俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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101・コゲタ周りのドタバタ

第309話 コゲタへの求婚者現る!

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 試験に落ちたコゲタ。
 その日の夜まではしょんぼりしていたが、美味しい晩ごはんを食べたらすぐにご機嫌になったのだった。
 やはりご飯は嫌なことを忘れさせてくれるな。

 酒は嫌なことを増幅したりもすると聞く。
 基本はカロリーによって解消をすべき。

 こうして明るい感じになったコゲタは、起きてきたカルと遊んだりなどしていた。
 カルも手を伸ばしたりできるようになってきたからな。
 指先でコゲタをぺたっと触ると、満足するらしくニヤッと笑う。

 我が子かわいい。
 コゲタもかわいい。
 この空間には癒やししか無い。

 素晴らしい夜を過ぎて、寝て、朝。
 真夜中にリップルが自動授乳魔法でごそごそ起きて、カルにおっぱいをあげていたのは何となく確認した。
 あまりにあの魔法が盤石すぎるので、こちらも安心して寝る他無いのだ!

 そして朝。
 朝担当のお手伝いさんが来たところで、朝食を作ってもらう。
 いやあ、我ながらいい身分だ。

 僕もリップルも、一切の家事をやらないからね!
 コゲタのお世話をしてたものだが、今はコゲタも自分でできる。
 なので、僕が専任なのはカルのおしめ交換くらいである。

「今日もいっぱい出たなあ」

「うばあー」

「日に日にむちむちして来ている。カルはきっとでかくなるぞ」

「んぶー」

 本日はコゲタはお休み。
 家でのんびりしたり、ちょっとお散歩に行ったりするくらい。

 リップルが一人で冒険者ギルドに出かけていった。
 母親になっても大変自由な人物なのだ。
 魔法でその辺りはカバーできるもんな……。

「ご主人! おさんぽいこ!」

「よし、行くかー」

 コゲタに誘われた僕は、カルをベビーカーに乗せて散歩する。
 いい陽気だ。
 そろそろ春ではないか。

 カルはベビーカーの上で、左右にゆらゆら動いている。
 これは寝返りの準備をしているのだ。
 成長が早いカルのこと。
 あと一ヶ月以内に寝返りの能力を身につけると睨んでいるぞ。

「ご主人とのおさんぽ、ひさしぶりねー」

「そっか、そう言えば! コゲタはここんところ、ずっと冒険者で大忙しだったもんなあ」

「うん! いっぱいしごとしたー。テストおわったら、みんなくたくた!」

「だろうなあ。若さに任せて張り切ってても、体力ってのはあるからねえ」

 僕も肉体年齢だけなら若いのだが、精神が年寄りだからな……。
 貴族街を抜けて、のんびりと商業地区に向かう。

 おお、懐かしきかつての我が家が見えてきた。
 一階が知識神神殿になっている、例の宿屋だ。

「あらー! コゲちゃんじゃないかい!」

 おかみさんにすぐ発見された。

「こんにちはおかみさーん!」

 コゲタがトテトテーッと走っていって、おかみさんがキャッチした。
 二人であはは、うふふ、と抱き合ってぐるぐる回っている。
 仲良しだなあ。

「おかみさん、神殿は順調?」

「ああ、順調さね。毎日信者の人が来てお祈りしてるし、お布施をしてってるよ。こちらも毎月それなりのお金が入ってきて助かるよ」

「やっぱり固定の家賃はいいよなあ。もうここ、宿というか賃貸マンションになってるでしょ」

「その方が安定してるからねえ」

 知識神神殿と、これを監視する騎士団の分署がある宿だ。
 というかそろそろ雑居ビルと言っていいんじゃないか?

 さらに、飼い主氏がアララちゃんと一緒に住んでおり、ここはツーテイカーの大使館みたいになっている。
 雑居ビルである。

「ああそうだ! ハムソンが大きくなってね! アララにプロポーズを!」

「なんだって!」

「あらー!」

 物凄いニュースに沸き立つ僕とコゲタなのだった。
 そして、この声でパッと目覚めたカル。

 初めて見る宿屋の女将さんに、「おー」とか言いながら興味津々。

「ナザルの子どもかい? かわいいもんだねー! カルボナル? 立派な名前をもらったじゃないかい! きっと大物になるねー。ほら、コーチョコチョ」

「キャッキャッ」

 さすがおかみさん、赤ちゃんの扱いを分かっている。

「それで、アララちゃんとハムソンの関係は?」

「ハムソンはまだまだ子供っぽいからと振られたねえ」

「あー」

「あー」

 僕とコゲタで一緒に笑うしかなくなってしまうのだった。
 日頃の行いだ。

 ハムソンの成長に期待しよう。
 なお、ハムソンはそれ以来体を鍛えているそうなんだが……。
 多分成長ってそっち方面じゃない気がする。

「どれ、ではでは知識神の神殿に挨拶に……」

 やって来た。
 ちょこちょこ装飾物が増えて、より神殿らしくなっている。
 外側でも石柱に見えるオブジェがあって、ここだけ雑居ビルの中で異彩を放っているな。

「やや! ナザルさん……じゃなかった美食伯ようこそお越しくださいました」

「他に人がいない時はさん付けでいいよ」

「ああ、ではお言葉に甘えてナザルさん」

 神官氏は変わりないようだった。

「どうぞ中へ。粗茶ですが召し上がっていってください」

「やや、ありがたい」

 招かれる僕とコゲタ。
 すると、神殿の中には腕立てをしているハムソンの他に、なんかコゲタくらいのサイズの人影があるではないか。
 あの背中は……。

 こんがり焼けたパンみたいな色の毛並みに、ぴょんと立った耳。
 柴犬のコボルドだ……!

 そのコボルドがハッとして振り返る。

「よきかおりがしたとおもったら……。おお、ちしきしんのみちびき!」

 かわいい声だが、かっこいいセリフを紡ぎ、コボルドはストンと床に降り立った。
 そしてこっちめがけてパタパタ走ってくる。

「うつくしいひと! どうかけっこんしてください!!」

「えっ!?」

 柴犬は、なんとコゲタの手をぎゅっと握ったのだった。
 な、な、なんだとーっ!!
 
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