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第1章:勇者ソーンの旅立ち
チャプター5
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蛇人族の男を消し飛ばした聖剣の一撃は、洞窟の岩盤のそこらを奥まで抉りぬいていたのだろう。
結果、脆くなったそこは崩れ、潰れたということだ。
そんな洞窟から命からがら逃げだした勇者ソーンと青年騎士ミカエルは、大小様々な岩によって閉ざされた洞窟の入り口を見て、同時にホッと胸を撫でおろした。
「た、助かりました、勇者さん。
ありがとうございます。」
「いや、これくらいは大したことはない。
まさか体重90キロオーバーの素敵なガイが武装をしていても、抱えてベッドインできるように鍛えていたこの肉体が、こんなところで役立つとは思わなかったが。」
「降ろしてくださいっス!」
助かったのは確かだったが、その技術とフィジカルを手に入れた動機が不純すぎて、ミカエルは思わず叫ぶ。
叫んだ彼を、勇者は躊躇いなく「わかった」と地面へ真っ逆さまに落とす。
降ろせとは言ったものの、唐突に落とされるとは思わなかった青年騎士は思い切り尻餅をつき、抱えていた盾と槍をぶちまけることになった。
「痛てて…」と呟きながら、ミカエルは尻をさすってよろよろと立ち上がる。
「それにしても…良かったんスか?
勇者さん、あの蛇人族のこと、すっげえ気に入ってたじゃないっスか。」
「ああ、別に構わない。
確かに彼は素敵なガイだったのだが、俺にとっては許せない一線を越えたからな。」
ミカエルは、ちらりと塞がれた洞窟へと目をやると、少しばかりバツが悪そうに問いかける。
しかし、問いを受けた当の勇者ソーンは、堂々と胸を張って答えた。
その態度に迷いはない。
「…許せない一線って?」
「俺の仲間を傷つけることだ。」
「仲間って…」
「君以外に誰がいるんだ、ミカエル君。」
確認するように、言葉を交わす。
勇者の言葉も、真っすぐな青い視線も、態度同様に、迷いが見られない。
自信がややなさげに投げかけられる青年の問いを、バッサリと切り捨てるように答える。
さも当然であろうと発せられた発言に、思わずミカエルはくすぐったそうにくしゃりと顔を歪めて笑った。
「どうした、その顔は。」
「なんでもないっスよ、勇者さん。」
「そうか。
ああ、それと。」
なぜか嬉しそうな表情を見せたミカエルに首を傾げつつも、何でもないと言われればソーンは追求しない。
その話題はそれまでだと打ち切るような相槌を打って、会話が終わると思いきや、ソーンは何かを思い出したかのように、掌へと拳をポンと打ち付ける。
「俺の名前は『勇者さん』じゃない、『ソーン』だ。」
それだけ言って、彼はくるりと踵を返す。
背中でミカエルに「進もう」と促して、歩き出す。
ゆっくりと遠ざかろうとする背中を見て、ミカエルはまた一際大きな鼓動が胸を打つのを感じた。
その背中を暫し見ていたい衝動に襲われたものの、置いていかれてはたまったものではない。
ミカエルは散らばってしまった自身の愛用装備を拾い上げて、駆けだす。
「…はいっ、ソーンさん!」
彼の返事を聞いたソーンは冷静沈着な口元を緩め、「よろしい」と頷く。
そんなソーンの隣にミカエルは並び、早めていた歩調を彼に合わせる。
「それで、これからどうするっスか?
魔王の城までは結構距離があるっスよ?」
「そうだな、まずは冒険者ギルドがある街に行くとしよう。
そこで仕事を貰って路銀を稼ぎながら、魔王の城を目指そうじゃないか。」
勇者と騎士は、二人並んで道を歩む。
その距離は、互いに手が届くほど。
進みだした世界の命運を巡る旅も、関係も、未だ始まったばかりだ。
結果、脆くなったそこは崩れ、潰れたということだ。
そんな洞窟から命からがら逃げだした勇者ソーンと青年騎士ミカエルは、大小様々な岩によって閉ざされた洞窟の入り口を見て、同時にホッと胸を撫でおろした。
「た、助かりました、勇者さん。
ありがとうございます。」
「いや、これくらいは大したことはない。
まさか体重90キロオーバーの素敵なガイが武装をしていても、抱えてベッドインできるように鍛えていたこの肉体が、こんなところで役立つとは思わなかったが。」
「降ろしてくださいっス!」
助かったのは確かだったが、その技術とフィジカルを手に入れた動機が不純すぎて、ミカエルは思わず叫ぶ。
叫んだ彼を、勇者は躊躇いなく「わかった」と地面へ真っ逆さまに落とす。
降ろせとは言ったものの、唐突に落とされるとは思わなかった青年騎士は思い切り尻餅をつき、抱えていた盾と槍をぶちまけることになった。
「痛てて…」と呟きながら、ミカエルは尻をさすってよろよろと立ち上がる。
「それにしても…良かったんスか?
勇者さん、あの蛇人族のこと、すっげえ気に入ってたじゃないっスか。」
「ああ、別に構わない。
確かに彼は素敵なガイだったのだが、俺にとっては許せない一線を越えたからな。」
ミカエルは、ちらりと塞がれた洞窟へと目をやると、少しばかりバツが悪そうに問いかける。
しかし、問いを受けた当の勇者ソーンは、堂々と胸を張って答えた。
その態度に迷いはない。
「…許せない一線って?」
「俺の仲間を傷つけることだ。」
「仲間って…」
「君以外に誰がいるんだ、ミカエル君。」
確認するように、言葉を交わす。
勇者の言葉も、真っすぐな青い視線も、態度同様に、迷いが見られない。
自信がややなさげに投げかけられる青年の問いを、バッサリと切り捨てるように答える。
さも当然であろうと発せられた発言に、思わずミカエルはくすぐったそうにくしゃりと顔を歪めて笑った。
「どうした、その顔は。」
「なんでもないっスよ、勇者さん。」
「そうか。
ああ、それと。」
なぜか嬉しそうな表情を見せたミカエルに首を傾げつつも、何でもないと言われればソーンは追求しない。
その話題はそれまでだと打ち切るような相槌を打って、会話が終わると思いきや、ソーンは何かを思い出したかのように、掌へと拳をポンと打ち付ける。
「俺の名前は『勇者さん』じゃない、『ソーン』だ。」
それだけ言って、彼はくるりと踵を返す。
背中でミカエルに「進もう」と促して、歩き出す。
ゆっくりと遠ざかろうとする背中を見て、ミカエルはまた一際大きな鼓動が胸を打つのを感じた。
その背中を暫し見ていたい衝動に襲われたものの、置いていかれてはたまったものではない。
ミカエルは散らばってしまった自身の愛用装備を拾い上げて、駆けだす。
「…はいっ、ソーンさん!」
彼の返事を聞いたソーンは冷静沈着な口元を緩め、「よろしい」と頷く。
そんなソーンの隣にミカエルは並び、早めていた歩調を彼に合わせる。
「それで、これからどうするっスか?
魔王の城までは結構距離があるっスよ?」
「そうだな、まずは冒険者ギルドがある街に行くとしよう。
そこで仕事を貰って路銀を稼ぎながら、魔王の城を目指そうじゃないか。」
勇者と騎士は、二人並んで道を歩む。
その距離は、互いに手が届くほど。
進みだした世界の命運を巡る旅も、関係も、未だ始まったばかりだ。
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