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第五十八話『元・悪役令嬢の再出発』
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(本話はロザリアの一人称視点でお送りします)
わたくしロザリア・デ・リンドールは今人生で最大の屈辱とそして最大の覚悟を胸にリンドール城の門前に立っておりました。
かつてわたくしはこの国の誰よりも自分が優れていると信じておりました。
美貌も知性も家柄も全てにおいて自分が頂点に立つべき人間だと。
そして王妃の座も当然このわたくしのものになるはずでしたわ。
……そう。
あのイリス・フォン・アルメリアという聖女が現れるまでは。
彼女とのあの社交と教養の決闘。
そして十年越しの運命の再会というまるで出来すぎた恋愛小説のような物語。
わたくしは完膚なきまでに打ちのめされました。
領地での謹慎生活。
最初は屈辱と嫉妬で気が狂いそうでしたわ。
けれど日に日にリンドールに伝わってくるイリス妃殿下の噂。
彼女が聖女として民を救い国を救ったという輝かしい武勇伝。
それを聞くうちにわたくしはようやく自分の愚かさに気づいたのです。
わたくしが求めていたのは王妃という地位と名誉だけ。
けれど彼女はその力で国と民を守ろうとしていた。
器が違いすぎましたわ。
だからわたくしは決めたのです。
この腐ったプライドは全て捨てようと。
そして一人のリンドール国民としてこの国のために自分にできることをしようと。
「……イリス妃殿下。この度はまことに申し訳ございませんでした」
妃殿下の前でわたくしは生まれて初めて心の底から頭を下げました。
「以前のわたくしはどうかしておりましたわ。どうかこの元・悪役令嬢めに、もう一度チャンスをくださいまし」
自虐的なわたくしの言葉に妃殿下は少し驚かれたようでしたがすぐに優しい笑みを浮かべてくれました。
わたくしは自分の計画を打ち明けました。
リンドール王国の商業ギルド。
その旧態依然とした組織をわたくしの経営能力と知識で改革したいと。
そしてそのためには王妃である妃殿下のお力添えが不可欠なのですと。
「……分かりましたわロザリア様。あなたのその覚悟信じます」
妃殿下はわたくしの手を取りそう言ってくれました。
かつての恋敵。
今は同じ国を思う同志。
なんだか不思議な気分ですわね。
私たちが、お茶を飲みながらこれからのギルド改革について熱く語り合っていると。
「なんだ君か」
アレクシオス陛下が部屋に入ってこられました。
そしてわたくしをじろりと睨みつけます。
「まだ懲りずに私のイリスに何かちょっかいをかけに来たのではないだろうな」
「まあ陛下! ロザリア様はもう私たちの、大切な味方ですのよ!」
妃殿下が陛下を窘めてくださる。
(本当にこのお方は妃殿下のことに、なると途端に子供っぽくなられるのね……)
少しだけ呆れてしまいましたが同時に羨ましくもありましたわ。
こうしてわたくしの新たな挑戦が始まりました。
商業ギルドの古狸のような商人たちを相手に一歩も引かずに渡り合っていく。
それは骨の折れる仕事でしたが不思議と充実していました。
そんなある日。
ギルドの帳簿を調べていたわたくしはある不審な金の流れに気づいてしまったのです。
国外のダミーカンパニーを通してリンドールの経済に少しずつ介入しようとしている謎の組織。
その金の流れの先にあったのは……。
かつての『黒き蛇』とはまた違う。
もっと狡猾でそしてもっと巨大な新たな脅威の影。
わたくしは背筋が凍るのを感じました。
この国の平和はまだ完全なものではなかったのです……。
わたくしロザリア・デ・リンドールは今人生で最大の屈辱とそして最大の覚悟を胸にリンドール城の門前に立っておりました。
かつてわたくしはこの国の誰よりも自分が優れていると信じておりました。
美貌も知性も家柄も全てにおいて自分が頂点に立つべき人間だと。
そして王妃の座も当然このわたくしのものになるはずでしたわ。
……そう。
あのイリス・フォン・アルメリアという聖女が現れるまでは。
彼女とのあの社交と教養の決闘。
そして十年越しの運命の再会というまるで出来すぎた恋愛小説のような物語。
わたくしは完膚なきまでに打ちのめされました。
領地での謹慎生活。
最初は屈辱と嫉妬で気が狂いそうでしたわ。
けれど日に日にリンドールに伝わってくるイリス妃殿下の噂。
彼女が聖女として民を救い国を救ったという輝かしい武勇伝。
それを聞くうちにわたくしはようやく自分の愚かさに気づいたのです。
わたくしが求めていたのは王妃という地位と名誉だけ。
けれど彼女はその力で国と民を守ろうとしていた。
器が違いすぎましたわ。
だからわたくしは決めたのです。
この腐ったプライドは全て捨てようと。
そして一人のリンドール国民としてこの国のために自分にできることをしようと。
「……イリス妃殿下。この度はまことに申し訳ございませんでした」
妃殿下の前でわたくしは生まれて初めて心の底から頭を下げました。
「以前のわたくしはどうかしておりましたわ。どうかこの元・悪役令嬢めに、もう一度チャンスをくださいまし」
自虐的なわたくしの言葉に妃殿下は少し驚かれたようでしたがすぐに優しい笑みを浮かべてくれました。
わたくしは自分の計画を打ち明けました。
リンドール王国の商業ギルド。
その旧態依然とした組織をわたくしの経営能力と知識で改革したいと。
そしてそのためには王妃である妃殿下のお力添えが不可欠なのですと。
「……分かりましたわロザリア様。あなたのその覚悟信じます」
妃殿下はわたくしの手を取りそう言ってくれました。
かつての恋敵。
今は同じ国を思う同志。
なんだか不思議な気分ですわね。
私たちが、お茶を飲みながらこれからのギルド改革について熱く語り合っていると。
「なんだ君か」
アレクシオス陛下が部屋に入ってこられました。
そしてわたくしをじろりと睨みつけます。
「まだ懲りずに私のイリスに何かちょっかいをかけに来たのではないだろうな」
「まあ陛下! ロザリア様はもう私たちの、大切な味方ですのよ!」
妃殿下が陛下を窘めてくださる。
(本当にこのお方は妃殿下のことに、なると途端に子供っぽくなられるのね……)
少しだけ呆れてしまいましたが同時に羨ましくもありましたわ。
こうしてわたくしの新たな挑戦が始まりました。
商業ギルドの古狸のような商人たちを相手に一歩も引かずに渡り合っていく。
それは骨の折れる仕事でしたが不思議と充実していました。
そんなある日。
ギルドの帳簿を調べていたわたくしはある不審な金の流れに気づいてしまったのです。
国外のダミーカンパニーを通してリンドールの経済に少しずつ介入しようとしている謎の組織。
その金の流れの先にあったのは……。
かつての『黒き蛇』とはまた違う。
もっと狡猾でそしてもっと巨大な新たな脅威の影。
わたくしは背筋が凍るのを感じました。
この国の平和はまだ完全なものではなかったのです……。
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