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105・求めよ、精のつく食材
第320話 カキフライ生まれ落つ!
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たっぷりの牡蠣をゲットしたら、向かうところは……。
「そう、ギルボウの店だね!」
「えっ、ここ王国でも評判の高級店じゃないですか! ここがギルボウさんの店だったんですか!? あ、そう言えば同じところにある気がする……」
前に一度だけ連れてきたツイン。
その時の記憶と、今のギルボウの店のでかさが全く変わっているので、同じ店だと気付かなかったようだ。
「おーいギルボウ」
「おう! 久々だな! また何か持ってきたな? そろそろお前の美食の虫が疼きだす頃だと思っていたぜ」
立派な口ひげを生やしたギルボウが二階にあるベランダから顔を出した。
どうやらやる気にならなくてサボっていたらしい。
オーナー、向いてないんじゃないか……?
彼は猛スピードで降りてきて、僕らを出迎えた。
そして筒の中いっぱいになっている牡蠣を見て、にやりと笑った。
「おいおい。アーランじゃ牡蠣はご禁制だぜ? 生はもちろん、焼いてもいかんことになってる」
「だから揚げるんだ」
「やっぱりな。法の抜け道だ」
完全に想定していたらしい。
招き入れられた僕らは、オーナー用の部屋までやって来た。
ここはいうなれば……プライベートキッチン!!
前回来たときよりも設備が充実している。
本当に気に入った客のみを招き、ギルボウのスペシャルをごちそうする部屋だ。
アーランの豪商や貴族たちの間では、憧れの部屋なんだとか。
僕はその気になれば毎日来れるのだが?
「美食伯はギルボウさんの親友だからでしょう」
「そうかも知れない」
あまり自分が特別な位置にいるということは、分からないものである。
さて、サルシュが器用にナイフを使い、牡蠣の殻を剥いている。
さっきは全部剥くと悪くなりそうだったので、ほとんどは殻付きで持ってきたのである。
ここにギルボウが加わり、牡蠣はみるみる剥かれていった。
おお、美味そう!!
プルップルだ。
だが、あの明らかに栄養がたっぷりありそうな海で育った牡蠣を、そのまま生で食するのは危なそうだ。
やはり加熱。
油による加熱が全てを解決する。
「僕は衣を用意しておく。粉と卵はここ?」
「おう。そこに冷蔵魔法が掛かった小型倉庫があるだろ」
「ツーテイカーから導入したのか!? 高かったろ!」
「おう、このレストランと同じ値段だぜ、その倉庫。だがいいんだ。俺の趣味だからな」
生卵が収められている。
これを粉と混ぜて衣を作り、パン粉も用意し……。
大きな鍋に油を満たす。
今回はサラダ油で良かろう。
そのうち、オブリーオイルを使ったアヒージョを作ったり、あるいはミルクやチーズと一緒に煮込んでグラタンにしてやってもいい。
カキフライ丼という手もあるな……。
夢が広がる。
「あんたなかなか器用だな。リザードマンってのは指先の関節が一つ多いのか」
「人差し指だけが多いのです。逆に人間は関節が一つ足りないのによくそこまで器用に動かせますね」
ギルボウとサルシュが和気あいあいと喋りながら牡蠣の殻を剥く。
ツインは油番だ。
彼は光を纏うことで熱によるダメージを遮断できるので、油の温度を直に測っている。
「ふむ……神殿でやっていた揚げ物なら、もうすこし熱いほうがいいか……」
思わぬ才能……!!
こうして牡蠣は無事に剥き終わり……。
これを僕が次々に衣につけてパン粉をまぶし、いい感じの温度になった油の中にイン!!
じゅわーっと揚がる。
素晴らしい音だ。
今回採ってきた牡蠣の数は、およそ三十くらい。
この場にいるのは四人。
一人七個ちょっと食べられるな……。
こんがりきつね色に揚がったカキフライを、並べた。
するとギルボウは、既に酸味のあるクリーミーなソースを作っているではないか。
「ギ、ギルボウ!! まさかお前、タルタルソースとカキフライが合うことを知っていたのか!!」
「いや? 俺はただ、フライで食べ応えがついた牡蠣を食うなら、さっぱりしたサワーソースをつけたほうがバランスがいいだろうと思っただけだぜ……?」
天才だ、こいつ……!!
僕は戦慄した。
この世界で一番の天才が誰かと聞かれたら、間違いなくギルボウを指す。
果たして、カキフライにサワーソースは大変にマッチした。
「うおっ! サクッとした歯ごたえの後に、ほっくりと火の通った実が……! 衣で牡蠣の旨味が逃げていないから、すごくジューシーでほろ苦くて……」
「おお、酸っぱいソースが合いますね。素晴らしい香気です。これは……生牡蠣に使われていたラムイという柑橘を使っていますね?」
「流石は嗅覚に優れるリザードマンだ。ご名答だぜ。それに卵とビネガーを組み合わせてとろみがつくまで撹拌したものだ。手軽に作れるから神殿でもぜひ試してくれ」
全く新しいソースだろうに、レシピをさらっと教えてしまうギルボウ。
彼にとって、こんなものは幾らでも作れるものなのだ。
それはそうと、カキフライが美味い!!
「これは幾らでも行けてしまうな。美味い! 美味い! だが衣のお陰で嵩が増えているし、しっかり噛んで食べるから満腹中枢が刺激される。ほどよい数で収まりそうだな」
「おう。揚げ物にする利点はそこだよな。量を食べ過ぎる心配がない。牡蠣ってのは栄養豊富すぎて、つるつる食べまくってると栄養が溢れて体を壊すって聞いたぜ? うほー! サクサクでジューシーでうめえ!!」
ギルボウと向き合ってカキフライをさくさく食べながら、ふと僕らの声が唱和するのだった。
「米が欲しいな……」
「そう、ギルボウの店だね!」
「えっ、ここ王国でも評判の高級店じゃないですか! ここがギルボウさんの店だったんですか!? あ、そう言えば同じところにある気がする……」
前に一度だけ連れてきたツイン。
その時の記憶と、今のギルボウの店のでかさが全く変わっているので、同じ店だと気付かなかったようだ。
「おーいギルボウ」
「おう! 久々だな! また何か持ってきたな? そろそろお前の美食の虫が疼きだす頃だと思っていたぜ」
立派な口ひげを生やしたギルボウが二階にあるベランダから顔を出した。
どうやらやる気にならなくてサボっていたらしい。
オーナー、向いてないんじゃないか……?
彼は猛スピードで降りてきて、僕らを出迎えた。
そして筒の中いっぱいになっている牡蠣を見て、にやりと笑った。
「おいおい。アーランじゃ牡蠣はご禁制だぜ? 生はもちろん、焼いてもいかんことになってる」
「だから揚げるんだ」
「やっぱりな。法の抜け道だ」
完全に想定していたらしい。
招き入れられた僕らは、オーナー用の部屋までやって来た。
ここはいうなれば……プライベートキッチン!!
前回来たときよりも設備が充実している。
本当に気に入った客のみを招き、ギルボウのスペシャルをごちそうする部屋だ。
アーランの豪商や貴族たちの間では、憧れの部屋なんだとか。
僕はその気になれば毎日来れるのだが?
「美食伯はギルボウさんの親友だからでしょう」
「そうかも知れない」
あまり自分が特別な位置にいるということは、分からないものである。
さて、サルシュが器用にナイフを使い、牡蠣の殻を剥いている。
さっきは全部剥くと悪くなりそうだったので、ほとんどは殻付きで持ってきたのである。
ここにギルボウが加わり、牡蠣はみるみる剥かれていった。
おお、美味そう!!
プルップルだ。
だが、あの明らかに栄養がたっぷりありそうな海で育った牡蠣を、そのまま生で食するのは危なそうだ。
やはり加熱。
油による加熱が全てを解決する。
「僕は衣を用意しておく。粉と卵はここ?」
「おう。そこに冷蔵魔法が掛かった小型倉庫があるだろ」
「ツーテイカーから導入したのか!? 高かったろ!」
「おう、このレストランと同じ値段だぜ、その倉庫。だがいいんだ。俺の趣味だからな」
生卵が収められている。
これを粉と混ぜて衣を作り、パン粉も用意し……。
大きな鍋に油を満たす。
今回はサラダ油で良かろう。
そのうち、オブリーオイルを使ったアヒージョを作ったり、あるいはミルクやチーズと一緒に煮込んでグラタンにしてやってもいい。
カキフライ丼という手もあるな……。
夢が広がる。
「あんたなかなか器用だな。リザードマンってのは指先の関節が一つ多いのか」
「人差し指だけが多いのです。逆に人間は関節が一つ足りないのによくそこまで器用に動かせますね」
ギルボウとサルシュが和気あいあいと喋りながら牡蠣の殻を剥く。
ツインは油番だ。
彼は光を纏うことで熱によるダメージを遮断できるので、油の温度を直に測っている。
「ふむ……神殿でやっていた揚げ物なら、もうすこし熱いほうがいいか……」
思わぬ才能……!!
こうして牡蠣は無事に剥き終わり……。
これを僕が次々に衣につけてパン粉をまぶし、いい感じの温度になった油の中にイン!!
じゅわーっと揚がる。
素晴らしい音だ。
今回採ってきた牡蠣の数は、およそ三十くらい。
この場にいるのは四人。
一人七個ちょっと食べられるな……。
こんがりきつね色に揚がったカキフライを、並べた。
するとギルボウは、既に酸味のあるクリーミーなソースを作っているではないか。
「ギ、ギルボウ!! まさかお前、タルタルソースとカキフライが合うことを知っていたのか!!」
「いや? 俺はただ、フライで食べ応えがついた牡蠣を食うなら、さっぱりしたサワーソースをつけたほうがバランスがいいだろうと思っただけだぜ……?」
天才だ、こいつ……!!
僕は戦慄した。
この世界で一番の天才が誰かと聞かれたら、間違いなくギルボウを指す。
果たして、カキフライにサワーソースは大変にマッチした。
「うおっ! サクッとした歯ごたえの後に、ほっくりと火の通った実が……! 衣で牡蠣の旨味が逃げていないから、すごくジューシーでほろ苦くて……」
「おお、酸っぱいソースが合いますね。素晴らしい香気です。これは……生牡蠣に使われていたラムイという柑橘を使っていますね?」
「流石は嗅覚に優れるリザードマンだ。ご名答だぜ。それに卵とビネガーを組み合わせてとろみがつくまで撹拌したものだ。手軽に作れるから神殿でもぜひ試してくれ」
全く新しいソースだろうに、レシピをさらっと教えてしまうギルボウ。
彼にとって、こんなものは幾らでも作れるものなのだ。
それはそうと、カキフライが美味い!!
「これは幾らでも行けてしまうな。美味い! 美味い! だが衣のお陰で嵩が増えているし、しっかり噛んで食べるから満腹中枢が刺激される。ほどよい数で収まりそうだな」
「おう。揚げ物にする利点はそこだよな。量を食べ過ぎる心配がない。牡蠣ってのは栄養豊富すぎて、つるつる食べまくってると栄養が溢れて体を壊すって聞いたぜ? うほー! サクサクでジューシーでうめえ!!」
ギルボウと向き合ってカキフライをさくさく食べながら、ふと僕らの声が唱和するのだった。
「米が欲しいな……」
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