開花の忘れもの

千尋の母、佳代は病に臥している。ある日、見舞いに現れた鰻屋の主から意外な話を聞いた。鰻屋の主は元力士、まだ現役の頃、酔って喧嘩をし、止めに入った佳代に投げ飛ばされたと言う。時は維新の混乱が収まり始めた頃、話を聞いた千尋は信じられなかった。鰻屋の主の様子から察すると嘘を言っているとも思われない。
 次に見舞いに現れたのが嘉納治五郎。講道館柔道の創始者である。嘉納治五郎によれば、佳代は柔術の達人であり、若い頃は何度も命を狙われたという。
 千尋は驚く。嘉納治五郎ほどの人物に達人と言わしめた母親の過去とは一体なんなのか。なぜ命を狙われねばならなかったのか。嘉納治五郎が昔の出来事を語り、除々に母親の過去が明らかになってくる。暴漢を投げ飛ばし、拐かされた千尋を助ける為に沖縄空手と闘った過去を知る。
 そして、熊本から佳代の子どもの頃を知る結城清一郎が見舞いに現れた。
 佳代は笠松藩の別式女として働き、側室の産んだ子を守り藩邸から逃れ、清一郎と共に襲いくる敵の刃から子どもを守り通した。やがて世は明治になり、清一郎と子どもを育てながら暮らしていたが、元笠松藩家老に子どもを渡し、佳代は姿を消した。千尋は、母が清一郎のもとを去った訳と命を掛けて守った子の行く末を知った。
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