召喚聖女は話が早い

月親

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時は金なり(2)

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「8以上にということは、力は変動するんですか?」
「これまでは皆、時間とともに増加したようです。ですが、初期値にも増加割合にも個人差があります。8の数値になるのに、前の聖女様は召喚後三ヶ月でしたが、何代前かは半年かかったようですね」
「そうなんですね」

 オルセイの説明に相槌を打ちながら、私は測定器の青い宝石部分に右手で触れた。
 ふっと、指の先から測定器へと光の粒が流れるイメージが頭に浮かぶ。そして次の瞬間、宝石は青い光を放ち、その光は直線となって板の逆の端までググッと伸びた。さながら、熱々のお湯が入った鍋に温度計を突っ込んだような感じだ。
 この感触、良い線を行っているのでは? そんな期待を込めて、私はオルセイを見た。

「最高の9……いえ、振り切れている……?」

 私に結果を伝えるというより、オルセイが呟く。
 最高値に加え、彼の驚きを隠せない様子。思った通り、私はかなり良い線を行ったようだ。

(時間とともに増加する聖女の力って、案外本人の自覚に左右されるものなのかも)

 異世界に召喚された当初は、現実味がないため数値が低い。でも長く暮らすうちに現実を受け入れて、そのことで自覚が出てくる……みたいな。だから、「聖女召喚ね、理解」な感じだった私は初期値が高かったんじゃなかろうか。そんなカラクリのような気がする。

「私はもう安定して使えるようですね」

 私の声掛けに、オルセイがハッとしてこちらを見る。

「そうですね、驚きました。では明日から徐々に聖女のお役目に入っていただいても?」
「明日からではなく、今からやります」
「今からですか!?」

 初顔合わせ時以上に、オルセイが目を丸くして言う。
 私の職場では、会議が終われば営業はその足で客先に出掛け、現場担当は工場に戻りながら指示の電話を掛けていた。なので割と自然に出てきた返答だったのだが、ここではそういう反応は珍しかったのだろうか。
 ――いや待って、対応がどうの以前にこの人王族だったわ。

「オルセイの予定が取れませんか?」
「いえ、俺は召喚以降、貴女のサポートを最優先するよう仰せつかっていますので」

 オルセイの返事に、ホッとする。私の王族のイメージは、アポ取りに数ヶ月……下手したら数年待ちな感じがしていた。そして常時なら、この印象は合っているんじゃないかとも思う。彼の予定に合わせていては、私のさっさと役目を終わらせる計画に支障が出るところだった。助かった。

「では今から始めます。サポートよろしくお願いします」

 初めての地、初めてのメンバーとの新規プロジェクト。世界の危機に不謹慎と思いながらも、私はワクワクしながらオルセイに始まりを告げた。
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