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78・波高き船の旅
第235話 平和ではない
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のんびりと船は行く。
アーランから遠く離れ、今は南の海の上。
垂れ耳コボルド族の暮らす島はどこにあるのだろうか。
まあ、ここはまったりと過ごしながらたまには命の洗濯を……。
「うわーっ! 海竜種だーっ!!」「シーサーペントとアクアドラゴンが出たぞー!!」「こいつら水中で喧嘩してやがったんだ!」「どうりで魚がどこにもいねえはずだ!!」
まったりじゃない、全然まったりじゃない。
こんな感じで、船というのは様々な障害に出会うものだ。
「僕らがいない時、ああいう化け物とぶつかったらどうすんの」
「デカ銛をぶっ放してダメージを与えてですね、引っ張り合いをしてあっちの体力を消耗させて、疲れたところを逃げるかんじですかね」
船員の中でも砲手担当の人、プロっぽい雰囲気を漂わせている。
左右の舷側に銛を発射する装置があり、これで戦うようだ。
銛にはぶっといロープがくくりつけられており、これで化け物を攻撃した後、他の船員が帆をコントロールして風を受け、操舵手が船を自在に動かして攻撃を回避。
そして十分くらい付き合うと、相手はへとへとになるのでこれで離脱ということのようだ。
「案外スタミナ無いのね」
「相手も水の中で泳ぐにはいいんでしょうが、バタバタ大暴れするのは非日常ですからね。そうしたらくたびれるってもんです。それに動くと体温が上がるんですが、あいつらは水で常に冷やされている前提なんで、熱くなるととたんに動けなくなるんですよ」
「なーるほどなあ! 船もこうやって戦うんだな!」
勉強になるー。
実際、アクアドラゴンにはこの戦法で挑んだ。
アクアドラゴンというのは、言うなればバカでかいプレシオサウルスだ。
全長30mくらいある。
船の左舷から首を伸ばしてきて、船員たちに噛みつこうとしている。
「おりゃーっ! いい的だぜえーっ!」
砲手がここに銛をぶち込んだ!
『モギャーッ!!』
アクアドラゴンが吠える。
そこで操舵手が慣れた手つきで、舵輪をグルグルと回した。
おお、船がアクアドラゴンの周囲を回り始める!
アクアドラゴンはこちらに追いつこうとしてバタバタするが、刺さった銛からの流血と、ロープがぐるりと巻き付いて動きづらくなるやらで、なかなか船に組み付くことができないでいるようだ。
この調子なら、アクアドラゴンは疲れ切ってこちらをあきらめるだろう。
だが今回はもう一頭いるのだ!
シーサーペントが水中をニョロニョロと泳いでくる!
ウミヘビかあ。
毒がありそうだし、厄介だなあ。
しかもでかい。
かなりのデカさだから、ここから見てもエラがはっきり見える。
……エラ?
もしかしてこいつ、ウミヘビではなく細長い魚なのでは?
「砲手、つかぬことを聞くんだけど」
「なんですかね! こっちはロープのコントロールがなかなか大変なんですがね!」
「シーサーペントって魚で、焼くと美味かったりする?」
「ええ! 難物ですが、漁できればかなりのご馳走ですよ! 脂が乗ってますからね! うおおおお!!」
仕事に専念してもらおう。
しかし、そうか。
細長くて、脂が乗っててニョロニョロ泳ぐ魚。
他の、シーサーペントに狙いをつけて銛を打とうとしている船員にも確認。
「シーサーペントの表面はぬるぬるしていて、なかなか銛が刺さらないのではないか」
「ナザルさんよく知ってますね! あいつは海の盗賊と呼ばれるヘビみたいな魚で、あの長い体で船に入り込んでは樽を海に放りだして中身を食っちまうんですよ! だが、美味いこと捕まえられたらご馳走に……!!」
なるほど、これは人間とシーサーペントの化かし合い!
恐らくは全長50mはあるシーサーペント。
胴の太さだけでも直系1mはある。
人間だって丸呑みだろう。
実際、海中に落ちてしまえばシーサーペントの餌食らしい。
だが、海上なら話が違う。
向こうはせいぜい、樽を狙うのが精一杯。
空気中だと動きの精度が落ちるらしい。
そこを狙って、神経の集まる後頭部を銛で一撃!
これが狙い目のようだ。
「しかし、くっそー! アクアドラゴンと一緒に出てきたから、集中できねえ! アクアドラゴンなんか食っても不味いんだから、さっさと諦めて消えてくれりゃいいのに!」
「アクアドラゴンも食べられるんだ!?」
僕はとても感心してしまった。
海は苛烈で、戦いに満ちている。
負ければ魚の餌食。
勝てば魚がご馳走。
最高ではないか!
だが、今回は僕の出番はないかも知れない。
この一大スペクタクルを見学させてもらおう。
「ご主人~」
あっ、コゲタが甲板に出てきた!
危ない!
「あ~」
船が傾いた時に、ころころと転げていくコゲタ。
僕は油でつるーんと滑りながら追いかけた。
「うおー! つけてて良かったリード!!」
リードをキャッチ!
対面では、ダッシュで回り込んだマキシフがコゲタをキャッチしていた。
「お互いファインプレーだ。やるねマキシフ」
「ありがとうございます。船の上は危なくなっているので、踏ん張る力が足りないコゲタは隠れている方がいい」
「そっかー。でもありがとー!」
うんうん、仲良きことは美しきかな。
僕がコボルドの友情を見てジーンとしている間に、アクアドラゴンの方は片付いたようだった。
船の軌道がまともなものになる。
砲手はロープをわっせ、わっせと巻き取っているのだ。
さて、次はシーサーペント戦であろう。
頑張れ、右舷の砲手!
アーランから遠く離れ、今は南の海の上。
垂れ耳コボルド族の暮らす島はどこにあるのだろうか。
まあ、ここはまったりと過ごしながらたまには命の洗濯を……。
「うわーっ! 海竜種だーっ!!」「シーサーペントとアクアドラゴンが出たぞー!!」「こいつら水中で喧嘩してやがったんだ!」「どうりで魚がどこにもいねえはずだ!!」
まったりじゃない、全然まったりじゃない。
こんな感じで、船というのは様々な障害に出会うものだ。
「僕らがいない時、ああいう化け物とぶつかったらどうすんの」
「デカ銛をぶっ放してダメージを与えてですね、引っ張り合いをしてあっちの体力を消耗させて、疲れたところを逃げるかんじですかね」
船員の中でも砲手担当の人、プロっぽい雰囲気を漂わせている。
左右の舷側に銛を発射する装置があり、これで戦うようだ。
銛にはぶっといロープがくくりつけられており、これで化け物を攻撃した後、他の船員が帆をコントロールして風を受け、操舵手が船を自在に動かして攻撃を回避。
そして十分くらい付き合うと、相手はへとへとになるのでこれで離脱ということのようだ。
「案外スタミナ無いのね」
「相手も水の中で泳ぐにはいいんでしょうが、バタバタ大暴れするのは非日常ですからね。そうしたらくたびれるってもんです。それに動くと体温が上がるんですが、あいつらは水で常に冷やされている前提なんで、熱くなるととたんに動けなくなるんですよ」
「なーるほどなあ! 船もこうやって戦うんだな!」
勉強になるー。
実際、アクアドラゴンにはこの戦法で挑んだ。
アクアドラゴンというのは、言うなればバカでかいプレシオサウルスだ。
全長30mくらいある。
船の左舷から首を伸ばしてきて、船員たちに噛みつこうとしている。
「おりゃーっ! いい的だぜえーっ!」
砲手がここに銛をぶち込んだ!
『モギャーッ!!』
アクアドラゴンが吠える。
そこで操舵手が慣れた手つきで、舵輪をグルグルと回した。
おお、船がアクアドラゴンの周囲を回り始める!
アクアドラゴンはこちらに追いつこうとしてバタバタするが、刺さった銛からの流血と、ロープがぐるりと巻き付いて動きづらくなるやらで、なかなか船に組み付くことができないでいるようだ。
この調子なら、アクアドラゴンは疲れ切ってこちらをあきらめるだろう。
だが今回はもう一頭いるのだ!
シーサーペントが水中をニョロニョロと泳いでくる!
ウミヘビかあ。
毒がありそうだし、厄介だなあ。
しかもでかい。
かなりのデカさだから、ここから見てもエラがはっきり見える。
……エラ?
もしかしてこいつ、ウミヘビではなく細長い魚なのでは?
「砲手、つかぬことを聞くんだけど」
「なんですかね! こっちはロープのコントロールがなかなか大変なんですがね!」
「シーサーペントって魚で、焼くと美味かったりする?」
「ええ! 難物ですが、漁できればかなりのご馳走ですよ! 脂が乗ってますからね! うおおおお!!」
仕事に専念してもらおう。
しかし、そうか。
細長くて、脂が乗っててニョロニョロ泳ぐ魚。
他の、シーサーペントに狙いをつけて銛を打とうとしている船員にも確認。
「シーサーペントの表面はぬるぬるしていて、なかなか銛が刺さらないのではないか」
「ナザルさんよく知ってますね! あいつは海の盗賊と呼ばれるヘビみたいな魚で、あの長い体で船に入り込んでは樽を海に放りだして中身を食っちまうんですよ! だが、美味いこと捕まえられたらご馳走に……!!」
なるほど、これは人間とシーサーペントの化かし合い!
恐らくは全長50mはあるシーサーペント。
胴の太さだけでも直系1mはある。
人間だって丸呑みだろう。
実際、海中に落ちてしまえばシーサーペントの餌食らしい。
だが、海上なら話が違う。
向こうはせいぜい、樽を狙うのが精一杯。
空気中だと動きの精度が落ちるらしい。
そこを狙って、神経の集まる後頭部を銛で一撃!
これが狙い目のようだ。
「しかし、くっそー! アクアドラゴンと一緒に出てきたから、集中できねえ! アクアドラゴンなんか食っても不味いんだから、さっさと諦めて消えてくれりゃいいのに!」
「アクアドラゴンも食べられるんだ!?」
僕はとても感心してしまった。
海は苛烈で、戦いに満ちている。
負ければ魚の餌食。
勝てば魚がご馳走。
最高ではないか!
だが、今回は僕の出番はないかも知れない。
この一大スペクタクルを見学させてもらおう。
「ご主人~」
あっ、コゲタが甲板に出てきた!
危ない!
「あ~」
船が傾いた時に、ころころと転げていくコゲタ。
僕は油でつるーんと滑りながら追いかけた。
「うおー! つけてて良かったリード!!」
リードをキャッチ!
対面では、ダッシュで回り込んだマキシフがコゲタをキャッチしていた。
「お互いファインプレーだ。やるねマキシフ」
「ありがとうございます。船の上は危なくなっているので、踏ん張る力が足りないコゲタは隠れている方がいい」
「そっかー。でもありがとー!」
うんうん、仲良きことは美しきかな。
僕がコボルドの友情を見てジーンとしている間に、アクアドラゴンの方は片付いたようだった。
船の軌道がまともなものになる。
砲手はロープをわっせ、わっせと巻き取っているのだ。
さて、次はシーサーペント戦であろう。
頑張れ、右舷の砲手!
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