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依頼者
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開店時間に入り個々で様々なお客様の対応をし慌ただしくしている中、店オリジナルのスイーツを取りにキッチンに向かう途中で窓から入口付近をウロウロしているスーツ姿の不審な男がいた。
あの人何やってるんだろう…?
疑問は過ぎるがここはホストクラブ、男性が楽しめる事はほとんどないのは当たり前の世界。
だからこそすぐ帰るだろうと思い止めていた足を急いでキッチンに向かって歩く。
「レアチーズケーキとフルーツ盛合せお願いしま~す!」
「は~い!」
キッチンから顔を出したのはいつもの後輩ホストではなく瑞穂さんだった。
「あ!せなくん!」
「瑞穂さん、キッチンの方で働いていたんだね」
「せなくんが雇ってほしいってここのオーナーさんに言ってくれたおかげで就職先も見つかって、ここの人皆優しくしてくれるしこんな楽しい職場初めて!本当にありがとう!」
満面の笑みで楽しいと語る瑞穂に心配していた気持ちが消え自然と頬が緩む。
よかった、本当に楽しそうで…
「ちょっと待ってて!すぐ用意するから!」
そう言うとお店オリジナルのイチゴのソースがかかったバニラアイス付きのレアチーズケーキと沢山の色々なフルーツ盛合せをお盆に乗せカウンターに置く。
「ありがとう!瑞穂さん」
「い~え!頑張ってくださいね!」
スイーツと瑞穂さんの笑顔をゲットし客席に向かうと未だに入口付近でウロウロしている不審なスーツ男が目に入った。
まだ居る…
声を掛けようか掛けまいか迷っていると、丁度いい所にこちらを向かって走ってくる明を見つけた。
「お前何もたもたしてんだよ!お前がいないから後輩の奴らお前の客に愚痴愚痴文句言われてんぞ!」
「ごめんごめん!それより…」
「ん?」
明にスイーツを乗せたお盆を渡すと懐から小さなメモ用紙とペンを取り出し壁を下敷きにメッセージを書く。
「よし!はい、これよろしくね!」
「はぁ!?何だよこのメモ!」
「お客様に渡しといて!ついでに相手よろしく!」
「ちょっ!?せな!!」
明に何もかも託し店の外にいる不審なスーツ男に近づく。
「あの…」
「は!?す、すみませんっ!」
「あ、え!?ちょっと待って!」
その場から逃げようとした男の腕をすかさず掴む。
「何も怒ってるわけじゃありません。ただこちらとしてはお店の前でウロウロしている事情を知りたいだけなんです」
「…」
男はその言葉に逃げようとしていた足を止めるとおもむろに口を開く。
「実は…こちらに美嶋 星那さんという人が居ると聞きまして」
「え?それは私ですが…」
「え!?で、でもその星那さんは女性なので貴方とは性別が…」
「すみません、少し近くの喫茶店にてお話いいですか?」
「え?そ、それは構いませんが…」
お店から少し離れた繁華街に入り少し古ぼけた”シズヤ”と言う喫茶店に入ると店内は店の店長ただ一人だった。
カラン
「いらっしゃい」
「アメリカンコーヒー二つお願いします」
「かしこまりました。お好きな席へどうぞ」
店内の一番奥の隅の席に腰掛けるとあれから疑心暗鬼の目で見ている男に先程の話の事情を明かす。
「実は、お店には内緒にしているんですが…私女なんです」
「えぇ!?」
「事情があって性別を偽って働いてまして…」
「そうだったんですか…理解しました」
「というわけで、改めて私に何のご要件でしょうか?」
男はその言葉に何やら一瞬悩んだ表情をすると首を小さく振り口を開く。
「実は…母の事を知りたくて」
「母?」
「星那さんが住んでいるボロアパートの大家です」
「えぇ!?もしかして大家さんの息子さん!?」
「はい…」
「で、でも確か息子さんは今頃海外に留学しているはずじゃ…」
「…してはいました」
「してはいました?いったいどういう…」
「事情は話せません…」
「そうですか…無理には聞きませんが、大家さんの何が知りたいんですか?」
「母がアパートに居ない時間についてです」
「アパートに居ない時間?」
「す、すみませんがそれも事情は言えないんです…」
「はぁ…ほとんど事情が言えないんじゃこちらとしても大家さんについて話すのは躊躇いがあるのですが、大家さんの息子さんという事を信じ話はします」
「ありがとう…ございます」
男の顔からして何やら深刻な事情があると察した私は仕方なく一応息子と言う事を信じることにした。
「大家さんは基本5時半から6時半まで夕飯の買い出しで居ませんが、確か今日は近所の集まりか何かで9時半から10時半までアパートには居ないはずです」
「そうですか…教えてくれてありがとうございます」
男は小さく会釈をし深刻な表情のまま俯く。
「いえ…あの、もし大家さんを傷つけるつもりならやめてくださいね?」
「っ…決してそんな事はしません!本当です!私はただ…」
急に顔を上げ必死に訴える姿にそれ以上の問い詰めは駄目だと悟った。
「傷つけるつもりがないのならいいんです。私は事情も理由も聞きませんがいくら息子さんでも大家さんを傷つけるつもりなら許せないので」
「はい…母の事を親身に思ってくれてありがとうございます」
「いえ…ではそのお店の方にも、もし会われるのなら大家さんにも私が性別を偽ってこの仕事をしている事は内緒にしてもらいますか?」
「勿論です。必ず口外しないとお約束します。その代わりと言っては何ですが私が星那さんにお会いした事や海外に居ないことは母には言わないで頂きたいのですが…」
「はぁ…まぁ、それも何やら”事情が”おありのでしょうから言いませんが…」
「本当にありがとうございます…」
その後、大家さんの息子と名乗る男と分かれた私はお店に向かう途中ある未来を見た。
「これは…」
燃えるアパート、大家さんの家族写真、そしてあれは…スーツ姿の男。
もしかして大家さんの息子?それに何でアパートが燃えてるの?
その未来に何故か湧いた単語は…”放火魔”だった。
あの人何やってるんだろう…?
疑問は過ぎるがここはホストクラブ、男性が楽しめる事はほとんどないのは当たり前の世界。
だからこそすぐ帰るだろうと思い止めていた足を急いでキッチンに向かって歩く。
「レアチーズケーキとフルーツ盛合せお願いしま~す!」
「は~い!」
キッチンから顔を出したのはいつもの後輩ホストではなく瑞穂さんだった。
「あ!せなくん!」
「瑞穂さん、キッチンの方で働いていたんだね」
「せなくんが雇ってほしいってここのオーナーさんに言ってくれたおかげで就職先も見つかって、ここの人皆優しくしてくれるしこんな楽しい職場初めて!本当にありがとう!」
満面の笑みで楽しいと語る瑞穂に心配していた気持ちが消え自然と頬が緩む。
よかった、本当に楽しそうで…
「ちょっと待ってて!すぐ用意するから!」
そう言うとお店オリジナルのイチゴのソースがかかったバニラアイス付きのレアチーズケーキと沢山の色々なフルーツ盛合せをお盆に乗せカウンターに置く。
「ありがとう!瑞穂さん」
「い~え!頑張ってくださいね!」
スイーツと瑞穂さんの笑顔をゲットし客席に向かうと未だに入口付近でウロウロしている不審なスーツ男が目に入った。
まだ居る…
声を掛けようか掛けまいか迷っていると、丁度いい所にこちらを向かって走ってくる明を見つけた。
「お前何もたもたしてんだよ!お前がいないから後輩の奴らお前の客に愚痴愚痴文句言われてんぞ!」
「ごめんごめん!それより…」
「ん?」
明にスイーツを乗せたお盆を渡すと懐から小さなメモ用紙とペンを取り出し壁を下敷きにメッセージを書く。
「よし!はい、これよろしくね!」
「はぁ!?何だよこのメモ!」
「お客様に渡しといて!ついでに相手よろしく!」
「ちょっ!?せな!!」
明に何もかも託し店の外にいる不審なスーツ男に近づく。
「あの…」
「は!?す、すみませんっ!」
「あ、え!?ちょっと待って!」
その場から逃げようとした男の腕をすかさず掴む。
「何も怒ってるわけじゃありません。ただこちらとしてはお店の前でウロウロしている事情を知りたいだけなんです」
「…」
男はその言葉に逃げようとしていた足を止めるとおもむろに口を開く。
「実は…こちらに美嶋 星那さんという人が居ると聞きまして」
「え?それは私ですが…」
「え!?で、でもその星那さんは女性なので貴方とは性別が…」
「すみません、少し近くの喫茶店にてお話いいですか?」
「え?そ、それは構いませんが…」
お店から少し離れた繁華街に入り少し古ぼけた”シズヤ”と言う喫茶店に入ると店内は店の店長ただ一人だった。
カラン
「いらっしゃい」
「アメリカンコーヒー二つお願いします」
「かしこまりました。お好きな席へどうぞ」
店内の一番奥の隅の席に腰掛けるとあれから疑心暗鬼の目で見ている男に先程の話の事情を明かす。
「実は、お店には内緒にしているんですが…私女なんです」
「えぇ!?」
「事情があって性別を偽って働いてまして…」
「そうだったんですか…理解しました」
「というわけで、改めて私に何のご要件でしょうか?」
男はその言葉に何やら一瞬悩んだ表情をすると首を小さく振り口を開く。
「実は…母の事を知りたくて」
「母?」
「星那さんが住んでいるボロアパートの大家です」
「えぇ!?もしかして大家さんの息子さん!?」
「はい…」
「で、でも確か息子さんは今頃海外に留学しているはずじゃ…」
「…してはいました」
「してはいました?いったいどういう…」
「事情は話せません…」
「そうですか…無理には聞きませんが、大家さんの何が知りたいんですか?」
「母がアパートに居ない時間についてです」
「アパートに居ない時間?」
「す、すみませんがそれも事情は言えないんです…」
「はぁ…ほとんど事情が言えないんじゃこちらとしても大家さんについて話すのは躊躇いがあるのですが、大家さんの息子さんという事を信じ話はします」
「ありがとう…ございます」
男の顔からして何やら深刻な事情があると察した私は仕方なく一応息子と言う事を信じることにした。
「大家さんは基本5時半から6時半まで夕飯の買い出しで居ませんが、確か今日は近所の集まりか何かで9時半から10時半までアパートには居ないはずです」
「そうですか…教えてくれてありがとうございます」
男は小さく会釈をし深刻な表情のまま俯く。
「いえ…あの、もし大家さんを傷つけるつもりならやめてくださいね?」
「っ…決してそんな事はしません!本当です!私はただ…」
急に顔を上げ必死に訴える姿にそれ以上の問い詰めは駄目だと悟った。
「傷つけるつもりがないのならいいんです。私は事情も理由も聞きませんがいくら息子さんでも大家さんを傷つけるつもりなら許せないので」
「はい…母の事を親身に思ってくれてありがとうございます」
「いえ…ではそのお店の方にも、もし会われるのなら大家さんにも私が性別を偽ってこの仕事をしている事は内緒にしてもらいますか?」
「勿論です。必ず口外しないとお約束します。その代わりと言っては何ですが私が星那さんにお会いした事や海外に居ないことは母には言わないで頂きたいのですが…」
「はぁ…まぁ、それも何やら”事情が”おありのでしょうから言いませんが…」
「本当にありがとうございます…」
その後、大家さんの息子と名乗る男と分かれた私はお店に向かう途中ある未来を見た。
「これは…」
燃えるアパート、大家さんの家族写真、そしてあれは…スーツ姿の男。
もしかして大家さんの息子?それに何でアパートが燃えてるの?
その未来に何故か湧いた単語は…”放火魔”だった。
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