18 / 106
甘さ控えめ
君の気持ちが知りたい
しおりを挟む
たまたま傍に居ただけ。
傍に居たのが、おれだったから。
実は口実でおれと二人きりになりたいだけだった……。
一番最後はまあ、ないな。そもそも会えたのが偶然だし。あ、おれに会えたから仕事をキャンセルしたとか。いやいや、さすがにそれは、自分に都合いいにもほどがある。
でも好きな人に学校さぼってカラオケに連れ出されたら、それは少しは期待もするってもんだろう。
しかも相手は男女問わず付き合う相手に困ることはなさそうな先輩だ。
おれを優等生扱いしてるくせにさ。断られるなんて微塵も思っていなさそうな笑顔ってどうなんだよ。少なくとも自分が好かれてることは理解して……るんだよな。
「……ついたぜ」
「え、先輩、ここってホテル……」
「カラオケも、ついてるし……」
「先輩……」
などという白昼夢展開にはならず、普通に安いカラオケボックスに入った。モデルだから特別ってこともなく、本当に普通に、高校生が入るような。
「ここ、結構飯もデザートも美味いんだ」
どうやら基準はデザートらしい。
「好きな物頼めよ。今日は奢るから」
「え、いいんですか?」
「俺が付き合ってもらってるんだし。この前はお前に奢ってもらったしな、後輩くん」
先輩が、にっと笑う。ああ、だめだ、どきどきしてきた。どうしてこの人はこんなにカッコイイんだろう。
というかもう、二人きりだし……。店員は来るかもしれないけど、一応密室だし……。
「あの……。先輩、なんでおれを誘ったんですか?」
「ん? あの場に居たから」
もっとも一般的な答えを返された。
「……あの場に居たら、誰でも誘いましたか?」
想定していた筈なのにそれはどこか悔しくて、気付けばそんなことを尋ねていた。
先輩が少しだけ目を見開く。ああ、そんな表情も好きだな、なんて思ってから、自分が言ったことが恥ずかしくて仕方なくなってきた。
いや、だってこれ。これって。おれ、割りと凄いこと聞いて……。
「もしあの場に居たのがお前じゃなかったら……。そうだな。帰って家で休んでたかもしれないな」
「えっ……」
自分で聞いておきながら、おれはずいぶんと素っ頓狂な声を上げていたと思う。
先輩が、ぷっと噴き出した。
「なんだよその顔」
「先輩が、おれだったから、誘った……みたいなこと、言うからです」
「そう言ってるだろ」
……本当に、そうなんだ。
今日のは夢じゃない。おれの言った台詞の意味、先輩が気付いてないとは思えない。
だって先輩は、女の人に凄くもてるし、恋愛経験も豊富そうだ。偏見かもしれないけどモデル業界にはその手の人が多いって聞くから、おれが男だとしてもまったく気付かないってことはないだろう。
それともひょっとしておれ、めちゃくちゃ侮られてる? 優等生とか呼ばれてるし。優等生は男に惚れないとでも思っているのか。さっき尋ねた理由も優等生は天然で仕方ないな、とか思われてたり。
「で、何頼む? 俺はこのカプチーノフラッペと、チョコレートサンデーかな」
というか……。思いっ切り流されているんですが。
そんな、何事もなかったみたいに。おれの気持ちなんて、たいしたことないみたいに。
先輩、一体おれのこと、どう思ってるんだよ……!
傍に居たのが、おれだったから。
実は口実でおれと二人きりになりたいだけだった……。
一番最後はまあ、ないな。そもそも会えたのが偶然だし。あ、おれに会えたから仕事をキャンセルしたとか。いやいや、さすがにそれは、自分に都合いいにもほどがある。
でも好きな人に学校さぼってカラオケに連れ出されたら、それは少しは期待もするってもんだろう。
しかも相手は男女問わず付き合う相手に困ることはなさそうな先輩だ。
おれを優等生扱いしてるくせにさ。断られるなんて微塵も思っていなさそうな笑顔ってどうなんだよ。少なくとも自分が好かれてることは理解して……るんだよな。
「……ついたぜ」
「え、先輩、ここってホテル……」
「カラオケも、ついてるし……」
「先輩……」
などという白昼夢展開にはならず、普通に安いカラオケボックスに入った。モデルだから特別ってこともなく、本当に普通に、高校生が入るような。
「ここ、結構飯もデザートも美味いんだ」
どうやら基準はデザートらしい。
「好きな物頼めよ。今日は奢るから」
「え、いいんですか?」
「俺が付き合ってもらってるんだし。この前はお前に奢ってもらったしな、後輩くん」
先輩が、にっと笑う。ああ、だめだ、どきどきしてきた。どうしてこの人はこんなにカッコイイんだろう。
というかもう、二人きりだし……。店員は来るかもしれないけど、一応密室だし……。
「あの……。先輩、なんでおれを誘ったんですか?」
「ん? あの場に居たから」
もっとも一般的な答えを返された。
「……あの場に居たら、誰でも誘いましたか?」
想定していた筈なのにそれはどこか悔しくて、気付けばそんなことを尋ねていた。
先輩が少しだけ目を見開く。ああ、そんな表情も好きだな、なんて思ってから、自分が言ったことが恥ずかしくて仕方なくなってきた。
いや、だってこれ。これって。おれ、割りと凄いこと聞いて……。
「もしあの場に居たのがお前じゃなかったら……。そうだな。帰って家で休んでたかもしれないな」
「えっ……」
自分で聞いておきながら、おれはずいぶんと素っ頓狂な声を上げていたと思う。
先輩が、ぷっと噴き出した。
「なんだよその顔」
「先輩が、おれだったから、誘った……みたいなこと、言うからです」
「そう言ってるだろ」
……本当に、そうなんだ。
今日のは夢じゃない。おれの言った台詞の意味、先輩が気付いてないとは思えない。
だって先輩は、女の人に凄くもてるし、恋愛経験も豊富そうだ。偏見かもしれないけどモデル業界にはその手の人が多いって聞くから、おれが男だとしてもまったく気付かないってことはないだろう。
それともひょっとしておれ、めちゃくちゃ侮られてる? 優等生とか呼ばれてるし。優等生は男に惚れないとでも思っているのか。さっき尋ねた理由も優等生は天然で仕方ないな、とか思われてたり。
「で、何頼む? 俺はこのカプチーノフラッペと、チョコレートサンデーかな」
というか……。思いっ切り流されているんですが。
そんな、何事もなかったみたいに。おれの気持ちなんて、たいしたことないみたいに。
先輩、一体おれのこと、どう思ってるんだよ……!
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる