召喚された勇者ですが魔王様のペット『犬野郎』として後宮で飼われています。

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1章 『勇者』は失業の危機にある。

『犬』から『妃』に職種変更命令(プロポーズ)お受けします! 8

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「謝られても無理おすぅ~~~ッ!!!」

 やはり人と鬼は大きく価値観が違う。
 そんなもので斬りかかられては、いくら『勇者』で『鬼殺し』を持っていても、即死だろう。

 (どうしようもない…)

 あまりに楽しい日々が続き忘れていたが、俺にとってこんなことは日時茶飯事だった。

 ご主人様に保護されてからは、鬼の中でも絶対的強者であるあのお方の庇護により、ケネル限定ではあるが、生まれて初めての安全を手に入れていた。

 犯人に体を差し出す必要もなく、媚びることもない自由は得難いものであったのだ。
 少々自由を満喫しすぎてハメを外してしまい、ご主人様に大変叱られてしまったりもしたが、本当に楽しい日々を過ごせていた。

 (思えば人生最後のご褒美やったんかもしらへん)

 今まで何度も、それこそ数え切れないくらいの数の誘拐や拉致に遭ったが、こんなふうに本当に命の危機に晒されたのは、この世界に来る前はただ一度だけ。

 (俺を庇ったおとんの身代わりで、おとんの先輩が亡くなりはった時以来や)

 でも、この世界…常夜に来てからはもう三度目になる。

 鬼の価値観や食性から、ご主人様に注意されたように、嬲られ蹂躙される未来の予想は難くなかったが、まさかこんな形で終わりを迎えるとは思わなかった。

 (せめてもの救いはご主人様と結ばれたことか…)

 それでもあのお方の真名をまだ教えていただいていないし、ご立派過ぎるご主人様のムスコ様にも…魔王様ではまだ抱かれていない。

 ──『……く、だっ…て……プ………ズのへ、…じを……いてないっ!』──

 (ん?空耳やろうか?)

 愛するお方の事を考えているからか…最期のこの瞬間がえらい長く感じる。


『ずっと…永遠とわに私のもとにいろ』


 熱の籠もった金色こんじきの眼差しを思い出す。

 そのお約束が果たせなくて申し訳なく思うが、今までの人生でここまで生きてこれたこと自体が、奇跡のようなものだった。

 何故かこの常夜に来る前後から、その気配を感じれなくなったが、幼い頃から今まで俺はずっと兄貴に守られていた。
 兄貴は死んでからも俺の守護霊として不思議な力で守ってくれていた。

 それがなければとうの昔に俺は死んでいた。

 それくらい危ない人生だった。
 けれど、今度こそ確実にここで終わる。

 (死んだら今度こそ兄貴のとこに行くんやろか?)

 俺の命を奪うであろう刃を前に目を閉じ、それ・・を覚悟した。

 (ご主人様、聞こえてはるならお願いします。
 蘇芳はんは…ランちゃんは脅されてこないなことをしましたが、どうかお許しください。
 貴方様の長い生を共に生きられる友は、このお方しかいらっしゃいません)

 ホントはちょっと意地悪して、『許したあかん』とかも言いたいところだが、元々あのお方と俺に流れる時間は違う。

 人ではない俺と違って、あのお方は永遠を生きられる。
 ツンは強いが、寂しんぼなあのお方にはお友だちが必要だ。
 
 そんなお祈りとお願いまでしていたのだが…
 いくら待っても衝撃や痛みが俺を襲うことはなかった。

「……お前さんの声はこえた。
アイツのことをそこまで想ってくれてありがとうな」

 蘇芳はんのそんなお言葉で恐る恐る目を開いた俺は、眼前に迫っていたはずの刃が綺麗な緑色の膜のようなものに阻まれているのに驚く。

 (え?)

 もう既に俺に殺気を向けることを止めた彼は、太刀を下ろして俺と目が合うと軽く微笑んだ。
 そして何故か頭をぽんぽんと優しく叩かれた。

「すまんな、ナシくん」
「ランちゃん???」
「怖い思いをさせて悪かった。
俺はもともとお前さんを殺す気もないし、大将の友をやめる気もないから安心しろ」

 紡がれた言葉がよくわからなくて頭がパーンしそうになる。

 (はい?)

「ほら、寸止めしてるし、大将の薄縁ぶんしん自動オートで防いでるし……な?」

 なんて軽く言ってくれているが………
 死を覚悟していた俺としては呆気に取られ、目や口をパチパチ、パクパクさせて、

 (ランちゃんのアホーーーーーッ!!)

 心の中でこう叫ぶしかなかった。  

 ───この時から俺はまた再びランちゃん呼びに戻ってしまった。
 だってランちゃんはランちゃんやし、ちゃんやったんよ!

「お兄さんは大将の神官だから、お前さんの見極めをしなくちゃいけなかったんだ」

 いつもの調子でランちゃんは俺に詫びを入れてくれるが、一体なんのことだか訳がわからない。

「はあ?」

 すっかり気の抜けたところで、不意にご主人様のお声が頭に響いた。


 ──『真名も呼ばぬ。求婚プロポーズの返事も返さぬ。
             そのような状態で私の側を離れようなど…そのような勝手は許さぬ!』──


 そのお言葉と共に、ランちゃんの持つ太刀が彼の手の中からいきなり消失してしまった。
 ご主人様から賜ったもので、その主の嫁に害を与えようとしたのが良くなかったのか、ランちゃんからそれは取り上げられてしまったらしい。

 彼は驚いたりなどはしなかったが、ほんのちょっと寂しそうなお顔を見せたくらいで、すぐにいつものランちゃんに戻った。

「さて、お兄さんはこれからご主人様にちょっとばかりキツいおしおきを受けるから、何なら寝て……いや、風呂に入ってろ」

 そう言うといつもみたいに手をシッシッとさせて俺に「風呂に行け」と示唆する。

「ほら、危ないから!あとでひとをやるから早く行け!」

 まるで自分の方を見てくれるなとでも言いたげなお顔で、俺を風呂に向かわせようとする。
 真剣や魔術が危険というのも理解できるし、先程のことで動揺しているのもあり、俺は言われるままに浴室に向かい歩きはじめた。

 彼はもう俺のことは視界に入ってないものとして扱っているのか、真剣な表情でそれ・・の来訪に備えていた。

 ちらりと見たランちゃんのお顔は、さっき俺を襲って来たときよりももっとずっと恐いお顔で、巻いていたブレスレットを引きちぎると右手に握りこんで、呪歌ガルドルと呼ばれる魔術の詠唱みたいなものを呟いていた。

 今の彼にある武器は魔術のみ。

 ぱっと見た目では分からないが、ルーンの刻まれた石はそれほど身につけていない。
 それもすぐに解析されたうえに返されてしまうから、ほぼ無手に近い状態だ。

 いくらランちゃんがレベル1万弱とはいえご主人様はチートが過ぎるお方。
 考えれば考えるほど詰んでいる無理ゲーであるのに、それでもランちゃんはご主人様に挑むらしい。

 因みにランちゃんのクラスは『神官』。

 (称号タグに【白】のしんかんって出とった)

『朱頂蘭』と偽っていた時は『魔術師』だったし、マッチョさんな見た目を完全に裏切ったご職業である。

 (ランちゃんは複合職で『魔術師』と『侍』の力があるみたいやけど、『魔王』様はどないなお力があるんやろか?)

 因みに俺的ラスボスの皇様は、『鬼皇おにおう』でなんというかそのまんまであった。

 少しばかりご主人様とランちゃんの対決に興味が出てきてしまい、浴室の扉の影からその様子を伺うことにした。
 ランちゃんが心配であるし、レベル1万弱とレベル17であることや強者同士の戦いなど、興味が湧かないはずがない。

 (怒られんようにコソッと見たろ)

 静まり返った部屋にはもうランちゃんが謡う穏やかだが悲しげな呪歌しか聞こえない。

 ──部屋の中心に設置された、例の超巨大ダイアモンドに「ピキリ…」とヒビが入る。

「……大将、アンタなに跳んで来てんだよ!
いくらナシくんたからもんが心配でも分け身があるだろうがっ!俺の結界を壊すな!!」

 ご主人様のお怒りで自らの内から力が取り上げられたにも関わらず、彼は動じず落ち着き払っている。
 それどころかご主人様を咎める呆れが多分に含まれた彼の声は、


 ──『愚問だ阿呆が』──


 ご主人様のテレパシーでのお言葉の後に超巨大ダイアモンドを中心に現れた、強烈な白い閃光に呑まれた。

 ご主人様は俺が浴室の扉を開けて入った瞬間を待って、瞬きをするくらい間のそんな一瞬で、駆け…いや跳んでこられた。

 ───先日も怒ったご主人様が俺のもとへお渡りの際に見せられたこの空間跳躍。
 実はこれ、鬼の中ではご主人様とそれを貸し与えられたランちゃんくらいしかできへん。
 これはとある禁をご主人様が犯して使えるようになられたお力で、これこそがご主人様がこないな幼いお体のまま、時を止めてしまわれた原因やった……

 分身に憑依するのではなく、ご自身が来られたことをランちゃんは叱っているが、俺の前では度々破られているし、転移の目標の蛇の置物もあったし、今更すぎる。

 ランちゃんのくぐもった呻き声のようなものが数度聞こえ、ご主人様の降りたたれた場所から強烈な冷気と風が放たれた。

「リオのことはいつだってが守るし、守ってきた」

 ご主人様のお姿はまだ拝見できないが、聞こえている凛としたお声は、テレパシーではなくちゃんとした肉声。

 俺とランちゃんがこの部屋に籠城した時間はそれほど長くないが、先程までのご主人様のご様子はかなりお静まりになられていたので、話し合いによる解決も可能かと思えた。
 ランちゃんが何故か結界の維持を放棄したことでそれが短くなったが、意図的にそうして早々に決着をつけたかったのかもしれない。

 (俺は謝りながら斬りかかられて、えらい怖かったけどな…)

 俺のおけつにご主人様の分身たる蛇の薄縁ちゃんがいるせいで、俺の感情なんかはご主人様に筒抜けだった。
 ランちゃんが俺を襲ったことで感じた、恐怖などの気持ちも伝わってしまったのか、ご主人様は再びお怒りになられていらっしゃるようだ。

 いや、お怒りなんて生易しいものではなく、今のご主人様は過去にお怒りになられた時に鑑みると、怒髪天を衝くレベルで激怒されていらっしゃるに違いないだろう。

 現にご主人様の威圧が生み出す強烈な冷気と白い靄が部屋を襲い、ランちゃんの黒焔によって温められた部屋は再び凍りついていく。
 吹き付ける風は強く、浴室の扉の影に入るがそれでも耐えれず、思わず目を閉じてしまいそうになるが堪えた。

 クリアになった視界に入ってきたのは、俺の推しにして愛するご主人ダンナ様のお姿だ。

 いつも結われている白金の御髪は下ろされており、ご主人様の生み出した威圧の風に靡く。
 神々しい金色の煌めきを放つそれに思わず見惚れる。

 ご主人様はランちゃんを組伏せて足蹴にしていらした。

 畳の上には既に立派なαオスの象徴の赤黒い角が一つ転がっており、どうやらあの一瞬のうちに片方の角を斬り落とされたらしい。

「それに主のつまを襲うような駄犬は、が直々に躾けなければならんだろう?」

 そう仰ったご主人様のお手には消えたはずのランちゃんの太刀が握られており、それをご主人様は、

波切こやつは私より永らく離れ、言うことを聞かぬ。貴様に返す」

 と仰りランちゃんの眼前、鼻先のギリギリのところに突き立てた。
 そんな緊迫した状況であるのに、ランちゃんは笑っているし、軽口をやめる気配は全くない。

「大将…──様より賜った俺のを獲ってくなんて……
アンタ、足クセも悪いが手クセも酷いな。父君に言いつけてやるぞ?」
「黙れよ、駄犬。いや、この狂犬めがっ!」 

 組伏せたランちゃんの残った方の角を掴み、顔を無理やりご自分の方に向かせて恫喝するご主人様。
 鋭く睨みつける金色の目は輝き、相当にお怒りなのが見て取れた。

 (ふあぁぁぁぁぁぁぁぁ♡推し、…………しゅっっごいっ!!)

 以前、発情したオスに襲われた時ほど圧倒的ではないが、それでも圧倒的強者による一方的すぎるそれは震えがくるほど恐ろしくもあるが、とてつもない憧れのようなものをおぼえてしまう。

 (『魔王』様、ご☆降☆臨!って感じやわぁ~~♡)

 俺はご主人様のお姿とお力に魅了されて、それに惚れ込んでいたから尚更だった。

 ───は本能で…魂のレベルで強者に惹かれる。
 俺は人やのに何故かご主人様に惹かれて惹かれてしゃーなかった。

 そんなご主人様のお姿に萌えてしまい、ちょっと頭がお阿呆になってしまっていたが、このままではご主人様に処刑されてしまいそうなランちゃんのことが心配だ。
 
 なぜなら折檻中のランちゃんからはどう考えても骨や肉などが潰れたり折れたり、下手すると陥没してたりする、「グチャ」や「ゴスッ」という大変よろしくない音がしており、周囲には血も飛び散っていた。

 (ヒェェ!!)

 手足もご主人様のペット?(分身?)の白蛇たちがぎゅうぎゅうに締めつけている。
 お許しを頂かなくては、このままでは彼はご主人様にころされてしまいそうだ。

「この阿呆が!私のしんかんで私の視覚聴覚みみに界渡りの力まで貸し与えているのに、私のたからを攫ったり害するなど何を思ったのか!」
「いや、そんなつもりは全く、全然!ないから!!」

 へらへら笑いながらご主人様を煽るランちゃんのせいで、ご主人様のお怒りが膨らむのと反対に、部屋の温度がどんどん下がり、床や壁などに霜がつき凍りついていく。 

 (ランちゃんアンタなんでそないに平気な顔してはるの!
 ご主人様に早うあやまりおし!)

 俺の心配なんぞ全く知らないふたりは、危険なやり取りをしている。

 とうとうランちゃんの鬼火すらも凍ってしまった。
 寒さに…それからご主人様から漏れ出る威圧プレッシャーも辛く、俺は扉の影に引っ込んで汚シーツの中で縮こまってしまう。

「貴様…ここまでしておいてふざけているのか?」

 ご主人様がランちゃんの角を掴み、勢い良く顔面を畳に何度も何度も叩きつけ、ランちゃんの顔面からは血がダラダラと滴り落ちていた。

 (うわぁ……)

 普通なら悶絶ものの行為であるが、ランちゃんはそんなことをされても笑っている。
 苦しそうな声があがることもあるが、それは鼻が潰れたりした時のみで、彼はそんなことが気にならないくらいに頑丈らしい。
 事実、鼻が潰れたりしても瞬時というくらいの速さで治った。
 強い鬼というのはそういうものであると聞いていたが、初めて目にするその光景に驚いてしまう。

 (寧ろ痛みに強すぎてビビるわ)

 俺は身代わりに死んだ人間の血を浴びたり、目の前で誰かが拷問されたり、そんなちょっと悲惨な現場を見るような危険な目に遭いまくっているので平気だが、普通の方は無理かと思われる惨状である。
 確かにグロく、お友だちが半死から復帰するのを何度も見るのは心臓に悪かった。

 (とりあえず強い鬼の再生力は半端ないとだけ言っとくわ)

「ちょっ、痛い痛い痛いっ!
アンタのアホみたいな力で引っ張られると俺でも流石にキツいから!
ほんとにやめろって!」

 いつの間にか蛇ちゃんの拘束から逃れた右手で、畳をバンバン叩いて降伏の意を示すランちゃん。

「だいたい貴様は守り役のくせに私の梨生に気安すぎるわっ!
渾名に次いで真名まで先に呼ばせおって!
お前はしばらくΩの名前あざなを名乗っていろ」
「確かに『ランちゃん』になりますけどねぇ…大将~~。俺、一応αオスなんだけど?」
「貴様は耳長寄り過ぎるΩメス臭い顔だ。問題ないだろう」

 ふたりは折檻の合間に軽口を言い合い、こんな世にも恐ろしい掛け合いをしている。

「ご、ご主人様っ!ランちゃんはおとろしい外道に恐喝されとったんおすぅ~!!」

 その様子に俺が耐えられず、隠れて見ていたことを忘れご主人様にご助命をお願い申し上げたが……
 
「それはならん。鬼の掟では眷属…飼い犬が主人噛み付くなど絶対に許されぬ。
案ずるな。それなりの仕置きをせねばならんが、狂犬これを殺すことはない」
「そうだぞ【血吸】でボコるって脅されてたんだぞ?」
「黙れ、アララギ!!」

 まだお怒りが収まらないのか俺のお願いは一蹴されてしまった。

 でも、ランちゃんを睨めつけておられる時は絶対零度、俺の方を見てくださる時はツンはあってもそんな冷ややかな、凍えるようなものではない。
 
「この狂犬のことが気になるのは分かるが…妃よ、覗き見はいかんぞ?」

 そんなお叱りを受けてしまったが……
 
 冷たく笑われるお顔は、なまじ整っているだけに恐ろしくも見えてしまうのが残念だが、逆にそんなご主人様のお姿にも萌えが止まらない!

 孤高のヒール!魔王様に相応しい貫録といえよう。

 (あかん!鼻血が出てしまいそうや)

 しかもご主人様の出で立ちは、従者さん方に呼び出されてすぐに出ていかれたのか、しっかりと着込んではいらっしゃらないが、下穿き(太ももまでのスパッツ?)しか身につけておられず、鍛えられたお体に纏われているのは、ご主人様のお着物ではない。

 なんとあの日の夜、初夜の始まったあの時、俺が着ていた物を羽織っていらした!

 (彼シャツならぬ嫁着物!新しいわぁ♡)

 どおりで俺の物が見当たらなかったわけである。

 流石は俺の推したるご主人様。
 何をお召になられても神々しく麗しい……

 (俺召されてしまいそうになる!)

 まさしく偶像アイドル!!


 (推し………………っ、尊いぃぃぃッ!!)


 嫁着物姿のご主人様はランちゃんの角をギリギリと握り、組伏せたままの状態で頭だけを持ち上げようとする。

 すると今度はランちゃんが一転して申し訳なさそうなご様子になり、「申し訳ございません我が君」と遂に謝罪の言葉を口にした。

 ───ところが、上級管理職エグゼクティブの苦労というやつなんやろか?
 ここからランちゃんは自らの苦労を長々と語り、大変愚痴っぽくならはった。

 今までの陽気でおしゃべりな『朱頂蘭』がなりを潜め、『蘇芳』様に変わった。
 彼は落ち着いた口調で諭すようにご主人様に語りかける。

「我が君、みなは心配しておりました。
孔雀は…あれは少しばかり慕情を拗らせておりますが、旦那様や彼の君様が介入されたのも心配からです」
「それでも勝手に妃を連れて行くことは許さぬ」

 (俺もランちゃんを恐喝するようなそないな外道と会いとうない)

「私はもう……再び・・貴方様に置いてかれるのは御免です。
貴方様の言いつけを守り、一族をまとめるあの方の補佐はして参りましたが、貴方様の為にのみ存在する神官であるが故に、主を変えることが出来ぬ私は万年近く誰の眷属ものにもならず……ひたすら、ただひたすら耐えて参りました………」

 (ランちゃん…1万年とか嘘やろ?)

「わかりますか我が君?万年近くですっ!」

 絞るようなそんな哀しみに満ちた声でご主人様に訴えかけるランちゃん。
 これにはご主人様もお怒りを沈め、

「お前の身の上は憐れに思う。
あいつ・・・と違うはそれを知らぬ故、謝ることも出来ぬ」

 そう言うと黙り込んでしまわれた。
 でも、ランちゃんは止まらない。

「今度こそはと、私は貴方様の神官として……我が君がまた・・恋に破れ絶望し、世を儚ま「昔のことなど覚えておらぬに言うなッ!」

 尚も続けられたランちゃんの愚痴というか、お説教はそれに耐えれなくなったご主人様によって止められた。

 (これは相当な鬱憤があるようにお見受けしますけど、よろしおすか?)

 いつものランちゃんの軽い調子ではなく、落ち着いた口調で語られた重たーいお話。
 内容についてはよく分からないが、ランちゃんは1万年近くもご主人様の命令で相当な苦労をされたらしい。

 ランちゃんのレベルは驚愕の9921。
 このレベルならおかしくはないのかもしれない。

 (うん。何度見てもありえへん。
 こらご主人様くらいしかランちゃんに勝てるわけないわ)

 多分お歳もそれくらいかと思われる。

 彼が俺に申告していた21というお歳の時の偽装ステータスのレベルも21で、どうやら彼は上二桁を切り落とすという、大胆かつ盛大なサバ読みをしていたらしい。
 
 俺が23でレベルも23。
 ご主人様も17歳でレベルも17。

 (ご主人様は17歳のはずのやのに1万年とか言うてはるし、このへんはようわからへん)

 これに関しては偽装や虚偽である疑惑もあるが……

 どうやら年齢=レベルで間違いないらしく、この世界のレベリングはなかなかに…いや、険しすぎる道であるらしい。

 (こら、レベル1000はおろか、100すらなかなか厳しゅうて無理無理無理無理無理っ!やわ)

 ご主人様のレベルを鑑みると、レベルよりもステータスとスキルの方が重要であるようだが。

 そんな鬼畜な異世界のレベル制に耐え、頑張ってきた忠臣であるランちゃんに、ご主人様は普段あまり口にされないご自身について語られた。

「私は皇の鬼だ。
幼くとも……たとえ住む世界場所が違っても……自らが『運命』だと定めた者を失うことの方が耐えられぬ。
私が心配であるのなら、このようなことは二度としてくれるな…………スオ兄」

 このように以前、俺に央殿のお庭でお話になれたことと同じようなことを言って聞かせ、話を終えようとした。

 もう折檻の手も完全に止められており、ランちゃんの身も危険ではなくなったようなので、そろそろ俺もお風呂に入ることにしようとしたその時、ランちゃんはとんでもない爆弾を俺とご主人様に落とした。

 ───この時のランちゃんは『朱頂蘭おしゃべり』の姿ではなかったのに、随分饒舌に語っていた。
 本来の彼は『高尚 (アララギ)』。
 落ち着いた穏やかなおひとであるが、俺が『アマリリスランちゃん』と呼び続けていたことがあかんかった。 
 この異世界、常夜はほんまに『名』というものが強い力を持つんや。
 

「はぁ…我が君は過去視の夢見で一目惚れ精通した相手である他世界人ナシくんを『僕の嫁にする!』と言ってきかず、私の制止など全く聞かれませんでしたし、その子を救う為にやっと角の生えた僅か九歳で禁を犯して『界渡り』をされますし、あまつさえ処女まで奪ってくる始末…………」


 折檻にも平気な顔をしていて耐えるレベル1万弱の従者は、大声でペラペラと主の重大なプライバシーをそれは盛大に暴露してしまった。

「なっ?!蘇芳っ!…貴様ーーーーッッ!!」
「だってなぁ、お兄さんお前さんの教育係だからって代わりに叱られるし、ホントに大変で困ったんだよ?
愚痴くらい言わせろ」

 熟れ過ぎたトマトみたいなそんな真っ赤なお顔でお怒りになられたご主人様と、しれっとしたお顔でぽろりをしたランちゃん。

 これは本人の言うように半分以上愚痴というか…多分に文句が入っているような気がする。
 パワハラ&モラハラ気味の上司に対する反抗であるのだろうか?

 (わざと俺に聞かせた気もするな?)

 ご主人様は自らをあまり語られないので、見かねたランちゃんからご主人様について色々と教えてもらっていたが、きっとそういうことだろう。

 彼の語った話は俺としては色々と初耳なうえに、そんなことが可能だなんてもう驚きとかを超えてしまい、なんというか……

 (今度こそ頭パーンおすぅ!)

 そういえば俺が処女を捧げた中学の先輩だが、あの後探しても見つからなかった。
 学年的に卒業しただけかと思っていたが、考えたらあんな美形でアルビノ……

 (普通はおらへんな)

 湯気の出そうなお顔のご主人様が「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」と叫ばれた後、

 (言語化するのんむずそうやのに、よう言えはりましたなぁ…)

 眦が吊り上がり凛とした高く麗しいお声が絶対零度の冷たさで、ランちゃんの死刑宣告を告げられた。

「…………落とす」

 (ひぃぃ…ご主人様が激おこおすぅ!
 なに・・を落とすのかわからへんけどおとろしい!)

 鬼の皇族の方はやたらと去勢をしたがるので、ランちゃんはムスコ殿とのお別れなのかもしれない。
 部屋の温度もさらに下がってきている気がするのは、俺の気のせいではないだろう。
 どんどん部屋が凍りつき、再び極寒の世界に閉ざされた。

 ランちゃんにはどうやら恐ろしい驚異が迫っているらしいのだが、彼は折檻をされている状態であるのに恐ろしくないのだろうか?

 (日常茶飯事的にこないなおしおきされとるんかもしれへんけど)

 ご主人様はランちゃんの命は確約して下さったが、やはりムスコ殿とのお別れは決定事項であるらしい。

 (俺のムスコ殿がヒュンってなるぅ~!)

 思わず色んなものに震えた。

 俺が寒さに震えたと思われたのか、色々と焦っているご主人様が白焔を出された。
 真っ白な炎の光量がどんどん増して、それが限界になって弾けたかと思うと、ヂリッとした肌を焼くような熱が部屋中にほとばしる。

 凍っていた部屋はそれにより一瞬にして乾くが…
 ランちゃんには少しばかり火力が強かったのか、なんと彼は燃えていた。

「ひえぇ!ランちゃん~~ッ?!」

 もうさっきから悲鳴ばかりあげている気がする。

 (俺、元はあんまり喜怒哀楽ある方ちゃうねんけどな)

 全身白焔に包まれたランちゃんはカンカンになって怒り、

「…っ、大将!いきなりなんてことすんだ。火傷するだろッ!!」

 そのようにご主人様に文句を言っているが、あなたのその状態は火傷どころではなく、焼死しそうなレベルである。

 鬼火は属性の色であるから違うのかもしれないが、一般的な色温度だと白い炎は確か太陽の温度と同じくらいで、5000度から7000度弱……

 (ランちゃん?!アンタ、そないなご主人様の白焔に全身包まれとりますけど…ホンマに大丈夫?)

 その状態で普通に喋ったりできること自体が不思議過ぎて、こちらが吃驚したり慌てたりするが、そのことに驚く俺への配慮なのか、彼は俺に「気にすんな」的な感じで手を振ってくれてさえいるのだが……

 そのお気遣いはホラーでしかない。

「ヒィッ?!ご…ごご、ご主人様っ!ランちゃんが、ランちゃんが燃えとりますぅ~~ッ!!」

 真っ赤なお顔のご主人様は「これくらいでは死なん。捨置け」と言い捨てられると、掴んでいらした絶賛燃焼中のランちゃんをぽいっと放り投げられた。

 そんな高温にも関わらず、部屋などは一切燃えておらず、ランちゃんだけを限定的に燃やすご主人様。

 心なしか俺がランちゃんを気遣かえば気遣うほどさらに火力が上がっている気がする。
 でも、ランちゃんは魔術か何かにより耐えているらしく、全く問題ないらしい。

 (イヤイヤイヤイヤお二方。
 俺には視覚的に厳しいおす)

 先ほどから人外はんたちによるびっくりショーを見せられ過ぎて、お腹いっぱいなところであるが、ご主人様にはお尋ねしないといけないことがある。

 (界渡り?とか俺の処女奪ったとか…それは一体全体どないなことなのか、お聞きしなあかしまへん!)

 そう思いご主人様の方に視線をやると、不意に目があったご主人様は真っ赤なお顔を俺の視線から反らしながらも、俺に「近う」と手招きをされた。

 燃え続けるランちゃんにビビりながらもご主人様のお側に行くが、ご主人様はランちゃんのことなど全く気にされるご様子がない。
 お側に行った俺を軽く抱擁してから頭や背などを撫でられると、再度ぎゅうっと抱きしめられ、首もとの匂いを嗅がれた。

 俺を抱きしめるご主人様からは央殿にある白紫陽花と同じ薫りが香り、この数日間ずっとお側にあったその匂いと、俺よりも低めの体温のご主人様のお体は、ちょっとひんやりとしているけどなんだかホッとする。
 抱擁されている間もずっとお顔を俺に見せないようにされていたが、心臓はバクバクされていらっしゃる。

 どうやらご主人様は軽いパニック状態であられるらしい。
 俺を労るご様子で何度も背を撫でられ、謝罪をされた。

「妃よ、怖がらせてしまいすまぬ」

 (ランちゃんが燃えてる方が現在進行形で怖いおす~)

「そこの狂犬を仕置きする故、お前は暫しの間休んでいろ」
「はい?」

 どうやら俺が驚き怯えている責任をランちゃんに転嫁されたらしい。
 俺の耳もとで早口のうえに棒読みでそう仰ると拍手かしわでを一つ鳴らされた。

 ───気まずさのあまり、どないしたらええんかわからんようにならはったご主人様は、俺を絶頂させて意識を落とすというとんでもない行動に出はった。
 このお方のこのあたりが年相応というかなんというか…たまにこないな感じで暴走になられる。

 ご主人様のご命令を受けた薄縁ちゃんが「シュー」と鳴きながら、俺のナカでそれはそれはえらい暴れて下さった。

 俺の体はご主人様との蜜月で奥深くを毒蛇様によって拓かれた。
 さらにそこを数刻前から薄縁ちゃんによって開発され、ご主人様のお好みに調教されていた。

 4日に渡る契りで心とお穴は貞淑に躾け直されたのに、一度雄を受け入れたら淫らに乱れるという、そんな主人様のお好みの状態になっていたのだが、これが最後の仕上げとなった。

 与えられた刺激に『痺れ』などという生易しいものではなく、『飛ぶ』という状態に陥った俺は、


「あ゛ぁぁッ♡はひぃぃいい♡♡ん゛~~~~~ッ♡♡♡!」


 度重なる責めにより導かれし者となり、暫くの間気をってしまった。

 落ちてゆく意識の中…視界の端に映ったのは、主人様の隣に立つランちゃんのお姿。
 いつの間にか人体発火現象状態から復帰された彼は、服なども含めて全く傷もなくピンピンしており、片手をご主人様の肩に置き、もう片方の手で眉間のシワを揉みつつご主人様にお説教をしていた。

「お前さぁ…恥ずかしいからってこれはちょっとナシくんが可哀想だろ。
せめて催眠の暗示とかにしろよ……」
「『犬』共はどんな状態でもこれに佳がり狂い、悦んでいた」
「誰かさんみたいな言われてることが理解できないみたいな、そんな不思議そうな顔をすんなっ!」
「梨生は【緑】の属性故に快楽に弱い。
どうせ落とすなら喜ぶ方が良いかと思ったのだが…人族には快感が強すぎる故、良くないのか?」

 気安い友人としての会話と、

「……今世の我が君は、生粋の鬼の皇子プリンス様にお育ちにあそばれましたね。
これは絶対に旦那様から受けた皇のオスの性教育のせいだろうなぁ……あの方に任せたの誰だよ」

 側仕えとしての言葉。

 ちょっととんでもない仕打ちをされてしまったが、どうやらふたりの仲はまだ壊れていなかったようで、そのことは嬉しく思った。


 (でもご主人様、起きたら色々と覚悟しとってくださいね!
 ちょっと今回はさすがの俺もおこおす!)


 ──そして気を失った俺は久々に兄貴のことを思い出す夢を見ることになった。



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