星渡る舟は、戻らない

蘇 陶華

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遅すぎた反抗期

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「パパがどんな風に生きたのか、知りたいと思わない?」

澪の叔母、麻美の言葉だった。

勿論、その裏で、取引があった事なんて、気づく筈もなかった。

「それが、パパの両親と住むって事?」

「そうよ」

新たに出がける不動産事業に、四條 光瑠の両親が関わっている事は、蒼には伝えていない。

一等地に、購入したマンションに、新たに家族を装って、住まわせる予定だった。

「パパができなかった事を、あなたが、してあげるの」

「僕が?」

「だって、あなたは、四條 光瑠の子供でしょう」

四條 光瑠の名前を言われると、蒼の心は揺れる。

生まれた時から、何度も、その名前w聞いているけど、どんな人物か、知る事はできなかった。

もう、一人の四條 光瑠の子供。海。

海より、上だって思いたい。

気がつくと、自分の前に立ち塞がっている。

「パパの両親と一緒に住むのは、まだ、早いかな」

シェリーには、反発したい一心で、一緒に住むと言った。

麻美が何を考えているか、わからない。

どうして、こうも、関わってくるのか。

「あなたが、四條 光瑠の両親を拒否するのなら、別の息子を紹介するつもりよ」

「あぁ・・・」

蒼は、四條 光瑠の名前もそうだが、海の事を言われると心に、小波が立った。

「逢えたのは、嬉しいけど、少し、考えたい」

シェリーと離れてみたいとは、いつも、思っていた。

だから、反対を押し切って、四條 光瑠の生まれた日本に来てみた。

そこで、知り合った澪。

澪の叔母というから、信じて、ついてきた。

だが、時折、見せる冷たい顔。

不信感が頭をもたげてきた。

澪に相談しようか。

そう、思い始めていた。

「いいのね」

ここで、蒼に断られると思っていなかった。

親子で、自分を蔑ろにする。

麻美は、ため息をついた。

どんなに、時間をかけて、追いかけても、四條 光瑠は、自分を振り向いてくれなかった。

あの雨の日、自分は、ドイツに居た。

初めて逢った日と同じ、雨の日。

失恋した彼女を癒したのも、バーで聞いた彼のバイオリンだった。

生ライブだった。

酔い潰れた彼女を、演奏を中断して、助けてくれた人。

何度か、偶然に逢うちに、運命を感じていた。

彼と一緒にいたい。

そう思っていたのに。

彼は、遠くへと旅立った。

反対されれば、反対される程、四條 光瑠を追いかけていた。

「あなた達は、少しも、私の事を考えない」

「え?」

「何でもないわ」

そう笑う麻美の顔が不気味だった。


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