うちの勇者が、どうしようもなくクズな件

猫山亭 灰色

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大工な勇者

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 一軒の家の前で、大工姿をした勇者と中年男性がモメている。
 
「これは、何だ?」
「何だと言われても・・・。」
「私からの依頼内容は、きちんと覚えてますよね?」
「一応は。」
「言ってみてください。」
「ボロい中古住宅なのに35年もの長期ローンを組んでしまった、払い終わったときには施主様が79歳の住宅のリフォームですよね。落ち着いた雰囲気に、ということで。」
「ローンのくだりは悪意を感じるが、依頼内容自体はきちんと分かっててくれてよかった。その上で聞くが、これは何だ?」
 
 そこにあるものを指差す男性。
 
「ガーゴイルの石像。」
「それはわかってます。私が聞きたいのは『落ち着いた雰囲気の家』に、何でガーゴイルの装飾が必要なのか?ということです。」
「施主様は、東京にある日本橋のことは知ってますよね?」
「どこのこと? というか、どこの国の話?」
「あの橋には、ガーゴイルが何体もいるのをご存じですか?」
「だから、私が日本という国の事を知っていること前提で話をするな!」
「一緒です。」
「どういう事!?」
「魔除けです。」
 
「魔除けっていっても、もっと優しそうなやつがあるだろ! こんな悪魔みたいなのじゃないやつで。」
「私は大工はバイトとしてやってます。」
「堂々と言うことか?」
「本職は、勇者でして。」
「・・・そうだったのか。」
「結界にはちょっとうるさいですよ。なんせ勇者だったから。」
「勇者と結界は、関係ない気がするけど・・・。」
 
「その知識を活かして、産みだしたのがこの和風建築と西洋魔道の融合。」
「融合さぜるな! 人の念願のマイホームをお化け屋敷にしやがって!」
「ガーゴイルが、そんなに気にくわないと?」
「一体だけならいいけど、何体設置してんだよ? ガーゴイルで全面的に壁が埋まってんじゃん!」
「そのくらいのガーゴイルが必要なんですよ。」
「本当かよ! 家っていうか、もはやこれ、ガーゴイルの集合体だぞ!? 魔界城?」
「魔改造なんてしてないですよ!」
「してるだろ! あと魔界城!」
 
「でも、ガーゴイル設置の理由、本当に言っていいんですか? 聞かない方が多分、幸せですよ。」
「覚悟は決まったよ! さあ、言ってみろ。」
「バカな人だ・・・。」
「何だと!」

「この土地、安かったでしょ?」
「相場より大分・・・。」
「まあ、あんな事件があればね・・・。でも35年ローン。」
「怖いよ!」
「建物を含めても、安かったでしょ?」
「相場より大分・・・。」
「まあ、あんな事件があればね・・・。でも35年ローン。」
「もういいから、はっきり言えよ! 何があったんだよ、この家で! あとローンのくだりは、もう言うな!」
 
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