甘すぎるのも悪くない

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とけたそのあとで

後悔しないでくださいね

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後輩くんが大学生な、ちょっとリバっぽい未来のお話。


■■■
 月日が経つのは本当に早いもので、ついにおれも大学生だ。
 基本熱しやすく冷めやすい先輩に、いつかおれも冷められるんじゃないかって不安になりながらも、今までなんとかやってこれた。
 先輩が別れるなんて言い出したら、おれは本当に先輩をどうしてしまうかわからない。
 そんなおれが、今まさに、別れたくなるような窮地に立たされている。
 
 へそのあたりをべろりと舐めあげられて、背筋にぞくりと悪寒が走った。
 
「せ……先輩ッ……」
「名前で呼べよ、馬鹿」
 
 こういう機会は何度かあった。でも、その度に先輩は途中で引いてくれた。
 いつもはおれが、先輩を抱いている。先輩は男は初めてだけど、女の人を抱いたことはある。だから、女性と比べられるんじゃないかって怖くて、なかなかふんぎりがつかないでいた。先輩も、そんなおれの気持ちを汲んでくれていたと思う。
 ……でも、多分、今日はやめてくれない。
 おれの身長はすっかり伸び、もう間違っても女の子には間違えられなくなっていたし、今では可愛いじゃなくてカッコイイと言われる。
 先輩がおれを抱きたがるのはおれが女みたいだからなんじゃないかっていう心配は今はもうない。だからこそ、先輩は今ならおれを抱いていいだろうって思ってるんだ、きっと。
 小さいおれを無理矢理組みしくのに罪悪感があって先に進めないみたいなことも何度か言ってたし。
 
 背が伸びだした頃から覚悟はしてたさ。でも、いざその時がくるとやっぱり怖くて仕方ない。
 今怖いのは、おれが抱かれる立場だからってだけじゃなくて……。
 
「あのな、お前を抱いたからって、俺はお前に飽きたりしないぞ」
「……はい」
 
 不安は的確に、伝わっていたらしい。
 冷めやすい先輩がおれに執着してくれている理由の一つに、まだおれを抱けてないから、というのがあるんじゃないかと思っていたから。
 だから……おれを抱いてしまったら執着心が薄れて別れる羽目になるんじゃないかって、とても怖かった。
 
「なんつーかさ、もうさすがに数年経つし、お前に抱かれるのも大分慣れたし、気持ちいいからこのままでもいいかって思わないんでもないんだ」
「じゃあ、別にいいじゃないですか。わざわざおれなんか、抱かなくても」
「わざわざ抱きたいね。俺に抱かれた時のお前の顔とか、中の温度とか、全部知っておきたい。俺の知らないお前を全部見たいんだよ」
 
 熱いキスが降ってくる。先輩は本当にカッコイイ。そんな台詞、王子様みたいな顔で真剣に言われたら、もうどうにでもしてって感じになるよ。狡い。
 
「一度でいいからとは言わないが、普段するのはさ、お前のほうでいいし……。ほら、前……二度とやらないって言ってたお風呂プレイも、してやるから」
「先輩、そんな顔でそんなこと言われたら、抱かれてもいいかもって気が失せて、今すぐおれが抱きたくなっちゃうんですけど」
「だっ……ダメだダメ、今日はダメ。お前だって、俺がお前をほしがって、お前の締め付けでイク姿とか見てみたいと思わねえ?」
「初心者のおれにそれを見る余裕があるとは思えませんね」
「慣れるまでやればいい」
「……なら、一回するごとに、おれのお願い聞いてくださいね」
 
 おれはそう言って、先輩の背中に腕を回した。
 
「それは、怖いな」
 
 そんな嬉しそうな顔されたら、おれまで嬉しくなってしまう。先輩、本当に狡い。
 
 今日貴方は、おれに見せたことのない姿を見せて、おれは貴方が見たことのないおれの姿を見せる。
 
 うん。大丈夫。先輩に抱かれても、おれは後悔しない。
 おれも、貴方のすべてを知りたいって思うから。
 まあ、でも次は、おれが抱きますけどね。
 先輩はプレイっぽいことを嫌がるから、やりたいプレイは山ほどあるし。
 
 ……お願いの内容を聞く度に、後悔するのは先輩のほうかもしれない。
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