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14・シルバー級にならないといけないのか!?
第38話 念の為のシルバー級試験
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コゲタの処遇だが……。
僕の従者として、常駐している宿でお掃除の仕事をする約束で置いてもらうことになった。
掃除の手間賃でもって、彼の宿代ということになる。
だが、食事は僕持ちだからな。
コボルドに自活させるのは文明社会では困難だ……!
だが、犬に街で自活しろというのも厳しかろう。彼を養うため、僕はシルバー級になる決意をしたのだから。
「そう言えば、コゲタはオスなのだろうか、メスなのだろうか……」
さっぱり分からない。
コボルドは発情期にならないと、性器が隠れているらしいからな……。
「ご主人、出かける」
「ああ。一応シルバー級の昇級試験があるんだ。ついてくるかい?」
「行く、行く」
尻尾を振るコゲタ。
今朝は早起きし、宿の前を掃き掃除していたそうで。
「おおコゲタ、行ってらっしゃい。ナザルもな」
宿の主人に呼ばれるのが、コゲタが先なんだが?
コボルド、友好的な個体は完全に直立した犬なので、人の心にするりと入り込んでくる可愛らしさがあるからな。
コゲタを連れて、ギルドにやって来た。
彼は行儀がいいので、ギルド内ではすぐに安楽椅子冒険者のところへ行って大人しくしている。
リップルも動物全般が好きらしいので、乾き物をコゲタに食べさせている。
「えーと、それではナザルさん。シルバー級の昇級試験なのですが」
いつものおさげに受付嬢だ。
君は僕担当なのか……?
「お化けムササビ……モンスタースクイールの討伐です」
「あー」
もうこれは儀礼的な試験だ。
そんな簡単な任務とは……。
「森の中を滑空しながら襲いかかる、恐るべきモンスターです。カッパー級から脱する試験としては、バッチリのモンスターかと」
「あ、はい」
……一般的には空を飛ぶモンスターは強いんだった。
忘れていた。
僕の場合、相手を知覚できればメタれるからな。
相手の強さ評価がバグってるところはあるかも知れない。
こうして僕は試験を受諾し。
即座に密林に突っ込んで、お化けムササビを油で溺れさせて退治。
これの毛皮を第一伐採所の職人たちに手伝ってもらって剥がし、持ち帰ってきたのだった。
「は、速くないですか!?」
「慣れてるからね……」
こうして僕はシルバー級となった。
これ、本来ならば数日掛けて挑戦する試験らしく。
パーティの数に相当するモンスターを退治し、その証を持ってくる必要があるわけだ。
その中でも、お化けムササビはかなりの鬼門だとか。
そうだったのか……。
周囲に張り巡らせた油の霧に突っ込んでこさせて、毛皮をネトネトにして地面に落として油をポンっと投げるだけだった。
「おっ、ついにお前もシルバー級かあ! 実力相応だな!」
バンキンが肩を叩いてきた。
「ああ。これ以上には絶対昇級したくない……。これはあくまで、コゲタの食費を稼ぐための緊急措置だからね……!!」
「お前、本当に犬好きなのな。自分のこだわりをちょっと曲げるくらいには」
「助けてしまったものは仕方ない」
お下げの受付嬢が、奥から新しくしたギルドカードを持って走ってきた。
「こちら、シルバー級のギルドカードです! おめでとうございますナザルさん! これからは責任ある大きな仕事も受けてください! 年間三件がノルマです」
「ほらあ」
僕は嫌そうな顔をした。
これが嫌なんだよ。
シルバー級以上になると、冒険者としても中級という扱いになる。
ここには義務と責任が伴い、国から発される重要な依頼を年間三回こなす必要があるのだ。
まあ、重要=危険とか、大規模というわけではない。
農作物を輸出する際の護衛だとか、遺跡の下層から湧いてくるモンスターの討伐とか。
そういうのだ。
面倒くさいなあ……。
一番楽なのを選び抜いて受注しよう……。
「やあナザル! 昇級おめでとう! ギルドカード見せて見せて! 他人のギルドカード、めったに見る機会なくってさ」
リップルが手を振っている。
僕は彼女のところまで行って、椅子に腰掛けた。
マスターにお茶を注文する。
「リップルは他の冒険者に頼めば見せてもらえるだろう?」
「そういうのはなんだか悪いじゃないか。プラチナ級からギルドカード見せろなんて言われたら、こう、圧力を感じない?」
「僕ならいいわけ!?」
「君と私の仲じゃないかー。どれどれ……? 普段、プラチナ級のギルドカードしか見てないからさ。へえー! 縁の色が私のと似てるなあ。シルバーとプラチナは色的に近いもんなあ」
「ああ。反射の強さとかで見分ける感じだよね。リップルのカードの方が透き通ってて高級感あるじゃん?」
「そうかなあ……。結構雑に扱ってるけど、折れたり壊れたりしないから本の栞とか、器がない時にお菓子を載せるために使ったりしてるんだよね」
「プラチナ級のカードをなんてことに使ってるんだ」
「私のカードなんだからどう使ってもいいだろー?」
どうやら、それぞれの等級でギルドカードの材質が違うようだ。
アイアン級はその名の通り鉄の板。
カッパー級は銅板で、シルバー級は銅板に銀箔を貼ったもの。
ゴールド級はこれが金箔になり……。
プラチナ級は謎の素材だ。
ダイヤ級はカードそのものが透き通ってるらしいし。
マスター級ともなればどうなるんだ。
謎だ……。
いつかプラチナ級より上の等級の冒険者に会ったら見せてもらおう。
僕はそう思うのだった。
僕の従者として、常駐している宿でお掃除の仕事をする約束で置いてもらうことになった。
掃除の手間賃でもって、彼の宿代ということになる。
だが、食事は僕持ちだからな。
コボルドに自活させるのは文明社会では困難だ……!
だが、犬に街で自活しろというのも厳しかろう。彼を養うため、僕はシルバー級になる決意をしたのだから。
「そう言えば、コゲタはオスなのだろうか、メスなのだろうか……」
さっぱり分からない。
コボルドは発情期にならないと、性器が隠れているらしいからな……。
「ご主人、出かける」
「ああ。一応シルバー級の昇級試験があるんだ。ついてくるかい?」
「行く、行く」
尻尾を振るコゲタ。
今朝は早起きし、宿の前を掃き掃除していたそうで。
「おおコゲタ、行ってらっしゃい。ナザルもな」
宿の主人に呼ばれるのが、コゲタが先なんだが?
コボルド、友好的な個体は完全に直立した犬なので、人の心にするりと入り込んでくる可愛らしさがあるからな。
コゲタを連れて、ギルドにやって来た。
彼は行儀がいいので、ギルド内ではすぐに安楽椅子冒険者のところへ行って大人しくしている。
リップルも動物全般が好きらしいので、乾き物をコゲタに食べさせている。
「えーと、それではナザルさん。シルバー級の昇級試験なのですが」
いつものおさげに受付嬢だ。
君は僕担当なのか……?
「お化けムササビ……モンスタースクイールの討伐です」
「あー」
もうこれは儀礼的な試験だ。
そんな簡単な任務とは……。
「森の中を滑空しながら襲いかかる、恐るべきモンスターです。カッパー級から脱する試験としては、バッチリのモンスターかと」
「あ、はい」
……一般的には空を飛ぶモンスターは強いんだった。
忘れていた。
僕の場合、相手を知覚できればメタれるからな。
相手の強さ評価がバグってるところはあるかも知れない。
こうして僕は試験を受諾し。
即座に密林に突っ込んで、お化けムササビを油で溺れさせて退治。
これの毛皮を第一伐採所の職人たちに手伝ってもらって剥がし、持ち帰ってきたのだった。
「は、速くないですか!?」
「慣れてるからね……」
こうして僕はシルバー級となった。
これ、本来ならば数日掛けて挑戦する試験らしく。
パーティの数に相当するモンスターを退治し、その証を持ってくる必要があるわけだ。
その中でも、お化けムササビはかなりの鬼門だとか。
そうだったのか……。
周囲に張り巡らせた油の霧に突っ込んでこさせて、毛皮をネトネトにして地面に落として油をポンっと投げるだけだった。
「おっ、ついにお前もシルバー級かあ! 実力相応だな!」
バンキンが肩を叩いてきた。
「ああ。これ以上には絶対昇級したくない……。これはあくまで、コゲタの食費を稼ぐための緊急措置だからね……!!」
「お前、本当に犬好きなのな。自分のこだわりをちょっと曲げるくらいには」
「助けてしまったものは仕方ない」
お下げの受付嬢が、奥から新しくしたギルドカードを持って走ってきた。
「こちら、シルバー級のギルドカードです! おめでとうございますナザルさん! これからは責任ある大きな仕事も受けてください! 年間三件がノルマです」
「ほらあ」
僕は嫌そうな顔をした。
これが嫌なんだよ。
シルバー級以上になると、冒険者としても中級という扱いになる。
ここには義務と責任が伴い、国から発される重要な依頼を年間三回こなす必要があるのだ。
まあ、重要=危険とか、大規模というわけではない。
農作物を輸出する際の護衛だとか、遺跡の下層から湧いてくるモンスターの討伐とか。
そういうのだ。
面倒くさいなあ……。
一番楽なのを選び抜いて受注しよう……。
「やあナザル! 昇級おめでとう! ギルドカード見せて見せて! 他人のギルドカード、めったに見る機会なくってさ」
リップルが手を振っている。
僕は彼女のところまで行って、椅子に腰掛けた。
マスターにお茶を注文する。
「リップルは他の冒険者に頼めば見せてもらえるだろう?」
「そういうのはなんだか悪いじゃないか。プラチナ級からギルドカード見せろなんて言われたら、こう、圧力を感じない?」
「僕ならいいわけ!?」
「君と私の仲じゃないかー。どれどれ……? 普段、プラチナ級のギルドカードしか見てないからさ。へえー! 縁の色が私のと似てるなあ。シルバーとプラチナは色的に近いもんなあ」
「ああ。反射の強さとかで見分ける感じだよね。リップルのカードの方が透き通ってて高級感あるじゃん?」
「そうかなあ……。結構雑に扱ってるけど、折れたり壊れたりしないから本の栞とか、器がない時にお菓子を載せるために使ったりしてるんだよね」
「プラチナ級のカードをなんてことに使ってるんだ」
「私のカードなんだからどう使ってもいいだろー?」
どうやら、それぞれの等級でギルドカードの材質が違うようだ。
アイアン級はその名の通り鉄の板。
カッパー級は銅板で、シルバー級は銅板に銀箔を貼ったもの。
ゴールド級はこれが金箔になり……。
プラチナ級は謎の素材だ。
ダイヤ級はカードそのものが透き通ってるらしいし。
マスター級ともなればどうなるんだ。
謎だ……。
いつかプラチナ級より上の等級の冒険者に会ったら見せてもらおう。
僕はそう思うのだった。
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