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110・かくして、油使いは伝説に
第336話 活版印刷女来たる!
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遥か北方の国から、使節が来るなんていう話になった。
なんだなんだ。
王国から僕に直々にそんな知らせが来たのだが……。
なんの関係があるのか……。
「あっ!! エリオットがなんか言ってたな……」
遥か北方とか、僕が行ったことないところじゃないか。
で、わざわざこっちに来る?
予測ができるというものである。
果たして……。
王宮までやって来たら、彼女はいたのだった。
一見すると、黒髪で落ち着いた雰囲気の美女。
真っ白な肌は、なるほど北方の出身っぽい。
白いドレスは、それこの国で調達したやつだな。
「あ、はじめまして。エリオットから話は伺っております。おそらくあれですよね。活版印刷を開発なさった」
「あっ、はい……!」
親しく話しかけたら、ちょっと緊張している風の彼女なのだった。
「カミラと申します、ナザル様」
「カミラさん改めてはじめまして。お互いさん付けで行きましょう!」
「うわーっコミュ強だ……」
「なんかおっしゃいました?」
「いえ、なんでも……」
聞かなかったふりをしてあげよう……。
彼女は活版印刷技術をモノにし、この国まで伝えにやって来たのだった。
そして遥か北方の国というのは僕の馴染がないはずだ。
その国は地下にあった。
魔法王国の遺跡そのものを都市として利用していたのだ。
で、彼女はその国に……転生した。
前世で同人印刷屋だった彼女は、この世界でコミックイベント……コミベを開きたいという野望を持っていたのだという。
ということで、そのエネルギーで邁進していたら活版印刷が実現していたと。
「ナザルさんが作られたお料理を口にしました。懐かしい……。あまりにも懐かしかったです……! あんなの日本の洋食じゃないですか……!」
「そうです! 食べ慣れたああ言うのがやっぱりいちばん美味い」
「こんな、食材が全く異なる異世界で再現してしまうなんて、とんでもない情熱……! 私にはとってもマネなんて出来ない……」
「いえいえ、僕だって夢中になって美味いもの探しをしていたらこうなっただけですし、偉大なる先人もおられたわけですから。ということで、僕が突っ走る内に世界の方も僕に力を貸してくれるようになり、こうして大陸中に美食が広がることになりました」
美食と同時に生活習慣病も広がってるんですがね!
そこはホント問題だよなあ。
「いやあ、もう、食だけで必死でしたから知的な文化の方はさっぱり手が回らなくて」
「あの、これ……」
「えっ、オフセット印刷!? すごすぎる……! 異世界でオフセット印刷を!?」
「様々な方が助けて下さいまして……。それで、この世界の叙事詩をマンガにして残すことができるように……」
「すごすぎる」
こうしてお互いに大してリスペクトをぶつけ合うのだった。
影からソロス王とエリオットが見ていたらしい。
陛下がニコニコしながらやって来た。
そしてメモし続けるエリオット。
お前は一体なんなんだ。
「大陸を代表する二人の文化人が出会ったというところだな。アナスタス王国は我が国に文化を運んできてくれた。インサツというそうだ。その力を使い、我が国の文化となった美食もまたレシピを木版や粘土板以外にも残せるようになる。これは後世に伝えるべき偉大な文化だからな」
「ほうほう、なるほどなるほど。形になって残るのは大きいですよね」
「叙事詩やマンガだけではなく、日本のお料理レシピまで本にできるなんて……。とても光栄です」
「ふむ……二つの文化が出会い、広がっていく……。ノーザンス大陸はここから大いなる発展を遂げていくのだった……と」
さらさらさらーっとメモ絶好調なエリオットなのだ。
ここから、事態は急速に進展していった。
活版印刷の装置を、カミラはアナスタス王国の使節たちとともに持ってきていたのだ。
すぐさま装置は組み立てられた。
そして彼女が持ってきたインクを用いて、紙に印刷されていくレシピ。
記念すべき一番最初のレシピは……。
スパゲッティ・カルボナーラである。
16Pほどの小冊子だが、これは人類にとっての大きな一歩である!
なお、アナスタス王国とアーランでは、使ってる文字がちょっと違った。
うち用の活版を作らないとね……!
幾つかのメニューが印刷され、それは使節たちがアナスタス王国へ持ち帰った。
美食を存分に再現してくれたまえ。
食材なんかも持ち帰ってもらったから、そっちで生産できるといいな。
美食が真の意味で、世界に広がっていく。
口伝ではなく、明確なレシピとして。
カミラはしばらくこちらに滞在するということだった。
僕は彼女をギルボウの店につれていき、うな重を食べさせた。
「うな重!? 異世界でうな重!? あっあっ、醤油がある! 味噌もあるの!? ひぃー」
カミラが嬉しい悲鳴をあげているのだった。
彼女は彼女で、大変な苦労やドラマがあってここまで辿り着いたんだろうなあ。
世界は広い。
色々なところで、みんな各々の人生を送っているのだ。
しみじみそう思うのだった。
さあ、たんとお食べ!
肝吸いに白焼きもあるよ!
=============================
お読みいただきありがとうございます。
面白い、もっと先を読みたいと思われましたら、
★で応援いただけますと幸いです。
とある怪人油男の日常を描いていく、まったりした都市型スローライフものです。
いよいよ、終わりが近いようです。
なんだなんだ。
王国から僕に直々にそんな知らせが来たのだが……。
なんの関係があるのか……。
「あっ!! エリオットがなんか言ってたな……」
遥か北方とか、僕が行ったことないところじゃないか。
で、わざわざこっちに来る?
予測ができるというものである。
果たして……。
王宮までやって来たら、彼女はいたのだった。
一見すると、黒髪で落ち着いた雰囲気の美女。
真っ白な肌は、なるほど北方の出身っぽい。
白いドレスは、それこの国で調達したやつだな。
「あ、はじめまして。エリオットから話は伺っております。おそらくあれですよね。活版印刷を開発なさった」
「あっ、はい……!」
親しく話しかけたら、ちょっと緊張している風の彼女なのだった。
「カミラと申します、ナザル様」
「カミラさん改めてはじめまして。お互いさん付けで行きましょう!」
「うわーっコミュ強だ……」
「なんかおっしゃいました?」
「いえ、なんでも……」
聞かなかったふりをしてあげよう……。
彼女は活版印刷技術をモノにし、この国まで伝えにやって来たのだった。
そして遥か北方の国というのは僕の馴染がないはずだ。
その国は地下にあった。
魔法王国の遺跡そのものを都市として利用していたのだ。
で、彼女はその国に……転生した。
前世で同人印刷屋だった彼女は、この世界でコミックイベント……コミベを開きたいという野望を持っていたのだという。
ということで、そのエネルギーで邁進していたら活版印刷が実現していたと。
「ナザルさんが作られたお料理を口にしました。懐かしい……。あまりにも懐かしかったです……! あんなの日本の洋食じゃないですか……!」
「そうです! 食べ慣れたああ言うのがやっぱりいちばん美味い」
「こんな、食材が全く異なる異世界で再現してしまうなんて、とんでもない情熱……! 私にはとってもマネなんて出来ない……」
「いえいえ、僕だって夢中になって美味いもの探しをしていたらこうなっただけですし、偉大なる先人もおられたわけですから。ということで、僕が突っ走る内に世界の方も僕に力を貸してくれるようになり、こうして大陸中に美食が広がることになりました」
美食と同時に生活習慣病も広がってるんですがね!
そこはホント問題だよなあ。
「いやあ、もう、食だけで必死でしたから知的な文化の方はさっぱり手が回らなくて」
「あの、これ……」
「えっ、オフセット印刷!? すごすぎる……! 異世界でオフセット印刷を!?」
「様々な方が助けて下さいまして……。それで、この世界の叙事詩をマンガにして残すことができるように……」
「すごすぎる」
こうしてお互いに大してリスペクトをぶつけ合うのだった。
影からソロス王とエリオットが見ていたらしい。
陛下がニコニコしながらやって来た。
そしてメモし続けるエリオット。
お前は一体なんなんだ。
「大陸を代表する二人の文化人が出会ったというところだな。アナスタス王国は我が国に文化を運んできてくれた。インサツというそうだ。その力を使い、我が国の文化となった美食もまたレシピを木版や粘土板以外にも残せるようになる。これは後世に伝えるべき偉大な文化だからな」
「ほうほう、なるほどなるほど。形になって残るのは大きいですよね」
「叙事詩やマンガだけではなく、日本のお料理レシピまで本にできるなんて……。とても光栄です」
「ふむ……二つの文化が出会い、広がっていく……。ノーザンス大陸はここから大いなる発展を遂げていくのだった……と」
さらさらさらーっとメモ絶好調なエリオットなのだ。
ここから、事態は急速に進展していった。
活版印刷の装置を、カミラはアナスタス王国の使節たちとともに持ってきていたのだ。
すぐさま装置は組み立てられた。
そして彼女が持ってきたインクを用いて、紙に印刷されていくレシピ。
記念すべき一番最初のレシピは……。
スパゲッティ・カルボナーラである。
16Pほどの小冊子だが、これは人類にとっての大きな一歩である!
なお、アナスタス王国とアーランでは、使ってる文字がちょっと違った。
うち用の活版を作らないとね……!
幾つかのメニューが印刷され、それは使節たちがアナスタス王国へ持ち帰った。
美食を存分に再現してくれたまえ。
食材なんかも持ち帰ってもらったから、そっちで生産できるといいな。
美食が真の意味で、世界に広がっていく。
口伝ではなく、明確なレシピとして。
カミラはしばらくこちらに滞在するということだった。
僕は彼女をギルボウの店につれていき、うな重を食べさせた。
「うな重!? 異世界でうな重!? あっあっ、醤油がある! 味噌もあるの!? ひぃー」
カミラが嬉しい悲鳴をあげているのだった。
彼女は彼女で、大変な苦労やドラマがあってここまで辿り着いたんだろうなあ。
世界は広い。
色々なところで、みんな各々の人生を送っているのだ。
しみじみそう思うのだった。
さあ、たんとお食べ!
肝吸いに白焼きもあるよ!
=============================
お読みいただきありがとうございます。
面白い、もっと先を読みたいと思われましたら、
★で応援いただけますと幸いです。
とある怪人油男の日常を描いていく、まったりした都市型スローライフものです。
いよいよ、終わりが近いようです。
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