男装ホストは未来を見る

体力測定

ピッ！

バタバタバタバタッ！

体育の先生の笛が鳴るのと同時に音楽がなり走る半分の女子達が一斉に端から端まで走りきる。

「理沙～～！頑張れ～～！！」

応援席に座っていた私はまもなく六十週目に入る理沙を応援していた。
ちなみに持久走が苦手な私は二十周で終わった。

「理沙凄いなぁ…」

理沙は私と違い持久走も含めて運動全般得意とし体力測定ではいつも最高得点を出す程だ。

「残り十週で百だからね～！頑張れ平戸！」

いつの間にか理沙一人となりずっと走り続ける理沙に星那だけではなくその場の全員がエールを送る。

「頑張れ理沙～～～！！」

「あとすこし～～！！」

ピッ！

「残りあと一周！ラストスパート行け～～～！！」

理沙は若干余裕を見せながら残りの一周を全力で走った。

ピィィィィ！！

バンッ

慌ててゆっくりと歩き出す理沙に近づくと汗まみれになっている理沙に抱きつく。

ギュッ

「ちょっ！？星那駄目だって！汗だくだから…」

「…お疲れ様！」

そう言うと理沙は満面の笑みで笑う。

「ありがとう！」

タオルと水を渡し一時水分休憩をすると男子がいる野外のグランド場に集合する。
50メートル走と砲丸投げ以外は男女別の体育館で測定をしそれぞれ終わったため残りの二つを野外で行う事になっていた。

「まひる～～！宮端くん～！」

並んでいる二人に理沙が声をかけ近寄ると何やらまひるが悔しそうに豹を見ていることに気づく。

「まひるどうしたの？そんな悔しそうな顔して」

「俺、自分でいうのもなんだけど体力測定かなり自信あったのに全部豹の奴に負けちまって悔しくてよ！」

「…体力測定は勝ち負けじゃないだろ」

ボソッとまひるを横目にそう言う豹に頷いていると尚も悔しそうにまひるが付け足す。

「それだけじゃないんだよ！豹の奴、俺が悔しそうな顔するとたまにドヤ顔しやがるから尚更悔しくてよ！」

あー、豹ならやりそうだな…

その感想を理沙も思ったらしく半ば呆れた目で豹を見ていた。

はぁ…仕方ないなぁ…

「豹、やりたくはないけどまひるのために勝負しない？」

「勝負？」

「50メートル走のタイムと砲丸投げの距離で合わせてよかった方が勝ち。どう？やってくれる？」

「それ俺に利益あるのか？」

うっ…やっぱりそう来たか…どうしよう、私が賭けられるものなんてないし。

「分かった！なら、宮端くんが勝ったら星那からキスのご褒美よ！これでどうだ！」

「えぇ！？」

急な理沙の提案に慌てて口を抑える。

「むぐっ…」

「な、なななんでききききすなんて！？」

「ぷはっ！だって、星那が賭けられるものなんて体以外ないじゃん！それに星那のキスなら確実にのるに決まってるし！」

「無理無理無理！それに、豹が私のキスなんかでのるわけないよ！私に興味なんてないって言ってたんだから」

「…勝負してやる」

「ほら勝負しないって…え？」

豹の聞き捨てならない言葉に思わず振り向くと頭をかきながらかなりダルそうに再度口を開く。

「…勝負にのってやる」

「えぇ！？あ、あんた私に興味なんて微塵もないんじゃ…」

震える指をさし突き出すとさも聞こえてないように踵を返し男子の列に戻っていった。

「…つまりはそう言う意味なのかもね」

理沙のその言葉に絶対違う！と心底思った。