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未来が見えない転校生
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職員室に向けて早歩きで向かっていると廊下途中に山積みの教科書を抱えている女子生徒がみえた。
あの子確か…
「山下さん、手伝うよ?」
「せ、星那先輩っ!?え、うわっ!?」
声をかけた瞬間、彼女の持っていた教科書が落ちそうになり咄嗟に支える。
「ありがとうございます!」
「いいからいいから、これ次の授業の教室に持っていくんでしょ?」
「は、はい…」
淀む彼女に必要以上の質問はせず笑顔で応える。
「じゃあ、私持っていくから私の代わりに職員室にいる瀬川先生に少し遅れるって伝えてくれるかな?」
「え…」
「呼ばれてるんだけど今からだとどっちみち少し遅れそうだし、遅れるなら誰かの手助けのせいにした方がお得でしょ?」
片目を瞑って笑顔で頼むと彼女…山下さんは申し訳なさそうにしながらも笑顔で返す。
「あ、ありがとうございますっ!星那先輩!」
「うん!じゃあ、宜しくね」
「はい!」
早歩きで職員室に向かう山下さんを見送り手にずっしりとある教科書を持ち直す。
うっ…これ結構重いな…
重さで半ばよろけながらも自分に叱咤し馬鹿力で教科書を抱え歩く。
階段に差し掛かり慎重にとゆっくりと降りつつも教科書の重さでよろける足に負けほんの少しの気の緩みで足が崩れ落ちそうになる。
「きゃっ!?」
「危ないっ!」
その瞬間誰かの手が脇に差し込まれ支えられた。
「え…」
「無理するな…偽善者」
「なっ!?偽善者って誰が…」
顔をあげるとそこには隣の席の転校生、宮端くんがいた。
「貸せ」
「え?」
脇に差し込まれていた腕が引き抜かれ抱えていた山積みの教科書を掬い取られる。
「あ、待って!」
そのまま持って階段を降りる宮端くんを慌てて追いかけ呼び止める。
「持ってもらえるのは助かるけどやらなきゃいけない事があるからせめて半分だけでも持たせて!」
「やらなきゃいけない事?」
「やらなきゃいけないっていうか、言いたい事かな」
「…」
そう言うと無言で半分だけで教科書を渡してくれた宮端くんに笑顔でお礼を言う。
「ありがとう」
「別に…」
それだけの素っ気ない返事だったが宮端くんなりの優しさだと受け取ることにした。
*
「ここか?」
「うん…」
理科実験室の教室に着くと女子生徒の二年生達が数人教室内におり意をけしてドアを開ける。
ガラッ
「みゆ、やっとかよ!遅いんだよ、カメが…え!?」
「これ山下さんに全部持たせてたの君たちだよね?」
「な、何で星那先輩が…」
女子生徒達の顔がみるみる青ざめていき声が震えているのに気づいた。
「ん?私は山下さんが大変そうだったから手伝っただけだよ?君たちが山下さんにだけ持たせてたなんてホントの事は知らないけど調べたら色々事実が出てくるのは知ってるかなぁ…」
「うぐっ…」
「私ね、こういうの大っ嫌いなの。ねぇ…分かるよね?」
「もうしません!絶対しません!だ、だから許して…」
「ふふっ それは私に言う事かしら?」
「そ、それは…」
「もうすぐ私の頼み事を聞いてくれた山下さんが戻る頃だけどちゃ~んと言わなきゃいけないこと言うよね?」
「は、はい!」
「うん、じゃあそれ以降こんな事が一度でも見えたら今度は手段選ばないから…よろしくね?」
コクコクと何度も頷く女子生徒達に笑顔で返し持っていた教科書を渡すと理科実験室を後にした。
「お前、顔は笑ってても目がまったく笑ってなかったぞ…」
「ふふっ 目には目を 歯には歯をだよ…」
「まぁ、小悪魔なのは分かったが何であんな事言ったんだ?」
「実はね、山下さんあの子達にいじめられてるの理沙がちょこちょこ見ててそれ知ってたから前から何とかしたいと思ってたんだけど…やっと出来てよかったよ」
「ちっ…また偽善者か」
「あ!また偽善者言った!私は偽善者じゃなくて当たり前のことを…」
反論しようとするともう要はないと言わんばかりにスタスタと無言で先に進んでいく宮端くんに言葉が途切れる。
「そういえばさっきの未来みえなかった…」
階段で落ちかけた自分の危険の未来を何故か見えなかった事に気づき歩いていた足をふと止める。
何で見えなかったんだろう?いつもなら見えるのに…まさか、宮端くんが関係しているとか?…ないない!なわけないよね。
ふと考えた仮説に頭を横に振り元に戻す。
*
だが、この出会いが偶然であるか?必然であるか?私は後々”彼”について考える事となる。
あの子確か…
「山下さん、手伝うよ?」
「せ、星那先輩っ!?え、うわっ!?」
声をかけた瞬間、彼女の持っていた教科書が落ちそうになり咄嗟に支える。
「ありがとうございます!」
「いいからいいから、これ次の授業の教室に持っていくんでしょ?」
「は、はい…」
淀む彼女に必要以上の質問はせず笑顔で応える。
「じゃあ、私持っていくから私の代わりに職員室にいる瀬川先生に少し遅れるって伝えてくれるかな?」
「え…」
「呼ばれてるんだけど今からだとどっちみち少し遅れそうだし、遅れるなら誰かの手助けのせいにした方がお得でしょ?」
片目を瞑って笑顔で頼むと彼女…山下さんは申し訳なさそうにしながらも笑顔で返す。
「あ、ありがとうございますっ!星那先輩!」
「うん!じゃあ、宜しくね」
「はい!」
早歩きで職員室に向かう山下さんを見送り手にずっしりとある教科書を持ち直す。
うっ…これ結構重いな…
重さで半ばよろけながらも自分に叱咤し馬鹿力で教科書を抱え歩く。
階段に差し掛かり慎重にとゆっくりと降りつつも教科書の重さでよろける足に負けほんの少しの気の緩みで足が崩れ落ちそうになる。
「きゃっ!?」
「危ないっ!」
その瞬間誰かの手が脇に差し込まれ支えられた。
「え…」
「無理するな…偽善者」
「なっ!?偽善者って誰が…」
顔をあげるとそこには隣の席の転校生、宮端くんがいた。
「貸せ」
「え?」
脇に差し込まれていた腕が引き抜かれ抱えていた山積みの教科書を掬い取られる。
「あ、待って!」
そのまま持って階段を降りる宮端くんを慌てて追いかけ呼び止める。
「持ってもらえるのは助かるけどやらなきゃいけない事があるからせめて半分だけでも持たせて!」
「やらなきゃいけない事?」
「やらなきゃいけないっていうか、言いたい事かな」
「…」
そう言うと無言で半分だけで教科書を渡してくれた宮端くんに笑顔でお礼を言う。
「ありがとう」
「別に…」
それだけの素っ気ない返事だったが宮端くんなりの優しさだと受け取ることにした。
*
「ここか?」
「うん…」
理科実験室の教室に着くと女子生徒の二年生達が数人教室内におり意をけしてドアを開ける。
ガラッ
「みゆ、やっとかよ!遅いんだよ、カメが…え!?」
「これ山下さんに全部持たせてたの君たちだよね?」
「な、何で星那先輩が…」
女子生徒達の顔がみるみる青ざめていき声が震えているのに気づいた。
「ん?私は山下さんが大変そうだったから手伝っただけだよ?君たちが山下さんにだけ持たせてたなんてホントの事は知らないけど調べたら色々事実が出てくるのは知ってるかなぁ…」
「うぐっ…」
「私ね、こういうの大っ嫌いなの。ねぇ…分かるよね?」
「もうしません!絶対しません!だ、だから許して…」
「ふふっ それは私に言う事かしら?」
「そ、それは…」
「もうすぐ私の頼み事を聞いてくれた山下さんが戻る頃だけどちゃ~んと言わなきゃいけないこと言うよね?」
「は、はい!」
「うん、じゃあそれ以降こんな事が一度でも見えたら今度は手段選ばないから…よろしくね?」
コクコクと何度も頷く女子生徒達に笑顔で返し持っていた教科書を渡すと理科実験室を後にした。
「お前、顔は笑ってても目がまったく笑ってなかったぞ…」
「ふふっ 目には目を 歯には歯をだよ…」
「まぁ、小悪魔なのは分かったが何であんな事言ったんだ?」
「実はね、山下さんあの子達にいじめられてるの理沙がちょこちょこ見ててそれ知ってたから前から何とかしたいと思ってたんだけど…やっと出来てよかったよ」
「ちっ…また偽善者か」
「あ!また偽善者言った!私は偽善者じゃなくて当たり前のことを…」
反論しようとするともう要はないと言わんばかりにスタスタと無言で先に進んでいく宮端くんに言葉が途切れる。
「そういえばさっきの未来みえなかった…」
階段で落ちかけた自分の危険の未来を何故か見えなかった事に気づき歩いていた足をふと止める。
何で見えなかったんだろう?いつもなら見えるのに…まさか、宮端くんが関係しているとか?…ないない!なわけないよね。
ふと考えた仮説に頭を横に振り元に戻す。
*
だが、この出会いが偶然であるか?必然であるか?私は後々”彼”について考える事となる。
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