星渡る舟は、戻らない

蘇 陶華

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渇望と嫉妬

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障碍。

蒼にとっては、認めたくない文字。

バイオリンが好きで、物心着く頃には、天才と言われていた。

バイオリンを弾くと、母は、嬉しそうな顔をしたり、

時には、哀しい顔をしたり、

いろんな顔をしていた。

成長するにつれ、自分が、他の人と違う事を母は、気付き始めていたようだ。

ある特定の能力だけが、優れる障碍。

蒼は、バイオリンのみ、秀でていて。

それ以外は、どこか幼なげだった。

なんとかく、

他の人と違う。

そう思いながら、母と祖父の愛情の中で、育った。

ただ、四條 光瑠の存在を知った時に、

自分の中で、何かが、壊れた。

自分が、生まれて来た理由を知りたかった。

父の愛情を知りたかった。

母のせいで、

父が亡くなったと、聞かされた。

教えてくれた麻美は、信用に値しない女だ。

だけど、

成長する中で、知った母と父の関係から、

自分が望まれて生まれて来たのではない事を知った。

母は、自分を必要としていない。

未熟な考えだった。

父の愛情を求めるあまり、母の愛情に疑いの目を向けていた。

「父は、どんな人だったのか」

蒼は、純粋に知りたかった。

父の生きた証の断片を集めているようだった。

「本当、お前って子供だったよな」

あとで、海は、蒼に言っている。

「パパの子供が、別にいるのが、許せなかったんだ」

蒼は、無邪気に笑った。

「兄さんがいるのにね」

「でも、反発した」

海も笑った。

「だって、憎かったんだ。いい所、全部、兄さんが持っていったから」

「そうかな。僕なりに、悩んでいたんだけど」

「みんな、兄さんに魅かれていく」

「勘違いだよ」

そんな会話ができるまで、何年か、かかった。

その時の蒼は、麻美のつまらない提案に乗っていた。

家族ごっこ。

四條 光瑠の両親と一緒に住もうと考えていた。


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