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21・女王陛下の油使い
第60話 女王様はケーキとドーナッツがお好き
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「ふんふん、ここがアーランか。ほー、ふーん、へえー」
バルバラ女王陛下、もとい使いのリシアは興味津々。
僕が案内する、アーランの商業地区を物珍しそうに見て回っている。
店先を覗き込み、試食できるものがあれば食べて「美味い!」と声を発し、買い食いしながら歩いたりする。
実にフリーダムだ。
ついでに、ちょこちょこ横を歩くコゲタにおすそ分けをしたりしてるので、僕としては何も文句はないね!
「ご主人ー、この人いい人」
「そうだなそうだな。犬に優しい人に悪人はいない」
「ああ。わらわ……じゃなかったわたしはあらゆる生き物を愛でているのだ。なにせ、皆寿命が短く儚い生き物だからな」
「そりゃ、セイレーンと比べればねえ」
さて、彼女を商業地区に連れてきた理由。
それは、例の粉挽き職人ドワーフに会わせるためだ。
恐ろしくどでかい取引が始まろうとしている。
あのドワーフは受け入れてくれるだろうか?
結論。
「なにぃっ!? あ、あんたがファイブショーナンの女王だと!? そんな話が信じられるかよ!」
「ではこれがわらわの真なる姿よ。見るが良い」
「あっ、翼が生えて足が魚に! セ、セイレーン!! では本当にファイブショーナンを作り上げたバルバラか!! なんでお供を連れず、その油使いを従えてひょこひょこやって来てるんだ!」
「わらわの趣味じゃ」
しゅるしゅると小さくなる女王。
また、使いのリシアに戻った。
ついに僕の前でも隠すことが無くなったな……。
「それで、俺の粉を仕入れるのか? ファイブショーナンが!? お前ら、アーランと戦争してるんじゃなかったのかよ」
「それはやめじゃ。古い付き合い故、連中が驕り高ぶる様に付き合ってやっておったが、今となってはわらわに何の利益もない。ファイブスターズはフォースターズとでも名乗るが良いぞ。そういう旨の使いも出した」
初耳なんだが。
「それよりも、ナザルが揚げた天ぷらの美味いこと……! 焼いた魚を魚醤に漬けたものとはまた全く違う美味さじゃ! その衣がここで挽いた粉で作られているそうじゃな? わらわは、あの天ぷらをたくさん食べたい! 至上の快楽じゃ! そいうことで、アーランとは国交を結ぶ。その上でそなたの粉を国家として輸入する」
「お、おう……」
ドワーフが、僕に助けを求めるような目線を送ってきた。
知らないよ!
この女王様グイグイ来るからね。どうにか自分で対応していただけるとありがたい……!!
結局、ドワーフは押され、女王からの申し出を承諾したのだった。
すごいなー。
その後、僕はドワーフに肉の天ぷらを作ってやることになった。
これで彼は機嫌を直したのだった。
ふーむ、思わぬところで人間関係を作り出してしまったぞ。
「そなたは冒険者なのじゃろう?」
「ええそうですよ」
「冒険者ギルドなるものに連れて行って欲しい!」
「なんですって!!」
言い出すと止まらない女王様だ。
断っても勝手に行くことだろう。
大人しく連れて行くのが最良だ。
こうして僕は女王陛下を連れて冒険者ギルドを訪れ……。
「あっ、ナザルさん誰を連れてきたんですか?」
「ファイブショーナンからの使者の人」
「えっ!?」
お下げの受付嬢を驚愕させ、ギルド内がざわつく。
「あいつ、また変なの連れてきたぞ!」
「どういうツテなんだ……?」
「どうして冒険者ギルドに?」
あまりにも唐突すぎて、憶測する余裕もあるまい。
バルバラ女王はギルド内を物珍しそうに歩き回る。
「思ったよりも年季の入った建物なのじゃな。ほうほう……。しかしきちんと掃除されている。多くのものが利用しているようじゃ。活気があるのう」
女王陛下は嬉しそうだ。
ファイブショーナンと比べると、十倍以上の人口がいる国だからな。
すると、珍しいことにリップルがギルドの奥から歩いてきた。
「やあやあ、珍しい客人だねえ」
「リップル、もしや気付いているのか」
「気付かないものか。彼女はあれだろう? 使者のふりをした御本人だ」
「おや? いけ好かぬ古き友の声が聞こえた声がするのう」
「ここで立ち話も何だよ陛下。向こうの酒場でケーキを食べながら話そう」
「酒場で……ケーキ……?」
女王が首を傾げた。
というか、この二人知り合いだったのか。
お互い、伝説をバックに持つ長命種だからおかしくはないか。
女王陛下を前にしても、酒場のマスターは全く動揺しない。
いつものようにとっておきのケーキをスッと出してくる。
おっ、今日のはパウンドケーキにドライフルーツが入ったやつか!
僕も席につき、お茶と一緒にいただくことにする。
「んおーっ! あまーい!!」
女王陛下、ケーキが気に入られましたかな。
「ファイブショーナンには甘いものと言えば果実しか無いからな……」
「果実を集めて煮詰めればかなりの甘さの蜜ができるんじゃないですかね」
「その手が……!! 無限に生っているものだからそのまま食べておった。温かい楽園の気候は工夫するモチベーションを奪うのじゃ」
「それは美味しそうだなあ。アーランは果実が少ないから砂糖を食べるしか無いもんなあ」
僕、女王陛下、リップルで話し込んでしまった。
ちなみに横ではコゲタが、犬用のケーキをパクパク食べている。
これは甘いものが苦手な男性冒険者陣が、パン代わりに食ったりしているのだそうだ。
ここで、リップルから恐るべき提案が出る。
「ナザルに連れてこられたということは、君もあの揚げ物の虜になったのだろう?」
「その通りじゃ。サクサク食感の中の、ホックリとした魚の肉……。衝撃じゃった」
「うんうん。では、揚げて作られるケーキがあると言ったら信じられるかい?」
「なん……じゃと……!?」
「ナザル、ドロテアさんのところに行こうじゃないか! 彼女の家のキッチンを使って、ドーナッツを揚げよう!」
「それ、リップルが食べたいだけなんじゃないか?」
「私の欲が女王陛下の満足につながるかも知れないんだ。それにやんごとなきお方なら、それなりの立場にある女性が相手をすべきだろう。ドロテアさんがいい」
上手いことを言うなあ。
僕らがわあわあ騒いでいたら、ギルマスが顔を出してぎょっとしていた。
そして、お下げの受付嬢を捕まえて何か言っている。
なんだなんだ?
受付嬢が外用の服に着替えてトコトコやって来た。
「えー、私もギルマスからの指示を受けまして、皆さんとご一緒します。ドーナッツを食べるという厳しい任務を受領しました」
大人数になっていくんだが……?
バルバラ女王陛下、もとい使いのリシアは興味津々。
僕が案内する、アーランの商業地区を物珍しそうに見て回っている。
店先を覗き込み、試食できるものがあれば食べて「美味い!」と声を発し、買い食いしながら歩いたりする。
実にフリーダムだ。
ついでに、ちょこちょこ横を歩くコゲタにおすそ分けをしたりしてるので、僕としては何も文句はないね!
「ご主人ー、この人いい人」
「そうだなそうだな。犬に優しい人に悪人はいない」
「ああ。わらわ……じゃなかったわたしはあらゆる生き物を愛でているのだ。なにせ、皆寿命が短く儚い生き物だからな」
「そりゃ、セイレーンと比べればねえ」
さて、彼女を商業地区に連れてきた理由。
それは、例の粉挽き職人ドワーフに会わせるためだ。
恐ろしくどでかい取引が始まろうとしている。
あのドワーフは受け入れてくれるだろうか?
結論。
「なにぃっ!? あ、あんたがファイブショーナンの女王だと!? そんな話が信じられるかよ!」
「ではこれがわらわの真なる姿よ。見るが良い」
「あっ、翼が生えて足が魚に! セ、セイレーン!! では本当にファイブショーナンを作り上げたバルバラか!! なんでお供を連れず、その油使いを従えてひょこひょこやって来てるんだ!」
「わらわの趣味じゃ」
しゅるしゅると小さくなる女王。
また、使いのリシアに戻った。
ついに僕の前でも隠すことが無くなったな……。
「それで、俺の粉を仕入れるのか? ファイブショーナンが!? お前ら、アーランと戦争してるんじゃなかったのかよ」
「それはやめじゃ。古い付き合い故、連中が驕り高ぶる様に付き合ってやっておったが、今となってはわらわに何の利益もない。ファイブスターズはフォースターズとでも名乗るが良いぞ。そういう旨の使いも出した」
初耳なんだが。
「それよりも、ナザルが揚げた天ぷらの美味いこと……! 焼いた魚を魚醤に漬けたものとはまた全く違う美味さじゃ! その衣がここで挽いた粉で作られているそうじゃな? わらわは、あの天ぷらをたくさん食べたい! 至上の快楽じゃ! そいうことで、アーランとは国交を結ぶ。その上でそなたの粉を国家として輸入する」
「お、おう……」
ドワーフが、僕に助けを求めるような目線を送ってきた。
知らないよ!
この女王様グイグイ来るからね。どうにか自分で対応していただけるとありがたい……!!
結局、ドワーフは押され、女王からの申し出を承諾したのだった。
すごいなー。
その後、僕はドワーフに肉の天ぷらを作ってやることになった。
これで彼は機嫌を直したのだった。
ふーむ、思わぬところで人間関係を作り出してしまったぞ。
「そなたは冒険者なのじゃろう?」
「ええそうですよ」
「冒険者ギルドなるものに連れて行って欲しい!」
「なんですって!!」
言い出すと止まらない女王様だ。
断っても勝手に行くことだろう。
大人しく連れて行くのが最良だ。
こうして僕は女王陛下を連れて冒険者ギルドを訪れ……。
「あっ、ナザルさん誰を連れてきたんですか?」
「ファイブショーナンからの使者の人」
「えっ!?」
お下げの受付嬢を驚愕させ、ギルド内がざわつく。
「あいつ、また変なの連れてきたぞ!」
「どういうツテなんだ……?」
「どうして冒険者ギルドに?」
あまりにも唐突すぎて、憶測する余裕もあるまい。
バルバラ女王はギルド内を物珍しそうに歩き回る。
「思ったよりも年季の入った建物なのじゃな。ほうほう……。しかしきちんと掃除されている。多くのものが利用しているようじゃ。活気があるのう」
女王陛下は嬉しそうだ。
ファイブショーナンと比べると、十倍以上の人口がいる国だからな。
すると、珍しいことにリップルがギルドの奥から歩いてきた。
「やあやあ、珍しい客人だねえ」
「リップル、もしや気付いているのか」
「気付かないものか。彼女はあれだろう? 使者のふりをした御本人だ」
「おや? いけ好かぬ古き友の声が聞こえた声がするのう」
「ここで立ち話も何だよ陛下。向こうの酒場でケーキを食べながら話そう」
「酒場で……ケーキ……?」
女王が首を傾げた。
というか、この二人知り合いだったのか。
お互い、伝説をバックに持つ長命種だからおかしくはないか。
女王陛下を前にしても、酒場のマスターは全く動揺しない。
いつものようにとっておきのケーキをスッと出してくる。
おっ、今日のはパウンドケーキにドライフルーツが入ったやつか!
僕も席につき、お茶と一緒にいただくことにする。
「んおーっ! あまーい!!」
女王陛下、ケーキが気に入られましたかな。
「ファイブショーナンには甘いものと言えば果実しか無いからな……」
「果実を集めて煮詰めればかなりの甘さの蜜ができるんじゃないですかね」
「その手が……!! 無限に生っているものだからそのまま食べておった。温かい楽園の気候は工夫するモチベーションを奪うのじゃ」
「それは美味しそうだなあ。アーランは果実が少ないから砂糖を食べるしか無いもんなあ」
僕、女王陛下、リップルで話し込んでしまった。
ちなみに横ではコゲタが、犬用のケーキをパクパク食べている。
これは甘いものが苦手な男性冒険者陣が、パン代わりに食ったりしているのだそうだ。
ここで、リップルから恐るべき提案が出る。
「ナザルに連れてこられたということは、君もあの揚げ物の虜になったのだろう?」
「その通りじゃ。サクサク食感の中の、ホックリとした魚の肉……。衝撃じゃった」
「うんうん。では、揚げて作られるケーキがあると言ったら信じられるかい?」
「なん……じゃと……!?」
「ナザル、ドロテアさんのところに行こうじゃないか! 彼女の家のキッチンを使って、ドーナッツを揚げよう!」
「それ、リップルが食べたいだけなんじゃないか?」
「私の欲が女王陛下の満足につながるかも知れないんだ。それにやんごとなきお方なら、それなりの立場にある女性が相手をすべきだろう。ドロテアさんがいい」
上手いことを言うなあ。
僕らがわあわあ騒いでいたら、ギルマスが顔を出してぎょっとしていた。
そして、お下げの受付嬢を捕まえて何か言っている。
なんだなんだ?
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