お前らなんか好きになるわけないだろう

藍生らぱん

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第一章 賽は投げられた

020 賽は投げられた

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「新しく生徒会補佐になった一年の天羽伊千花とリシャール殿下だ。」
伊千花とリシャール王子を引き連れて生徒会室へ入った岩永八雲が、生徒会役員達に二人を紹介した。
「天羽伊千花です。宜しくお願いします。」
「リシャール・I・ルシフェル・ド・アンジューだ。宜しく頼む。」


*****

前日、
理事長室で龍王院と面会したリシャール王子は生徒会補佐の件を条件付で快諾した。
「俺は魔力欠乏症による性分化の発達障害の治療を受ける為に留学という形で帝國へ来た。
生徒会の補佐の体験は興味深いが、時間的に治療の妨げになる。
だが、定期的に君の魔力を提供して貰えるなら、補佐の件は受けてもいい。」
「私の魔力をですか?」
「君の魔力は魔力変換無しで、直接取り込める程、相性がいい。」
「魔力変換?」
聞き慣れない言葉に龍王院は眉をひそめた。
「特殊スキルだよ。我が王家の始祖は夢魔ヴァンパイアだから、魔力相性に関係なく他人の魔力を吸収して自分の魔力に変換できる。
でも、魔力変換は時間がかかるから効率が悪くてね。
君の魔力は相性もだけど、質も量も申し分ない。
毎日ひとつ、一カラット程度のサイズに結晶化させて八雲先生に預けてくれればいいよ。
できる?」
「できます。」
龍王院が了承するのを確認してから、リシャール王子の後方に控えていたダニエル卿が龍王院の前に何枚かの書類を置いた。
「残りの条件も含めて文書にまとめていますので、サインをして下さい。」


*****

「殿下、あーん♡」
リシャール王子と天羽伊千花が生徒会補佐として生徒会室に出入りするようになって一週間が経とうとしていた。
どう距離を縮めようかと思案する男達を尻目に、伊千花は毎日毎回、リシャール王子の隣にピッタリと寄り添い、王子の口の中にクッキーを入れていた。
「美味しい?」
満面の笑顔でそう聞く伊千花の耳元にリシャール王子は唇を寄せて何かを囁き、頬にキスをするのがルーティンとなりつつあった。

そんな二人を嫉妬丸出しで苦々しく見つめる小鳥遊と北大路。
その反対に羨望の眼差しを向ける東條と秋月。
龍王院だけは凪いだ瞳で二人の行動を見守っていた。

一方、五人を煽る行動を取っている自覚がある伊千花は心の中で毒づく。

僕らが、お前らなんか好きになるわけないだろう。
勝手に足掻いて自滅すればいい。

伊千花は意地悪く口元を歪めると、五人に見せつけるように、リシャール王子の唇に自分の唇を重ねた。


──────────
補足

帝國は日本がモデルなので挨拶替わりのキスに不慣れ。
伊月と伊千花の母国はヨーロッパがモデルなので家族間でのキスは日常です。
伊月は家族からキスで魔力補給して貰っているので、魔力相性がいい従兄弟たち、伊玖磨とか平坂家の兄弟全員ともキス経験多数有りです。
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