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先輩視点の番外編
お医者さんごっこ
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この前後輩くんのお見舞いに行って風邪を貰ってきたらしく、熱を出して寝込んでしまった。
母さんは昨日から旅行で、今日の夕方帰ってくる。後輩くんがそれまで看病したいですと言って家に来てくれた。
「悪いな。後輩くん」
「いえ、おれこそ……うつしてしまったみたいで、すいません。先輩は寝ていてください。色々持ってきましたから」
「ん」
彼女……じゃあないが、こういう時は本当に助かる。
俺は素直にベッドへ戻って横になっていた。
後輩くんはさっとお粥を作って持って来てくれた。かなり美味しそうだ。
「はい、先輩……あーんしてください」
「ば、馬鹿。自分で食える」
「いいじゃないですか。恋人同士の醍醐味でしょ」
なんだか凄い、甘い感じだ。お粥は別に甘くないのにな。
「美味しいですか?」
「ああ、美味しいよ」
「えへへ。良かった」
「……こういうのも悪くないな」
俺の言葉に、後輩くんは凄く嬉しそうな顔をした。
「フフフ。嬉しいです。いっぱい食べてくださいね」
「そんなにたくさんは無理だぞ。病人だし」
でも結局全部食べてしまった。味付けが絶妙すぎる。俺の好みを本当に知りつくしているよな……。
そのままポカリをくれたり、冷えピタを貼ってくれたり甲斐甲斐しく世話をしたあと、後輩くんは邪魔にならないようにと言って本を読み始めた。
「なあ、それ面白い?」
「先輩風邪引いてるんだから、寝てないと」
「そこまで悪くない。お前がそうやってると暇だ。朗読でもしてくれ」
「えっ、ろ、朗読ですか!?」
「俺後輩くんの声好きだし。なあ……」
「先輩の声の方がよっぽど……ゾクゾクして、いいです。そこまで悪くないなんて言ってると、襲っちゃいますよ」
そう言って後輩くんは、俺の口の中に指を入れてきた。
この前は逆に、こうやって舐められたっけ……なんて思っていたら、つい誘うように舐めてしまっていた。
「……っ、先輩」
「あ、悪い……」
どうやら俺は、自分で思っていたよりも具合が悪いのかもしれない。さすがにこんな状態でしたいとは思わないし、誘ったつもりもなかった。
「口の中、熱いですね」
喉の奥を確認するように、舌を押してくる。
「んっ……」
「汗もこんなにかいてるし」
パジャマをはだけられた。おいおい、まさか本当にするつもりじゃないだろうな。
「汗拭きましょうか、おれ」
「なんか嫌な予感がするからいらない」
「まあそう言わず。くすぐったいとこあったら右手を上げてくださいね~」
「馬鹿、歯医者かよ」
あ。でもなんだ……。こうやって拭いてもらうの、結構気持ちいい、かも。
そのまま身を任せていると、細く固い物が肌に触れた。
「おいっ、指でなぞってどうする」
「悪いところがないかなって」
「医者じゃないんだ。触って判る、かっ……っん」
「そうですね。悪いところは判らないけど……イイトコロ、なら判ります」
慣れた指先が肌の上をなぞる。今度は別の意味で気持ちよくなりそうになって慌てた。
「なんか、お医者さんごっこしてるみたいですね」
「馬鹿、やめっ……」
「はい」
後輩くんは驚くほど素直に手を引いて、再び本を開いた。
「さすがに病人にたいしてこれ以上はしませんよ。今日だとごっこじゃなくて本当になりそうですし」
「……治ってからも、そんな変態的なプレイはお断りだ」
「とりあえず、本、朗読してあげますね」
……判りました。って言いやがらねえ。させないからな、本当に。
俺は透き通るような後輩くんの声が本を読み上げるのを聞きながら、そのまま眠りに落ちた。
この日熱にうなされながら見てしまった夢は、後輩くんには絶対言えない。
母さんは昨日から旅行で、今日の夕方帰ってくる。後輩くんがそれまで看病したいですと言って家に来てくれた。
「悪いな。後輩くん」
「いえ、おれこそ……うつしてしまったみたいで、すいません。先輩は寝ていてください。色々持ってきましたから」
「ん」
彼女……じゃあないが、こういう時は本当に助かる。
俺は素直にベッドへ戻って横になっていた。
後輩くんはさっとお粥を作って持って来てくれた。かなり美味しそうだ。
「はい、先輩……あーんしてください」
「ば、馬鹿。自分で食える」
「いいじゃないですか。恋人同士の醍醐味でしょ」
なんだか凄い、甘い感じだ。お粥は別に甘くないのにな。
「美味しいですか?」
「ああ、美味しいよ」
「えへへ。良かった」
「……こういうのも悪くないな」
俺の言葉に、後輩くんは凄く嬉しそうな顔をした。
「フフフ。嬉しいです。いっぱい食べてくださいね」
「そんなにたくさんは無理だぞ。病人だし」
でも結局全部食べてしまった。味付けが絶妙すぎる。俺の好みを本当に知りつくしているよな……。
そのままポカリをくれたり、冷えピタを貼ってくれたり甲斐甲斐しく世話をしたあと、後輩くんは邪魔にならないようにと言って本を読み始めた。
「なあ、それ面白い?」
「先輩風邪引いてるんだから、寝てないと」
「そこまで悪くない。お前がそうやってると暇だ。朗読でもしてくれ」
「えっ、ろ、朗読ですか!?」
「俺後輩くんの声好きだし。なあ……」
「先輩の声の方がよっぽど……ゾクゾクして、いいです。そこまで悪くないなんて言ってると、襲っちゃいますよ」
そう言って後輩くんは、俺の口の中に指を入れてきた。
この前は逆に、こうやって舐められたっけ……なんて思っていたら、つい誘うように舐めてしまっていた。
「……っ、先輩」
「あ、悪い……」
どうやら俺は、自分で思っていたよりも具合が悪いのかもしれない。さすがにこんな状態でしたいとは思わないし、誘ったつもりもなかった。
「口の中、熱いですね」
喉の奥を確認するように、舌を押してくる。
「んっ……」
「汗もこんなにかいてるし」
パジャマをはだけられた。おいおい、まさか本当にするつもりじゃないだろうな。
「汗拭きましょうか、おれ」
「なんか嫌な予感がするからいらない」
「まあそう言わず。くすぐったいとこあったら右手を上げてくださいね~」
「馬鹿、歯医者かよ」
あ。でもなんだ……。こうやって拭いてもらうの、結構気持ちいい、かも。
そのまま身を任せていると、細く固い物が肌に触れた。
「おいっ、指でなぞってどうする」
「悪いところがないかなって」
「医者じゃないんだ。触って判る、かっ……っん」
「そうですね。悪いところは判らないけど……イイトコロ、なら判ります」
慣れた指先が肌の上をなぞる。今度は別の意味で気持ちよくなりそうになって慌てた。
「なんか、お医者さんごっこしてるみたいですね」
「馬鹿、やめっ……」
「はい」
後輩くんは驚くほど素直に手を引いて、再び本を開いた。
「さすがに病人にたいしてこれ以上はしませんよ。今日だとごっこじゃなくて本当になりそうですし」
「……治ってからも、そんな変態的なプレイはお断りだ」
「とりあえず、本、朗読してあげますね」
……判りました。って言いやがらねえ。させないからな、本当に。
俺は透き通るような後輩くんの声が本を読み上げるのを聞きながら、そのまま眠りに落ちた。
この日熱にうなされながら見てしまった夢は、後輩くんには絶対言えない。
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