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31・もう一人の転生者
第92話 アヒージョ伝説
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「う、う、うまぁぁぁぁい!!」
シズマが叫んだ。
なんという大仰なリアクション!
だが、本気のようだ。
「パルメディアまで来て、本当に食べ物が美味しくなくて困ってたんだ。少しでも美味いものを食べるためには偉くなるしか無かった。俺の能力も、直接食べ物には関係ない能力だったし……。最近アーランの食事が美味しくなってきたんだが、それでも物足りない。旨味が……油っけが……全然足りなかった! その、俺がずっと求めた来たものが、ここにある!!」
「分かる。あんたの気持ちが痛いほどよく分かる」
「分かるか! 分かってくれるか! おおお、心の友よ!」
僕とシズマでガッチリと握手する。
ゴールド級の三人はこれを見て肩をすくめたりため息をついたり。
うんうん、日頃からシズマのエキセントリックな言動を食らっていると見える。
変なやつだと思ってるんだろうが、ゴールド級に到れるほどの実力者は極めて希少なので付き合いを続けているに違いない。
「ま、まあ、彼も変わり者だけど悪いやつじゃないから……。今回みたいな失敗をすることもあるけどさ」
とはゴールド級パーティのリーダーの人のお言葉。
人間関係はまあまあ良好と見える。
どんな仕事も、人間関係で全て決まるからね。
ちなみにワカメのアヒージョは、この場にいるお歴々にも大好評だった。
「あー、美味い。こりゃあ美味いねえ……。なんというかこのオブリーオイルというのはお腹にも優しい気がする……」
「ああ。獣脂はそりゃあ腹に重いもんな……。こっちは植物由来だから、油の重さが気になるリップルにももうバッチリだ」
「ナザルの能力で出したものだからそう変わらないと思うんだけど……」
「僕のもともとのは謎の油だよ。食用ではあるが、今思うと旨味がこう、明らかに足りなかった……」
僕は遠い目をした。
ドロテアさんはニコニコしながらアヒージョを食べている。
「これ、美味しい油ね。アーランで良く使われている森のハーブとマッチするのねえ。とっても美味しいわ!」
「お喜びいただけて幸いです! 後は、ファイブショーナンのあの旨辛なピーカラを使うのもいいと思うんですよね。それから、こう、パンチのある薬味がもう少し欲しい……」
「にんにく……だよな?」
シズマが実に鋭いことを言った。
「まさしく」
「やはり」
僕らはガシッとまた握手した。
ゴールド級の三名が、うわあ、同類が増えたぞ、という顔をする。
僕らは無害な変人なので多めに見ていただきたい。
「シズマさん、何か知らないか? 今まで冒険した先で、にんにくになりうるような食材があったとか、そういうのは……」
「そうだな……。ああいう強力に精がつく感じの食べ物は……。あっ、一つだけあった」
「おお! それは一体!?」
流石は、世界を旅して冒険するゴールド級だ。
アーランを拠点にし、国家からの依頼をこなしているとは言え、それさえ終えれば自由なのが冒険者だ。
彼ら四人は、本当にこの大陸を飛び回っているらしい。
お陰でにんにくっぽいものの在り処が判明した。
ぜひ行かねば。
「都市国家のワンダバーってあるだろ。氷に包まれたあの極寒都市で、めちゃくちゃ体が温まるスープが出たんだ。あれの香りと後味が、にんにくに近かった。詳しいことを聞いたらよそ者には教えられないって言われたが」
「なるほどぉ……!!」
僕が唸ると、リップルがビシッと指さしてきた。
「ナザル、君は新たな食材を求めてワンダバーに行こうと考えているね!?」
「な、なぜそれが……!!」
「話の流れから普通に分かるだろう? 一人で行くのかい? コゲタを連れて行くにしても、ワンダバーは遠いし、環境も過酷だぞ」
「う、ううーむ」
そうだ、そこが問題だった。
今の僕は一人の体ではないのである。
「なるほど、確かにそれは問題だ……。俺も今やゴールド級となり、自由な立場……。おや? 自由だぞ?」
「シズマさん、一つ頼まれてくれないか」
「分かった、引き受けた」
再び固い握手を交わす僕らである。
残る三人のゴールド級が、またシズマが余計なことを!という顔になった。
「あ、今回は俺が一人で行くんで問題ない」
「問題あるだろ」
「一人で戦争引き起こせる、常識知らずが外国に行くなんて悪夢でしかないでしょ」
「うちらも行くって」
おお、ゴールド級の友情。
みんな仕方ないなあ、という風でありながら、どこかニコニコしている。
「あのレベルの冒険者になると、冒険そのものが趣味になるからね。今、新しい目標が出現して、ちょっとワクワクしているのかも知れないよ?」
「そうなの!? 冒険者ってのは物好きだなあ……」
「君が言うな」
リップルにペチッとどつかれた。
確かに。
ということで、にんにくの代用品はシズマとゴールド級の面々が探してくれることになった。
僕の野望はまた一歩、先に進んだことになる。
持つべきものは異世界転生仲間だ。
転移だって大して変わらないだろう。
アヒージョも美味かったし!
わかめ……もとい、海藻の美味さに助けられはしていたが、オブリーオイルそのもののポテンシャルは馬鹿にできない。
市場ですぐに手に入るハーブを使っても、あれほど美味いのだ。
ピーカラやにんにくが入れば、その美味さは天元突破することだろう。
絶対に用意してやるぞ……!!
それはそうと、アヒージョの完成まではしばらく掛かりそうだ。
僕は僕で、新たなオブリーオイルの可能性を追求するとしよう。
シズマが叫んだ。
なんという大仰なリアクション!
だが、本気のようだ。
「パルメディアまで来て、本当に食べ物が美味しくなくて困ってたんだ。少しでも美味いものを食べるためには偉くなるしか無かった。俺の能力も、直接食べ物には関係ない能力だったし……。最近アーランの食事が美味しくなってきたんだが、それでも物足りない。旨味が……油っけが……全然足りなかった! その、俺がずっと求めた来たものが、ここにある!!」
「分かる。あんたの気持ちが痛いほどよく分かる」
「分かるか! 分かってくれるか! おおお、心の友よ!」
僕とシズマでガッチリと握手する。
ゴールド級の三人はこれを見て肩をすくめたりため息をついたり。
うんうん、日頃からシズマのエキセントリックな言動を食らっていると見える。
変なやつだと思ってるんだろうが、ゴールド級に到れるほどの実力者は極めて希少なので付き合いを続けているに違いない。
「ま、まあ、彼も変わり者だけど悪いやつじゃないから……。今回みたいな失敗をすることもあるけどさ」
とはゴールド級パーティのリーダーの人のお言葉。
人間関係はまあまあ良好と見える。
どんな仕事も、人間関係で全て決まるからね。
ちなみにワカメのアヒージョは、この場にいるお歴々にも大好評だった。
「あー、美味い。こりゃあ美味いねえ……。なんというかこのオブリーオイルというのはお腹にも優しい気がする……」
「ああ。獣脂はそりゃあ腹に重いもんな……。こっちは植物由来だから、油の重さが気になるリップルにももうバッチリだ」
「ナザルの能力で出したものだからそう変わらないと思うんだけど……」
「僕のもともとのは謎の油だよ。食用ではあるが、今思うと旨味がこう、明らかに足りなかった……」
僕は遠い目をした。
ドロテアさんはニコニコしながらアヒージョを食べている。
「これ、美味しい油ね。アーランで良く使われている森のハーブとマッチするのねえ。とっても美味しいわ!」
「お喜びいただけて幸いです! 後は、ファイブショーナンのあの旨辛なピーカラを使うのもいいと思うんですよね。それから、こう、パンチのある薬味がもう少し欲しい……」
「にんにく……だよな?」
シズマが実に鋭いことを言った。
「まさしく」
「やはり」
僕らはガシッとまた握手した。
ゴールド級の三名が、うわあ、同類が増えたぞ、という顔をする。
僕らは無害な変人なので多めに見ていただきたい。
「シズマさん、何か知らないか? 今まで冒険した先で、にんにくになりうるような食材があったとか、そういうのは……」
「そうだな……。ああいう強力に精がつく感じの食べ物は……。あっ、一つだけあった」
「おお! それは一体!?」
流石は、世界を旅して冒険するゴールド級だ。
アーランを拠点にし、国家からの依頼をこなしているとは言え、それさえ終えれば自由なのが冒険者だ。
彼ら四人は、本当にこの大陸を飛び回っているらしい。
お陰でにんにくっぽいものの在り処が判明した。
ぜひ行かねば。
「都市国家のワンダバーってあるだろ。氷に包まれたあの極寒都市で、めちゃくちゃ体が温まるスープが出たんだ。あれの香りと後味が、にんにくに近かった。詳しいことを聞いたらよそ者には教えられないって言われたが」
「なるほどぉ……!!」
僕が唸ると、リップルがビシッと指さしてきた。
「ナザル、君は新たな食材を求めてワンダバーに行こうと考えているね!?」
「な、なぜそれが……!!」
「話の流れから普通に分かるだろう? 一人で行くのかい? コゲタを連れて行くにしても、ワンダバーは遠いし、環境も過酷だぞ」
「う、ううーむ」
そうだ、そこが問題だった。
今の僕は一人の体ではないのである。
「なるほど、確かにそれは問題だ……。俺も今やゴールド級となり、自由な立場……。おや? 自由だぞ?」
「シズマさん、一つ頼まれてくれないか」
「分かった、引き受けた」
再び固い握手を交わす僕らである。
残る三人のゴールド級が、またシズマが余計なことを!という顔になった。
「あ、今回は俺が一人で行くんで問題ない」
「問題あるだろ」
「一人で戦争引き起こせる、常識知らずが外国に行くなんて悪夢でしかないでしょ」
「うちらも行くって」
おお、ゴールド級の友情。
みんな仕方ないなあ、という風でありながら、どこかニコニコしている。
「あのレベルの冒険者になると、冒険そのものが趣味になるからね。今、新しい目標が出現して、ちょっとワクワクしているのかも知れないよ?」
「そうなの!? 冒険者ってのは物好きだなあ……」
「君が言うな」
リップルにペチッとどつかれた。
確かに。
ということで、にんにくの代用品はシズマとゴールド級の面々が探してくれることになった。
僕の野望はまた一歩、先に進んだことになる。
持つべきものは異世界転生仲間だ。
転移だって大して変わらないだろう。
アヒージョも美味かったし!
わかめ……もとい、海藻の美味さに助けられはしていたが、オブリーオイルそのもののポテンシャルは馬鹿にできない。
市場ですぐに手に入るハーブを使っても、あれほど美味いのだ。
ピーカラやにんにくが入れば、その美味さは天元突破することだろう。
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