千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅

文字の大きさ
45 / 61
三章 “夜降る宵朧”殺髏編

第45話 パワーレベリング(合法)

しおりを挟む
「悠大! スキルを発動し続けろ!」

「あ、ああ。はぁ、はぁ……!」

「グアア!!」

 俺と悠大は、十階層に来ていた。

「くっ……もう魔力が……!? 回復……した!?」

「そのままついてこい! まずは俺がモンスターを殴り殺す前に察知できるようになれ!」

「あ、ああ!!」

 本来、下級探索者の悠大がパーティも組まずに中級ダンジョンのメギドに来るのは自殺行為だ。
 しかし、正式にパーティを組んでないとはいえ、あの“神童”に勝った俺が一緒にいる。俺が身分証明書を見せたら、慌てて一緒に通してくれた。

 そして今やっているのは、轢き殺しツアー(命名:俺)。
 俺が悠大の一定距離先を走ってモンスターを瀕死にし、それを悠大が後からやってきてとどめを刺す感じだ。
 いわゆる、パワーレベリングというやつだ。
 この世界では犯罪である。

 ならなぜやっているのかって?
 違法なのはお金を払って依頼することで、別に身内で手伝うくらいは違法でもなんでもじゃない。
 それを言ったら、家族でダンジョン見学やらなんやら出来たもんじゃないしな。
 金を受け取ってやるのはだめだということだ。

 といっても、対して傷を負わせていない探索者は獲得できる魔力値が大幅に減る。実践的なパワーレベリングをしたいなら上級探索者以上の探索者が中級ダンジョンで長時間重キャリーする必要があり、その手間はとんでもない。
 強い探索者ほどもっと上を目指す人が多い故、家族でもない限り無償でやる人は普通いないのだ。

 つまり、ただでさえ少ない上級探索者がいる家系の人のみが、パワーレベリングにありつける現状だ。

 あ、ほとんどの人が自力のみで実力を上げる必要がる中、自分だけ楽して実力をあげるということに後ろめたさを感じることはあるかもしれないな。

「どうした? 母さんが一命をとりとめた後も、お前が妹と家庭を守るんだろ!? もっとスピード上げろ!」

「はぁ、はぁ……別人、みてぇだ……はぁ、クッ……!」

 悠大のスキルは優良スキルの【索敵】。
 魔力値さえ伸びればいろんなパーティから引っ張りだこのはずだ。当然中級探索者にも上がりやすいだろうし、金を稼げるのも確定する。

(しかし、一月以内に昇格して依頼を受けて100万か……完全に不可能というわけではないが、それってどんな依頼を受ければ間に合うんだ?)

 中級探索者の依頼なら、100万の報酬金がある依頼も少なくはない。
 だが、通常攻撃役アタッカー防御役タンカー魔法攻撃役ウィザード索敵・遊撃役レンジャー、そして捕まえることができたら回復術師ヒーラーまたは加護術師バッファーの4(5)人で組むパーティで受けるのが前提だ。
 当然難易度もそれ相応で、一人でやるには厳しいところがある。
 しかしパーティでやると一人頭20万……

(うーん……やっぱ俺が買って延命だけでも先させたほうがいいよな……)

「はぁ、はあ、くっ……」

(それに、優香のほうも正直心配だ)

 優香は昔からアイドルをやめたがっていたが、あそこまで直接助けを求めてきたことは初めてだ。
 良くも悪くも、優香は気が強いからな……

 俺の頭の中を、複数の思考が駆け巡る。

(どうするべきか……悠大に優香に、一絺いちさんの言ってた……ああもう! なんだよ急に、なにからすればいいんだ!?)

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「……今日はもう時間だな。明日も朝6時に集合で」

「まだ……まだいける……!」

 初日から無理しようとする悠大に、ズガンッとデコピンを食らわせる。

「いっ……!? てぇ!!」

「ばか、休憩しないと効率が落ちる。本末転倒だ」

「うっ……」

『ほー……俺様の言葉を覚えてやがったか』

 悪鬼が機嫌よさそうに笑った。
 そりゃ、あの鬼畜戦闘狂が休息だけは取らしてくれるんだから、印象に残るに決まってんだろ!

 門の中で悪鬼と出会ったとき、悪鬼に一発攻撃を当てることが悪鬼の力を借りる条件だった。そして、毎日毎日ぼこぼこにされたり、時には悪鬼が加減をミスって死ぬこともあった。
 門の中で死んでも、どういうわけか復活できたからいいものの……その痛みと苦しみは尋常じゃない。

 そんな中、休息だけはきっちりととらせてもらったのだ。
 めちゃくちゃ混乱したのを、今でも鮮明に覚えてる。

(俺の体感だと、もう四年半前のことだからな……)

『悪い、今月はほとんど一緒に動けなそうだ』20:34既読2
 蓮『おい! またかよ!?』20:36
 美穂『なんか避けてる?』20:36
『いや、親友の母親が危篤らしくて手伝ってる。悪い』20:37既読2

 蓮『そうか……悪い』20:40
 美穂『了解』20:40

 俺はパーティチャットで、蓮と美穂に状況を伝える。
 パーティを組んで以来かなりパーティ行動を断っているからか、ふたりは不満そうだったがOKしてくれた。

「んで……」

 俺は、数少ないスマホの連絡先を確認する。

『岩田悠大』
『鬼塚蓮』
『神崎美穂』
『飛彩優香』
『日月一絺』←
宝晶由香里ほうしょうゆかり

「……もしもし?」

「んぅ? ハッ! ち、千縁君!!」

 一絺さんに電話をかけると、どうやら寝ていたようだ。
 
「はは……すまない、徹夜で調べ物をしていてね……どうしたんだい?」

 徹夜で研究してたのか……
 まだ八時だからどうしたのかと思ったが……

 え? いつの間に連絡先交換したのかって?
 前に隠しカメラを発見した時に、帰り際言われたんだよな。


~~~~~


『ち、千縁君』

『? どうしました?』

『そ、その……電話番号、交換しないか!?』

『え、急にどうしたんですか?』

『どうし……い、いや、結果が出た時に連絡するのが便利だろう? そ、それにこれからまた依頼を出すこともあると思うし……』

(依頼なら協会通してもいいと思うけど……)

『あ、じゃあ交換しましょう』


~~~~~


 うーん、まぁ美人お姉さんの連絡先と言えばそうなのだが、なんというか、事務感がすごくてそんなに嬉しくないっていうか……
 てかそもそも、年上の美人との連絡先交換とか想像もできてなくて“夢”にも思ってなかったから……

(いや……待てよ? いくらいつかの夢じゃなかったからって、嬉しいことではあるはずなのに、喜べないのはおかしいよな?)

 客観的に見ても、違和感がある。
 嬉しいとは思っているのだが、全くと言っていいほど心が動かない。

 明らかに、何か……

「どうした? 千縁君?」

「あ、ああ。いえ、なんでもないです。ただ、しばらく依頼は遠慮させてもらおうと、先に連絡を……」

 ガシャッ! と携帯を取り落としたような音が聞こえた。
 どうした……?

「な、なんでだ? 何かあったのか?」

「いえ、俺の友人が緊急で金が必要になりまして……今は実力を上げるためにダンジョンに潜っているところなんです。だから今月は依頼されても厳しいかと……」

「……」

「……? 一絺さん?」

 俺の言葉に、一絺さんが黙りこくる。
 急にどうしたんだ……?

「ちなみに、その親友の名前は……?」

「岩田悠大ですけど……」

 その言葉に、なぜか一絺さんはほっとしたような息をついた。

「……あ! そうだ、それなら今度うちに来てくれ! 悠大君と一緒にな!」

「え?」

「丁度下級、中級探索者向けの依頼ができたとこなんだ! 報酬はきちんと弾むと伝えておいてくれ!」

 一絺さんはそう言うと、プツっと電話を切ってしまった。

「あっ……切れた!?」

 一絺さんが言うことが本当なら……百万くらい稼げるかもしれない。
 でも、悠大が心配だな……一絺さんの依頼、イレギュラーばっか起きるから。
 それに、なんで悠大を誘ってくれたんだ? 悠大のことも知らないはずだし、下級中級ならもっといくらでも候補者はいると思うんだが……

「まあ考えてても仕方ない、か。一絺さんが助けてくれるのなら遠慮なく助けてもらおう」

 意地張らずに俺から150万受け取れば解決する話なんだが……いや、それじゃどの道、か。

 とにかく、まずは悠大のことから詰めてかないとな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...