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甘くとかして
強がり
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先輩の背中に顔を埋めて、はーっと息を吐く。
「……気持ちよかったです」
「くっ……。うう。と、とりあえず抜け、終わったなら抜け」
「はっ、はい……」
そうっと引き抜くと、先輩はびくびくと身体を震わせてからぐったりと上半身をソファに沈み込ませた。
「ううう……」
「あ、あの、平気ですか?」
「平気なもんか、この……っ。まさかホンットにやられるとは……」
「でもいつかはそうなるって判ってたでしょ。指入れるのは許してくれてたんですから」
「……お前、手早すぎんだよ、馬鹿」
肯定だ。嬉しい。先輩もいつかはおれと……そうなるって、思っていてくれたってことでいいんだよな。
おれも、長期戦でいくつもりだったから、こんなに早く致してしまえるとは……まあ、願ってはいたけど。
「後輩くんなら、3ヶ月で手つないで1年で初ちゅーとかだろ」
「ちゅーは付き合う前にしちゃったじゃないですか」
「そういやそうだった」
おれそんなに真面目そうに見えるのかな……。
少なくとも中身は全然そんなことない。
先輩も手早すぎるって言ってるし。逆に男同士だったから焦っていたっていうのもある。
……こう、早く……しておかないと、逆にやられそうだしな、とかそのあたりの懸念も。
「はあー。もう、信じらんね。まさかバックヴァージン奪われちゃうなんてさぁ」
先輩がそう、軽い感じで言ってくれてホッとした。
深刻な感じで言われたらやっぱちょと、申し訳なく思ってしまうし。
「嬉しかったですよ、おれは、凄く! 先輩可愛かったですし!」
「よせよ、馬鹿。でも、ま。気持ち良かったから、許してやるよ。痛みも思ったよりはなかったしな」
先輩が起きあがって、おれの髪に手を差し入れてぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
「しかしホントに突っ込まれて感じるものなんだな。さすがにちょっと、ショックだ。後輩くん相手じゃなかったら、殺してるとこだ」
ソファーに置いた先輩の手、震えてる。
軽い感じで言ってるけど、本当は傷付いてる? それとも……。
「あの、先輩。本当に痛くないんですか?」
「ないさ、痛くない」
「本当に?」
「ああ」
「……おれ、本当に嬉しかったです。先輩とひとつになれて」
「後輩くんが幻滅しなかったんなら、良かったよ。喜んでる顔も見れたしな」
話題を変えてちょっと油断したところで、先輩の身体を押し倒した。
「だから、素直になってもいいんです」
「っおい、おま、ちょ……!」
そして確認するために、さっきまでおれを飲み込んでいたそこに指を差し入れ、中をぐるりと掻き回す。
「……っ! ぐっ……うう、よ、せ、痛い、痛いって!」
「やっぱり、痛いんじゃないですか」
「うう、酷いぜ、後輩くん」
確認するように指を差し込まれた屈辱的な格好だというのに、先輩の抵抗は少ない。
多分痛みで力が入らないんだな……。と思うと、ちょっと暴力的な気持ちにもなってしまうんだけど。
何しろまだ足りない。もっと先輩を貪りたいし……。
思わず、先輩のいいところを指で擦りあげてしまった。
「あっ……。馬鹿、も、よせって!」
「ご、ごめんなさい」
さすがにそれはないよな、うん。
おれは指を引き抜いた。それに確認したのは、別にこうするためじゃない。
「多分切れてはいないと思いますけど……。どうして痩せ我慢するんですか。今薬持ってくるから、ちょっと待っててください」
「……ま、待て」
ソファを離れようとするおれの腕を、先輩が掴む。
「何ですか?」
「ちょっとこっちに……」
先輩が、よろよろとソファに寝転がって、おれを誘った。
ような気がした、とかじゃない。手、広げて、ん、って顔でおれを見ている。
「え……?」
「だから来いって、ほら」
「え、い、いいんですか?」
「馬鹿っ、そういうんじゃない。とにかく、来い」
あ、ああ。していいって意味じゃないのか。
でも全裸でそんなことされたら、普通はそうだと思うって。
とりあえずおれは、先輩に従って、身体を重ねるようにしてソファに寝転んだ。
先輩はおれの身体を抱きしめると、ぽんぽんと軽く頭を叩く。
え……。何だろう、これ。
「お前初めてだったんだろ? その、男とは……とかじゃなくて、やること自体が」
「そうですけど」
「……いい思い出にしてやりたいじゃん、やっぱさ。俺が痛がってたら、サマにならないだろ?」
「先輩……」
胸に暖かいものがじわりとこみ上げる。
だから痛いの我慢してくれたのか。痛いの苦手なのに、おれのために……。
あ、でも、それだと……。
「まさか気持ち良かったっていうのも嘘だったり……?」
「……そうだ。って言いたいけどな、男は女と違って演技なんてできないから判るだろ、それくらい。イッてるの丸判りなんだからさ」
先輩がはあーっとため息をつく。それを素直に認めるところも、おれにいい思い出を作りたいっていう気持ちの表れなのかもしれない。
「でも、痛いんですよね」
「っ……だ、から、触るなって……」
痛みを我慢している姿って、なんか、あの時とかぶって凄くそそる……。
ああ。おれが暑いのを我慢してる姿を見て、先輩がそう思うのと同じような感覚なのかなぁ。
「先輩のその気持ちだけで、おれ充分嬉しかったですから、いいですよ。だから、薬塗りましょう。震えてる先輩も可愛いですけどね」
「……バーカ」
それから軟膏を持って音を立てずにソファに戻ると、先輩がぐったりと沈み込んでいた。
「平気ですか?」
「あ、ああ。もちろん」
声をかけると、慌てて起きあがって、さわやかな笑顔。
……これが培ってきた痩せ我慢か。
「もうおれにはばれてるんですから、いいですよ。無理しなくて。いい思い出も嬉しいですけど、素直な先輩を見られるのはもっと嬉しいです」
「ん、そだな……。じゃ、薬」
先輩が手を差し出す。おれは、先輩には渡さずに薬を指先ですくった。
「は?」
「おれが塗ってあげます」
「ばっ……馬鹿か! いい、自分でやる!」
「おれにいい思い出作ってくれるんですよね。最後までさせてください」
「無理、無理! 前言撤回! ……っ」
おれは先輩の肩に、甘く噛みついた。
「っ……」
「塗らせてくれないと、うっかり思い切り噛んじゃうかも」
「卑怯な……」
いつもなら絶対こんなことできないけど、今先輩は痛みでパワーダウンしてる。
優位に立てる時くらい、立っておかないと。
「ううう。薬まで塗られるなんて屈辱的すぎる。何が楽しいんだよ、後輩くん」
「先輩のそういう顔を見るのが」
「くそー……。いつか逆にヤッてやるからな……」
おれは唸る先輩を抱きしめて、キスをした。
軟膏をすくった指を、そっと奥に塗り込めていく。
「痛いですか?」
「まあ……ちょっと」
丁寧すぎるほどだった指先の動きをちょっと強くすると、先輩がびくりと背を震わせた。
「……いや、凄く痛い」
「意地張らなくてもいいのに、おれの前では」
「好きな奴の前でカッコつけていたいのは当たり前だろ」
ああ、そうか。確かにそうかも……。
「でも、おれの言い分も判りますよね?」
「男だからな、それなりには」
「とりあえず今日はおれの初めてなんで……おれ、優位でいいでしょ?」
「ったく。こういう時だけカワイコぶりやがって。俺だってさぁ、こっちは初めてだったんだぞ、後輩くんが」
「嬉しいです、凄く」
頬が緩むのを、止められないくらい。
そんなおれの顔を見て、先輩はますます拗ねてしまった。
それをまた、キスで宥める。もの凄く甘ったるい空気が流れてて、でもそれが心地いい。
先輩も同じように思っていてくれてると、いいな……。
「2人の時は、瑞貴さんって呼びたいな」
「はは、なんかくすぐったいな」
「瑞貴さんもおれのこと、景って呼んでください」
「ん……。んー。ずっと名前で呼んでなかったからちょっと照れくさいな。それに……」
「それに、何ですか?」
「いや、何でも」
頬の赤さでバレバレなんですけど。可愛すぎてどうしたら。さっきまでのひょうひょうとした姿はどこいっちゃったんですか。
「……さっきの、思い出すからですか?」
「っ……判ってても、気付かないフリしろよ」
「無理です。可愛すぎて」
おれはまた、先輩にキスを繰り返す。
もう今日はこのまま一日、引っ付いていようと思ったんだけど…………。
「……あ、暑……い」
「してる最中、リモコン踏んだみたいだな」
エアコンが止まっていた上に、リモコンが故障してしまった。
さっきまで先輩がぐったりと沈み込んでいた場所に、今度はおれが沈み込む。
先輩は形勢逆転とばかりに覆い被さってきて、おれが暑がるのを楽しんでいる。
「暑くてとけそうです」
「そうだな。でもおれに引っ付かれるのは幸せなんだろ?」
「し、幸せだけど、おれ、暑さだけは……」
「俺だって痛いの苦手だけど我慢したんだぜ」
「今日はおれが、せんぱ……瑞貴さんを一日甘くあまーく、とかしてあげるつもりだったのにっ……」
身体中撫でて、甘やかして、いっぱいキスして。
なのにおれがとけそうになってるとか……。せっかくの、初めての……日なのに。
「馬鹿だな、後輩くん」
「いいじゃないですか、夢見るくらい」
「そうじゃなくてさ」
瑞貴さんがおれに、耳を寄せる。囁かれた言葉に、おれはそれこそとけそうになった。
「……とっくに、どろどろにとかされてるよ。お前に」
おれも、貴方になら……とかされても、いいです。
苦手な暑さも、きっと耐えられる。一緒にとけて、くれるなら。
※※※
ここで本編完結となります。
ありがとうございました!
この先は短編やお題の番外編集です。
長い話にはサブタイトルにナンバリングがつきます
「……気持ちよかったです」
「くっ……。うう。と、とりあえず抜け、終わったなら抜け」
「はっ、はい……」
そうっと引き抜くと、先輩はびくびくと身体を震わせてからぐったりと上半身をソファに沈み込ませた。
「ううう……」
「あ、あの、平気ですか?」
「平気なもんか、この……っ。まさかホンットにやられるとは……」
「でもいつかはそうなるって判ってたでしょ。指入れるのは許してくれてたんですから」
「……お前、手早すぎんだよ、馬鹿」
肯定だ。嬉しい。先輩もいつかはおれと……そうなるって、思っていてくれたってことでいいんだよな。
おれも、長期戦でいくつもりだったから、こんなに早く致してしまえるとは……まあ、願ってはいたけど。
「後輩くんなら、3ヶ月で手つないで1年で初ちゅーとかだろ」
「ちゅーは付き合う前にしちゃったじゃないですか」
「そういやそうだった」
おれそんなに真面目そうに見えるのかな……。
少なくとも中身は全然そんなことない。
先輩も手早すぎるって言ってるし。逆に男同士だったから焦っていたっていうのもある。
……こう、早く……しておかないと、逆にやられそうだしな、とかそのあたりの懸念も。
「はあー。もう、信じらんね。まさかバックヴァージン奪われちゃうなんてさぁ」
先輩がそう、軽い感じで言ってくれてホッとした。
深刻な感じで言われたらやっぱちょと、申し訳なく思ってしまうし。
「嬉しかったですよ、おれは、凄く! 先輩可愛かったですし!」
「よせよ、馬鹿。でも、ま。気持ち良かったから、許してやるよ。痛みも思ったよりはなかったしな」
先輩が起きあがって、おれの髪に手を差し入れてぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
「しかしホントに突っ込まれて感じるものなんだな。さすがにちょっと、ショックだ。後輩くん相手じゃなかったら、殺してるとこだ」
ソファーに置いた先輩の手、震えてる。
軽い感じで言ってるけど、本当は傷付いてる? それとも……。
「あの、先輩。本当に痛くないんですか?」
「ないさ、痛くない」
「本当に?」
「ああ」
「……おれ、本当に嬉しかったです。先輩とひとつになれて」
「後輩くんが幻滅しなかったんなら、良かったよ。喜んでる顔も見れたしな」
話題を変えてちょっと油断したところで、先輩の身体を押し倒した。
「だから、素直になってもいいんです」
「っおい、おま、ちょ……!」
そして確認するために、さっきまでおれを飲み込んでいたそこに指を差し入れ、中をぐるりと掻き回す。
「……っ! ぐっ……うう、よ、せ、痛い、痛いって!」
「やっぱり、痛いんじゃないですか」
「うう、酷いぜ、後輩くん」
確認するように指を差し込まれた屈辱的な格好だというのに、先輩の抵抗は少ない。
多分痛みで力が入らないんだな……。と思うと、ちょっと暴力的な気持ちにもなってしまうんだけど。
何しろまだ足りない。もっと先輩を貪りたいし……。
思わず、先輩のいいところを指で擦りあげてしまった。
「あっ……。馬鹿、も、よせって!」
「ご、ごめんなさい」
さすがにそれはないよな、うん。
おれは指を引き抜いた。それに確認したのは、別にこうするためじゃない。
「多分切れてはいないと思いますけど……。どうして痩せ我慢するんですか。今薬持ってくるから、ちょっと待っててください」
「……ま、待て」
ソファを離れようとするおれの腕を、先輩が掴む。
「何ですか?」
「ちょっとこっちに……」
先輩が、よろよろとソファに寝転がって、おれを誘った。
ような気がした、とかじゃない。手、広げて、ん、って顔でおれを見ている。
「え……?」
「だから来いって、ほら」
「え、い、いいんですか?」
「馬鹿っ、そういうんじゃない。とにかく、来い」
あ、ああ。していいって意味じゃないのか。
でも全裸でそんなことされたら、普通はそうだと思うって。
とりあえずおれは、先輩に従って、身体を重ねるようにしてソファに寝転んだ。
先輩はおれの身体を抱きしめると、ぽんぽんと軽く頭を叩く。
え……。何だろう、これ。
「お前初めてだったんだろ? その、男とは……とかじゃなくて、やること自体が」
「そうですけど」
「……いい思い出にしてやりたいじゃん、やっぱさ。俺が痛がってたら、サマにならないだろ?」
「先輩……」
胸に暖かいものがじわりとこみ上げる。
だから痛いの我慢してくれたのか。痛いの苦手なのに、おれのために……。
あ、でも、それだと……。
「まさか気持ち良かったっていうのも嘘だったり……?」
「……そうだ。って言いたいけどな、男は女と違って演技なんてできないから判るだろ、それくらい。イッてるの丸判りなんだからさ」
先輩がはあーっとため息をつく。それを素直に認めるところも、おれにいい思い出を作りたいっていう気持ちの表れなのかもしれない。
「でも、痛いんですよね」
「っ……だ、から、触るなって……」
痛みを我慢している姿って、なんか、あの時とかぶって凄くそそる……。
ああ。おれが暑いのを我慢してる姿を見て、先輩がそう思うのと同じような感覚なのかなぁ。
「先輩のその気持ちだけで、おれ充分嬉しかったですから、いいですよ。だから、薬塗りましょう。震えてる先輩も可愛いですけどね」
「……バーカ」
それから軟膏を持って音を立てずにソファに戻ると、先輩がぐったりと沈み込んでいた。
「平気ですか?」
「あ、ああ。もちろん」
声をかけると、慌てて起きあがって、さわやかな笑顔。
……これが培ってきた痩せ我慢か。
「もうおれにはばれてるんですから、いいですよ。無理しなくて。いい思い出も嬉しいですけど、素直な先輩を見られるのはもっと嬉しいです」
「ん、そだな……。じゃ、薬」
先輩が手を差し出す。おれは、先輩には渡さずに薬を指先ですくった。
「は?」
「おれが塗ってあげます」
「ばっ……馬鹿か! いい、自分でやる!」
「おれにいい思い出作ってくれるんですよね。最後までさせてください」
「無理、無理! 前言撤回! ……っ」
おれは先輩の肩に、甘く噛みついた。
「っ……」
「塗らせてくれないと、うっかり思い切り噛んじゃうかも」
「卑怯な……」
いつもなら絶対こんなことできないけど、今先輩は痛みでパワーダウンしてる。
優位に立てる時くらい、立っておかないと。
「ううう。薬まで塗られるなんて屈辱的すぎる。何が楽しいんだよ、後輩くん」
「先輩のそういう顔を見るのが」
「くそー……。いつか逆にヤッてやるからな……」
おれは唸る先輩を抱きしめて、キスをした。
軟膏をすくった指を、そっと奥に塗り込めていく。
「痛いですか?」
「まあ……ちょっと」
丁寧すぎるほどだった指先の動きをちょっと強くすると、先輩がびくりと背を震わせた。
「……いや、凄く痛い」
「意地張らなくてもいいのに、おれの前では」
「好きな奴の前でカッコつけていたいのは当たり前だろ」
ああ、そうか。確かにそうかも……。
「でも、おれの言い分も判りますよね?」
「男だからな、それなりには」
「とりあえず今日はおれの初めてなんで……おれ、優位でいいでしょ?」
「ったく。こういう時だけカワイコぶりやがって。俺だってさぁ、こっちは初めてだったんだぞ、後輩くんが」
「嬉しいです、凄く」
頬が緩むのを、止められないくらい。
そんなおれの顔を見て、先輩はますます拗ねてしまった。
それをまた、キスで宥める。もの凄く甘ったるい空気が流れてて、でもそれが心地いい。
先輩も同じように思っていてくれてると、いいな……。
「2人の時は、瑞貴さんって呼びたいな」
「はは、なんかくすぐったいな」
「瑞貴さんもおれのこと、景って呼んでください」
「ん……。んー。ずっと名前で呼んでなかったからちょっと照れくさいな。それに……」
「それに、何ですか?」
「いや、何でも」
頬の赤さでバレバレなんですけど。可愛すぎてどうしたら。さっきまでのひょうひょうとした姿はどこいっちゃったんですか。
「……さっきの、思い出すからですか?」
「っ……判ってても、気付かないフリしろよ」
「無理です。可愛すぎて」
おれはまた、先輩にキスを繰り返す。
もう今日はこのまま一日、引っ付いていようと思ったんだけど…………。
「……あ、暑……い」
「してる最中、リモコン踏んだみたいだな」
エアコンが止まっていた上に、リモコンが故障してしまった。
さっきまで先輩がぐったりと沈み込んでいた場所に、今度はおれが沈み込む。
先輩は形勢逆転とばかりに覆い被さってきて、おれが暑がるのを楽しんでいる。
「暑くてとけそうです」
「そうだな。でもおれに引っ付かれるのは幸せなんだろ?」
「し、幸せだけど、おれ、暑さだけは……」
「俺だって痛いの苦手だけど我慢したんだぜ」
「今日はおれが、せんぱ……瑞貴さんを一日甘くあまーく、とかしてあげるつもりだったのにっ……」
身体中撫でて、甘やかして、いっぱいキスして。
なのにおれがとけそうになってるとか……。せっかくの、初めての……日なのに。
「馬鹿だな、後輩くん」
「いいじゃないですか、夢見るくらい」
「そうじゃなくてさ」
瑞貴さんがおれに、耳を寄せる。囁かれた言葉に、おれはそれこそとけそうになった。
「……とっくに、どろどろにとかされてるよ。お前に」
おれも、貴方になら……とかされても、いいです。
苦手な暑さも、きっと耐えられる。一緒にとけて、くれるなら。
※※※
ここで本編完結となります。
ありがとうございました!
この先は短編やお題の番外編集です。
長い話にはサブタイトルにナンバリングがつきます
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