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64・南の島に行きたい
第191話 船主との顔合わせ
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ダイフク氏を連れて、屋台にやって来る。
豆腐そうめんをコゲタも入れて、三人でつるつる食べた。
美味い美味い。
豆腐だけどコシがあり、柑橘類でほどよい酸味がつき、幾らでも食べられそうだ。
コゲタは麺だろうがなんだろうが、むしゃむしゃツルツル食べる。
「おいしい?」
「おいし! ご主人といっしょだとおいしいものたくさん!」
満足してるようで何より。
ダイフク氏も、豆腐そうめんの喉越しはたまらないようだ。
目を細めてごくごく飲み下している。
これは噛む必要ないから、人もカエル人も一緒だもんな。
こうしてほどよく小腹が膨れ、僕らは屋台を後にしたのだった。
「船主がちょうど戻って来る頃合いでしょうな。わしも用があったので、ちょうどいい。面通ししましょう」
「おっ、ありがたい」
コゲタはお腹いっぱいになってうつらうつらしている。
「座って待ってるから寝てもいいぞ」
「うんー」
コテンともたれ掛かってきたと思ったら、ぐうぐう寝てしまった。
寝る子は育つ。
コボルドとしてもまだチビのコゲタだからな。ほどよく大きくなれよ。
港の一角に座り、のんびりと待つ。
一時間ほど、ダイフク氏と海のグルメについて語り合っていたら……。
やって来た、船主だ。
アーランに来たばかりの頃は、ちょっとやつれたおっさんだったのだが……。
半年間のんびりと過ごしたお陰で、すっかり恰幅が良くなっている。
「船主ー」
ダイフク氏が手を振ると、船主が気付いたようだ。
取り巻きを連れていたのだが、彼らに船に戻るよう告げて、こっちに向かってきた。
「おおどうした副長」
副長!!
ダイフク氏、副船長だったのか……。
このカエルの人、只者ではないと思っていたが。
「冬場の船の管理についての計画と、外海用に強化する計画がですな」
「ほうほう、ふむふむ」
二人が真面目な話をしている。
どうやら長い間、船が港に留まっていたいた理由の一つは……。
長い航海の中で傷んだ船を修繕し続けていたらしい。
これだけの大きさの船だと、大きな建造物みたいなものだもんな。
ダイフク氏は海でチャプチャプ泳いでいるのかと思ったら、水中で船底なんかをチェックしていたらしい。
副長は働き者だ。
少しして、話が終わったらしい。
船主が僕らに気付いた。
「おや? 彼らは?」
「以前にお話していた油使いのナザルさんですよ」
「おおっ!! アーランに美食をもたらした、食の神の使徒!!」
新しい二つ名が出てきたぞ!
だが、それも悪いことではない。
僕に対するポジティブなイメージを持った状態で会話ができるからだ。
「ええその通り、食の使徒ナザルです。美食コーディネーターと呼ぶ方もいますが」
「いやあ、お会いできて光栄です。第二王子デュオス殿下の全面的なバックアップを受けて、数々の食の革命を成功させたという現代の偉人。大きな争いの無くなった現代だからこそ、あなたのような豊かな時代を象徴する方が必要になるのでしょう」
握手をしながら、やたら僕を褒めてくれるじゃないか!
なんでそんなに持ち上げるんだ……?
あ、殿下の助力を得たいのか!
「僕にご協力いただければ、デュオス殿下への目通しも叶うでしょう」
僕はささやき声で応じた。
「おお……! 王族と直接お目通りが叶うとは……! そて、その協力というのは……」
「僕を船に乗せて欲しい。行きたいところがあるんですよ」
「船に!? そ、それは構いませんが……」
ダイフク氏が僕の物言いを大変怪しいなーという顔で眺めている。
どうしてもいかがわしくなってしまうんだ。
「約束しましょう。冬には一度、強化した船の試運転があります。これに同行していただき、ナザルさんの目標に協力します」
「おお! ありがとうございます!」
冬か。
思ったよりも全然早いぞ。
アーランの海は比較的温暖だ。
凍りつくことはない。
そしてどんどん南下すると赤道みたいなところに近づくので、暖かくなるんだそうだ。
夢で見た場所はまだどこにあるかは分からない。
だが、この大陸にありそうな気候ではない。
きっと南の島のどこかだ。
そのうち、知識神がまた夢枕に立って何かを教えてくれるだろう。
船主の言質は取れたことだし、後は知識神に直訴してさっさと島の場所を教えてもらうだけだ。
僕は船主とダイフク氏に別れを告げ、コゲタをおんぶして港を去ることにした。
さて、ではこれからどうする?
自分にできることをやるだけであろう。
「おーいリップル!」
「どうしたんだいナザル。コゲタをおんぶして」
「お腹いっぱいで寝てしまった」
「そうかい。可愛い寝顔じゃないか。それで君が私をご指名なのは、一体どういう要件なのかな?」
さすが付き合いが長いリップル。
僕が彼女にしか出来ないことをやってもらうと、訪ねてきたのを看破している。
「この大陸の外にある島のことを知りたい。知る方法がないか?」
「無いわけじゃない」
あっさりと答えるリップル。
さすが、長年プラチナ級として活躍……いや、半分は安楽椅子冒険者か。
だが、活動歴の長い冒険者は頼れる。
「今失礼なことを考えなかった? 違う? まあいいけど。この大陸の人々は、外の世界への興味をあまり持っていない。自分たちが生きるだけで精一杯だったからね。だから、そういう知識が記されている書物などは……人々が知識を求めるだけの余裕が、その力があった時代の建造物に収められていると考えるべきだろうね」
「なるほどー。わからん」
「つまり、この大陸の地上にあるどこにも、世界の外を記した書類は無いということさ。だけど、君が望む書類は存在する可能性が高い」
「無いって言ってるのにあるのか!? 一体どこに……。あっ!」
僕は気付いた。
リップルはニヤリと笑いながら、足元を指し示した。
アーランの基部に広がる、広大な遺跡。
この遺跡の深部には、過去の書物が存在しているかも知れないのだ。
「たまには冒険者らしいこともしようじゃないか」
ダンジョンハック!!
ほんとだ。
冒険者っぽい。
豆腐そうめんをコゲタも入れて、三人でつるつる食べた。
美味い美味い。
豆腐だけどコシがあり、柑橘類でほどよい酸味がつき、幾らでも食べられそうだ。
コゲタは麺だろうがなんだろうが、むしゃむしゃツルツル食べる。
「おいしい?」
「おいし! ご主人といっしょだとおいしいものたくさん!」
満足してるようで何より。
ダイフク氏も、豆腐そうめんの喉越しはたまらないようだ。
目を細めてごくごく飲み下している。
これは噛む必要ないから、人もカエル人も一緒だもんな。
こうしてほどよく小腹が膨れ、僕らは屋台を後にしたのだった。
「船主がちょうど戻って来る頃合いでしょうな。わしも用があったので、ちょうどいい。面通ししましょう」
「おっ、ありがたい」
コゲタはお腹いっぱいになってうつらうつらしている。
「座って待ってるから寝てもいいぞ」
「うんー」
コテンともたれ掛かってきたと思ったら、ぐうぐう寝てしまった。
寝る子は育つ。
コボルドとしてもまだチビのコゲタだからな。ほどよく大きくなれよ。
港の一角に座り、のんびりと待つ。
一時間ほど、ダイフク氏と海のグルメについて語り合っていたら……。
やって来た、船主だ。
アーランに来たばかりの頃は、ちょっとやつれたおっさんだったのだが……。
半年間のんびりと過ごしたお陰で、すっかり恰幅が良くなっている。
「船主ー」
ダイフク氏が手を振ると、船主が気付いたようだ。
取り巻きを連れていたのだが、彼らに船に戻るよう告げて、こっちに向かってきた。
「おおどうした副長」
副長!!
ダイフク氏、副船長だったのか……。
このカエルの人、只者ではないと思っていたが。
「冬場の船の管理についての計画と、外海用に強化する計画がですな」
「ほうほう、ふむふむ」
二人が真面目な話をしている。
どうやら長い間、船が港に留まっていたいた理由の一つは……。
長い航海の中で傷んだ船を修繕し続けていたらしい。
これだけの大きさの船だと、大きな建造物みたいなものだもんな。
ダイフク氏は海でチャプチャプ泳いでいるのかと思ったら、水中で船底なんかをチェックしていたらしい。
副長は働き者だ。
少しして、話が終わったらしい。
船主が僕らに気付いた。
「おや? 彼らは?」
「以前にお話していた油使いのナザルさんですよ」
「おおっ!! アーランに美食をもたらした、食の神の使徒!!」
新しい二つ名が出てきたぞ!
だが、それも悪いことではない。
僕に対するポジティブなイメージを持った状態で会話ができるからだ。
「ええその通り、食の使徒ナザルです。美食コーディネーターと呼ぶ方もいますが」
「いやあ、お会いできて光栄です。第二王子デュオス殿下の全面的なバックアップを受けて、数々の食の革命を成功させたという現代の偉人。大きな争いの無くなった現代だからこそ、あなたのような豊かな時代を象徴する方が必要になるのでしょう」
握手をしながら、やたら僕を褒めてくれるじゃないか!
なんでそんなに持ち上げるんだ……?
あ、殿下の助力を得たいのか!
「僕にご協力いただければ、デュオス殿下への目通しも叶うでしょう」
僕はささやき声で応じた。
「おお……! 王族と直接お目通りが叶うとは……! そて、その協力というのは……」
「僕を船に乗せて欲しい。行きたいところがあるんですよ」
「船に!? そ、それは構いませんが……」
ダイフク氏が僕の物言いを大変怪しいなーという顔で眺めている。
どうしてもいかがわしくなってしまうんだ。
「約束しましょう。冬には一度、強化した船の試運転があります。これに同行していただき、ナザルさんの目標に協力します」
「おお! ありがとうございます!」
冬か。
思ったよりも全然早いぞ。
アーランの海は比較的温暖だ。
凍りつくことはない。
そしてどんどん南下すると赤道みたいなところに近づくので、暖かくなるんだそうだ。
夢で見た場所はまだどこにあるかは分からない。
だが、この大陸にありそうな気候ではない。
きっと南の島のどこかだ。
そのうち、知識神がまた夢枕に立って何かを教えてくれるだろう。
船主の言質は取れたことだし、後は知識神に直訴してさっさと島の場所を教えてもらうだけだ。
僕は船主とダイフク氏に別れを告げ、コゲタをおんぶして港を去ることにした。
さて、ではこれからどうする?
自分にできることをやるだけであろう。
「おーいリップル!」
「どうしたんだいナザル。コゲタをおんぶして」
「お腹いっぱいで寝てしまった」
「そうかい。可愛い寝顔じゃないか。それで君が私をご指名なのは、一体どういう要件なのかな?」
さすが付き合いが長いリップル。
僕が彼女にしか出来ないことをやってもらうと、訪ねてきたのを看破している。
「この大陸の外にある島のことを知りたい。知る方法がないか?」
「無いわけじゃない」
あっさりと答えるリップル。
さすが、長年プラチナ級として活躍……いや、半分は安楽椅子冒険者か。
だが、活動歴の長い冒険者は頼れる。
「今失礼なことを考えなかった? 違う? まあいいけど。この大陸の人々は、外の世界への興味をあまり持っていない。自分たちが生きるだけで精一杯だったからね。だから、そういう知識が記されている書物などは……人々が知識を求めるだけの余裕が、その力があった時代の建造物に収められていると考えるべきだろうね」
「なるほどー。わからん」
「つまり、この大陸の地上にあるどこにも、世界の外を記した書類は無いということさ。だけど、君が望む書類は存在する可能性が高い」
「無いって言ってるのにあるのか!? 一体どこに……。あっ!」
僕は気付いた。
リップルはニヤリと笑いながら、足元を指し示した。
アーランの基部に広がる、広大な遺跡。
この遺跡の深部には、過去の書物が存在しているかも知れないのだ。
「たまには冒険者らしいこともしようじゃないか」
ダンジョンハック!!
ほんとだ。
冒険者っぽい。
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