俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
265 / 337
86・コゲタ、アイアン級になる

第265話 コゲタ初めての冒険

しおりを挟む
 アイアン級のが到着する前に、コゲタを中心とした冒険をしてみようということになった。
 お祝いにコゲタの装備を買う。

 最近は資金的に余裕ができてきた僕は、コゲタの服をちゃんとした洋服店で買っているのだ。
 この世界の服は高い。
 基本的に 新品はオーダーメイドしかないから、ロバ一頭くらいの価格がする。

 なので、一般的にみんな古着を買って使うのだ。
 子どもなんかは特にそうだな。
 サイズがどんどん合わなくなるから、古着屋に売って古着屋で買う。

 で、古着屋は古着を補強したり、端切れで色々足したりするから……。
 以前のコゲタはカラフルなパッチワークだらけの子供服を着ていた。
 これはこれで大変可愛い。

 で、金が出来てからはオーダーメイドのコボルド服を着ていたんだが、これもお洒落でなおかつ可愛い。
 だが、冒険に行くためにはそういう普通の服ではよろしくない。

 僕は急遽、飼い主氏の伝手を使ってツーテイカーからコボルド用作業着を取り寄せたのだった。
 体の大きさの差があっても、紐を使ったり腕まくりしたりして、大体の小型種のコボルドにマッチする作業着!

「いいいぞコゲタ、すごく似合うぞー」

「ありがとー! なんかうごきやすーい!」

「うんうん、オーバーオールっぽい格好は変わらないが、膝や肘にプロテクターを付けてあるからな。これで怪我もしにくになるぞ。それで……どういう冒険をしたい?」

「んー」

 コゲタがくにゃっと斜めになって考え込んだ。
 今までは僕が持ってくる仕事についてくる感じだったもんな。
 だけど今回は、コゲタに選択権がある。

「自分で考えて決めてみよう。まず選べるのはこういう依頼だね」

 僕は選択肢を示す。

「まずは薬草採取。これは森に入るし、ちょっと危険もある。アイアン級はモンスターと遭遇したら撤退すること推奨な」

「うんうん。コゲタやくそうみつけるのうまいよ!」

「そうだなー。コゲタは鼻がいいもんなあ。次に、街の掃除。馬糞とかたくさん落ちてるだろ。あれを拾って遺跡まで届ける仕事だ。臭いけど、これは街の食べ物を作るための大事な肥料になる。大切な仕事だぞ」

「コゲタもうんちするもんね」

「そうだなー。あれも全部肥料になってるからな。最後に、下水のネズミ退治だ。大ネズミがちょこちょこ繁殖するから、間引かないとな。これは凄く臭いからコゲタは嫌だと思うが……」

 チラッと見たら、コゲタが本当に嫌そうな顔をしていた。

「くちゃいのや! うーん、やくそうさがす!」

「よーし、じゃあ薬草採取で行ってみよう」

 仕事の内容は決まった。
 今回の仕事はコゲタがリーダーだ。
 自分で色々考えてもらって、僕はそれを見守るとしよう。

 コゲタは「うーんうーん」と唸ったあと、ハッとした。

「おべんと!」

「正解! 出先でお腹が減っても、森の中で食料なんか調達していたら間に合わない。すぐに食べられるお腹に溜まるものは絶対に必要!」

「やったー!」

 というわけで、甘くしたビスケットとジャーキー、それとお茶にドライフルーツを買った。
 保存食系はいいお値段がするので、安くあげるならビスケットか揚げパスタがおすすめだ。

 揚げパスタは茹でた後のパスタを揚げたやつで、塩やハーブが振ってあるぞ。
 カリカリかじりながら仕事ができるし、口の中で戻しながらのんびり食べてもいい。
 口寂しくならないから優秀なおやつだ。

「いこー!」

「よっしゃー!」

 僕とコゲタで、森に向かう。
 いつもは僕の後ろをついてくるコゲタが、今は先頭だ。
 成長したもんだなあ……。

 木こり職人たちに、「こんにちはー!!」と元気に挨拶をする
 職人たちも、「おっ、今回はちびが先頭か!」「がんばれよー!」と手を振った。

 ムフーっと鼻息も荒く、やる気満々のコゲタ。
 いいぞいいぞ。
 森に入ると、コゲタは油断しない。

 鼻をくんくん、耳をヒクヒクさせながらにおいと音に注意しての行動だ。
 冒険者としての基礎的な素養がきちんとできてるな。

 基礎戦闘力で劣るコボルドだからこそ、慎重に慎重を重ねてもやり過ぎということはないのだ。

 コゲタはちょこちょこ進んではきょろきょろ、ちょこちょこ進んではきょろきょろ。
 こんな入口には薬草は生えてないはずだが……。

「これ!」

「おお! 見つけたか!! えっ、ちょっと奥にある倒木の陰に?」

「はえてる! みてて!」

 コゲタがえっさ、ほいさ、と地面を掘り返す。
 犬の技だ!
 なるほど、これは人間には真似できない。

 土の中から、ちょっとだけ希少な薬草が発見された。
 これはキノコの仲間なんだよな。
 トリュフかな……?
 トリュフかも知れない。

 つまり、コボルドの冒険者が薬草採取に参加したら、このトリュフがたくさん採れるってこと?
 実は森には、僕らのまだ知らぬ食材が大量に眠っているのかも知れない……。

 その日コゲタは、トリュフっぽい薬草をカゴいっぱいに回収したのだった。
 これはなんと、薬草の中では買取価格がかなり高い。
 掘り返さないと手に入らないのだから、さもありなん。

 メガネでのっぽの受付嬢が、「普段は掘り返された地面からはみ出ている、干からびたものを主に採取されるんです」と教えてくれた。

「トリフーというんですが」

「まんまだな」

「まんま……?」

「なんでもない」

「トリフーのこれだけ新鮮なものがたくさん採れたなら、きっと調合師の方々が喜ぶと思いますよ。でも、あまり採りすぎると価格が下がりすぎますから……」

「なるほど、薬として使うなら採り過ぎ注意と……」

 だが、食材としてはどうかな!?
 ともあれ、コゲタの最初の仕事は見事成功で終わるのだった。

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

処理中です...