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第十九話『黒蛇の正体と、古の聖女』
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「古の聖女の魂を継ぐ者……?」
目の前の男が口にした聞き慣れない言葉。
しかしその言葉は不思議と私の心の琴線に触れた。
男は恭しく一礼すると名乗った。
「私はザラキ。『黒き蛇』にて幹部を務める者」
「なぜ私のことを……? 聖女とは一体何のことです?」
私の問いにザラキは愉しげに喉を鳴らした。
「おやご存じないようだ。では教えて差し上げましょう。あなたのその忌まわしき血の歴史をね」
彼はまるで舞台役者のように大げさな身振り手振りで語り始めた。
「我ら『黒き蛇』の一族は古来より強大な魔力を持つ『聖女』に仕えてきた魔術師の末裔。しかし聖女の魂は一代限りで霧散してしまう儚いもの。そこで我らの祖先は聖女の魂をより長くより効率的に利用する方法を編み出したのです」
「それは……聖女の魂を別の『器』へと移し替える禁断の秘術」
ザラキの言葉に私は息を飲んだ。
なんて冒涜的な……。
「そして数十年前。我らの一族から一人の裏切り者が出た。彼女は次代の器となるはずだった赤子を連れ聖女の力を独り占めしようと一族から逃げ出したのです」
「その強欲で卑劣な裏切り者の名こそ……あなたのお祖母様リアーナ」
「……!」
おばあ様の名前……。
そうだリアーナおばあ様。
「我らは、ずっと探していた。リアーナが隠した聖女の魂を持つ赤子を。そしてついに見つけ出したのです。あなたこそが我らが追い求めた現代に蘇った聖女の魂を持つ最高の器!」
ザラキは恍惚とした表情で両手を広げた。
(……長いなあいつの話)
その時隠している通信魔導具からアレクシオス陛下の呆れたような声がこっそり聞こえてきた。
(要点を三行でまとめてほしいものだ。聞いていて眠くなる)
そのあまりに場違いな感想に私は必死で笑いをこらえた。
緊張で張り詰めていた心が少しだけ軽くなる。
そうだ。私は一人じゃない。
全ての謎が解けた。
おばあ様が『森の魔女』と呼ばれていた理由。
私が古代魔法語をなぜか知っていた理由。
このペンダントが持つ不思議な力の正体。
おばあ様は裏切り者なんかじゃない。
私をこの邪悪な一族の因習から守るために全てを捨てて身を隠してくれていたんだ。
「さあイリス様」
ザラキが私に向かって手を差し伸べる。
「我らが数十年越しの悲願を成就させるためその尊い魂を我らの主へと捧げていただきましょう」
そう言うと彼は祭壇の影から縄で縛られたセレーナを引きずり出した。
「もちろんこの哀れな娘の命と引き換えにですがね」
「いやっ……! お姉様助けて!」
セレーナは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら私に向かって叫んだ。
その姿にはかつての傲慢さの欠片もなかった。
ザラキが不気味な詠唱を始める。
彼の足元から黒く禍々しい魔力が渦を巻き私に向かって牙を剥いた。
いよいよだ。
おばあ様、私に力を……!
目の前の男が口にした聞き慣れない言葉。
しかしその言葉は不思議と私の心の琴線に触れた。
男は恭しく一礼すると名乗った。
「私はザラキ。『黒き蛇』にて幹部を務める者」
「なぜ私のことを……? 聖女とは一体何のことです?」
私の問いにザラキは愉しげに喉を鳴らした。
「おやご存じないようだ。では教えて差し上げましょう。あなたのその忌まわしき血の歴史をね」
彼はまるで舞台役者のように大げさな身振り手振りで語り始めた。
「我ら『黒き蛇』の一族は古来より強大な魔力を持つ『聖女』に仕えてきた魔術師の末裔。しかし聖女の魂は一代限りで霧散してしまう儚いもの。そこで我らの祖先は聖女の魂をより長くより効率的に利用する方法を編み出したのです」
「それは……聖女の魂を別の『器』へと移し替える禁断の秘術」
ザラキの言葉に私は息を飲んだ。
なんて冒涜的な……。
「そして数十年前。我らの一族から一人の裏切り者が出た。彼女は次代の器となるはずだった赤子を連れ聖女の力を独り占めしようと一族から逃げ出したのです」
「その強欲で卑劣な裏切り者の名こそ……あなたのお祖母様リアーナ」
「……!」
おばあ様の名前……。
そうだリアーナおばあ様。
「我らは、ずっと探していた。リアーナが隠した聖女の魂を持つ赤子を。そしてついに見つけ出したのです。あなたこそが我らが追い求めた現代に蘇った聖女の魂を持つ最高の器!」
ザラキは恍惚とした表情で両手を広げた。
(……長いなあいつの話)
その時隠している通信魔導具からアレクシオス陛下の呆れたような声がこっそり聞こえてきた。
(要点を三行でまとめてほしいものだ。聞いていて眠くなる)
そのあまりに場違いな感想に私は必死で笑いをこらえた。
緊張で張り詰めていた心が少しだけ軽くなる。
そうだ。私は一人じゃない。
全ての謎が解けた。
おばあ様が『森の魔女』と呼ばれていた理由。
私が古代魔法語をなぜか知っていた理由。
このペンダントが持つ不思議な力の正体。
おばあ様は裏切り者なんかじゃない。
私をこの邪悪な一族の因習から守るために全てを捨てて身を隠してくれていたんだ。
「さあイリス様」
ザラキが私に向かって手を差し伸べる。
「我らが数十年越しの悲願を成就させるためその尊い魂を我らの主へと捧げていただきましょう」
そう言うと彼は祭壇の影から縄で縛られたセレーナを引きずり出した。
「もちろんこの哀れな娘の命と引き換えにですがね」
「いやっ……! お姉様助けて!」
セレーナは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら私に向かって叫んだ。
その姿にはかつての傲慢さの欠片もなかった。
ザラキが不気味な詠唱を始める。
彼の足元から黒く禍々しい魔力が渦を巻き私に向かって牙を剥いた。
いよいよだ。
おばあ様、私に力を……!
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