甘すぎるのも悪くない

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とけたそのあとで

甘いバレンタイン

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 バレンタイン。先輩にあげるために、巨大チョコレートを作ってみた。板チョコ30枚分だ。苦労した。型も自分で作った。抱えるくらいのサイズだ。
 
 先輩は多分数え切れないほど貰うだろう。そして、おれも多分貰う……とは思う。
 勿論本命は断るつもりだけど先輩にそれを言うのは酷だ。数的に把握しきれなさそうだし、手渡し以外にも事務所経由で来たりするだろうから。
 だから、先輩が貰う分に関しては初めから不問にすることにした。
 というかそう思っておかないと嫉妬でとんでもないことしちゃいそうだし。
 
 当然、妬いてる。凄い妬いてる。先輩もそれは判っていたのか、バレンタインには何でもおれの言うことをひとつだけ聞いてやる、と言ってきた。
 
「チョコの代わりに俺をプレゼントしてやる」
 
 ということらしい。なので、おれは先輩が一杯貰うという事実を目の当たりにしても、その約束を想像するだけで穏やかでいれる。……筈。
 先輩が自分をくれるなら、おれはチョコを作りますよと、物で攻めることにした。甘い物好きな先輩は、もう数日前からバレンタインに思いを馳せて機嫌がいい。
 
 そして当日。やっぱり先輩がもらったチョコの量は半端なかった。
 ……と言っても、漫画のようにトラック何台分とかそんな訳でもなく、紙袋5袋分程度だ。事務所に届いた物もあわせて。
 
「先輩、約束覚えてますよね?」
 
 バレンタインプレゼントの受け渡しにおれの家へ遊びに来た先輩に、物凄くいい笑顔を作って見せた。
 対して先輩は引きつるような笑顔だ。
 それちょっと失礼じゃないですか? これから恋人同士、愛の交換をしようっていうのに。
 
「で、俺は何をされちゃうのかな。後輩くん」
「その前にこれ、どうぞ!」
「でかっ! え、なんだこれ、チョコケーキ?」
「開けてみてのお楽しみです」
 
 バレンタイン仕様のプレゼントボックスを開けた途端、先輩の笑顔もとてもいい物へと変わった。
 
「うわっ、すっげ。俺こういうの子供の頃から食ってみたかったんだ……。マジ嬉しい!」
「じゃあおれからのリクエストですけど」
「な、なんだ……?」
「やっぱりバレンタインなんで、口移しでチョコが食べたいかなーって」
 
 先輩はあからさまにホッとした顔。
 一体、おれがどんなことをすると思ってたんだろう。
 
「いいぜ。それくらい。このチョコでいいのか?」
「いえ、それは先輩にあげたものですから、これで」
「チョコレートチューブ……? 端をくわえて、逆から後輩くんが飲むとか?」
「誰も上の口だなんて言ってませんよ」
「え?」
「だから、これを先輩の中に入れておれが吸い出すんです」
「え?」
「とりあえず、ズボンとパンツ脱いでください」
「ま、待った、後輩くん! そ、それはさすがに勘弁してくれ!」
「……何でもしてくれるって言ったのに。おれ、頑張ってチョコ作ったのに……ダメですか?」
 
 縋るように甘えるようにねだってみる。先輩は引きつった顔をしてる。
 
「だっ、大体、口は普通一個だけだろ……」
「じゃあハッキリ言いましょうか? これを先輩のア」
「ストーップ! 言わなくていい。なあ、本当に……。それはさあ、よそうぜ」
 
 先輩はそれでも逃げようとはしない。きっと強く望めばこのまましてくれるんだろう。
 おれとしてはそれが判っただけで充分というか。
 
「それじゃ、このチョコで先輩の身体にプレゼントフォーユーって書いて、それを舐めとるくらいならいいですか?」
「ま、まあそれくらいなら……」
「あとこの前嫌だって泣かれたアレ使って、喘がせまくってもいいですか?」
「……はぁー。チョコ中に出されるよりはマシかァ……」
 
 先輩が大きく溜息をついた。
 初めにとんでもないことを言っておけば、少し高めな望みでもマシに思える作戦って本当に有効なんだな。
 まあおれとしては、先輩がオーケーしてくれたら、実際にやるつもりだったけど。
 
「それと……。今日はゴムつけないで先輩の中に、出したいです。処理はおれがしますしー」
「したいだけだろ、この変態」
 
 先輩がおれの手からチョコチューブを取り上げて、ベッドの上に置いた。
 
「これは持ってこないこと。ほら、風呂行くぞ」
「それって、中に出してもいいってことですよね」
「……チョコ入る隙間ないくらい、いっぱいにすんならな」
 
 おれの作ったハートじゃ足りないくらい、甘い一日になりそうだ。 
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