千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

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二章 “憐れみ掠する地獄の王”悪鬼編

第23話 幼なじみ達

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「流石に強い! 第一学園!! 一気に第四学園の次鋒を一人で下してしまったぁぁ!!」

「加藤……無理しないでね」

「ああ」

 そう言ったのは、俺の幼なじみでもある金城玲奈だ。
 学園長が特別席に呼び出されるため、彼女が代理指揮官となったのだ。

 なぜ一年の彼女に任されたのかは定かではないが……恐らくうちの主戦力が一年生の加藤と俺だから、というのもあるだろうな。

(玲奈か……そういえばあの事件夏休み前以来一度も遭遇しなかったな)

 俺にとって玲奈は、なんというか、自分勝手な存在だ。
 ランダムバッドイベントみたいなもんか。

「……」

「続いて第四学園中堅、一年中級探索者の加藤俊介だァァァ!」

 当然と言えば当然なのだが、第一学園は先鋒ですら上級探索者だった。その先鋒によって、白城しろき先輩と剛田先輩は30秒持たずにやられてしまった。それに、花澤先輩はいくら治療が完了したとはいえ、自爆なんてしたもんだからまだ目が覚めない。恐らく、加藤の次は俺だろう。

(五人抜きしなきゃいけねえぇかな……)

「第四学園なんぞがどうやってここまで勝ち進んできた。どう見てもお前らはレベルが低すぎる」

「……」

 第一学園先鋒の高田の言葉に、加藤は静かに拳を振るわせた。

「大将が強いにしても、限度がある。うちの“神童”かって一人で勝ち抜けばかなり疲労するだろう」

 高田は遠回しに、今の俺を倒すのは簡単だと言っている。

「……」

 それに対し、加藤は何も言わなかった。

「試合開始──」

「【縮地】!」

「ッ!」

 審判が試合開始と言うが早いか、高田は高速移動スキルで魔術士の加藤に接近する。
 加藤はそれを、すんでのところで受け止めた。しかし……

「中級の割にはやるな」

「……グッ、ハッ!!」

 連続で発動する【縮地】による高速攻撃に加藤は対応しきれなかった。

 高田の槍が加藤の土手っ腹を貫く。

(そろそろ準備──)

「雑魚が」

「……それは、どうかな?」

「?」

 しかし、そこで加藤は思いもよらぬ行動に出た。槍に貫かれたまま、両手に赤い魔力を貯め出したのだ。そして、大声で叫ぶ。

「先輩が身を捧げたっていうのに……千縁が一人で頑張ってるのに……俺がこのまま負けて、いられるかッッッ!!」

「お前、まさか──」

 加藤のに、観客席が盛り上がる。

(……!? なんのつもりだ!?)

「あんまり俺たちをバカにするなよ!! お前らにとっちゃ、俺たちは雑魚かもしれないけどなぁ!! 俺たちかって誇りを持って、戦ってるんだよ!!」

「ちっ……黙れ!」

「「「そうだそうだ!!」」」

「第四学園踏ん張れええええ!!」

「偉そうな第一学園に勝っちまえよー!!」

 会場が沸きたつ中、俺は一人鳥肌を立てていた。

 急に、一体どういう風の吹き回しなんだ?

 加藤がそんなことをいう人間じゃないのは知っている。最近改心してたかもしれないが、いくらなんでも急にこんなことを言い出すとは思ってなかった。
 得体の知れない混乱が千縁を襲った。
 そして、加藤は高らかに叫んだ。

「くらえ……【エクス──」

「クッ……!?」

「プロージョン】!!」

 【エクスプロージョン】。上級探索者が好んで使う、爆発魔法だ。基本的にはその性質から多数戦で使われるが、今のように密接した状態で使えば……

 当然、共倒れの必殺技と化す。

 加藤が両手のひらを高田に向けると同時に、高田は加藤を貫通して抜けない槍を諦めて、クロスガードの姿勢をとる。

 そして……

「グッ……!? なっ……!」

 加藤の手には爆発ではなく槍が生まれる。そして、胸の前で腕を交差させている高田の右目に、【フレイムランス】をぶち込んだ。

「グアアアアアアア!?!?」

「「「「「……????」」」」」

「そ、そこまで!! 第四学園の勝ち!!」

「な……まさかフェイク!?」

「卑怯な!!」

 審判が急いで回復魔術師を呼んで、宣言する。
 その声に、加藤は俺達の方へ帰ってきて、呟いた。

「今は騙すしかなくても、いずれ正面から勝って、お前に追いついて見せる。だから今は……。任せた。一人倒したんだから、残りは当然勝てるよな?」

「なに、鳥肌立つんだけど」

 俺は加藤の言葉に呆気に取られた。
 加藤は皆の批判を買うような卑劣な行動で第一学園先鋒を下した。
 これを見た人は皆、加藤はずるいやつだ、というだろう。

「……まあ、お前の意思は伝わったが」

 しかし、加藤は自分の評判を気にせず、世間体を捨ててでも一人を落とした。
 それは他の皆にとっては卑劣でも、チームを勝たせるという決意でもあった。

 俺が五人を相手どるのは難しい、と配慮してのことだろう。
 逆に言えば、一人でも減らせば俺が“神童”を倒せると信じているようだ。

 鳥肌は立ったが。いやまじで。

 因みに加藤のこの鳥肌行動が、対抗祭で爪痕残したいとかいう唯の厨二病故と知るのは、遥か先のこと。

「……ったく、んな勝手なことしなくても全員俺に任せりゃよかったのに」

(しかしこいつは俺も、いっちょやんなくちゃな)

 自然と口角が上がった。

 俺は先輩が出場できないため、四人目で大将として立ち上がる。

「ねっねえ、ちよ」

「ん?」

 そして会場スタジアムに行こうとすると、玲奈が俺を引き留めた。

「なんだ?」

「その……」

 玲奈は少し口ごもった後顔を上げ、いつぶりか真っ直ぐに俺の目を見て言った。

「終わったら、ちょっといい? 聞きたいこととか……あるから」

「やだ」

 俺は玲奈の言葉を無視して、そのまま会場へと降り立ったのだった。


~~~~~


「これは驚きの展開だアアアアア!!! 第四学園加藤選手、巧みな嘘で高田選手を相討ったアアアア!!」

「卑怯だぞー!!!」

「誇りはどこにいったんだー!!!」

「ハハハハ!! いいぞ! もっとやってやれ!!」

 観客たちはいろいろな反応を示すが、やはり加藤に対する批判が多かった。

「第四学園は後がない!! 再び第四学園の命運は、この男に託された!! 第四学園大将、宝晶千縁ィィィ!!!!」

「「「「「うおおおおおお!!!」」」」」

「また奇跡を見せてくれぇぇぇぇ!!」

「一年!! 俺たちの代わりに優勝をもぎ取ってやれええ!!」

 今度は、会場が大歓声に包まれた。先ほど“悪童”を下した俺が、“奇跡”を起こすことを期待しているのだろう。

「期待通り。優勝してみせるさ!!」

「「「「「「「うおおおおおお!!」」」」」」

 俺が高らかに腕を上げて宣言すると、ベンチと観客が雄叫びを上げた。

「さあ! そんな革命児、宝晶選手に対するは、第一学園次鋒! 富永英吉選手だァァァ!!!!」

「……体力を減らすことに集中しろ。“悪童”にかったくらいだ、疲弊させるしか勝ち目はないぞ」

「……わかりました」

 第一学園側ベンチで副コーチがこっそり作戦を伝えてるのが聞こえたが、俺の超聴覚を持ってすれば丸聞こえだった。

「へぇ……?」

「宝晶選手は再び奇跡を見せるのかッッ!! それとも第一学園、圧倒的な力を見せつけることができるのか!? それでは試合──開始!!!!!」

「「「「「わあああああ!!」」」」」


~~~~~


「……ちよ」

 私、金城玲奈は舞台に上がるちよを見て、呟いた。

 昔は仲が良くて、よく遊んだりもしたのに。
 いつからか、二人の距離はかなり空いてしまった。

(中学の時は……よく二人で遊んだりもしたのに)

 それも、“彼女”が現れるまでだったが。
 あの頃の玲奈は、少なからず千縁に好意を寄せていた。

「どこから、間違ったんだろう……」

 “彼女”のせいで、千縁は急に探索者を目指すことになった。中学から専門学校に行っている人も多いし、何より今年の世代は『黄金世代』で競合率が高いのに。
 でも千縁は聞く耳を持たず、そこそこ偏差値の高い学校に行ける学力もあったはずなのに、大阪探索者学校の最弱校、第四学園になんとかといった成績で入学した。

 そして、千縁が中二の時に急に探索者になるなんていうものだから、「一緒に行こう」と、私も第四学園に入学した。

 でも、ちよの成績は思ったより悪く、態度のせいで他三学園に落とされた中級探索者の加藤に入学早々いじめられてしまった。
 この学園で中級探索者となれば、絶対的な権力者だ。

「ねえ、玲奈はなんで宝晶に優しいの? 幼なじみだから? それとも……」

「なんでだろねぇ? あんなやつと仲良くしてもなにもないよ?」

「……」

 新しく出来た友達も、皆ちよを馬鹿にし、それを庇う私も馬鹿にすることもあった。
 そのうち私はちよを庇うことも無くなって、私とちよの交流は無くなってしまった。

「……ちよ」

「?」

「ぁ……邪魔」

 今でも廊下でちよに会うたび、つい声をかけてしまう。でも、なんて言ったらいいかわからない。
 結局いつも誤魔化して、会話を避けてしまった。

(私が……もっとちゃんと……話せてたら)

 私がもっと、千縁の味方になってあげていたら、今頃どんな関係になっていたのだろうか。
 “彼女”がここを離れたというのに、私はなにもできなかった。
 結局、私はいつも言い訳してただけだったんだ。

 ちよは今、なにがあったのか夏休み中に信じられないほど成長して、全国が注目する大舞台に立っている。

「……さよなら」

 私が逃げてばっかりだったから。
 私が守ってあげれなかったから。

 もうは届かない場所に行ってしまったんだ。
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