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第三十一話『奈落の主、バジリスク』
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ゴゴゴゴ……と音を立てて開かれた禁断の扉。
その奥の底なしの闇から現れた存在に私たちは息を飲んだ。
それは巨大な蛇だった。
とぐろを巻く下半身は艶のない漆黒の鱗に覆われている。
しかしその上半身は人間によく似た筋骨隆々の男の姿をしていた。
歪んだ顔には爬虫類のような冷たい瞳が二つ。そして額には第三の目とも言うべき禍々しい紅蓮の眼球が不気Mに脈打っていた。
「ククク……。ようこそおいでなすった聖女の小娘とリンドールの若造よ」
粘つくような声が地下神殿に響き渡る。
「我こそは『黒き蛇』を統べこの奈落の主たるバジリスクなり!」
その圧倒的な邪気と威圧感に並の騎士ならばその場で腰を抜かしていただろう。
しかし私の隣に立つ男はリンドールの若き獅子。
アレクシオス陛下は臆することなく一歩前に出た。
「ほう、貴様が首領か。ずいぶんとまあ醜悪な姿をしているな。デザインのセンスを心の底から疑うぞ」
「なっ……!?」
まさかの敵へのダメ出し。
バジリスクの顔が怒りで赤黒く染まった。
「だ、黙れ小僧ッ! 神たる我が姿を愚弄するか!」
「陛下、挑発は結構ですが相手は伝説の魔物ですぞ! 石にされたら元も子もありません!」
ライオス団長が冷静にしかし焦ったようにツッコミを入れる。
そう伝説によればバジリスクの魔眼に見つめられた者はことごとく石に変えられてしまうという。
「案ずるなライオス! 我が愛しの妃の前で格好悪い姿を見せるわけにはいかんからな!」
陛下はそう言うと剣を抜きバジリスクに向かって駆け出した。
「まずは先手必勝だ!」
しかしバジリスクは嘲笑うかのように額の第三の眼をカッと見開いた。
その紅蓮の瞳から邪悪な光線が放たれる。
「陛下、危ない!」
私は咄嗟に陛下の前に飛び出しありったけの聖女の力を集めて光の盾を作り出した。
キィィィィンッ!
耳障りな音を立てて石化の光線が私の盾に激突する。
なんとか防ぐことはできた。けれど……。
ミシッ……。
盾の表面に小さなひびが入る。
「くっ……! 力が……!」
ザラキの時とは比べ物にならない。
バジリスクの魔力は私の聖女の力をじわじわとしかし確実に削り取っていく。
「クハハハハ! 無駄なことを! 聖女の力も所詮はその程度よ! その光の盾が砕け散るのが貴様らの最期だ!」
バジリスクの高笑いが地下神殿に響き渡る。
盾のひび割れは少しずつそして確実に広がっていく。
このままではまずい……!
絶望的な状況に誰もが固唾を飲んだ。
その奥の底なしの闇から現れた存在に私たちは息を飲んだ。
それは巨大な蛇だった。
とぐろを巻く下半身は艶のない漆黒の鱗に覆われている。
しかしその上半身は人間によく似た筋骨隆々の男の姿をしていた。
歪んだ顔には爬虫類のような冷たい瞳が二つ。そして額には第三の目とも言うべき禍々しい紅蓮の眼球が不気Mに脈打っていた。
「ククク……。ようこそおいでなすった聖女の小娘とリンドールの若造よ」
粘つくような声が地下神殿に響き渡る。
「我こそは『黒き蛇』を統べこの奈落の主たるバジリスクなり!」
その圧倒的な邪気と威圧感に並の騎士ならばその場で腰を抜かしていただろう。
しかし私の隣に立つ男はリンドールの若き獅子。
アレクシオス陛下は臆することなく一歩前に出た。
「ほう、貴様が首領か。ずいぶんとまあ醜悪な姿をしているな。デザインのセンスを心の底から疑うぞ」
「なっ……!?」
まさかの敵へのダメ出し。
バジリスクの顔が怒りで赤黒く染まった。
「だ、黙れ小僧ッ! 神たる我が姿を愚弄するか!」
「陛下、挑発は結構ですが相手は伝説の魔物ですぞ! 石にされたら元も子もありません!」
ライオス団長が冷静にしかし焦ったようにツッコミを入れる。
そう伝説によればバジリスクの魔眼に見つめられた者はことごとく石に変えられてしまうという。
「案ずるなライオス! 我が愛しの妃の前で格好悪い姿を見せるわけにはいかんからな!」
陛下はそう言うと剣を抜きバジリスクに向かって駆け出した。
「まずは先手必勝だ!」
しかしバジリスクは嘲笑うかのように額の第三の眼をカッと見開いた。
その紅蓮の瞳から邪悪な光線が放たれる。
「陛下、危ない!」
私は咄嗟に陛下の前に飛び出しありったけの聖女の力を集めて光の盾を作り出した。
キィィィィンッ!
耳障りな音を立てて石化の光線が私の盾に激突する。
なんとか防ぐことはできた。けれど……。
ミシッ……。
盾の表面に小さなひびが入る。
「くっ……! 力が……!」
ザラキの時とは比べ物にならない。
バジリスクの魔力は私の聖女の力をじわじわとしかし確実に削り取っていく。
「クハハハハ! 無駄なことを! 聖女の力も所詮はその程度よ! その光の盾が砕け散るのが貴様らの最期だ!」
バジリスクの高笑いが地下神殿に響き渡る。
盾のひび割れは少しずつそして確実に広がっていく。
このままではまずい……!
絶望的な状況に誰もが固唾を飲んだ。
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