるだけでいいと思っていたのに、どんどん欲が増していく。
こんなことまで俺に赦してしまって、いいのですか、秋尋様。
俺の手で乱れて、気持ちよくなって、俺の名前を呼んで。
……ああ。なんだか泣いてしまいそうだ。
「朝香……」
秋尋様が肩で息をしながら、重ねあった性器の先端に、手のひらで触れた。
「あ、秋尋様ッ……!」
「ん……ッ!」
ただでさえ限界近かった俺のそれはアッサリ熱を吐き出して、それにつられるような形で秋尋様も射精した。
俺の手も、秋尋様の手とお腹も、ドロドロだ。でも幸い浴衣にはかかってなさそう。
びっくりした。一緒に握ろうと思ったのかな。それとも、出そうになって押さえたのかな。どっちにしても、俺のに触ろうとしてくれたことが嬉しい。
「お手を汚してしまい、申し訳ありません」
さっき足を拭いたタオルの内側を使って、手とお腹を拭いていく。
指の股を丁寧に拭うと、秋尋様が熱っぽい溜息を漏らした。
「お前は察するのが下手だな……」
「え。今、誘っ……」
「誘ってない」
違った。また間違えた。でもしかたないんですけど。俺、秋尋様が溜息ついただけで誘われてしまうんですけど。こんなの呆れられて当然だ。正直、自分はもっと上手くやれると思ってた。
「ただ、その、僕も。誘い方が下手だったんだろうとは思う」
「いえ! そんなことはありません! 俺が……秋尋様に、奉仕したいが故に都合よく考えてはいないかと、グルグルしてしまって……」
「お前のそれは、もう病気レベルだな」
否定はできない。好きだからだとしても、自分の想いがかなりいきすぎている自覚はある。
「だから……。お前が使用人として奉仕したがるのなら、僕も主人として受けとめようかと思う」
「……それって。俺が奉仕したいと思ったら、俺の意思で貴方に触れてもいいということですか?」
秋尋様は頬を染めながらコクンと頷いた。
馬鹿な。こんな幸せがあってもいいのか。この前、しばらく触れるなと言われたばかりだというのに。
朝勃ちの処理したり、お疲れ様でしたって夜にヨシヨシしたり……? 全部俺の好きにしていいと?
その理由が『俺が上手く察することができないから』だというのが、申し訳なさの極みではあるんだけど。
でもそれ以上に嬉しさが勝る。だってこんなの、まるで恋人同士、みたいで。
「ありがとうございます! 幸せです、俺!」
秋尋様が笑いながら俺の頭を撫でた。
「ふふ。お前、本当に犬みたいだな。はは……あはは。くくっ。お、お前が今日、物凄く吠えられていたのを思い出してしまった」
「そ、そんなに笑わないでください。俺だってビックリしたんですから、あれ」
いい雰囲気は吹っ飛んだけど、笑う秋尋様は可愛いし、俺を撫でる手は優しいしで、ないはずの尻尾を振りたくなる。
来年もこうして夏祭りに行けたらいいな。そして、その時は犬に吠えられないといいな。
……また、浴衣の秋尋様とえっちなことができますように。
「そうだ。来年、お前の背が伸びていたら、この浴衣をやろう。今度はお前も浴衣を着て、僕と祭りへ行くんだ。どうだ?」
「が、頑張って大きくなります、俺!」
秋尋様。来年も、俺と行ってくれるんだ。嬉しい。
俺の願いは、浴衣同士でえっちなこと、に更新された。
これはもう頑張って背を伸ばすしかない。
それに秋尋様が今こうして身を包んでいる浴衣に俺が包まることができるという、そんなの俺が秋尋様の中にいるようなものでもう実質セックスでは。
「安心しろ。伸びなくても小学生用の浴衣を買ってやる」
そんなからかいの言葉すら愛おしい。
……でも、絶対に大きくなりますから。
思いがけずできた幸せな来年の約束に、俺の頬はしばらく緩みっぱなしになっていた。
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