俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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33・食人植物の果実はまるで

第98話 トマトもどきをかき集めろ

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 クリーピングツリーに寄生する植物から、トマトもどきが採れる。
 これは素晴らしい収穫だった。
 何せ、このマンイーターどもをハントするモチベーションが用意されたからだ。

 いやあ、ほんと、やって来てくれてありがとうな。
 お前らは人間や森の動物を狩りに来たのかもしれないけど、まさか僕らに狩り尽くされるとは思わなかっただろう。

「コゲタ、においみつけた! すっぱいすっぱい! こっちー!」

「よっしゃ!」

「幾らでもいるな!」

「でもナザルが転ばせてくれるからホント楽よねー」

「だって彼ら、簡単に転ぶんだもの」

 しょせん植物。
 踏ん張りが弱いから、ちょっと油を張っただけでコロンと転がる。
 で、こいつら転がることを想定してない生き方をしているので、倒れたら弱い弱い。

 バンキンがさっさと脅威になる触手を叩き切り、核の部分にキャロティがガンドを打ち込むとすぐ死ぬ。
 核ってのは根の部分ね。
 なんと、根の付け根に本体である球根みたいなのがあったのだ。

 球根を破壊されたクリーピングツリーは完全に無力化し、寄生しているトマトもどきも安全にはがせるようになる。
 これ、転がせないとどこを切っても攻撃を繰り返してくるし、でかいしパワフルだし、確かに厄介なモンスターだろうなあ。

 ヴォーパルバニーからすると、どこを切り飛ばしても平気で動くからさぞやりづらいだろう。
 転がして裏から球根を攻撃できる手段がないと、厳しかろうな。

 僕らがそれができるから楽なもんだが!

「はっはっは! 転べ! 転べ! 転べーっ!!」

「おいおいナザル! ハッスルするな! ああクソ、手が足りねえ!!」

 バンキンは両手に手斧を持って、バカスカ切断して回っている。
 彼が一番労力が大きい気がするな……。

「バンキン、手斧片方貸してくれ。僕もやろう」

「おお、助かる!」

「コゲタもやるー!」

「コゲタは無理だなー」

 さすがのバンキンも苦笑だ。
 うんうんコゲタ、気持ちだけもらっておこう。

 こうして僕らは、五体ほどのクリーピングツリーを粉砕。
 その後せっせとトマトもどきを回収する。

 そうしている間にも……。

「すっぱいのまたきたー!!」

 コゲタが接近報告を!
 これ、森の入口だって言うのにこの辺りにいたクリーピングツリーが全員出てきちゃうな……。

 流石に手が足りない。
 僕は一旦ギルドに戻ることにした。
 その途中、第二王子の使いの人が走ってくる。

「ナザル殿ー! 殿下が『美味しいものを作ったのならまず私に献上せよ』って怒ってます!」

「あ、はい! じゃあ今度の最新のは殿下ファーストでご用意しますんで! このトマトもどき持っててください!」

「トマト? もど?」

 いきなりのことで目を白黒させる使いの人に、トマトもどきが詰まったカゴを手渡した。

「こ……これは?」

「最高に美味いものを作るための材料です!!」

「な、なるほどー! これは加工する必要があるものだな? 分かった。守り抜くことを誓おう!!」

「頼みます!!」

 ということでギルドへ!

「クリーピングツリーは攻略した! とどめ要員来てくれ! アイアン級でいいから!!」

 僕がいきなりそんな事を叫んだので、ギルド職員たちが仰天した。
 おさげの受付嬢エリィが駆け寄ってくる。

「ちょ、ちょっとナザルさん! クリーピングツリーは一体相手に、カッパー級のパーティで挑むレベルのモンスターですよ!? それ相手にアイアン級なんて……」

「あいつら、転ばすと弱いことが分かったんだ。僕なら転ばせられる。あとはトドメを刺す手が足りない! おーい、そこの若人たち! ちょっと腕試ししていかないか! 報酬は……報酬……」

 ちょうどギルマスが、騒ぎを聞きつけて出てきたところだった。
 僕は彼にウィンクする。
 ギルマスが顔をしかめた。

「ナザル! てめえ、アイアン級のガキどもを一人でも死なせたら承知しねえからな! おいてめえら! ナザルの手伝いをしろ! 報酬はちょっと出してやるから!」

 ギルマスが提示した値段は、今夜の夕食がかなり豪華になるくらい。
 おお、太っ腹!
 まあ、クリーピングツリーが大森林を占領してしまったら困るもんな。

 早急に大森林から、あのモンスターを駆除しなければならないのは本当だ。

 幸い、クリーピングツリーはあの生活スタイルなので、数が多くはない。
 獲物を取り合ってしまったら、無駄に動いたやつが枯れてしまうからね。

 六体まで片付けたけど、残りあと十体か、二十体か……。

 だが、刃物を携えて集まったアイアン級の若者たち!
 これだけの頭数がいれば大丈夫!

「あー、じゃあ俺は盾を持って、こいつらを攻撃からガードするわ。キャロティはとどめ担当な。アイアン級の魔法使いたちに戦い方も教えてやれよ」

「はいはい。んじゃあ行くわよひよっこどもー!」

 森に戻っていく僕ら。
 コゲタは仲間が一気にたくさん増えたので、興奮しながらぴょんぴょん飛び跳ねている。

「いっぱいいる! たのしいねえ!」

 楽しいねえ。
 僕もコゲタがニコニコしてて楽しいねえ。

 クリーピングツリーは、倒された同族の上にのしかかり、養分にしようとしているところだった。
 おお、共食いですねえ。恐ろしいですねえ。
 ぞろぞろと、餌を求めてクリーピングツリーが集まってくるところだった。

 遠巻きに観察していたら、ある程度の数になったところで打ち止めの気配。

「よし、今だ! やるぞお前らー!!」

 僕は号令をかけるのだった!
 いざ、トマトもどきを狩り尽くすために!

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