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第五十話『二人の巫女、光と大地』
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「……準備はいい? セレーナ」
「はいお姉様……! いつでも!」
私とセレーナは固く手を握り合ったまま頷き合う。
私たちの周りではアレクシオス陛下や騎士たちが襲い来る寄生神の触手を必死に食い止めてくれている。
彼らが稼いでくれる時間は無限ではない。
やるしかない。
「――いでよ母なる大地の力! 我が声に応え今こそその力を示しなさい!」
セレーナが天に向かって高らかに叫ぶ。
彼女の頭上で大地のティアラがエメラルド色の力強い輝きを放った。
その光に呼応するように足元の祭壇がゴゴゴゴと唸りを上げる。
そして。
ドッゴォォォォン!!
祭壇の中央から膨大な緑色のエネルギーが天を突くほどの巨大な奔流となって噴き出した。
それは大地そのものが持つ原始的でそして荒々しい生命の力。
しかしその中には寄生神によって汚された邪悪な気もわずかに混じっていた。
「オー! マイヘアー!」
あまりのエネルギーの奔流に近くにいたカルロスさんが見事な悲鳴を上げながら後方へと吹き飛ばされていく。
それをライオス団長が片手で冷静にしかししっかりとキャッチした。
「さあお姉様!」
私はその荒れ狂う緑色の奔流をまっすぐに見据えた。
そして両手を広げそのエネルギーを全身全霊で受け止める。
「――大丈夫よセレーナ。あなたのその力……!」
「私が必ず聖なる光に変えてみせるから!」
私の体から黄金色の太陽のような浄化の光が溢れ出す。
セレーナから受け取った大地のエネルギーが私の体の中で聖女の力と混じり合いより清らかでそしてより強大な光のエネルギーへと変換されていく。
私の体から放たれる光はもはや太陽そのものだった。
黒い太陽に覆われたサン・テラの大地を隅々まで優しくそして力強く照らし出す。
「行け……! イリス! セレーナ!」
アレクシオス陛下が聖剣を構えながら私たちに叫ぶ。
彼の瞳には私への絶対的な信頼が宿っていた。
その時祭壇の亀裂の奥から寄生神の巨大な本体がついにそのおぞましい姿を完全に現した。
それは何百もの眼球を持つ巨大な肉塊のような怪物。
その中央にある巨大な口が私たち姉妹を丸呑みにしようと大きく開かれた。
もう迷いはない。
私とセレーナは手を繋いだまま同時に天に向かって叫んだ。
「「――今よっ!!」」
私たちが繋いだ手から一本の巨大な光の柱が天へと放たれた。
それは私の『光』の力とセレーナの『大地』の力が完全に融合した究極の浄化の光。
母がそしてこの国がずっと待ち望んでいた希望の光。
その名を『サン・テラ・ノヴァ』。
光の柱は寸分の狂いもなく寄生神の弱点である中心の核をまっすぐに貫いていった。
ピシッ……。
核に小さな亀裂が入る。
そしてその亀裂は一瞬にして寄生神の体全体へと広がっていった。
地下深くで世界そのものを揺るがすほどの閃光と大爆発が巻き起こる。
果たして私たちは寄生神を完全に滅ぼすことができたのか?
そしてこのあまりに強大すぎる力の奔流の中で私とセレーナの運命は……?
目の前が真っ白な光に包まれた。
「はいお姉様……! いつでも!」
私とセレーナは固く手を握り合ったまま頷き合う。
私たちの周りではアレクシオス陛下や騎士たちが襲い来る寄生神の触手を必死に食い止めてくれている。
彼らが稼いでくれる時間は無限ではない。
やるしかない。
「――いでよ母なる大地の力! 我が声に応え今こそその力を示しなさい!」
セレーナが天に向かって高らかに叫ぶ。
彼女の頭上で大地のティアラがエメラルド色の力強い輝きを放った。
その光に呼応するように足元の祭壇がゴゴゴゴと唸りを上げる。
そして。
ドッゴォォォォン!!
祭壇の中央から膨大な緑色のエネルギーが天を突くほどの巨大な奔流となって噴き出した。
それは大地そのものが持つ原始的でそして荒々しい生命の力。
しかしその中には寄生神によって汚された邪悪な気もわずかに混じっていた。
「オー! マイヘアー!」
あまりのエネルギーの奔流に近くにいたカルロスさんが見事な悲鳴を上げながら後方へと吹き飛ばされていく。
それをライオス団長が片手で冷静にしかししっかりとキャッチした。
「さあお姉様!」
私はその荒れ狂う緑色の奔流をまっすぐに見据えた。
そして両手を広げそのエネルギーを全身全霊で受け止める。
「――大丈夫よセレーナ。あなたのその力……!」
「私が必ず聖なる光に変えてみせるから!」
私の体から黄金色の太陽のような浄化の光が溢れ出す。
セレーナから受け取った大地のエネルギーが私の体の中で聖女の力と混じり合いより清らかでそしてより強大な光のエネルギーへと変換されていく。
私の体から放たれる光はもはや太陽そのものだった。
黒い太陽に覆われたサン・テラの大地を隅々まで優しくそして力強く照らし出す。
「行け……! イリス! セレーナ!」
アレクシオス陛下が聖剣を構えながら私たちに叫ぶ。
彼の瞳には私への絶対的な信頼が宿っていた。
その時祭壇の亀裂の奥から寄生神の巨大な本体がついにそのおぞましい姿を完全に現した。
それは何百もの眼球を持つ巨大な肉塊のような怪物。
その中央にある巨大な口が私たち姉妹を丸呑みにしようと大きく開かれた。
もう迷いはない。
私とセレーナは手を繋いだまま同時に天に向かって叫んだ。
「「――今よっ!!」」
私たちが繋いだ手から一本の巨大な光の柱が天へと放たれた。
それは私の『光』の力とセレーナの『大地』の力が完全に融合した究極の浄化の光。
母がそしてこの国がずっと待ち望んでいた希望の光。
その名を『サン・テラ・ノヴァ』。
光の柱は寸分の狂いもなく寄生神の弱点である中心の核をまっすぐに貫いていった。
ピシッ……。
核に小さな亀裂が入る。
そしてその亀裂は一瞬にして寄生神の体全体へと広がっていった。
地下深くで世界そのものを揺るがすほどの閃光と大爆発が巻き起こる。
果たして私たちは寄生神を完全に滅ぼすことができたのか?
そしてこのあまりに強大すぎる力の奔流の中で私とセレーナの運命は……?
目の前が真っ白な光に包まれた。
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