俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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56・バース・オブ・醤油

第163話 どうだ、醤油味はうまいだろう

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 和風パスタと豆腐と焼き魚……。
 組み合わせ的にはどうだ? と思うのだが、ありものでやったんだから仕方ない。

 ギルボウは「まあ仕方ねえよな」みたいな顔をしている。
 多めに見ていただきたい!

 さて、まず食べ始めたのはドロテアさん。
 サッと髪の毛をまとめて食べるモードになり。

「よしっ」

 とがんばるぞい、とポーズを決めたら、和風パスタに手を付けた。
 うーんかわいい。
 ギルボウもニコニコしている。人妻だからな、手を出そうと思うなよ?

 フォークとスプーンを使って、くるくるとパスタを巻き取ったドロテアさん。
 パクっと食べた。

「あら」

 目を丸くし、もぐもぐする。
 何か感想を言いたいらしいのだが、ずっともぐもぐしてる。
 かわいい。

「コゲタも!」

 コゲタは子供用の先が丸くなったフォークを使い、くるくるーっとパスタを丸めてあーんと食べた。
 もぐもぐもぐーっと食べている。

「おいふぃー」

「コゲタ、お口の中に食べ物が入っている時に喋ったらだめなんだぞー」

「ふぁい」

 もぐもぐ食べるのに戻ったコゲタなのだ。
 ちゃんと言うことを聞くから偉い。

 ドロテアさんが口の中のものを飲み込んだ。

「これ、今までなかった美味しさがあるわね! 塩味だけじゃなく……なんとも言えない奥深い美味しさがあるみたいな? どんどん食べたくなるわね」

「いい食レポです!」

「よし、俺も食うか。どれどれ! うほお! 凄まじい旨味だな! これがショーユか……!!」

 コゲタはもぐもぐしながら、喋りまくるギルボウをじっと見ている。
 ギルボウはちょっと噛んだらすぐ飲んじゃうから喋れるけど、体に悪いから真似しなくていいぞ?

 和風パスタはショーユパスタという名前になった。
 これは広まるに違いない。

 さて、次は豆腐……。

「あっ、普通にウマいな。というか、トーフは本来こいつで食うものだったんじゃないか? 豆で作ったソースで、豆で作ったプディングを食う。合わないわけがねえよな。繊細な味の酒が合いそうだ」

「これも美味しいわ。でも、きちんと食べているって感じがして……。普段のおトーフと同じはずなのに、食べた後のさっぱり感が全然違う。面白いわあ」

「おいしーね!」

 好評好評。
 そして焼き魚だ。
 
「うめえ! 魚はそのままだとあっさりしてるが、ショーユを掛けると肉の味わいに力強さが満ちるな! こいつはうめえわ! 酒が欲しい!」

「あっ、これはなかなかね……。お酒が欲しい」

 ギルボウとドロテアさんの意見が合った!

「おいしー」

 うんうん、コゲタは美味しくて良かったねえ。
 彼の場合は、醤油をちょっとつけるだけにしてあるんだが。
 それでも、醤油パワーで香りがぶわーっと広がるので、嗅覚が鋭いコボルドには十分な味付けになったらしい。

 みんなの感想を聞いて、僕はうんうんと頷いた。
 想定内だが、ここまで喜んでもらえるのは想定外だ。
 いやあ、良かった良かった……。

 安心したらお腹がすいてきたので、僕も食べることにした。
 ああ、和風パスタはしみじみウマいですねえ。
 ツナみたいなのを入れたい。あとキノコ。

「キノコか……。キノコ入れて炒めるのもいいな。あとはネギも。ネギ……かき揚げにする手もある……。玉ねぎみたいなのは無いか? 蕎麦に載せて一緒に食べたい。いやいや、揚げ物ならそろそろコロッケが作れるんじゃないか? ポテトは去年の春の依頼で行った畑でもらって……」

「ナザルがぶつぶつ言ってやがる。これは……また新しいものが生まれる予兆だぜ」

「ナザルさん、不思議な食べ物をたくさん知っているものねえ。きっと神様の誰かがこの世界に遣わしたのね。そして私達に美味しいものをたくさん食べるように行っていると思うの」

「そいつは素敵ですねえ」

 ギルボウとドロテアさんが笑い合っている。
 うんうん、アーランは美食に溢れ、道行く人々のっ表情も笑顔が多くなっている気がする。

「夏になったらこの醤油と、味噌という調味料が市場に出回ると思う。これによって、アーランの食生活は大きく変わる! 僕はここに予言しておこう」

「予言も何も、全部お前の仕込みじゃねえか。お前が何かやる度に、世の中はちょっとずつ変わってるんだ。予言というか確定事項だろ」

「本当に楽しみ! あと、ちょっとだけそのおショーユというのを分けてもらえないかしら……」

「あ、どうぞどうぞ……」

 きっと旦那さんのギルマスに食べさせてあげたいんだな。
 この夫婦、ラブラブだからなあ。
 だというのに、僕やギルボウといった他の男にも優しく接してくるので、ドロテアさんは罪な女性なのだ。

「俺のとこにもショーユちょっともらっていいか? どうせお前、自宅じゃ飯を作らねえだろ。俺とお前とシャザク用に、ショーユを取っておこうと思ってな」

「あ、そうか! ありがたいな。じゃあ保存しといてくれ」

 今度三人で醤油味の何かを作って、そいつを肴に飲もう。
 いやあ楽しみだ……。

 味噌と醤油が完成したら、殿下にもまた献上しないとな。
 で、同時進行でやりたいことが出来上がってしまった。
 揚げ物だ。

 まずは……。
 コロッケでも作ってみようか。

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