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58・ツーテイカーからの誘い
第167話 旅行に出かけませんか
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コロッケを広め、これからギルボウと屋台の店主たちが大ブームを巻き起こすぞと期待していた頃。
隣室に住む飼い主氏からあるお誘いがあった。
「実は私の祖国、ツーテイカーがナザルさんをお招きしたいと言っていて」
「なんだって」
飛び上がるほど驚いた。
ツーテイカーといえば、小国家群ファイブスターズの暗部担当。
盗賊ギルドが国家を仕切り、大陸きっての闇の都……という印象だ。
「とんでもない。割と普通だよ!」
飼い主氏が抗議してきた。
ちなみに彼にも名前はあるのだが、コードネームがまさしく飼い主であり、宿帳にもドッグ・マスターとしか名前を残していないので謎の人物なのだ。
そしてコゲタの親友である、白いコボルドのアララちゃんの飼い主でもある。
「盗賊ギルドだって、盗みだけでやってるわけじゃない。この国のギルドだって、盗賊に入られない保険を売って稼いでいるだろう?」
「それはそうだ」
「同じことだよ。ツーテイカーは各国に傭兵や斥候を派遣し、軍事力の肩代わりを行っている。モンスターや山賊への対策というやつだ。これが主な産業だよ。あとは……キノコを育ててる」
「キノコだって!?」
僕は俄然興味が湧いてきた。
「曇りが多い土地なんだ。じめじめしている。だが、その気候だからこそ育つ作物も多い。特にキノコや山菜などはツーテイカーがファイブスターズ最大の産地になっている。どうだい? 興味が湧いてきただろう」
「ああ。お誘い、ありがたく受けよう」
そういうことになった。
なお、ツーテイカーに行くよ! なんて事を言ったら絶対騒ぎになると思うので、黙って出るよ。
いざ出発と思ったら、門の辺りで見覚えのある男が待っていた。
ゴールド級冒険者、シズマである。
僕は異世界転生者だが、彼は異世界転移者。
お互い日本出身ということで食の趣味が合うのだが……。
シズマがあまりに多忙で、全く会えないでいたのだ。
「やあナザル! 君がコソコソ出かける準備をしてると聞いて、この俺がやって来たぞ! どんどんグルメを作り上げているそうじゃないか。今回もグルメ旅なんだろう?」
「その通りだ……! 耳ざといな」
「一体何を求めていくんだ?」
「キノコと山菜だ。そして最近、蕎麦切りと醤油を生み出し、コロッケも誕生させた……」
「なん……だと……」
飼い主氏は僕とシズマを交互に見て、肩をすくめた。
「一人くらいならいいだろう。一緒に行こう」
「行こう行こう」
「行こう」
そういうことになった。
なお、コボルドの二人は気楽なもので、手を繋いでキャッキャとはしゃぎながら先に走っていく。
「コゲター、アララちゃーん、気をつけるんだぞー」
「「はあーい!」」
いいお返事だ。
何かあったら、僕とシズマが守るからな。
「ところでナザル。君はあれか。旅のお弁当に何かこう……地球を感じさせるものを作ろうと考えていたりしないか?」
「ははは、いい鼻をしているなシズマ……。サッと作れるものとして、揚げパンを考えている」
「揚げパン!!」
「二人は本当に仲がいいな……。同郷なのか?」
「まあそのようなものだね」
「本質的な意味では合ってる」
異世界転移とか転生とか言ってもわからないだろうしな。
飼い主氏からすると、シズマが名高いゴールド級冒険者であり、唯一無二のギフト持ちであることくらいしか分からない。
だが、決して攻撃的な性格ではなく、どちらかというと話が分かるタイプだという情報は持っているのだろう。
だから同行を許したのだと僕は思っている。
飼い主氏はこう見えても、ツーテイカーからの使者であり、もともとはスパイだ。
アーランの盗賊ギルドの目を盗んでスパイ活動を続けていたことから、凄腕であることは間違いない。
「とまあ、難しい事を考えていたら腹が減ったので、昼飯にしないか」
街道をそれなりに歩いた頃合いだ。
何度も見慣れた、マーマンの浜辺が見えたところ。
「コゲター、アララちゃーん、ご飯にするぞー」
「はぁーい!」
「ごはんたのしみねー」
二人がパタパタ戻ってきた。
仲良しな姿に、飼い主氏もニコニコする。
この人、本質的にはコボルド大好きで、アララちゃん最優先っぽいんだよな。
なので信頼できる……。
さて、焚き火を用意して難燃性の板で囲いを作る。
こういう謎の板は遺跡で簡単に手に入るのだ。
お料理用に携帯しているぞ。
で、火勢を強めて、僕が出現させた油を熱する。
サラダ油で行こう。
パチパチとしてきたところに、パンをイン!
「パンを揚げる……。いや、そういう食べ方をしている者はいたな。別に真新しい食べ方では……」
「揚げたパンに、炎で炙った干し肉、そして漬物を挟み、粉砂糖を掛ける……」
「な、なにぃーっ!!」
飼い主氏が驚愕した。
「そんな……そんな組み合わせが許されていいのか!」
「ギャヒー! 悪魔的高カロリー!!」
飼い主氏の驚きをよそに、シズマがめったに出会えぬ高カロリーを前にして大感激だ。
コボルドの二人ははんぶんこ。
僕ら大人三人は一人前だ。
いやあ、凄い。
カロリーそのものを食べている心地だ……!!
だが、揚げパンと粉砂糖だからまだマシと言えよう。
漬物のお陰でサッパリしているから、案外パクパク食べられてしまうのが危険だな。
うん、こいつはアーランに公開しないようにしよう。
僕とシズマが揃った時のお弁当だな……。
「むむむむむっ! 美味い! 美味いが、急速に私の中の何かが満たされていく感覚がある……! 私の本能が危険を告げているが、やめられん!」
「うまい! うまい! うまい!」
「おいしーね!」
「おいしい~。コゲタちゃんのご主人、すごいねー」
みんな喜んでくれている。
まあよしとしよう!
隣室に住む飼い主氏からあるお誘いがあった。
「実は私の祖国、ツーテイカーがナザルさんをお招きしたいと言っていて」
「なんだって」
飛び上がるほど驚いた。
ツーテイカーといえば、小国家群ファイブスターズの暗部担当。
盗賊ギルドが国家を仕切り、大陸きっての闇の都……という印象だ。
「とんでもない。割と普通だよ!」
飼い主氏が抗議してきた。
ちなみに彼にも名前はあるのだが、コードネームがまさしく飼い主であり、宿帳にもドッグ・マスターとしか名前を残していないので謎の人物なのだ。
そしてコゲタの親友である、白いコボルドのアララちゃんの飼い主でもある。
「盗賊ギルドだって、盗みだけでやってるわけじゃない。この国のギルドだって、盗賊に入られない保険を売って稼いでいるだろう?」
「それはそうだ」
「同じことだよ。ツーテイカーは各国に傭兵や斥候を派遣し、軍事力の肩代わりを行っている。モンスターや山賊への対策というやつだ。これが主な産業だよ。あとは……キノコを育ててる」
「キノコだって!?」
僕は俄然興味が湧いてきた。
「曇りが多い土地なんだ。じめじめしている。だが、その気候だからこそ育つ作物も多い。特にキノコや山菜などはツーテイカーがファイブスターズ最大の産地になっている。どうだい? 興味が湧いてきただろう」
「ああ。お誘い、ありがたく受けよう」
そういうことになった。
なお、ツーテイカーに行くよ! なんて事を言ったら絶対騒ぎになると思うので、黙って出るよ。
いざ出発と思ったら、門の辺りで見覚えのある男が待っていた。
ゴールド級冒険者、シズマである。
僕は異世界転生者だが、彼は異世界転移者。
お互い日本出身ということで食の趣味が合うのだが……。
シズマがあまりに多忙で、全く会えないでいたのだ。
「やあナザル! 君がコソコソ出かける準備をしてると聞いて、この俺がやって来たぞ! どんどんグルメを作り上げているそうじゃないか。今回もグルメ旅なんだろう?」
「その通りだ……! 耳ざといな」
「一体何を求めていくんだ?」
「キノコと山菜だ。そして最近、蕎麦切りと醤油を生み出し、コロッケも誕生させた……」
「なん……だと……」
飼い主氏は僕とシズマを交互に見て、肩をすくめた。
「一人くらいならいいだろう。一緒に行こう」
「行こう行こう」
「行こう」
そういうことになった。
なお、コボルドの二人は気楽なもので、手を繋いでキャッキャとはしゃぎながら先に走っていく。
「コゲター、アララちゃーん、気をつけるんだぞー」
「「はあーい!」」
いいお返事だ。
何かあったら、僕とシズマが守るからな。
「ところでナザル。君はあれか。旅のお弁当に何かこう……地球を感じさせるものを作ろうと考えていたりしないか?」
「ははは、いい鼻をしているなシズマ……。サッと作れるものとして、揚げパンを考えている」
「揚げパン!!」
「二人は本当に仲がいいな……。同郷なのか?」
「まあそのようなものだね」
「本質的な意味では合ってる」
異世界転移とか転生とか言ってもわからないだろうしな。
飼い主氏からすると、シズマが名高いゴールド級冒険者であり、唯一無二のギフト持ちであることくらいしか分からない。
だが、決して攻撃的な性格ではなく、どちらかというと話が分かるタイプだという情報は持っているのだろう。
だから同行を許したのだと僕は思っている。
飼い主氏はこう見えても、ツーテイカーからの使者であり、もともとはスパイだ。
アーランの盗賊ギルドの目を盗んでスパイ活動を続けていたことから、凄腕であることは間違いない。
「とまあ、難しい事を考えていたら腹が減ったので、昼飯にしないか」
街道をそれなりに歩いた頃合いだ。
何度も見慣れた、マーマンの浜辺が見えたところ。
「コゲター、アララちゃーん、ご飯にするぞー」
「はぁーい!」
「ごはんたのしみねー」
二人がパタパタ戻ってきた。
仲良しな姿に、飼い主氏もニコニコする。
この人、本質的にはコボルド大好きで、アララちゃん最優先っぽいんだよな。
なので信頼できる……。
さて、焚き火を用意して難燃性の板で囲いを作る。
こういう謎の板は遺跡で簡単に手に入るのだ。
お料理用に携帯しているぞ。
で、火勢を強めて、僕が出現させた油を熱する。
サラダ油で行こう。
パチパチとしてきたところに、パンをイン!
「パンを揚げる……。いや、そういう食べ方をしている者はいたな。別に真新しい食べ方では……」
「揚げたパンに、炎で炙った干し肉、そして漬物を挟み、粉砂糖を掛ける……」
「な、なにぃーっ!!」
飼い主氏が驚愕した。
「そんな……そんな組み合わせが許されていいのか!」
「ギャヒー! 悪魔的高カロリー!!」
飼い主氏の驚きをよそに、シズマがめったに出会えぬ高カロリーを前にして大感激だ。
コボルドの二人ははんぶんこ。
僕ら大人三人は一人前だ。
いやあ、凄い。
カロリーそのものを食べている心地だ……!!
だが、揚げパンと粉砂糖だからまだマシと言えよう。
漬物のお陰でサッパリしているから、案外パクパク食べられてしまうのが危険だな。
うん、こいつはアーランに公開しないようにしよう。
僕とシズマが揃った時のお弁当だな……。
「むむむむむっ! 美味い! 美味いが、急速に私の中の何かが満たされていく感覚がある……! 私の本能が危険を告げているが、やめられん!」
「うまい! うまい! うまい!」
「おいしーね!」
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