俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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77・旅立ちの時

第231話 もうすぐ出航か

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 知識神からのお告げにより、出航が近いことを知った僕だ。
 だが、別にお告げされなくても知らせに来る人がいるのだが?

「ナザルさん~」

「おおダイフク氏」

「出航が明日です」

「知ってた。神のお告げで」

「あっ、こちらの神もフランクな感じでやってくるんですな」

 ダイフク氏が目をギョロギョロさせるのだった。
 さて、ここは知識神の神殿。

 ギルドやギルボウの店にいない場合、僕は神殿に入り浸っている。
 ここ、しょっちゅう知識神が来ては僕と雑談していくんだよな。

 いい暇つぶしになる。
 ついさっきまで、その知識神にお手玉を教わっていたコゲタが、ハッとして振り返った。

「おさかなー!」

「ノーノー」

 駆け寄ってくるコゲタにノーノー言いながら、ノリ良くタッチしてあげるダイフク氏なのだった。優しい。

 彼は船の副船長であり、偉い人なのだ。
 だがそんな地位を感じさせない人柄。
 カエルの人は優しい。

 ちょうど神殿に来ていた……というか、今朝からずっといる知識神がダイフク氏を見てフームと唸った。
 彼の外見は、光りに包まれたマッチョなシルエット。
 そう、マッチョなんだよな。

 知識神いわく、『脳とは最も活発に動く筋肉である』なんだそうで。
 肉体をも頭脳に変えるために、こうして鍛えているのだそうな。
 実際、プラチナ級冒険者の資格を持つ実力者、フォーエイブル男爵を反応すら許さず吹っ飛ばすからな。
 さすが神様。

『お前は異界神の眷属だな? いやあ、あの泥人形が完全に種として定着し、しかも高度な自我まで持つに至ったとは……。大したものだなあ。異界神は眷属に愛情を注いで育てているな』

 うんうんと頷く知識神なのだった。
 この人本当になんでも知っているので、深くは突っ込むまい。

 だが、瞬間瞬間の人間の情動みたいなのが好きらしくて、こうして雑談をしにやって来るのだ。

「どうもどうも。うちの神様がお世話になってます」

『わははは、我らのみそっかすであった海神が前向きになれたのは、異界神とくっつけたお陰よ。感謝するのはこちらだ』

「神様間にもドラマがあるんだな」

『話すと長いぞ』

「遠慮しておきます」

 ということになり、僕はダイフク氏と出かけることになった。
 知識神はもうしばらく神殿にいるらしい。
 そうしていることで、神様を拝みに地元の若い子とかがやって来るんだそうで。

 そこを神官氏が勧誘して信者に変える。
 僕が神殿で管を巻いている間に、もう三人教化されたぞ。

『あまり急に増やすと他の教団から危険視される。一ヶ月に十人以内にしよう』

「かしこまりました我が神よ」

 戦略立ててるなあ。
 そんなのを後にして、三人で向かう先は冒険者ギルド。
 ここでリップルを回収して……。

「あっ、もうそろそろ旅立ち? じゃあ荷物取ってくるから私の宿に寄ってよ」

 安楽椅子冒険者、僕らを荷物持ちに使うつもりだな!
 しっかりしている。
 ではリップルの宿に寄っていこうということになった。

 四人になった僕らが向かったのは、かなり古びた感じのお宿。
 リップルの住まいだ。

 外壁が石造りだから長持ちするんだな。
 中に土を張って、防寒処理がされているらしい。

 その代わり夏は暑い。
 リップルは夏場、ほぼギルドにいる。
 夜になると熱が多少マシになるので、魔法でさらに冷却してから寝るんだそうだ。

 そのリップルが今!
 窓から僕らにポイポイ荷物を投げてくる。
 投げるのをやめなさーい。

 なんとお行儀の悪い。
 とりあえず、着替えの類を一通りまとめた。
 
「リップルさん、荷物が多いので減らしてください」

「ええーっ」

「言われたとおりにしなさいリップル」

「なんでー」

 ぶうぶう言いながら、荷物の種類を減らすリップルなのだった。
 そしてワイワイと港へ向かう。

 船はたくさんの荷物が運び込まれるところであり、明日の朝一で出港するのは確実というところ。
 船主が僕らを見つけて、手を振ってきた。

「おーい! 明日の明け方に出発だ! 今日は船で一泊して行ってくれ! まあ、その後はずっと船の中だがな! わっはっは!」

 船乗りジョークだ!
 それじゃあ乗せてもらって……ということで、僕らは船内に入ったのだった。

 船主の部屋は甲板の上にあり、最後尾。
 その前に左右、船長室と副船長室。
 そして真下の階が客室で、僕らの部屋だ。

「ふーむ、大部屋か……」

「ははあ、私とナザルとコゲタで同じ部屋かい」

「一応男女なんだがいいのかな」

「一応とはなんだ、一応とは。私は別に目隠しの魔法なども使えるから問題ないよ。部屋が広くていいし、窓もある。いい部屋じゃないか」

 リップルが気にならないならいいか。
 その後、コゲタが「おふねのなかあるきたい!」と言うので、散歩をすることになった。
 船内ならば安全だな。

 問題は、甲板にいる時に船が揺れたら、コゲタが放り出されそうなこと。
 外に出る時は、コゲタの腰にリードをつけることにしよう。

 以前来た時は気づかなかったのだが、甲板を掃除している水夫の中にコボルドが混じっている。
 大型のコボルドだから、コゲタより大きいな。

「あれっ!? バンダナしてるから目立たなかったけど……もしかして君、垂れ耳族のコボルド!?」

「あっはい。そうです。故郷の島でスカウトされて……。今年は平地に降る雪を初めて見られて、本当にいい年でした」

 レトリバー種のコボルドだ……!!
 周りをぴょこぴょこ走り回るコゲタを見て、彼はニコニコしていた。

「船の上でのコボルドのやり方は僕が教えますから、安心してください」

 マキシフという名の彼がいるなら、コゲタの船上暮らしも安心かもしれない。
 僕は僕で、彼から垂れ耳コボルドの話をたくさん聞きたいものだ。


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