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帝国で起こった騒動
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護衛騎士と侍女をそれぞれ数名連れ、私は馬車で王宮へと向かった。
道中ぼんやりと外の景色を眺め、ふとあることを思い出す。
来訪してくる皇太子殿下って……物語の主要キャラクターじゃなかった?
帝国の皇太子、確か名前はジュリアスだったか。物語で彼は褐色の肌に金色の髪と瞳の精悍な美男子で、強引な俺様キャラであったと記憶している。
我が国で催された夜会の会場でヘレンを見初め、是非妃にと帝国に連れ去ったシーンにハラハラドキドキしたものだ。そこを王太子が帝国まで助けに行き、なんやかんやあって王太子とヘレンの仲が深まる王道パターンである。
だが、もう何回も言うがこれは物語だから許されるのだ。
現実で皇太子が我が国の女性を勝手に攫うのならそれは国際誘拐に該当する。
もうそれだけでも国際問題だし、犯罪者を後の皇帝にさせるわけにはいかないので皇太子は皇位継承権を剥奪されるだろう。
ヘレンが原因で帝国の皇太子が変わってしまう。そうなればあちらの国のどれだけの人からヘレンが恨まれるか……。そんな状況でヘレンが王太子と結ばれ妃になればもう二国間は断絶決定だ。物語ではそこまで書かれてなかったが、現実に当てはめると国際問題にまで発展してしまう。
マズイ……どうしよう……。
こんな大きな問題、私一人でどうにかできるわけない。
最悪の事態を想像し、王宮に行きたくないと思う私に無情にも城に到着したとの声がかかった。
*
「エルリアン嬢、よく来てくれた。この度、甥の心ない言動のせいで心労をかけてしまった貴女に面倒ごとを頼んで申し訳ない……」
王宮に着くと王弟のルノール大公殿下が自ら出迎えてくれた。
彼は王太子と同じ王族の証である金髪碧眼を持つ美男子で、王太子とよく似た顔に哀愁が漂っている。
「本来ならば婚約解消を願っている貴女にこのようなことを頼むべきじゃないのだが……。君も知っての通り、王妃殿下は療養中で我が妻も床から起き上がれない状態だ……。だがそれを差し引いても君以上に帝国の新しい皇太子を持て成せる人物がいるとも思えない」
「まあ、そのような……。……ん? お待ちください、今、新しい皇太子と……?」
皇太子はもう何年も前からジュリアス殿下だったはず。なのに、新しいとは一体……?
「ああ、まだ公にされてはいないのだが……帝国では皇太子が最近変わったんだ。新しい皇太子には第二皇子のバーソロミュー殿下が指名された」
「え……それまで皇太子だったジュリアス殿下はどうされたのですか?」
「ジュリアス殿下は……婚約者の公爵令嬢に刺されて亡くなった。令嬢は、王子と無理心中をし、あの世で一緒になろうと……」
「お待ちになって!? 刺された? 無理心中? 一体帝国で何が起こったのですか……?」
大公殿下の話によると、ジュリアス殿下は公爵家の令嬢と婚約していながらどこぞの町娘と恋に落ち、その娘を后にしようと企んだらしい。なんてテンプレな展開なんだ。
「それって公爵令嬢と婚約破棄して町娘と婚約、ひいてはその女性を未来の皇后にしようとしたと……? 正気とは思えませんね。そもそも皇太子が町娘とどこで知り合えるのですか……?」
温室育ちで周囲から過剰なほど守られている皇太子が、どうやって町にいる娘と知り合うことが出来るのか。
あのお花畑王太子ですらヘレン以外の平民女性と知り合う機会などなかったというのに。
「それが、お忍びで町を視察した際に知り合ったそうだ。食事処で給仕をしていた娘をジュリアス殿下はいたく気に入り、その場で城へ連れて帰ってしまったと……」
どこかで聞いたようなシチュエーション!?
物語でもヘレンのこと連れ去っていたし、ジュリアス殿下って連れ去り癖でもあんの?
「それは……その日の皇城は大騒ぎになったでしょうね」
貴族でさえ厳重なチェックがないとおいそれと入れない皇城に、皇太子はいきなりどこぞの娘を連れて帰った。その日の皇城使用人達はさぞかし驚愕したことだろう。
「もちろんそうなった。他国の間者を入れないようにと、身元のしっかりした者のみ入れる皇城に得体の知れない娘を皇太子自ら引き入れたんだからな。しかもジュリアス殿下はなんと皇帝陛下の御前にその娘を連れていって『妃にする』と宣言したそうだ」
「……とても正気とは思えない行動ですね」
その娘がどこぞの間者で、皇帝陛下の命を狙っていたらどうするのか。
その場で陛下が暗殺されたら、その可能性すら考えられないほど愚かな皇子だったのかジュリアス殿下は……。この小説の男キャラって馬鹿ばかりだわ。
「そこからはもう……大騒ぎになったそうだ。皇帝陛下は激怒し、皇后陛下は卒倒してしまわれた。直ちにジュリアス殿下を謹慎させ、町娘を投獄し、城中に箝口令をしいた。それで終わればよかったのだが……」
「終わらなかったんですね?」
「そうだ。謹慎を言い渡したはずのジュリアス殿下は部屋から抜け出し、町娘を牢獄から出し、なんとその足で婚約者の公爵令嬢の元に向かった。そして令嬢の前で町娘を抱き寄せ、婚約破棄を言い渡したそうだ」
「何故わざわざ婚約者の元に!? しかも娘を連れて……? 頭がおかしくなられたの?」
「ああ、これを聞いたとき私もそう思った。どうしてわざわざその娘を連れて婚約者の令嬢の元に行ったのか……。全く意味が分からない」
恋愛小説でありがちなパターンだからかしら、私はジュリアス殿下の行動の意図が分かった。
おそらくだが皇帝陛下に反対された殿下は愚かにも『ならば婚約者に先に婚約破棄を認めてもらえばいい』と考えたんでしょうね。どう考えても何もよくないけど、恋に狂った男キャラクターの行動って短絡的で迷惑と相場が決まっているから。
「当然、婚約者の令嬢は激怒しジュリアス殿下とその娘を罵った。そうしたら何を思ったのか、皇太子がご令嬢の頬を打って床に倒し、『お前のような者に国母が務まるか! 心優しい彼女こそが相応しい!』と宣言したらしい。公爵家の使用人が殿下のその発言を聞いている。使用人達は殿下の気が触れたのかと思ったそうだ」
使用人達の反応は当然だろう。名家の令嬢を差し置いて、単なる町娘が国母に相応しいなど一体誰がそう思うだろうか。身分主義の帝国でそう思う者など誰もいやしないだろう。
「皇太子妃になるべく幼い時より研鑽を積んできたご令嬢にとっては死ぬほどの屈辱だったろう。婚約者の皇太子が町娘に心を移した挙句にその娘を国母に相応しいなどと言われては黙っていられないよ。案の定、激昂した彼女は客間に飾っていた短剣でジュリアス殿下を刺し殺し、自分もその場で喉を突いて自害した。現場はもう……凄惨なものだったそうだよ」
もう何て答えていいか分からない。権力のある俺様系強引キャラは現実に存在するとここまで周囲をかき乱し、思いもよらない惨劇を巻き起こすのか。
「そんな大事件がどうして公になっていないのです? いくらジュリアス殿下の行動のせいとはいえ、皇族殺害は一族郎党処刑になるほどの大罪です。帝国の公爵令嬢が大罪人になったという衝撃の出来事が一部の人間しか知らないというのは……」
「無かったことになったんだよ。皇帝陛下がこの事件を完全に隠蔽し、箝口令を敷いた。令嬢の家は建国当初より皇家を支えてくれた重鎮、そんな大切な臣下の家をジュリアス殿下の愚行のせいで潰すなど出来ないと。なので、表向きには皇太子は公爵家に行っていないことになり、突然の病で亡くなったことになっている。もちろん婚約者の令嬢もだ」
「皇帝陛下は公爵家とご令嬢の名誉を守られたんですね……。ご立派ですわ」
未だに婚約を解消しない我が国の国王とは大違いだ。
帝国は臣下想いの皇帝で羨ましい。
「ああ……それなのに我が王家は長年支えてくれたエルリアン公爵家にもミシェル嬢の名誉も尊重していない。誠に……誠に心から謝罪する。甥のアレクセイの行動はジュリアス殿下と変わりない……貴女を尊重せず、どこぞの馬の骨を傍に置いた。違うのはアレクセイはあの女を妃にする気はなかったことくらいだ。いやそれでも許されることではないが……」
「え……? お待ちください、今……殿下がヘレンを妃にする気はなかったと仰いました?」
そんな馬鹿な。だって小説で殿下はヘレンを妻にしたかったはずだ。
「あ、ああ……そう聞いている。愛妾にするつもりだったと。だがそれならなおのこと君の前にあの女を出してはならなかった。アレクセイが君に対して無礼を働いたことに変わりはない。改めて、本当にすまなかった……」
愛妾!? アイツ、愛する女を日陰者にする気だったの?
そもそも妾にする気なら、本妻になるミシェルの前に出しては駄目でしょうよ。
この国では『愛人は本妻に姿を見せてはならない』という謎ルールがあるんだから。
「いえ、もうよいのですルノール大公殿下。わたくしはこの宴が終わった後、必ず婚約を破棄していただければそれで……。それと……わたくしが王宮に滞在中に王太子殿下が近づいてきたならば扇子で打ってよろしいのですよね?」
なんかもういいや。アイツがどういうつもりだったとしても、ミシェルがヘレンの存在に傷ついたことに変わりはない。数回しばければそれでいい。
「それはもちろんだ! だが使用人にも側近にもアレクセイを君に近づけるなと厳命してある。だから大丈夫だ、安心してくれ」
大公殿下、それでも近づくのが愚か者というものですよ。
まあいいわ。近づいたらしばくから。そのために鉄扇も沢山持参したし。
道中ぼんやりと外の景色を眺め、ふとあることを思い出す。
来訪してくる皇太子殿下って……物語の主要キャラクターじゃなかった?
帝国の皇太子、確か名前はジュリアスだったか。物語で彼は褐色の肌に金色の髪と瞳の精悍な美男子で、強引な俺様キャラであったと記憶している。
我が国で催された夜会の会場でヘレンを見初め、是非妃にと帝国に連れ去ったシーンにハラハラドキドキしたものだ。そこを王太子が帝国まで助けに行き、なんやかんやあって王太子とヘレンの仲が深まる王道パターンである。
だが、もう何回も言うがこれは物語だから許されるのだ。
現実で皇太子が我が国の女性を勝手に攫うのならそれは国際誘拐に該当する。
もうそれだけでも国際問題だし、犯罪者を後の皇帝にさせるわけにはいかないので皇太子は皇位継承権を剥奪されるだろう。
ヘレンが原因で帝国の皇太子が変わってしまう。そうなればあちらの国のどれだけの人からヘレンが恨まれるか……。そんな状況でヘレンが王太子と結ばれ妃になればもう二国間は断絶決定だ。物語ではそこまで書かれてなかったが、現実に当てはめると国際問題にまで発展してしまう。
マズイ……どうしよう……。
こんな大きな問題、私一人でどうにかできるわけない。
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王宮に着くと王弟のルノール大公殿下が自ら出迎えてくれた。
彼は王太子と同じ王族の証である金髪碧眼を持つ美男子で、王太子とよく似た顔に哀愁が漂っている。
「本来ならば婚約解消を願っている貴女にこのようなことを頼むべきじゃないのだが……。君も知っての通り、王妃殿下は療養中で我が妻も床から起き上がれない状態だ……。だがそれを差し引いても君以上に帝国の新しい皇太子を持て成せる人物がいるとも思えない」
「まあ、そのような……。……ん? お待ちください、今、新しい皇太子と……?」
皇太子はもう何年も前からジュリアス殿下だったはず。なのに、新しいとは一体……?
「ああ、まだ公にされてはいないのだが……帝国では皇太子が最近変わったんだ。新しい皇太子には第二皇子のバーソロミュー殿下が指名された」
「え……それまで皇太子だったジュリアス殿下はどうされたのですか?」
「ジュリアス殿下は……婚約者の公爵令嬢に刺されて亡くなった。令嬢は、王子と無理心中をし、あの世で一緒になろうと……」
「お待ちになって!? 刺された? 無理心中? 一体帝国で何が起こったのですか……?」
大公殿下の話によると、ジュリアス殿下は公爵家の令嬢と婚約していながらどこぞの町娘と恋に落ち、その娘を后にしようと企んだらしい。なんてテンプレな展開なんだ。
「それって公爵令嬢と婚約破棄して町娘と婚約、ひいてはその女性を未来の皇后にしようとしたと……? 正気とは思えませんね。そもそも皇太子が町娘とどこで知り合えるのですか……?」
温室育ちで周囲から過剰なほど守られている皇太子が、どうやって町にいる娘と知り合うことが出来るのか。
あのお花畑王太子ですらヘレン以外の平民女性と知り合う機会などなかったというのに。
「それが、お忍びで町を視察した際に知り合ったそうだ。食事処で給仕をしていた娘をジュリアス殿下はいたく気に入り、その場で城へ連れて帰ってしまったと……」
どこかで聞いたようなシチュエーション!?
物語でもヘレンのこと連れ去っていたし、ジュリアス殿下って連れ去り癖でもあんの?
「それは……その日の皇城は大騒ぎになったでしょうね」
貴族でさえ厳重なチェックがないとおいそれと入れない皇城に、皇太子はいきなりどこぞの娘を連れて帰った。その日の皇城使用人達はさぞかし驚愕したことだろう。
「もちろんそうなった。他国の間者を入れないようにと、身元のしっかりした者のみ入れる皇城に得体の知れない娘を皇太子自ら引き入れたんだからな。しかもジュリアス殿下はなんと皇帝陛下の御前にその娘を連れていって『妃にする』と宣言したそうだ」
「……とても正気とは思えない行動ですね」
その娘がどこぞの間者で、皇帝陛下の命を狙っていたらどうするのか。
その場で陛下が暗殺されたら、その可能性すら考えられないほど愚かな皇子だったのかジュリアス殿下は……。この小説の男キャラって馬鹿ばかりだわ。
「そこからはもう……大騒ぎになったそうだ。皇帝陛下は激怒し、皇后陛下は卒倒してしまわれた。直ちにジュリアス殿下を謹慎させ、町娘を投獄し、城中に箝口令をしいた。それで終わればよかったのだが……」
「終わらなかったんですね?」
「そうだ。謹慎を言い渡したはずのジュリアス殿下は部屋から抜け出し、町娘を牢獄から出し、なんとその足で婚約者の公爵令嬢の元に向かった。そして令嬢の前で町娘を抱き寄せ、婚約破棄を言い渡したそうだ」
「何故わざわざ婚約者の元に!? しかも娘を連れて……? 頭がおかしくなられたの?」
「ああ、これを聞いたとき私もそう思った。どうしてわざわざその娘を連れて婚約者の令嬢の元に行ったのか……。全く意味が分からない」
恋愛小説でありがちなパターンだからかしら、私はジュリアス殿下の行動の意図が分かった。
おそらくだが皇帝陛下に反対された殿下は愚かにも『ならば婚約者に先に婚約破棄を認めてもらえばいい』と考えたんでしょうね。どう考えても何もよくないけど、恋に狂った男キャラクターの行動って短絡的で迷惑と相場が決まっているから。
「当然、婚約者の令嬢は激怒しジュリアス殿下とその娘を罵った。そうしたら何を思ったのか、皇太子がご令嬢の頬を打って床に倒し、『お前のような者に国母が務まるか! 心優しい彼女こそが相応しい!』と宣言したらしい。公爵家の使用人が殿下のその発言を聞いている。使用人達は殿下の気が触れたのかと思ったそうだ」
使用人達の反応は当然だろう。名家の令嬢を差し置いて、単なる町娘が国母に相応しいなど一体誰がそう思うだろうか。身分主義の帝国でそう思う者など誰もいやしないだろう。
「皇太子妃になるべく幼い時より研鑽を積んできたご令嬢にとっては死ぬほどの屈辱だったろう。婚約者の皇太子が町娘に心を移した挙句にその娘を国母に相応しいなどと言われては黙っていられないよ。案の定、激昂した彼女は客間に飾っていた短剣でジュリアス殿下を刺し殺し、自分もその場で喉を突いて自害した。現場はもう……凄惨なものだったそうだよ」
もう何て答えていいか分からない。権力のある俺様系強引キャラは現実に存在するとここまで周囲をかき乱し、思いもよらない惨劇を巻き起こすのか。
「そんな大事件がどうして公になっていないのです? いくらジュリアス殿下の行動のせいとはいえ、皇族殺害は一族郎党処刑になるほどの大罪です。帝国の公爵令嬢が大罪人になったという衝撃の出来事が一部の人間しか知らないというのは……」
「無かったことになったんだよ。皇帝陛下がこの事件を完全に隠蔽し、箝口令を敷いた。令嬢の家は建国当初より皇家を支えてくれた重鎮、そんな大切な臣下の家をジュリアス殿下の愚行のせいで潰すなど出来ないと。なので、表向きには皇太子は公爵家に行っていないことになり、突然の病で亡くなったことになっている。もちろん婚約者の令嬢もだ」
「皇帝陛下は公爵家とご令嬢の名誉を守られたんですね……。ご立派ですわ」
未だに婚約を解消しない我が国の国王とは大違いだ。
帝国は臣下想いの皇帝で羨ましい。
「ああ……それなのに我が王家は長年支えてくれたエルリアン公爵家にもミシェル嬢の名誉も尊重していない。誠に……誠に心から謝罪する。甥のアレクセイの行動はジュリアス殿下と変わりない……貴女を尊重せず、どこぞの馬の骨を傍に置いた。違うのはアレクセイはあの女を妃にする気はなかったことくらいだ。いやそれでも許されることではないが……」
「え……? お待ちください、今……殿下がヘレンを妃にする気はなかったと仰いました?」
そんな馬鹿な。だって小説で殿下はヘレンを妻にしたかったはずだ。
「あ、ああ……そう聞いている。愛妾にするつもりだったと。だがそれならなおのこと君の前にあの女を出してはならなかった。アレクセイが君に対して無礼を働いたことに変わりはない。改めて、本当にすまなかった……」
愛妾!? アイツ、愛する女を日陰者にする気だったの?
そもそも妾にする気なら、本妻になるミシェルの前に出しては駄目でしょうよ。
この国では『愛人は本妻に姿を見せてはならない』という謎ルールがあるんだから。
「いえ、もうよいのですルノール大公殿下。わたくしはこの宴が終わった後、必ず婚約を破棄していただければそれで……。それと……わたくしが王宮に滞在中に王太子殿下が近づいてきたならば扇子で打ってよろしいのですよね?」
なんかもういいや。アイツがどういうつもりだったとしても、ミシェルがヘレンの存在に傷ついたことに変わりはない。数回しばければそれでいい。
「それはもちろんだ! だが使用人にも側近にもアレクセイを君に近づけるなと厳命してある。だから大丈夫だ、安心してくれ」
大公殿下、それでも近づくのが愚か者というものですよ。
まあいいわ。近づいたらしばくから。そのために鉄扇も沢山持参したし。
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