甘すぎるのも悪くない

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甘さ控えめ

君の気持ちが知りたい

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 たまたま傍に居ただけ。

 傍に居たのが、おれだったから。

 実は口実でおれと二人きりになりたいだけだった……。


 一番最後はまあ、ないな。そもそも会えたのが偶然だし。あ、おれに会えたから仕事をキャンセルしたとか。いやいや、さすがにそれは、自分に都合いいにもほどがある。

 でも好きな人に学校さぼってカラオケに連れ出されたら、それは少しは期待もするってもんだろう。

 しかも相手は男女問わず付き合う相手に困ることはなさそうな先輩だ。

 おれを優等生扱いしてるくせにさ。断られるなんて微塵も思っていなさそうな笑顔ってどうなんだよ。少なくとも自分が好かれてることは理解して……るんだよな。


「……ついたぜ」

「え、先輩、ここってホテル……」

「カラオケも、ついてるし……」

「先輩……」


 などという白昼夢展開にはならず、普通に安いカラオケボックスに入った。モデルだから特別ってこともなく、本当に普通に、高校生が入るような。


「ここ、結構飯もデザートも美味いんだ」


 どうやら基準はデザートらしい。


「好きな物頼めよ。今日は奢るから」

「え、いいんですか?」

「俺が付き合ってもらってるんだし。この前はお前に奢ってもらったしな、後輩くん」


 先輩が、にっと笑う。ああ、だめだ、どきどきしてきた。どうしてこの人はこんなにカッコイイんだろう。

 というかもう、二人きりだし……。店員は来るかもしれないけど、一応密室だし……。


「あの……。先輩、なんでおれを誘ったんですか?」

「ん? あの場に居たから」


 もっとも一般的な答えを返された。


「……あの場に居たら、誰でも誘いましたか?」


 想定していた筈なのにそれはどこか悔しくて、気付けばそんなことを尋ねていた。

 先輩が少しだけ目を見開く。ああ、そんな表情も好きだな、なんて思ってから、自分が言ったことが恥ずかしくて仕方なくなってきた。


 いや、だってこれ。これって。おれ、割りと凄いこと聞いて……。


「もしあの場に居たのがお前じゃなかったら……。そうだな。帰って家で休んでたかもしれないな」

「えっ……」


 自分で聞いておきながら、おれはずいぶんと素っ頓狂な声を上げていたと思う。

 先輩が、ぷっと噴き出した。


「なんだよその顔」

「先輩が、おれだったから、誘った……みたいなこと、言うからです」

「そう言ってるだろ」


 ……本当に、そうなんだ。

 今日のは夢じゃない。おれの言った台詞の意味、先輩が気付いてないとは思えない。

 だって先輩は、女の人に凄くもてるし、恋愛経験も豊富そうだ。偏見かもしれないけどモデル業界にはその手の人が多いって聞くから、おれが男だとしてもまったく気付かないってことはないだろう。

 それともひょっとしておれ、めちゃくちゃ侮られてる? 優等生とか呼ばれてるし。優等生は男に惚れないとでも思っているのか。さっき尋ねた理由も優等生は天然で仕方ないな、とか思われてたり。


「で、何頼む? 俺はこのカプチーノフラッペと、チョコレートサンデーかな」


 というか……。思いっ切り流されているんですが。

 そんな、何事もなかったみたいに。おれの気持ちなんて、たいしたことないみたいに。

 先輩、一体おれのこと、どう思ってるんだよ……!
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