婚約破棄の上、無実の罪を着せられ追放されたけど、隣国の王子様に救われました!

マルローネ

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6話 一石二鳥の計画

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 ジスト王子殿下視点……。

 セリーヌ・ジュデッカを追放してやったのだ。私は笑いが止まらなかった。今日の安眠は約束されたも同然と言えるのかもしれない。


「セリーヌ・ジュデッカ……全く、忌々しい奴だったな」

「全くでございますな、ジスト王子殿下。これで、バートルフ王国もより良い方向へと向かいましょうぞ」

「だといいがな……」


 私は議会を統括しているベナン・コトベック議長と話をしていた。今回の事件に関しては、完全に彼との共同作業と言うわけだ。でなければ、セリーヌ・ジュデッカをあんなに簡単に追放など、できるわけがないからな。

「しかし、今回はセリーヌ令嬢を追放した形になりましたが、大丈夫なのですか?」

「何がだ?」

「彼女が隣国のグリオス王国に助けを求めた場合、まずいことになるのでは……?」

「ああ、そういうことか。心配するな、既に手は打ってある」

「左様でございましたか! 流石でございますね!」


「私はバートルフ王家の王位継承権2位のジスト様だぞ? 当り前のことだろうが」


 今頃、セリーヌは野盗達に捕まっているだろう。その後、どういう目に遭っているのか……想像するだけで可哀想に思えてくるな。まあ、酒の肴としては最高の話のネタになるんだがな、はははははっ。


「セリーヌの今後の人生を考えると……私としても多少は同情してしまうよ」

「同情? 本当なのですか? ジスト王子殿下が少しでも同情しているのでしたら、愛する婚約者を無実の罪に掛け、そのまま国外追放なんて真似はされないかと思われますが」

「くくくっ、何が言いたい?」

「極めつけに野盗に襲わせる計画のセンスに脱帽しているのですよ!」

「ふははははっ、当然だ! 私のセンスは何人たりとも真似などできまい!」

「確かに真似などできませんな! あははははっ!」


 私とベナンの二人は大きな声で大笑いしてみせる。今夜の酒の肴は決まったも同然だな。セリーヌの話だけで朝まで語り尽くせそうだ。ベナンの奴もなかなかは話の分かる男のようだな。最初は胡散臭い単なる議長かと踏んでいたのだが……。


「まったくあの女は……私よりも目立つところが多く、国民からの信頼? を勝ち取っていたからな。ゴマすりの達人だったというわけだ」

「なるほど……それで、今回の計画を練られたというわけですね」

「そういうことだ」


 たかだか子を産む機械でしかない女が、国の実権を握るであろう私よりも国民からの信頼を受けてどうする。今回はセリーヌにそれを思い知らしめたというわけだな。あいつと父親のローレック・ジュデッカの悲壮な表情と言ったら……今、思い出しただけで吹き出しそうになってしまうな。


「もしかしたら、ジュデッカ家の連中が反旗を翻すかもしれないが……その対応さえ万全にしておけば、まったく問題ないだろう」

「左様でございますね、王子殿下。見事なお手並みでございました!」


「ふふふふ、当然だ」


 私は天才なのだ……今回のセリーヌ・ジュデッカ侯爵令嬢を追放した一件で、議会の裏ルートを通して政敵を抹殺することも出来ることが証明されたわけだ。


 セリーヌの国外追放はまさに、一石二鳥の結果を生み出した貴重な実例と言えるだろう。


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