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続編2 手放してしまった公爵令息はもう一度恋をする
50話 解けた魔術
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僕と同じ藍色の瞳が揺れ動き、驚愕した顔で、呟く様にして口にする。
この、僕の膝の上に乗って離れない、僕と同じ顔をした少女の名を。
前世の姿を。
…………え。
知っているの?
覚えていたのか?
————そんな筈ないのに。
「叔父様、何で……シルヴィアの事、覚えて?」
叔父と同じく瞠目する僕の膝から、同じ瞳の少女は降りて行き。
揺れる瞳で懐かしい二人の前に佇んだ。
「叔父様、叔母様。私の事が分かるの?」
不安で揺れる藍色の瞳が、二人の姿を捉えて離さない。
「あぁ。どうして今まで失念していたんだ……」
「シルヴィアさん、無事だったのね。良かった…っ」
「…!叔父様、叔母様!うわぁぁぁん」
失われた筈の彼女の記憶を思い出したのか、確かに自分を認識してくれる叔父と叔母に、感極まったシルヴィアは、その瞳から大粒の涙を流して二人に抱き付き、声を上げて泣き出した。
「黙って消えてごめんね。ひっく、ほ、本当はまた、会いたかったのっ」
「守ってやれずすまなかった、シルヴィア。まさか、あんな事になるとは…」
「帰って来てくれてありがとう。もう二度とあんな事には」
前世の記憶を取り戻したのか。
しゃくり上げて泣くシルヴィアに、叔父様と叔母様もまた共に涙して、彼女を抱きしめ返している。
本当の親子の様に慈しみ合っていた。
しばらくしてようやく落ち着いた彼女に、叔父様も叔母様も顔を上げ、再度彼女の顔を目にしては、その瞳に残る涙を優しく指で拭い、額にキスを贈る。
「あぁ、でも何故?どうして今になって思い出したんだろう。君が来てくれたからか?」
「叔父様、私も分かんない。でもきっと、私と救世の巫子達を此処へ運んでくれた魔術師のかけた術が、私が此処に来た事で解けてしまったのかもしれない。」
「ネオ曰く、その様ですね。」
「!」
再び相まみえた事に感激しつつ、この状況に戸惑う彼女らの後ろから、ポツリと言葉を落としたのは、幼い二人を連れて来た侍女のミストラルだった。
「シルヴィア姉さま!」
「姉さまっ」
「リック、ロティーも。二人もまた、私の事、姉さまって呼んでくれるのね。」
ミストラルの手を離れ、弾かれた様にシルヴィアに飛びついたリチャードとシャーロットは、前世と変わらぬ笑顔で彼女に抱き付く。
叔父と叔母だけでなく、この二人も思い出したらしく、シルヴィアは嬉しそうに二人を抱きしめた。
シルヴィアにとっては堪らない驚きと喜びの連発だったが、その様子を見てふわりと笑みを零したミストラルとレイラの侍女二人は、並んで僕達に向かい礼をした。
「ようこそお越し下さいました、救世の巫子カレン様、カイト様。転生者シルヴィア様。」
「皆様この状況に大変戸惑っておいででしょう。魔術師ゼルヴィルツからも先程許可を得ました。私共からで恐縮ではございますが、事の顛末をご説明いたしましょう。」
そう口にした侍女達に促されて、広い食堂の方へと移動した僕達は、彼女らから今回のこの状況を簡潔にだが話してもらった。
……そこで話された内容は、とても突拍子も無いものだった。
前世の自分だと思っていたシルヴィアは、実は自分の死んだ双子の妹だった事。
前世だと思っていたあれらの出来事は全部、転生する前のシルヴィアの夢だと。
その記憶を引き継いだ僕は、異世界から来た巫子との誤解やわだかまりも解け、共に学院生活を楽しみ、その中で隣国からの留学生であるアデリート王国のロレンツォ殿下やフローレンシア王国のカミル殿下とも知り合った事など。
色々あったが無事に学院を卒業出来た僕は、ロレンツォ殿下の伝手で恋仲になったアルベリーニ卿と共にアデリートへ行った事。
そして、シルヴィアは巫子達の世界に転生し、共に学生生活を楽しんでいる事。
……などなど。
「かなり話は割愛しましたが。この様な事情があり、この一連の巫子様方降臨やシルヴィア様の転生などを行ったのが、我らが主、ネオ……魔術師ゼルヴィルツです。」
「主ってほどじゃないんですけどね、実際は。ただ、本来はネオ自身が此処に来て事情を説明すべきところではあるのですが。ただ、彼が表立って此処に来てしまうと、後々にもし魔術師同士のいざこざなんかが起きてしまったりなんてしたら、公爵様達もまた、巻き込んでしまう危険が払拭しきれませんでしたので。僭越ながら私共の口から、今回お話させて頂きました。」
今まできちんとご説明もないままで、申し訳ありませんでした。
レイラとミストラルの侍女二人は、席を立ち、実に優雅に謝罪の礼を示している。
ただ、そのあまりの内容に、叔父様も叔母様も呆気に取られるしかなかった様だった。
この、僕の膝の上に乗って離れない、僕と同じ顔をした少女の名を。
前世の姿を。
…………え。
知っているの?
覚えていたのか?
————そんな筈ないのに。
「叔父様、何で……シルヴィアの事、覚えて?」
叔父と同じく瞠目する僕の膝から、同じ瞳の少女は降りて行き。
揺れる瞳で懐かしい二人の前に佇んだ。
「叔父様、叔母様。私の事が分かるの?」
不安で揺れる藍色の瞳が、二人の姿を捉えて離さない。
「あぁ。どうして今まで失念していたんだ……」
「シルヴィアさん、無事だったのね。良かった…っ」
「…!叔父様、叔母様!うわぁぁぁん」
失われた筈の彼女の記憶を思い出したのか、確かに自分を認識してくれる叔父と叔母に、感極まったシルヴィアは、その瞳から大粒の涙を流して二人に抱き付き、声を上げて泣き出した。
「黙って消えてごめんね。ひっく、ほ、本当はまた、会いたかったのっ」
「守ってやれずすまなかった、シルヴィア。まさか、あんな事になるとは…」
「帰って来てくれてありがとう。もう二度とあんな事には」
前世の記憶を取り戻したのか。
しゃくり上げて泣くシルヴィアに、叔父様と叔母様もまた共に涙して、彼女を抱きしめ返している。
本当の親子の様に慈しみ合っていた。
しばらくしてようやく落ち着いた彼女に、叔父様も叔母様も顔を上げ、再度彼女の顔を目にしては、その瞳に残る涙を優しく指で拭い、額にキスを贈る。
「あぁ、でも何故?どうして今になって思い出したんだろう。君が来てくれたからか?」
「叔父様、私も分かんない。でもきっと、私と救世の巫子達を此処へ運んでくれた魔術師のかけた術が、私が此処に来た事で解けてしまったのかもしれない。」
「ネオ曰く、その様ですね。」
「!」
再び相まみえた事に感激しつつ、この状況に戸惑う彼女らの後ろから、ポツリと言葉を落としたのは、幼い二人を連れて来た侍女のミストラルだった。
「シルヴィア姉さま!」
「姉さまっ」
「リック、ロティーも。二人もまた、私の事、姉さまって呼んでくれるのね。」
ミストラルの手を離れ、弾かれた様にシルヴィアに飛びついたリチャードとシャーロットは、前世と変わらぬ笑顔で彼女に抱き付く。
叔父と叔母だけでなく、この二人も思い出したらしく、シルヴィアは嬉しそうに二人を抱きしめた。
シルヴィアにとっては堪らない驚きと喜びの連発だったが、その様子を見てふわりと笑みを零したミストラルとレイラの侍女二人は、並んで僕達に向かい礼をした。
「ようこそお越し下さいました、救世の巫子カレン様、カイト様。転生者シルヴィア様。」
「皆様この状況に大変戸惑っておいででしょう。魔術師ゼルヴィルツからも先程許可を得ました。私共からで恐縮ではございますが、事の顛末をご説明いたしましょう。」
そう口にした侍女達に促されて、広い食堂の方へと移動した僕達は、彼女らから今回のこの状況を簡潔にだが話してもらった。
……そこで話された内容は、とても突拍子も無いものだった。
前世の自分だと思っていたシルヴィアは、実は自分の死んだ双子の妹だった事。
前世だと思っていたあれらの出来事は全部、転生する前のシルヴィアの夢だと。
その記憶を引き継いだ僕は、異世界から来た巫子との誤解やわだかまりも解け、共に学院生活を楽しみ、その中で隣国からの留学生であるアデリート王国のロレンツォ殿下やフローレンシア王国のカミル殿下とも知り合った事など。
色々あったが無事に学院を卒業出来た僕は、ロレンツォ殿下の伝手で恋仲になったアルベリーニ卿と共にアデリートへ行った事。
そして、シルヴィアは巫子達の世界に転生し、共に学生生活を楽しんでいる事。
……などなど。
「かなり話は割愛しましたが。この様な事情があり、この一連の巫子様方降臨やシルヴィア様の転生などを行ったのが、我らが主、ネオ……魔術師ゼルヴィルツです。」
「主ってほどじゃないんですけどね、実際は。ただ、本来はネオ自身が此処に来て事情を説明すべきところではあるのですが。ただ、彼が表立って此処に来てしまうと、後々にもし魔術師同士のいざこざなんかが起きてしまったりなんてしたら、公爵様達もまた、巻き込んでしまう危険が払拭しきれませんでしたので。僭越ながら私共の口から、今回お話させて頂きました。」
今まできちんとご説明もないままで、申し訳ありませんでした。
レイラとミストラルの侍女二人は、席を立ち、実に優雅に謝罪の礼を示している。
ただ、そのあまりの内容に、叔父様も叔母様も呆気に取られるしかなかった様だった。
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