甘すぎるのも悪くない

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甘さ控えめ

告白シミュレーション

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 いっそこれは告白してしまうべきじゃないだろうか。

 だって先輩は絶対におれの気持ちを知っていると思う。知っていてこうして付き合ってくれている。


 でも……告白されたら切ろうと思っていたりしたらどうしよう。告げた途端「お前との仲はそれまでだな」なんて言われたりしたら。元々たいした仲じゃないってのに。


 いや、そもそも気付いているという点に関してもおれの推測でしかない。


「おい、後輩くん」

「あ、ええ。何ですか?」

「だから、何頼むって」

「じゃあバニラアイスで……」

「王道だな」


 先輩はそう笑って、注文をするべく受話器を取った。

 背中から見る立ち姿も凄くかっこよくて、惚れ惚れしてしまう。


 上から下まで背骨にそってなぞってみたくなったり、形のいい尻をズボンの上から撫で上げてみたくなったり……。おれってば、変態親父みたいなこと。


 そうしたくなる対象が女子高生じゃない辺り、親父より酷い。


 先輩ははきっと「好きです」なんて言われ慣れてる。男に告白されたことも絶対にあると思う。

 少しでも先輩の印象に残るような告白をしたい。その他大勢にされたくない。


 やっぱり無難に好きです、が一番いいかな。愛してます、まで言ったら引くかな。いきなりキスをしてみたら、印象には残るだろうけど最悪な展開になるだろうか。

 どうせ拒まれるんだったら最後まで……とか、さすがにカラオケでできない展開想像してもな……。

 とりあえず、少しずつ、会話から探っていくか。


「フロント出ないな。忙しいのかな」


 先輩がそう言って、おれの隣に腰掛ける。


「あの……先輩」

「ん?」

「おれ……。その、最近、アイス作るのに凝ってるんですけど、うちに食べに来ませんか、今度」


 作ったこともないのに言ってみる。

 甘い物を作る、予定ではあった。先輩を呼び出す餌にするために。


「え。マジで? 行く行く!」


 割りと簡単に、家に来ることはオーケーしてくれた。だが喜んではいけない。逆に、気軽にオーケーしたことによって守備範囲外だと思われている可能性が高い。

 というか、やっぱり意識はされてないのか。はぁぁ……。


「お前、誘っておいてそんなへこんだ顔はないだろ」


 髪の毛をさらりと撫でられて狼狽する。先輩の顔が凄く近い。心臓が、どっどっとありえない音を立てる。


「やっぱり……可愛い顔してるなー。後輩くん」


 そんな下心も何もないような無邪気な顔で笑って。こっちはその、貴方が言うところの可愛い顔で下心いっぱいです!


 こんな……口唇の、届くような、距離……で……。


「ん」


 先輩が目を見開く。おれはぎょっとして顔を離した。

 ああ、まずい。あまりに近づけられたから、うっかり、キスした。しかも今度は夢じゃない。


 頭の中で組み立てた告白法なんて、現実では何の役にも立たなかった。
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