男装ホストは未来を見る

予想と想定外

日が落ちてきた中、温い風を肌で感じつつ真っ直ぐにバイト先である『Star』に向かって歩く。

「はぁ…任せて！なんて言ったけどどうしたらいいんだろ？直球にカナトさんに貢ぐのは駄目って言っても聞き入れてもらえないだろうし…」

頭を悩ませながら空を仰ぐ。

ズキッ！

「っ…！？」

急に頭がひび割れるような痛みが走りすぐに未来の映像だと分かりその場に頭を抑え蹲る。

「うぅ…これは…」

ボロボロの黒のドレス姿の井川さんに…両手両足には手錠のような物がかけられていて…暗いどこかに閉じ込められてる…？

最後の暗い空間が見えた瞬間すぐに映像は途切れ痛みが徐々に引いていった。

「はぁ…はぁ…井川さんが危ないっ！」

痛みが完全に引くのと同時に立ち上がり辺りを見渡す。

とにかく井川さんを探さなきゃ！

帰宅部である井川は既に帰宅しているか？バイト先である『Berryz』にいるか？どちらかに絞り試行錯誤していると近くで探していた本人である井川の声が聞こえた。

「…いや！離してっ！」

声の方に走って行くと『花吹雪』と書かれた店の前で以前路地裏であった二人組の男達に半ば強引に引っ張られ抵抗している井川の姿があった。

「何言ってやがる？お前がカナトさんに会いたいって言うから店に入らせてやるんだろうが！大人しくと入れ！」

「カナトには会いたいけど…でもこんな無理矢理なんてっ…んぐっ！？」

一人の男が井川の体を固定し、もう一人の男が口を塞ぐとそのまま引きずられるようにして店の中に連れ込まれていった。

「井川さんっ！！」

パシッ！

慌てて店に入ろうとした瞬間、腕を引っ張られ足を止めた。

「やめろ…！」

振り向くとそこには腕を掴む豹の姿があった。

「豹…？何でここに…」

「…今行ってもお前一人じゃ何も出来ない」

「っ…そんなの行ってみなきゃ分からな…」

「行っても多数相手に何も出来ず井川みたいに捕まるだけだ」

「そ、そうかもだけど…でも今行かなきゃ井川さんが…！」

「分かってる…だが、無計画のまま突っ込んでも何も出来ず井川と一緒に捕らわれるだけ…だけど計画して行くなら話は別だ。お前は今行って何も出来ず苦しむのと少し間は空くが計画して準備万端で井川を確実に助けるのとどっちがいい？」

「そんなの…」

冷静になれば馬鹿でも分かる話だ…

「…少し間は空いても私は完全に助けれる道を選ぶ」

「じゃ、決まりだな…行くぞ！」

掴んだままの腕をそのまま引っ張り駆け出した。

「なっ…行くってどこに！？」