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第四十六話『選ばれし者、その名は』
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『大地のティアラ』が聖女である私ではなく何の力も持たないはずの妹セレーナを選んだ。
その信じがたい光景にその場にいた誰もが言葉を失っていた。
「な、何かの間違いではないのか!?」
最初に沈黙を破ったのはやはりアレクシオス陛下だった。
彼はセレーナの手からティアラをひったくろうとする。
「このティアラは見る目がないにも程があるぞ! 私のイリスこそが世界で最も気高く美しくティアラの似合う女性だというのに!」
しかし陛下がティアラに触れようとした瞬間、**バチィッ!**と激しい静電気が走りティアラは強い力で陛下の手を弾き返した。
「い、痛っ!?」
「このティアラ、私を拒絶しただと……!?」
セレーナ自身も自分の手の中にあるティアラを見てパニックに陥っていた。
「わ、私なんかがこのような大それたものを……! め、滅相もございません!」
彼女が恐る恐るそのティアラを自分の頭に乗せてみようとする。
しかしどういうわけかサイズが全く合わずカポカポと頭の上で滑稽に揺れた。
「お、大きいですわ……!」
「ふん! 見ろ! やはりお前のような小娘にはまだ早いということだ!」
アレクシオス陛下がなぜか得意げに胸を張る。
一体どういうことなの……?
誰もが混乱の渦の中にいたその時だった。
母が残した日記帳。
そのインクが滲んでどうしても読むことができなかった最後の一ページ。
それがセレーナが手にしたティアラの光に照らされまるで今書き記されたかのように鮮やかにその文字を浮かび上がらせたのだ。
私は吸い寄せられるようにそのページを読み上げた。
『……我が愛しい二人の娘へ』
『太陽の巫女の血筋には古来より二つの力が宿っています』
『世界を照らし悪しきを浄化する光を司る**『聖女』の力』
『そしてその光を受け止め命を育む大地を司る『守り手』**の力』
『聖女と守り手。二人は対にして初めて真の力を発揮する魂の半身なのです』
『私は私の持つ力を二つに分けあなたたちに託しました』
『私の光の娘イリス。あなたには聖女の力を』
『そして……私の大地の娘セレーナ。あなたには守り手としての力を』
その衝撃の事実。
セレーナは何の力も持たないただの少女ではなかったのだ。
彼女は私と対になる大地を司る『守り手』としての力をその身の内に秘めていた。
母は私たちがいつかこうして手を取り合い姉妹で大きな運命に立ち向かう未来をずっとずっと信じてくれていたのだ。
「わ、私が……守り手……?」
セレーナはまだ信じられないという顔で自分の両手を見つめている。
しかし彼女が『守り手』だったとしてその力はまだ目覚めていない。
このままでは寄生神と戦うことはできない。
どうすればセレーナは守り手として覚醒することができるのか……。
私たちが頭を抱えているとセレーナの手の中にあるティアラがふと微かな光の筋を放ち始めた。
その光は王城のある一点をまっすぐに指し示している。
叔父である国王がその光の先を見てはっとしたように言った。
「あそこは……。王家の人間ですらその存在を忘れかけていた……」
「代々の太陽の巫女がその力を得るために挑んだという伝説の……」
「『試練の洞窟』……!」
その信じがたい光景にその場にいた誰もが言葉を失っていた。
「な、何かの間違いではないのか!?」
最初に沈黙を破ったのはやはりアレクシオス陛下だった。
彼はセレーナの手からティアラをひったくろうとする。
「このティアラは見る目がないにも程があるぞ! 私のイリスこそが世界で最も気高く美しくティアラの似合う女性だというのに!」
しかし陛下がティアラに触れようとした瞬間、**バチィッ!**と激しい静電気が走りティアラは強い力で陛下の手を弾き返した。
「い、痛っ!?」
「このティアラ、私を拒絶しただと……!?」
セレーナ自身も自分の手の中にあるティアラを見てパニックに陥っていた。
「わ、私なんかがこのような大それたものを……! め、滅相もございません!」
彼女が恐る恐るそのティアラを自分の頭に乗せてみようとする。
しかしどういうわけかサイズが全く合わずカポカポと頭の上で滑稽に揺れた。
「お、大きいですわ……!」
「ふん! 見ろ! やはりお前のような小娘にはまだ早いということだ!」
アレクシオス陛下がなぜか得意げに胸を張る。
一体どういうことなの……?
誰もが混乱の渦の中にいたその時だった。
母が残した日記帳。
そのインクが滲んでどうしても読むことができなかった最後の一ページ。
それがセレーナが手にしたティアラの光に照らされまるで今書き記されたかのように鮮やかにその文字を浮かび上がらせたのだ。
私は吸い寄せられるようにそのページを読み上げた。
『……我が愛しい二人の娘へ』
『太陽の巫女の血筋には古来より二つの力が宿っています』
『世界を照らし悪しきを浄化する光を司る**『聖女』の力』
『そしてその光を受け止め命を育む大地を司る『守り手』**の力』
『聖女と守り手。二人は対にして初めて真の力を発揮する魂の半身なのです』
『私は私の持つ力を二つに分けあなたたちに託しました』
『私の光の娘イリス。あなたには聖女の力を』
『そして……私の大地の娘セレーナ。あなたには守り手としての力を』
その衝撃の事実。
セレーナは何の力も持たないただの少女ではなかったのだ。
彼女は私と対になる大地を司る『守り手』としての力をその身の内に秘めていた。
母は私たちがいつかこうして手を取り合い姉妹で大きな運命に立ち向かう未来をずっとずっと信じてくれていたのだ。
「わ、私が……守り手……?」
セレーナはまだ信じられないという顔で自分の両手を見つめている。
しかし彼女が『守り手』だったとしてその力はまだ目覚めていない。
このままでは寄生神と戦うことはできない。
どうすればセレーナは守り手として覚醒することができるのか……。
私たちが頭を抱えているとセレーナの手の中にあるティアラがふと微かな光の筋を放ち始めた。
その光は王城のある一点をまっすぐに指し示している。
叔父である国王がその光の先を見てはっとしたように言った。
「あそこは……。王家の人間ですらその存在を忘れかけていた……」
「代々の太陽の巫女がその力を得るために挑んだという伝説の……」
「『試練の洞窟』……!」
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