甘すぎるのも悪くない

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とけたそのあとで

甘く抱かれる(R18

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 夏休みも後半。先輩の身体も大分抱かれることに慣れてきて、おれは幸せの真っ只中。
 口では嫌がって見せたりするけど、身体はおれを求めてると思う。そして、心も少しずつ、侵食してる。
 全部おれを好きって気持ちだけになってしまえばいいのに。
 
 なんて思っていたら、唐突に押し倒された。
 さっきまで至って普通に会話をして、おれは焼いたケーキを部屋の小さな折りたたみテーブルに置いたところだった。
 先輩がケーキより先におれを欲しがるなんて!
 喜んだのはつかの間。
 
 いや、嬉しいよ。嬉しいことは嬉しいんだ、でも。
 
「やらせろ」
 
 おれが女役。
 
「まっ、待ってください、どうしたんですか、急にッ……瑞貴さん!」
 
 シャツをはだけられて、鎖骨に唇が落ちる。
 そのまま手際良く下半身を探られて焦った。
 
「い、嫌です!」
「何で。お前は俺に好き勝手してるのに、俺が抱きたいのはダメとか狡いだろ」
「それはそうですけど、瑞貴さんにできるんですか? その綺麗な指先で後ろ慣らしたりしてくれるんですか、ちゃんと」
「……できるぜ。俺、ちゃんとお前のこと……好きだし」
 
 甘いキスが落ちてくる。ケーキを食べる前だろうとなんだろうと、この人の唇はほんのり甘い。
 確かに瑞貴さんの言い分も判るんだ。
 初めに嫌がってたのを組み敷いて、女役を押し付けたのはおれだから。
 別に瑞貴さんにやられるのが嫌って訳じゃなく、ただ、そんな余裕があるならやらせて欲しいと思ってしまう。
 余裕のない顔を見逃すなんてもったいないじゃないか……。
 
 多分おれが凄く嫌がれば、やめてくれる。瑞貴さんはなんだかんだでおれと違ってそっち方向は完全ノーマル思考だから、無理矢理したりは絶対にしない。
 ……おれはある程度嫌がられても燃えちゃうんだけど。
 
 拒否するだけなら簡単。
 でも、おれが身体を許すことができないのを、この人はどう思うだろう。
 
「判りました。いいですよ」
「えっ……」
「何驚いた顔してるんですか」
「いや、もっと抵抗されると思ってたから。女扱いされんの嫌そうにするし」
「嫌ですよ。だっておれは瑞貴さんがおれに突っ込まれて感じてる顔が凄く好きですから」
「ば、馬鹿!」
「でも、貴方に抱かれるのが嫌な訳じゃない。それは、抵抗はありますけどね」
「……景」
 
 囁かれたおれの名前に鼓動が高鳴る。
 ちゃんづけならからかうように呼んでくるけど、呼び捨てにするのは行為の時だけ。
 下半身があっさりと熱を持った。
 
「なので、条件があります」
「条件?」
「先に抱かせてください。そうしたら、落ち着いて受け入れられる気がします」
「む……」
 
 瑞貴さんの目が泳ぐ。
 おれに抱かれるのはもういつものことで、今更拒むようなことでもない。
 まあ、多少抵抗はされるんだけどね。
 つまり瑞貴さんがこれを許可すれば、珍しく彼から進んでおれを受け入れてくれるってことになる。
 
「ほら、おれにも何かしら、ご褒美が欲しいじゃないですか」
「……判った」
「嬉しいな。優しくしてくださいね。優しくしますから」
 
 おれはそう言って身を起こす。
 
「それと……舐めてくれませんか?」
「は?」
「だっておれが抱くだけならいつもと一緒ですし。奥に指突っ込めるなら舐めるくらい余裕ですよね」
 
 瑞貴さんの頬を撫でながら言う。
 多少興奮しているのか色を帯びて熱くなっていた。
 
「お互いに夏休み最後の思い出って感じになりそうですね」
 
 瑞貴さんの形いい唇に指先を押し込んで舌を愛撫する。吐き出される息と、舌の熱さに興奮した。
 今からこの口が、おれのを頬張るのかと思うとたまらない。
 
「チョコソースとか練乳あった方がいいですか?」
「いや……」
 
 瑞貴さんが首を横に振る。
 
「できる、これくらい」
 
 ファスナーを下ろす音が部屋に響く。
 貴方、今どれだけやらしい顔してるか判ってます?
 ああ、もうやばい。その表情だけでイケちゃいそうだ。 
 勢いよく飛び出したおれのそれに、瑞貴さんは少し戸惑うような表情を浮かべた。
 
「そのままくわえてください」
「うるさい、黙ってろ。好きに……させろよ」
 
 意を決したように舌を這わせる。
 初めはただ往復し、唾液を塗り付けるだけ。その動きすら気持ちいい。
 だって瑞貴さんがおれの、舐めてくれてるなんて。
 思考が焼ける。心臓が唇から出てしまいそうだ。
 ようやく全体が濡れたあと、先端をぐりぐりと尖らせた舌先でえぐられた。
 
「っあ、ちょっ……。やば、何でそんな上手いんですか! 瑞貴さん、こんな風にされるのが、好き……?」
 
 したことなんてないはずなのに。器用だと初めてでもこんな上手いもんなのか。
 
「へへっ。可愛いぜ、景ちゃん」
 
 おれのペニス触りながらそんな風に笑って。貴方の方がよほど可愛いです。
 瑞貴さんは話している間も手を抜かず、長い指先で裏筋を辿ったりカリの辺りを小刻みに擦ったりしてくれてる。普段の抜き方と一緒だ。相変わらず気持ちいい……。
 手だけでイカせてくれて残りオアズケはこの人の常套手段だし。
 今日はその先もあるって判ってるから、期待にいつもより固く大きくなってしまう。
 
「お前、もうこんなにしてんの? 凄い滴ってる」
「っし、仕方ないでしょ。瑞貴さんにされて、ると思っ……んん」
 
 全体をくわえこまれ、熱い舌が欲望に絡んでくる。
 気持ち良すぎて背がびくびくと震えた。
 
「あ、あっ……。瑞貴さ……ッ」
「ん……。これ、してる方も結構興奮すんのな。知らなかった」
 
 その言葉に思わず笑みがもれる。
 それはおれのことを好きだからだ。嬉しくて仕方ない。
 
「でも、もっと……先端の辺りで上顎擦るようにするとキますよ」
 
 瑞貴さんの背筋を指先でなぞって苦しくないように腰をせりあげる。
 
「ふ……んんっ」
 
 唾液が音を立て、瑞貴さんの綺麗な瞳が何かをこらえるように閉じられた。
 
「は、馬鹿……。突くなよ」
「でも良かったでしょ?」
 
 少し苦しかったのか、唾液とも先走りともつかない液体が口の端から零れている。
 顎を撫でるようにしてそれを拭い、そのまま口の中に指先を押し込んだ。
 
「ん……」
「この辺りとか、弱いですよね」
「っ、う、やっ……やめろって!」
 
 手首を掴まれて外された。
 でも目元が赤く染まって凶悪なまでに色っぽくなってる。
 ああ、まずいな。触り倒したい……。
 身体中全部舐めて、声をあげさせたい。おれの手で快感にのたうつ貴方が見たい。
 でも舐めてもらえるのは、これはこれで凄くいい。
 
「ほら、今度は喉の奥までくわえてやるから、おとなしく感じてろ」

 口の中いっぱいに唾液をためて、上下に揺すってくる。
 時折舌でも擦られて、おれの熱は熱い口腔でびくびくと跳ね上がった。
 快感が背を駆け上がり、中心に集まって騒ぐ。
 
「っあ、や、やば、イク、瑞貴さ……ッ」
「っ……!」
 
 瑞貴さんが慌てて唇を離した瞬間を狙って射精する。
 綺麗な顔に白濁がかかるの、凄いいい眺め。
 
「お前っ、なあ……。もっと早めに言えよ。狙ったろ、今の」
「気のせいですって。すいません」
 
 精液を指先で拭うように伸ばしながら、身体を起こす。
 
「今度はおれがしますから、ベッドへ横になってください」
 
 瑞貴さんはやや不機嫌になりながらも、ベッドへ座ってさっきのおれと同じようにズボンの前だけくつろげた。
 
「……瑞貴さん、おれの舐めてただけなのにガチガチ……」
「お前が変なことするからだろ。大体あんな可愛く喘がれたら勃つって。好きなんだからさ、お前のこと」
「精液まみれの顔で言われてもな」
「誰のせいだっ!」
「おれのせいです」
 
 顔を舐めると自分の味がしていたたまれない。
 瑞貴さんの服を脱がしながら、そのまま舌で辿っていく。
 熱に触れたあと、さっきされたことをトレースしてみた。
 
「んっ……いいぜ」
 
 余裕たっぷりだ。
 でも今日は、少しも余裕なんて与えてあげませんけど。
 先輩のズボンを下着ごと引き抜いて、両足を開かせる。
 
「ちょっ、お前何してんだ!」
「何って。抱かせてくれるって言ったじゃないですか。後ろの準備もしようかと」
「あ、そ……そうだったな」
 
 瑞貴さんはそれでも軽く足を閉じようとしながら、頬を染めて目を逸らした。
 
「でもこんな足開かせる必要ないだろ」
「あります」
 
 おれは瑞貴さんの屹立を先端から根本にかけて舐め、更にその下に移動させた。
 
「っひ……! 馬鹿ッ、お前、それは嫌だって……! 景ッ!」
 
 切羽詰まった声で、おれの髪を掴んでくる。無視して舌を奥まで突き入れた。
 
「っあ……。や、気持ち悪……」
 
 でも中、ひくひくしてるけどな。とろけて受け入れてるし。
 唾液だけで指、二本は簡単に入りそう。
 舌を入れたまま指を一本押し入れてみた。
 
「やめろって……」
 
 瑞貴さんのいいとこなんてもう判ってる。おれを押し返す腕からはあっさり力が抜けていく。
 指と舌を交互に抜き差しすると内股がびくびくと痙攣した。
 
「ふ……。あ、ああっ……あく」
 
 急に声がくぐもった。片方の手が外されたから、恐らく手の平で口を押さえているんだろう。
 もっと聞きたいのに……。でもこれで、おれの方は動きやすくなった。
 指先を引き抜いて、ペニスに絡ませる。尖らせた舌先はそのままで、奥をえぐった。
 手の中の質量ももう熱く脈打ってて今にも弾けそうだ。
 瑞貴さんの身体は微かにボディーソープの味がする。多分シャワー浴びてから来たんだ。
 ……まあ、おれも浴びてるけど。
 
「ん……」
「うわ、吸うな……ッ、馬鹿、あっ……」
 
 やばいな。可愛い……。もっと喘がせたくなる。
 
「お前、マジやめろって。これは嫌だって言っ……」
 
 最後まで言わせず、舌を伸ばして前立腺を押し上げる。
 そこでの刺激を快感と捉えるようになっている身体はあっさりととけた。
 
「っ……う……。あ、や……」
 
 瑞貴さんはすっかり涙声で、おれの理性が飛びそう。でも今日はゆっくり時間かけて、30分は舐め尽くしてやる。
 濡れた指で身体を辿ることも忘れない。
 全身余すことなく指で触れて、舐めておれのものにしたかった。
 部屋に響く水音と、押し殺したような吐息。全部おれがさせてる。顔見られないのが残念。インサートしたらたっぷり見るけど。
 ペニスからとめどなく溢れる透明な液体を絡めて、更に扱く。
 奥が舌をきゅうっと締め付け、手の中に熱い白濁が吐き出された。
 
「っ、ふ……。おま、え、しつこい」
 
 息を荒げながら言う瑞貴さんの太腿を甘く噛む。それだけで足がびくりと震える。
 相変わらず歯が当たるのに弱い人だ。別に痛みを感じるほど噛み付いたりしないのに。
 
「でもいっぱい出ましたね。舌、気持ち良かったですか?」
「馬鹿ッ! あんなとこ舐めるなよ。病気になる、病気に!」
「じゃ、もう舐めません。今度は指でたっぷり拡げますから」
「っ……まだすんのかよ」
 
 そう言っても瑞貴さんにだって判ってるだろう。
 
「舌で慣らしたくらいじゃ、ここ痛いですよ? もう二本は難無く飲み込みますけど」
「うぁっ……。そ、んな奥に入れんな……ッ」
 
 瑞貴さんエロすぎ。
 
「今度はこっちを唇で扱いてあげますね」
 
 萎えた先端にキスをして、吸い上げながらくわえこむ。
 
「ん、よせ、まだ……」

 やっぱり中を探るなら舌よりは指の方がやりやすい。二本の指で前立腺を擦ると、身体がびくびくとのたうった。
 
「あ、あ、あっ……。や、めろって……。景ッ……」
「可愛い、瑞貴さん」
「うっ、んんっ……。くそっ、あとで覚えてろよっ……!」
 
 すっかり角度を取り戻している熱を舌で絡め吸い上げながら、指を増やしていく。
 歓迎するみたいにひくつくのが指先で感じられてぞくぞくした。

 瑞貴さんの中は本当に熱くて、もうローションがなくてもこんなに指を飲み込む。
 でも精液で濡らしただけじゃやっぱ痛みを与えると思うから、使っておかないと。
 意識飛んじゃうくらい気持ち良くしてあげたいし。
 ベッド下の収納からローションのボトルを取り出し、腹からペニスまでねっとりとかけた。
 
「冷た……」
「でも好きでしょ、これ」
 
 粘度のある液体で身体を擦りながら、指を増やしてみる。
 開くようにじゃなく狙って擦りあげると瑞貴さんの喉から甘い声が漏れた。
 
「あ、あ、あっ……。も、やだって。そこばっか触るな」
 
 荒い吐息が限界を示す。おれは射精を促すように中を掻き回した。
 
「っん……。あっ……あ、あっ」
 
 白濁を唇で受け止める。ローションと混じってほんのり甘い。
 零れた精液とローションが足の付け根から奥まで滴っていくのがたとえようもなくいやらしかった。
 
 そのまま隙を与えず幹を扱くと、さすがに瑞貴さんが啜り泣くような声をあげた。
 
「や、ぁ……。よせって……」
「何度でもイッてください。気持ち良くしたいんです」
「辛いんだよ、マジやっ……め」
 
 本当に辛いらしく、萎えたままのそれを扱くおれの手を外そうと試みてる。
 もちろん力の抜けた手で叶う訳がないけど。
 
「ん、んぅ……。も、ほんと、景ぃ……ッ」
 
 声は確かにねだるような響きを含んでいた。
 
「たまらないです。今日は道具も使ってないのにおれの手と口だけでこんなになっちゃって」
 
 さっき出したばかりのおれの熱も、瑞貴さんを欲しがって痛いほど張り詰めている。
 こんなやらしいの見せられたらこうもなるって。
 
 すっかりほぐれた奥に先端を擦りつけながら、耳元で囁く。
 
「ね、もうおれのこれ、挿れていいですか?」
 
 足を抱え上げ、沈み込ませるようにするけど、奥までは入りこまずにじっと待つ。
 瑞貴さんがとろけたような表情を浮かべて、おれの背に手を回した。
  
「来いよ。もう……早く挿れて終わっちまえ」
「欲しいって言って、瑞貴さん」
「っあ……」
 
 親指で尿道を刺激しつつ腰を軽く突き上げると、瑞貴さんの手の平に力がこもる。
 
「ん……景、が欲しい」
 
 綺麗な顔をくしゃっと歪めて、泣きそうな声でおれを誘った。
 
「奥まで?」
「ッ……馬鹿、お前ほんっと信じらんねー。お、奥まで挿れて掻き混ぜろよ、馬鹿っ!」
 
 そう言って自分から腰を押し付けて来た。
 この人らしい殺し文句と積極さに煽られて、もたつきながらゴムをつけて挿入した。
 
「あ、あ、あッ……」
「やば、瑞貴さん……。凄い吸い付くよ……。そんな欲しかったの?」
「っあ……。や、あ」
 
 もっともっと焦らすつもりだったのに、おれの方が限界だった。
 
「ここ、感じます?」
「いやっ、あ、あ、あっ……。だめだ」
 
 瑞貴さんが涙目になりながら腰を揺らす。
 張り詰めた性器を自分の手で擦ろうとするのを押し止めた。
 
「ダメです。もっと中で、ヨくなって」
「景……も、イカせて、きつい……」
 
 ひたすら狙って突き上げる。瑞貴さんの中がおれの形を確かめるようにうねって絡み付く。
 身体は余裕そうなのに、瑞貴さんの表情は少しだけ苦しそう。
 もっと気持ち良さそうにしたらいいのに。身体はこんなに素直なんだから。
 
 でもおねだりの言葉はすっごいキた。
 瑞貴さんのを腹で擦れるように扱くと、すぐに熱く弾けた。
 おれも搾られるように吐き出す。ああ、おれ早すぎ……。でも気持ちいいから仕方ない。
 本当はゴム変えないとまずいけど、興奮しすぎてイッても萎えなかったからそのまま腰を打ち付けた。
 
「っ、ん……。う、そッ……。馬鹿、お前ふざけるな、抜けよ……っ」
「瑞貴さんが可愛すぎて……。このままもう一回」
「あ、や、んんッ……」
 
 今度は乳首を甘く噛んだり、なるべく身体を離しながら奥だけ突いて瑞貴さんの射精を遅らせる。
 もちろん自分をもたせるためでもあったけど。
 
「ね、さっきみたいにおねだりしてください。イカせてって。それとも中だけでイキますか?」
「ッ……は、景……」
 
 そのままたっぷりおねだりもさせて、望むままに与えて、そして貪った。
 中だけでイカせたい気もしたけど、あまりに嫌がるから断念。
 ……でもいつか必ずさせてみせるから、覚悟しててくださいね、瑞貴さん。
 
 
 

 激しいセックスが終わったあとは、気こそ失わなかったけど二人してぐったりだった。
 
 おれはあえて強気に見せつつ、瑞貴さんの髪を撫でる。
 
「満足したんで、今度は貴方がどうぞ。今なら受け入れられます、女役も」
 
 そんなはずない。気分的な問題より体力的に、されたらもう死んでしまう。
 今ならねだられても、抱く方だって無理だ。でもそれはこの人も同じ、いやそれ以上に辛いはず……。
 
 瑞貴さんが俯せにぐったりしていた身体を起こして、おれの肩を抱く。貪るような口付けに一瞬ぎくりとした。
 
「っ……くそー。そんな体力残って、るか、馬鹿ッ!」
 
 ぜいぜいと息を吐きながらそのまま突っ伏す。
 ……助かった。
 
「残念です。せっかくおれが抱かれる覚悟をしたのに」
「わざとだな。お前、わざとだな?」
「まさかそんな。瑞貴さんが可愛すぎて夢中になっちゃっただけです」
 
 おれより背の高い身体を抱きしめて、ちゅっとキスをした。
 ベッドへ入ってしまえば身長差はさほど気にならない。
 
 ごめんね、瑞貴さん。抱かれてもいいけどその一回分、貴方の乱れる姿を見られないのが勿体ないと思っちゃうんだ。
 
「……先輩こそ、急にどうしたんですか。今日は強引でしたけど。ケーキより先に襲ってくるのも、らしくないし」
「最近お前にやられてばっかでさ、前だけじゃイケなくなりそうで不安なんだよ」
「えーっ! いいじゃないですか。一生面倒見ますよ、おれ」
「馬鹿っ! そんなの男としてのアイデンティティがだな……」
 
 まさかそんな嬉しすぎる言葉が聞けるとは思わなかった。多分おれ今、相当顔がにやけてる。
 
「くそ、嬉しそうな顔しやがって……。やっぱ犯してやる!」
 
 がばりとのしかかられた。
 多少体力は戻りつつあったけど、抱かれるとなるとまだ厳しい。
 ぎくりと身を強張らせると、先輩はおれの上でぐったりと潰れた。
 
「だめだ、腰もケツも痛すぎる……うう」
「平気ですか?」
 
 そのまま尻を撫であげて揉むと、先輩がびくびくと身体を震わせた。
 
「っあ、馬鹿……揉むなっ」
「あ、すいません。つい……」
「まったく後輩くんは、見た目に反してホントエロすぎだ」
 
 呆れたように言いつつも、愛しさの感じられるキスをしてくれる。
 
「貴方が可愛すぎるからです」
「バーカ。俺のどこが可愛いんだ。さ、ケーキ食うぞ、ケーキ」
 
 えー……。凄くいい雰囲気じゃありませんでしたか、今……。
 ぐったりしてても甘い物は入るって。先輩らしいんだけどさ。
 見た目に反してって言葉、おれよりずっと、この人のためにあるようなものだと思う。
 でもおれにとっては、そういうところが可愛いくてたまらない。
 
「先輩、一口」
 
 口を開けて待つ。ケーキを食べさせてくれる。
 最近ではこういう甘さもたっぷりだから、まあよしとしよう。
 
「次は俺がやるからな、覚えてろよ」
「ふふ、覚悟しておきます」
「何その余裕。むかつく、後輩くん」
 
 ふてる先輩に、ケーキの甘さが残るキスをする。
 一回くらいなら、抱かれる覚悟はしておきましょうか。
 ただ、その前におれが全力で貴方を抱きますけどね。 
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