俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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39・ごま油の気配

第119話 ゴマ油パワーと餃子!

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 出た出た、ゴマ油。
 ゴマのかぐわしい香りを放つ、褐色の油が出てくる。

「ちょっぴりだな……。やはり口にした量に比例して油生成能力も変わるらしい」

「驚いた。このゴマというやつも本当に油になるんだな。ナザルの油使いは、すっかり食物が油になるかどうかの判定装置になってきている」

 セサミを載せたケーキを食べ終え、満足げなリップル。
 僕の能力について色々分析しているのだ。

 うーむ、実際にそうかも知れない。
 ギフトとして行使することはできるんだが、それによって得られるものは僕の望んだものではない。
 むしろ、様々な油を再現できるところこそが、 油使いの真骨頂とまで思う。

 ちょっぴり出てきたゴマ油を、僕とリップルとダイフク氏で味見してみた。

「あ、美味い。ちゃんとゴマ油だ」

「こんな強烈に味がする油は始めてだなあ……!」

「たっぷり飲んだら水に沈めなくなる味してますね。ハハハ」

 カエルジョーク!
 面白い人だなあダイフク氏。

 とりあえず、ここでゴマ油の可能性はみんなで納得したところだ。
 これは下手な加工をせず、ゴマ油の風味を生かした料理を考えていくべきだな。

「これは料理向けの味だね。そうだな……スープに少し垂らすだけで、素晴らしい香りになると思うな」

 ちょっと舐めたマスターが的確な意見を出してきた。
 さすが、料理に詳しいお人。
 御本人的にはスイーツしか作りたくないのだろうが、こういう細かいところに知識のある人なのだ。

「だが、今はゴマの栽培が成功するまでは活かしきれないところだ。このスローな暮らし、そこが問題だよな」

「ナザル、常に新しいものを求めて突っ走らなくてもいいだろう。君はまだ若い。ここは立ち止まり、豊かになってきた食生活を堪能してはどうだね?」

 リップル、たまにはいいことを言うなあ!

「で、その心は」

「新しい料理を作って私にごちそうしてほしい」

「そっちかあ……!」

 まあ、最近リップルのことを放ったらかしだったし、たまには何かあげてもいい気がする。
 では、何ができる?

 一般的に入手できるようになってきた、パスタ、にんにく、ピーカラ、オブリーオイル……。
 トマドを使うと一気にイタリアンみが増してしまう。
 ゴマを手に入れた僕は、しばらくイタリアンから離れたい気持ちなのだ。

「うーん」

「肉を使うのはどうだい? ナザルの料理はあまり肉を使わないじゃないか。やはり、食卓には少しは肉がほしい」

「パスタと肉かあ。うーん、ゴロッとした肉だと相性がな……。ひき肉にでもしたら……」

 ここで!
 僕の脳裏に電流が走った!

 もちもちとしたパスタは薄く薄く伸ばせば皮にもなるだろう!
 そこに、ひき肉とにんにく、あとはザクザクとした歯ごたえの野菜を入れて包み、蒸し焼きにするかスープに放り込む……!!

「餃子だ!! 餃子が作れるようになっていた!!」

 僕は震え上がった。
 こりゃあとんでもないことだぞ……!!

「おや、君の前世の記憶から、とびきりヤバいのが飛び出してきたね?」

「僕の表情から思考を読むなよー」

「ははははは。期待しているよ元少年」

「ああ。これは脂っこくもないし、スープと合わせればあっさりしているから美味いぞ。期待しててくれ」

 僕は餃子開発のため、いつもの店に向かうのだった。
 そして、基本的に暇であるダイフク氏がついてくる。

 餃子なら、にんにくを抜けばコゲタも食べられる。
 よーし、コゲタを連れて行こう。

 宿に戻ってくると、アララちゃんと遊んでいたコゲタがこっちに気付いた。
 ばいばーい、とアララちゃんと別れ、こっちに走ってきた。

「ご主人~!」

「おーコゲタ! 一緒にお出かけしよう」

「わん!」

 尻尾をフリフリするコゲタを抱き上げてくるくる回し、すとっと地面に立たせた。
 ちょうど、ダイフク氏の眼の前である。

「はっ」

 コゲタがダイフク氏を見てちょっと固まった。

「おさかな!」

「ノーノー」

 魚呼ばわりされたダイフク氏が手をぶんぶん振って否定する。
 カエル人間アビサルワンズである彼は、基本的に表情が分かりづらい。
 シュールで面白いなあ。

 コゲタが彼の周りをとことこ歩き回り、においをくんくん嗅いだ。
 そして……。

「おさかな!」

「いやいや」

 やっぱり理解してもらえてないぞ!
 確かにダイフク氏のにおいはちょっと生臭い魚のようであるかも知れない。
 コゲタはお日様のにおいがするし、僕はちょっと汗臭い。

 誰しもにおいがするものである。
 とりあえず、ダイフク氏のにおいはコゲタにとって嫌なものではなかったらしい。
 僕と並んでくダイフク氏の周りをちょろちょろ動き回っている。

「とても人懐こいコボルドですな彼は」

「ええ、日々愛情を掛けて接してますんで」

「なるほどどうりで」

 コゲタを撫でようと手を出したダイフク氏、その手のひらをペロッと舐められて「オアー」と妙な声をあげた。

「おさかなじゃない……」

「だから魚じゃないと言っているでしょう。わしはむしろカエルに近い。正しくは、カエルと魚と人間を混ぜ合わせたような存在です。なお、わしらの神の加護のお陰で地上でも平気ですが」

「そりゃすごい」

 そんなダイフク氏の話を聞きながら、ギルボウの店にやって来たのだった。
 良かった、港から戻ってきていたようだ。

 中からトマドソースのいい香りがしてくる……。
 だがすまんなギルボウ。
 今回の料理で、トマドはお休みなんだ。

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